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魔族×戦士

1 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/01(金) 17:11:21 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
こんにちは、ゅぅきです。

以前、一般小説で"魔法世界"というものを書いていたのですが、この小説はその続編みたいな感じです。

主にファンタジー物ですが、BLも入っているのでこちらで書かせていただきます。


では、START**

2 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/01(金) 17:11:44 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
魔法種族が滅した後、僕らは地球人として生まれ変わった・・・



「楽!!」

大声を張り、親友が僕の名を呼んだ。


僕の名は、竜田 楽(たつた がく)

前世の名は、 ラクジュ・スクリュー・・・


今でこそただの高校生だが、僕の前世は魔法世界の王子だった。

何故か前世の記憶がはっきりとあるんだ・・・。


イダは消滅し、魔法種族はどこにもない。

だが、僕は魔法使いの血を受け継いでいた。

3 :優伽:09/01(金) 17:16:18 HOST:CATV-219-118-137-048.medias.ne.jp
あげです!w

ファン1号になってもいいですか?w

4 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/01(金) 20:41:14 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
優伽 様++
どうぞなってください!!
ぁげぁりがとうございますww

5 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/01(金) 21:34:53 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
僕の名前を呼んだのは、辻元 聡里(つじもと さとり)

聡里は前世を知らないようだ。

というか、それが通常。 僕は異常だ。


「楽、今日も家行くからな」

最近、聡里は勉強を理由に毎日のように僕の家に来る。

期末試験が近いとあってか、僕に勉強を教えるようにすがっているのだ。


「うん」

僕は曖昧な返事をして、歩みだした。


聡里は知らないだろうが、僕は聡里の前世を知っている。

聡里の以前の名は、キスチャ・スティファニ


両親を殺された腹いせに、僕の命を狙ってきた、僕の従兄。

訳あって最終的には仲間と成したが。


聡里の話す言葉を上の空で返しながら、いつの間にか僕の家に着いていた。

じゃあな、と聡里は手を振ってそのまま歩いていく。


聡里の姿が消えるまで、僕は家の中へ入らなかった。

6 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 09:29:43 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
僕が着替え終わって十分足らずで、インターフォンの音が鳴った。

「がーく、俺」

ガチャ、と受話器を手に取ると、聡里がいつもの調子でそう言った。


僕は待っててと言い、慌てて階段を駆け下りる。

扉を開け、聡里を家の中へ入れた。


「すっげーな、楽」

僕が一問一問問題の解き方を教え、その通りに解いていく聡里。

一つ問題が解けるたびに、聡里の顔がぱっと輝く。


聡里がキースだったとあってか、僕は聡里の顔を重視せずには居れなかった。

目と目が合うたび、

「俺の顔になんか付いてる?」

とベタな質問をされるほど。


例えなんと言われようと、僕は聡里の顔を見続けていた。

顔を見て考えることは一つ。


前世を思い出したりしないか、と言うことだ。

7 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 09:42:18 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
キースは僕のことを嫌っていた。

両親を国王、つまり僕の父親に殺されたからだ。

以前のことを思い出したりなんかしたら、僕と聡里は今までどおり親友ではなくなってしまうかも知れない。

と、言うのは、僕だってある日突然前世を思い出したからだ。


ニ年前に、何の根拠も無くふっと思い出した。

僕が魔族だったって事。



聡里には、絶対忘れたままで居てほしい。


「えぇ!?もしかして楽、俺のこと好き??」

聡里が突然、訳の分からないことを言った。


「違うよ!!何でだよ。そもそも男同士だし」

「だって俺の方ずっと見てるし…」

「それは…」

いいわけが思いつかなかった。

どう言ったらと、俯く。


「そう、なの?」

聡里は誤解したままだ。

「違うから勉強に専念しとけ」

そんな言葉じゃ、誤魔化しきれない。


聡里は、まるで不審者を見るような目で僕を見ていた。

8 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 10:16:46 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
「ま、いいんじゃねぇ?そういう恋もな」

聡里はぎこちなく僕の肩を叩いた。


違うって言ってるのに…

だがもう、言い訳する気力も尽きていた。



時計を見、聡里は慌てた様子で帰る支度をしていた。

筆箱や教科書をカバンの中に入れ、すっと立ち上がった。


「楽、また明日な」

そういってドアノブに手をかける。

僕も玄関先まで聡里を送って行った。



聡里が帰って、僕は自分の部屋のベッドに横たわった。

目を瞑り、考え事をしているといつの間にか寝ていたようだった。



『今日は転校生を紹介する』

夢の中であろう。

担任教諭が、見知らぬ二人を連れて教室内に入ってきた。


『帝藤 杏奈(ていどう あんな)です
 帝藤 伊月(ていどう いつき)です …』

二人は順番に挨拶をし、担任の指示が出るまで待っていた。


『二人は姉弟だそうだ。みんな仲良くするように』

そういって二人に空いている席に座るよう、指示をした。


目が覚めると、聡里が出て行ってからまだ何分も経っていなかった。


30分ほど経っているような気がしたのだが…

9 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 11:22:11 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
夢なんて殆んど見ないのに。

あの夢は、何故か協調性があって、ずっと忘れないでいた。



「おはよう、楽」

朝、学校に着くといつもみたいにクラスメイトが話しかけてくる。

僕はあの夢が気になって仕方がない。

聡里の表情を伺う所ではなくなっていた。



チャイムが鳴って、担任が教室へと入ってきた。

「静まれ」

教諭は静かに言った。


ガタガタと音を立てながら、クラスの連中が自分の席へと着く。


「今日は転校生を紹介する」

言われた瞬間、ドキッとした。

まさか、正夢になるとは。


しかも全く同じなのである。

クラスのざわめきの様子、担任の手招きする仕草。

一つも違うところなんてない。


夢と同じ要領で、あの二人が入ってきた。

「帝藤 杏奈です
 帝藤 伊月です …」

夢と同じように、二人は丁重に挨拶をした。


「二人は姉弟だそうだ。みんな仲良くするように」

担任がそういい、二人は空いている席に着いた。


僕は何気に二人の顔を見る。

夢では気付かなかったが、何か引っかかるんだよなぁ…


僕が視線を合わしていたことを気付き、杏奈と言う子の方が、こちらを見た。

慌てて会釈をすると、前から慕っていた仲のようにニコッと笑ったのだった。


10 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 11:32:36 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
"予知夢"

というものを聞いたことがある。

未来のことを予知し、夢に出てくる現象だ。


僕だって以前は予知なんてしようと思えば、簡単に出来た。

でももう人間に生まれ変わって、そんな能力は発揮できない。


予知、読心術、瞬間移動、千里眼、浮遊術、遠隔操作 …

魔法使いなら出来て当たり前のそれらの能力は、全て閉ざされてしまっているのだ。


なのにいきなり何故予知することを出来たのだろう。


"正夢"

という不可解な現象もあるが、あんなの正夢なんかじゃない。


行動の一つ一つ丁寧に全て同じだった。

違っていたのは、僕の心情だけ。


そう考えたら、予知としか考えられない。


杏奈はさっきから僕の方をずっと見ている。

何かを探っているのか?


まさか…

いや、そんなはずはない。


二人は何かを知っているのか?

僕の前世は、魔族だったって言うことを知っているのだろうか。


そう思うと、何故か不安だった。

全てを見透かされているような感覚で。

11 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 14:32:07 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
何だ、この感覚…

授業中だというのに、周りが騒がしい。

いつもなら、シンとしているはずなのに。


『発音とかめんどくせぇ』

『いちいちノートとってられるか』

どれもこれも授業に対する不満。


何…?

僕は異様な光景に気付いた。

誰一人として喋っていない。

いや、口を動かしていないって言った方がいいのかも。

みんな真面目に黒板を見ている。


なのに、何でこんな雑音がするのだろうか。

まだ夢でもみているのだろうか。


帝藤姉弟のことも、授業のことも、気にならなくなっていた。


まるでテレパシーのように、言葉が僕の脳にこだましてる。


…テレパシー?

12 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 14:45:56 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
テレパシーとは、口に出さなくても相手と会話が出来るいう現象。

いや、正確には誰とも会話していないから、読心術であろうか。

いずれにしても、予知夢にせよ、魔法使いならではの技だ。


どうして今頃そういう能力が宿ってきたのだろうか。

もう、とっくに魔法使いは滅亡した。

僕は只の人間だ…――


あれこれ考えていると、もう授業は終わっていた。

どこの学校でも転校生が来ると、休み時間は盛り上がる。


「どこから来たの?」

とか、

「伊月くんって呼んでもいい?」

とか。

伊月の方は受け答えをしてるが、杏奈の方は全く無視。

変わりに杏奈は、僕の方に歩いてきた。


「…なんて名前?」

さっきのにこやかな表情とは裏腹に、きつい視線で僕に問いただす。


「竜田、楽…」

見下げる杏奈、見上げる僕。


パチっと目が合った瞬間、杏奈はにっこり笑った。


「ふうん。やっぱりね」

13 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 16:13:57 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
やっぱり…

とはどういうことなんだろうか。

この帝藤杏奈という子は、何者なんだろうか。


懐かしいような、怖いような、変な感覚に陥る。

杏奈はまるで

"私のこと、忘れたの?"

というように僕を見ていた。



「じゃ、もう一人は辻元聡里ね」

もう一人って?

…聡里のこと、なんで知っているのだろう。


杏奈、伊月…。

知っているようで知らない。

誰だったか、思い出せない。


考えすぎでか、頭痛がした。

見るともう杏奈は僕の前にいない。


何か嫌な予感がした。

聡里が関わっているような。



チャイムが鳴り、聡里が青ざめた表情で教室に入ってきた。

伊月の周りに群がっていた女子等も、自分の席へと着いた。

14 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/02(土) 16:27:52 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
帝藤姉弟は、相変わらず人気だった。

数学の抜き打ち小テストはどちらも満点。

歌のテストをさせてみれば、心地よい歌声で半数を眠りに誘うような勢い。

伊月の愛想のよさ。

杏奈のクールな態度。

どこを撮っても完璧で、転校生といえど目立ちの象徴だった。


普通なら調子に乗ってるなどと因縁をつけて、目をつけるまで行くかもしれないが、二人においてはトラブルのカケラもなかった。


一つだけ思うのは…

疑問に思うのは…


完璧すぎる。

魔法でも使わない限り、あんなに10割天才で出来たような人間は出来ない。

僕がそれを思ったのは、2日目の体育の時。


男女体育が分かれているため、杏奈のスポーツ万能さは見ることが出来なかったが。


「帝藤、4.08」

伊月は、100Mをそんなタイムで走っていた。

100Mを4秒で走るなんて、普通の人間では到底というか絶対に無理だ。

すげぇ、速い!! とあたりはざわめく。

伊月が僕の隣を走りぬけたとき、凄まじいつむじ風が吹き荒れた。

並みの人間だったら、風を作り出すほど速くは走れない。


伊月。

いや、帝藤二人とも。

一体何者なんだよ。

15 :ありこ:09/02(土) 20:34:32 HOST:61-22-47-127.rev.home.ne.jp
あげ★!
更新がんばってくださアい!!!!

16 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/03(日) 09:54:20 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
ありこ 様++

ぁげありがとうございます♪♪
はぃoがんばりマス☆ミ

17 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/03(日) 10:12:51 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
一番気になったことは、クラスメイトの反応。

100M4秒で、何で"あり得ない"と疑問に思わないのだろうか。


凄いとか、速いとしか言っていない。

誰も100M4秒を疑問には思っていなかった。

世界記録をも大幅に出し抜いているのに。

クラスメイトだけじゃない。

教諭も、全く気付いていなかった。



僕はふっと聡里のほうに目をやった。

聡里も僕同様、しかめ面で首をかしげている。


聡里も気付いているんだ。

帝藤の記録がおかしいってことを。



「次、辻元聡里」

体育教諭が聡里に指示を出し、聡里はスタート地に着いた。


パン、と空気銃が鳴り、聡里は走り出した。


「辻元、14.82」

まぁ、普通というか少し早いくらいの記録。

それを聞いたって、男子の一人として気付かなかった。



18 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/03(日) 10:13:10 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
走り終わり、はぁはぁと聡里は僕の方へ向かってきた。


「なぁ、楽」

と、僕の隣に座る。


「お前、気付いてるか?帝藤のこと」

やっぱり聡里も気付いていたんだ。


「うん。目の当たりにしたからちょっと信じたけど、やっぱりおかしい」

「だよな…。100M4秒なんて、人間の技じゃねぇよな。しかも皆分かってないみたいだし」

「皆錯覚してるのかも知れないけど、先生も気付かないって変すぎるよね」



「…辻元、竜田、授業中だ。喋るな!」

先生に注意され、僕と聡里は慌てて前を向いた。


「最高記録は帝藤だ。皆も見習うように」

先生は、バインダーを持ってそう言った。

やっぱり先生も気付いてないようだ。


僕よりも前にいる伊月が、僕と聡里の方を向く。

何だ?と視線を合わした。


伊月は自慢なのか挨拶なのか、変に不気味な笑顔で笑いかけてきた。

19 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/03(日) 10:28:31 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「帝藤!!」

体育が終わり、僕の前方をスタスタ歩いていく伊月を呼び止めた。


「帝藤なんて。伊月でいいよ」

伊月は振り返ってにっこり笑う。


「伊月って何者?」

第一声がそれだと、凄い失礼なヤツかもしれないが、伊月は笑って答えた。


「何者だと思う?」

「何者だと思うって…」

「"まだ"教えない」

まだ、を強調して言い、伊月はどこかへ去ってしまった。


「凄かったね、杏奈ちゃん」

教室に戻ると、女子はもう杏奈の話題でいっぱいだった。


「えぇ?何で??」

女子の体育を見ていない男子が凄いの言葉に耳を傾けた。


「だってさ、あたし達体操だったんだけど、杏奈ちゃん空中で7回転くらいするんだもん」

おおー、と男子からの歓声が上がる。


空中7回転だと?

空中で7回も回転できるものか。


伊月の時と同じく、これも聡里と僕以外疑問に思う人はいない。

何かそこまで凄いことをされると、不信感から逆に帝藤二人に興味を示すようになった。

20 :。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。:09/03(日) 11:01:00 HOST:actkyo122098.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
☆^(・ε・`゚+o.゚*OнДтЦ*゚.o+゚´・з・)^★
ァゲ☆ミウチこういう話好きなにBL!!一般小説の方のレスも探してみます!!
更新頑張ってサイッッウチゎ常連になれるように頑張ります!!(謎

21 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/03(日) 11:58:07 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。 様++

お久しぶりです(違ってたらすみません
ァゲありがとうございます☆
ゃっぱBLゎ最高ですょ(ワリャ*
常連大歓迎です♪

後、前の小説は保管庫に入っているのでもしよければ見てさぃ。

22 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/03(日) 12:15:49 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「聡里ー?」

放課後、僕は一緒に帰ろうと聡里を探していた。


「辻元君なら東館の屋上にいたわよ」

教室をキョロキョロと探し回る僕を見て、杏奈がそう言った。


僕は無言で軽くお辞儀し、東館へと向かった。


「聡里ー、どこにいるの?」

それ以前に東館に何の目的があるのだろうか。

何か嫌な予感が尽きなかった。


階段を駆け上がったせいではなく、胸に動機が走る。




「聡里ー!!」

僕はより一層声を張り上げた。

屋上の扉を目前にし、嫌な予感は更に大きくなった。


バァン、と勢いよく扉を開けると、目の前に聡里はいた。


「さ…とり?」

屋上には、落ちないようにとフェンスが張り巡らされてある。

聡里はそれを軽くよじ登り、フェンスの上に立っていた。


「…え?」

バランスを崩せば落ちるに決まっている姿勢。

いや、人間ならバランスを取るに取れない姿勢。


僕が後ろにいること、聡里は気付いていないのだろうか。


「やめて聡里!!何で死のうとするの!?」

僕がそう叫んだのと、聡里が真っ逆さまに落ちて行ったのは同じタイミングだった。


「聡里っ…」

衝撃の光景に、息を呑んでその場に座り込んだ。


「何で…?」

聡里が死んだ。しかも自殺。


自殺をする理由なんて聡里には無いはずだ。

…僕が知らないだけで、聡里は追い詰められていたのかな。


いずれにしても、涙が止まらなかった。

のろのろとフェンス越しに聡里の姿を探す。


いない…?

聡里どころか、血もない。

それに下の人は叫び声すらあげていない。


聡里はどこに行ったのだろう…

23 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/03(日) 13:24:29 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
「聡里!?どこっ?」

まるで神隠しにでもあったかのようないなくなり方だったが、僕はあまり驚かなかった。

そんなことより、聡里の行方の方が心配である。


「聡里ぃ!!」

「んな大声出さなくてもここにいるから」

声がし、後ろを振り返ると聡里はいた。


「帝藤がここに楽がいるっ…」

聡里が何かを言い終わる前に、僕は聡里に抱きついた。


「聡里っ…心配したよぉ」

他人からしたらアブナイ系の光景だが、僕はもう我を忘れていた。

不思議な現象より、他人の目より、聡里の無事の喜びの方が大きかったから。


「なんだよっ」

言った聡里の顔は赤く染まっていた。


「抱きつくな。暑苦しいっ」

そういわれて、僕はようやく我に返った。



「…で、そっから俺が飛び降りたって?」

僕は一切の事情を聡里に話した。

こくんと頷き、聡里のほうを見る。


「んなこと言われても、俺今ここ来たとこだし」

聡里にも疑問の表情が浮かんでいた。

やっぱり、あの二人が計ったのだろうか。

いや、僕が見たのは絶対聡里が飛び降りる場面だったし…。



(聡里にはもう"覚醒"のこと言うしかないのかな)

僕が、否聡里と僕が以前魔法使いだったということを。

あの二人のことは覚えがないが、あの二人も魔法使いでとっくに覚醒してるのなら、つじつまが合う。

尤も、僕は思い出しただけで、もう魔力は使えないのだが。


「あの、聡里…」

僕が遂に白状しようとした時、

「楽。お前に言っとかなければいけねぇ事があるんだが」

聡里が言葉を遮った。

24 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/03(日) 13:41:32 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
「な、何…?」

いつもに無く真剣な表情で語りかけるから、僕も思わず真剣になっていた。


「3日前のことなんだけどな、俺"予知夢"を見た」

聡里の言葉に、僕は驚いた。

僕も三日前、帝藤姉弟の予知夢を見ていたから。


「それで思い出した」

「…え?」

思い出したって、まさか…

親身になって聞いていた僕の表情に緊張の顔色が走る。


「前世…のこと?」

聡里が言う前に僕は聞いた。


「お前も知ってたのか」

頷きながら聡里がそういう。


聡里が体験したのも僕と同じような感じだった。

幻聴が聞こえたり、予知夢を見たり。


「問題は杏奈と伊月だよね。あの二人、前世にいたっけ?」

「…覚えてない。いたような気もするけど」


あの二人は間違いなく魔法使いだ。

前世じゃなくて現在も。




「成程ねー。そこまで覚えてるなら、能力も使えるはずだけど?」

いきなり扉が開き、そこに伊月と杏奈が立っていた。


「もしかして、僕達のことまだ思い出せない?」

「聡里くんと楽くん、お互いのことは覚えているみたいだけど」

伊月も杏奈も、馬鹿にしたように笑った。


何か、覚えているのに。

絶対覚えているはずなのに、思い出せない。

25 :ありこ:09/03(日) 18:22:16 HOST:61-22-47-127.rev.home.ne.jp
マタきましたーw
やっぱりいいっすねb この小説★! 

26 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/04(月) 13:47:32 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
ありこ様
また来ていただけるなんて…w
ぁりがとうございます、嬉しぃっス!!
良いとヵ言って頂いて、本当に嬉しいです☆

27 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/04(月) 14:06:31 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
「ま、いっかぁ。一生忘れたままで」

杏奈はそう言って少し延びをした。

そして、帰るよと伊月の手を引っ張り、その場を後にした。


「なんだろう」

本当に疑問だった。

向こうの二人は僕らのことを確実に知っている。

覚えが無いのに懐かしいような感じがして、絶対ずっとそばに居たんだ。


「フロート」

聡里が隣で、呪文のような言葉を口に出した。


「フロート、フロート、フロート…」

僕の脳内がクエスチョンマークでいっぱいになるほど、聡里は"フロート"と唱え続ける。


フロート…

つまり浮遊って意味だ。


僕は、段々聡里の身長が高くなっていっていることに気が付いた。


「聡里!!浮いてるっ」

驚いて、思わず声を張り上げてしまった。

聡里の足は、地面からニ、三十センチ程離れていた。


「お、わっ…」

聡里はバランスを崩し、地面に足が付いたと同時に転んでしまった。

僕も聡里も、驚いた表情で見つめあう。


「浮い…た、て。俺が?」

「…自覚無かったの?」


自覚どころか、全く覚えていないと言うような表情をする聡里。


「今…魔法使った?無意識に?」

28 :。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。:09/04(月) 17:25:33 HOST:actkyo062011.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
ァゲ☆ミ更新楽しみにしてましたぁmmmm
未だ一般小説にハイってナイ。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。デス(ワラ
ホント面白いデス!!p(○´∀`)q ガンバッテくださぃ♪

29 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/04(月) 18:55:41 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
帝藤は、能力も使えるはずだと言っていた。

でも聡里は魔法を使ったというか、"フロート"って言ったことすら記憶に無いらしい。


あれから僕は、何回もフロートと言ってみた。


フロート、つまり浮遊術は読心術と並び魔法の中で一番簡単。

意を集中さえしていれば、呪文を唱えなくとも0歳児でも出来る技だ。



でも何も起こらない。

初級の技をもこなせないし、帝藤二人のことも"思い出せていない"。


「もういい、やめとけ。…俺は普通の人間で居たいんだよ」

聡里は僕の頭に手を置いた。


途端に力が抜け、僕は聡里の腕の中で蹲った。

「聡里…」

と、同時に涙腺も緩んで視界が歪んで見える。


僕は魔法が使えないのがこんなに屈辱的だとは思ってもみなかった。

凄い初級の技だけど、しかも無意識にだけど、聡里でも魔法が使えたのに。


前世では僕は、魔法という技を課せられて生きていくのが嫌だったのに。


「とりあえず帰ろう。期末近いし、勉強しねぇと」

聡里にそう言われ、僕はやっと自分の作った状況がわかった。


また聡里にくっついて、相手の顔は真っ赤に染色。

「あ、ごめん…」

握っていた聡里の腕を、慌ててパッと放した。


「……お前何でそんな必要以上に引っ付くんだよ」

僕から離れ、聡里は血の気が引いたように顔色が元に戻った。


まさか僕のこと、まだ変態だと思ってるのか?

「た、確かに聡里は好きだけど、そんな変な意味じゃなくて…」

自分で墓穴を掘っているのでは、と思いながらも僕は変に必死に弁解していた。



"好きだ" …


僕の言葉で邪魔されて、というか多分気のせいだけど、聡里の声でそういわれたような気がした。


30 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/04(月) 18:57:49 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。 様+

ぁげありがとうございます♪
一般の方ゎBLも入ってないしオチが無茶苦茶なんであまり面白くないかもしれません(汗;
面白いって言って頂いて、光栄です☆

31 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/05(火) 13:50:29 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
「……え?」

僕は驚いて聞き返す。

聡里も案の定、何のことか分かっていないようだ。


「何か言った?」

「何も?」

聡里の表情もいたって普通。

特別顔色が変わっているわけでもなかった。


やっぱり気のせいなのかな。

幻覚に続き、幻聴も聞こえるようになったのかな。


「…」

僕は黙って屋上の扉を開いた。

館内に入ると、聡里も後を追って来る。


僕らは横一列に並んで階段を下りていた。

聡里も僕も、ずっと黙ったままだ。


僕にだってこれが悪い空気だって分かっていた。

気まずいって言うのはこのことだ。

聡里は僕のこと、本当に男が好きだって思っているのかな。

まさかそんなことないよなぁ…


「あ、あのさ。キース…」

僕は沈黙を破ろうと、冗談で"キース"と呼んでみた。

ホンの冗談のつもりだった。


「言うな!!」

途端に聡里は立腹した表情で僕を睨みつける。

「ひゃ!?」

その声のあまりの大きさに、僕は思わず悲鳴を上げた。


聡里はそんなことは構わず、僕を睨みつけたまま言う。

「その名前言うな。あれは思い出したくないんだよ」

32 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/05(火) 14:19:10 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
聡里は急に悲しげに顔を俯かせた。

「ご、ごめん…」

僕もつられて俯いた。

先程より気まずい空気が僕ら二人の間を流れる。


それを逃げるかのように僕は聡里より速いスピードで階段を駆け下りた。


いや、何か…

本当に逃げてるみたいだ、聡里から。

怖い。聡里がじゃなくて、"親友"という関係がつぶれてしまいそうだった。


33 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/05(火) 14:36:37 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
ザァァァ

学校を出た途端、凄い効果音がなるほど雨が降ってきた。

太陽は黒雲に覆われ、五時過ぎということもあって、辺りは薄暗くなっていた。


「ああぁ、傘忘れた…」

忘れるのも当たり前だ。

天気予報は見事に外れ。

僕の周りにいた人も頭の上に物を乗せながら、小走りで通り過ぎる光景が見えた。

僕も通学カバンを頭に載せ、一刻も早く家に帰ろうと試みた。


「傘…」

何気にそう呟いた途端、僕の目の前に傘が落ちてきた。

どこからか落ちてきたのでは無く、いきなり空から落ちてきたって感じだった。


そんなことで驚く訳はない。

前世では日常茶飯事だったから。


だが不思議だった。

どうして僕が言った途端傘が落ちてきたのだろう?

僕は魔法が使えないはずだし、近くに人がいる気配もない。


さっき、聡里が無意識に浮遊術を使ったのと同じ要領だろうか。

いやでも、僕は無意識に単語を言ったわけじゃないし…。

カバンを下ろし、傘を拾い上げてみた。

普通のビニール傘だ。なんの変哲もない。


僕は躊躇いなく、その傘をさして帰った。

34 :。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。:09/05(火) 22:16:03 HOST:actkyo073147.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
魔法って奥が深いデスЙёッッ
小説保管庫にあったのを見つけたので,早速読んでみようと思います!!
更新頑張ってサイッッ応援してます!!

35 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/06(水) 13:59:05 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。 様++

ぁりがとぅございます。
自分で考えてぃるだけなんデス実ゎ・・・。
魔法に関しての知識がゼロで(汗

36 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/06(水) 14:20:51 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
家に着いて二時間。

今日は聡里が来ない。 まあ当たり前といえば当たり前か。

僕が聡里だったとしても来れるような感じじゃなかったし。


先程の豪雨が嘘だったかのように、闇夜の間に星が見えていた。


「イダって本当に消滅したのかな」

この星の中にイダはあるのだろうか、と僕は星空を見上げた。


「聡里」

今日の雰囲気で、聡里の心情が気になった。

どうしても精神に触ったように思い、僕のせいで落ち込んでいるのではと凄く心配になる。


「会いたいなぁ」

僕はそうポソっと呟いた。

顔色が気になった。

それだけで、別に変な感情ではない。


「…?」

次に気付いた時には、僕の部屋とは背景が違っていた。

見覚えはあるがベッドと机の配置が違う。

いやいや、部屋の構造自体全然違う。


ガチャ

ドアが開き、見覚えのある顔が上半身裸で入ってきた。


「な!!楽、何で!?」

「聡里こそ…て、ここ聡里の家だ」

「ったりめーだろぉ!!何で楽がいるんだよ!?」


聡里は風呂上りなのか肩にタオルをかけて、身体からは湯気が出ていた。


「…あ」

今分かった。先程の傘と言い、今のこの現状と言い。

37 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/06(水) 14:31:50 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
「瞬間移動、か…」

聡里も驚くことなく、ベッドの端っこに座って言う。


「俺もなった。さっき帰る時」

「でも何でいきなり魔法が使えるのかなぁ」


先程は一番ベーシックな浮遊も出来なかったというのに…。


「環境によって魔法の使えるときが決まっているとか?」

「環境…?」


僕や聡里が、記憶のあるうちで魔法を使ったとみなされる環境。


曇りや雨で、太陽の光が遮られている時、夜…




闇?

38 :。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。:09/06(水) 15:23:50 HOST:actkyo071036.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
いやAでも魔法がリアルに出てマスЙёッッ
ドンA小説に引き込まれてるウチゎもうすぐでPCに虜にoooo(もうなってる
続きかなり気になります!!ァゲ☆ミ

39 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/06(水) 23:06:59 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。 様*

ぁりがとうございます!!嬉しぃ限りです☆
リアルに表現できてますか!?
読者様にそう言って頂けるって本当に嬉しいですw

40 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/06(水) 23:22:25 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
イダは、地球のように国が幾つにも分かれていない。

太陽しか当たらない北半球。

光の差し込んでこない南半球。


僕らは南半球、闇の国で生まれた。

不完全な覚醒だから、暗闇の内でしか本領発揮できないって訳か。


「…おい?」

よほど考えに浸りきっていたのだろう。

聡里に何回か声をかけられても気付かなかった。


「が―――――くっ」

「な、は…い?って…!?」

僕は驚いた。

先程から聡里の上半身には何も纏われていなかったけど、さほど気にしてなかったのか、今頃になってやっと驚いた。


「聡里、服着てよぉ」

男同士だし、子供の頃から聡里と一緒にお風呂入ったりしているし、裸なんて見たって平気なはずだ。

なのにどうしてか変に意識してしまう。

聡里が僕に変な疑問を持っているせいだ、多分。


「どうした、楽?」

僕の頬が赤らみていることを気付いた聡里は、僕の顔を覗き込んだ。

それ以上自分を辱めている顔を見られたくないため、そのまま百八十度回転をする。


41 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/06(水) 23:34:06 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
「か、帰りますっ」

帰ると言っても前方には窓しかないのに、どうしろって言うんだ? と自分に問いかけながらも、僕は歩み出た。


「"待て"」

そう聞こえた途端、僕の身体は自分の意志で動かなくなった。


「な、に…?」

動かないものの、声を出すことは出来るようだ。

それに、首から上も普通に動かせる。


僕は聡里の方に振り返った。

聡里は、人差し指を前に突き出して言う。


「マインドコントロール(精神操作)。"そのままこっちへ来い"」

僕が制御していないことを良いことに、思うがまま僕を動かす。


また百八十度回転し、そのままゆっくり聡里の方に行きだした。

そして聡里の隣にちょこんと座った。


聡里は右手で僕の頭を覆い、自分の方へと引き寄せた。


「ひゃ!?」

まさかこんなことをされるとは思っていなかったので、思わずそんな悲鳴を上げる。


「もう少しこのままでいろよ…」

そう言って悟りはより一層強く僕を抱きしめた。


聡里が何を考えているかは解らない。

それにもう、マインドコントロールは解けている。



なのに僕は、その場を離れることが出来なかった。

42 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/07(木) 14:14:06 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
朝、太陽が眩しすぎで目が覚めた。

隣には聡里が寝息を立てている。


「何で聡里が…」

僕は一切の事情を思い出した。

昨夜、僕はテレポート(瞬間移動)で聡里の家に来た。

訳あって動揺し、家に帰ろうとすると聡里が僕にマインドコントロールをかけてきた。

そのまま帰れなくなって、泊まった…


て言うか何で聡里は僕にマインドコントロールなんてかける必要があったのだろうか。

魔力を試したかっただけ?

それとも違う目的があるの?


僕はあれこれ考えながら聡里の顔をじっと見つめる。

本当によく寝るなぁ…

今日は休日だから良いとしても、寝ている聡里を放って家に帰るなんて失礼すぎると思い、暫くは聡里の隣にいた。


日が照っていると魔法もロクに使えないだろうし。


ボーっとしていると、ふと窓に人の気配がしたように感じられた。

パッと窓を見ると、人型のシルエットが写っている。

逆光で窓越し、あまりよく見えることは無かったが、このシルエットには見覚えがある。



「おはよ」

その人は、壁を通り抜けて聡里の部屋内へと入ってきた。

43 :。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。:09/07(木) 16:04:44 HOST:actkyo060053.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
入ってきたのゎ一体どっち!?(妄想で決め付けてます”ワラ
なんかこの二人の関係にMOE(●*艸εU照)
更新楽しみにしてます!!ァゲ☆ミ

44 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/08(金) 13:11:54 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
どっちでしょう?ぇ
私も自分で書いていながら二人の関係スキですvv(ぁ

ぃつもあげていただいてぁりがとうございます☆
ただ今から更新します。。

45 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/08(金) 13:26:30 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「伊月!?どうしたのその髪!!」

顔立ちは伊月だ。

だが、いつもは茶色と黒の染めてもない髪の毛だったのに、冷めた銀色。


「えへへっ」

無邪気に笑う伊月をよく見ると、目の色も違っていた。

「緑…?」

深い緑。黒く濁ったような緑だった。


「これでも解んない?…当たり前、か」

伊月は人差し指をピっと突き立てた。

すると見る見る髪の毛の色が戻って、いつもの伊月になった。


「当たり前って?」

僕らが不完全なのを計っているかのように伊月が言っていた。


「うん、一種のメモリーロス(記憶喪失)。前の名前を言わないと思い出せないって技」


なるほど。それで僕も聡里もこの二人を思い出せないって訳か。

魔力のせいだったんだ。

道理でそこまで言われても、伊月の本来の姿を見せられても分からない訳だ。


「でもね」

伊月はその辺に座り、話を続ける。

「メモリーロスは自分にかけられた場合は解除できるし、頑張ってみて。それだけ言いに来た」

今座ったばかりなのに、立って窓の方へ歩き出した。

「"ストリート"」

手を伸ばしながらそう唱えると、先程と同じように壁を通過して去って行った。

46 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/08(金) 13:29:02 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
呪文は基本的に英語ですが、日本語になっているときがあります。

あと、この小説はあまりエロシーンが無いです。
本当に申し訳ありません。

47 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/08(金) 15:25:15 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
メモリーロスは自分の力で解除が出来る。

「"リリース"」

出来ないと分かっていて、僕は唱えてみた。


やっぱりそう簡単に思い出せるものではない。



夜にもう一度やってみようか…。



僕は隣をチラッとみた。

伊月はこの光景を見て、変な想像しなかっただろうか。

どうでもいいところが、物凄く気がかりだ。


そっと聡里の髪に触ってみる。

無音の室内では、それだけでくしゃっと音が聞こえた。


「んんっ…」

暫く何もしないままでいると、聡里が目を覚ました。


「んぁ。楽」

寝ぼけた表情で、僕であることを確認する。

僕はそれを、笑顔で返した。


「おはよ、聡里」


お早うと小さい声でいいながら、聡里は自分の高等部をかきむしった。

聡里は僕の顔をじっと見つめて来て、かあっと顔が赤らんだ。

そして何を思ったのかこう言った。


「楽っ。お前…キ、ス…しただろっ!?」

48 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/08(金) 15:37:11 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
「へ??」

一瞬、聡里の言った単語全てが分からなくなった。

ふとその意味に気付き、僕まで顔が赤くなる。


「何言ってるの!?寝ぼけてるの?」

「お前こそ何言ってんだよ。今やっただろーがっ」

「今って!?」

「今、起きた瞬間!!」


聡里も僕も、したしてまいと真剣に主張していた。

勿論、聡里がおきてからは触ってもいないし、ましてや男同士でキスなんてする訳ない。


「まだ半分夢の中じゃないの?」

「いや、もう起きた!!この前から気になってたけど、お前やっぱり…」


これ以上はいえない、と聡里は口ごもった。

向こうは言いたい放題で、僕に不信感を持っている。


あーも――。

僕は額に手を当て、一つ大きなため息をついた。


そして聡里の口元に、自分の唇を持っていく。


チュ…


軽いキスだが、僕は聡里に分かるようわざと音を漏らした。


「これで文句ないでしょ?」

どうでもいいや、どうなってもいいやと僕はウンザリした顔つきで言った。


「聡里だって昨日"もう少しこのままで居ろ"って僕に抱きついたじゃない。どっちもどっちだよ」



キスした後の聡里の顔は一層に赤くなり、その場に血圧上昇で気絶しそうな勢いだった。

49 :。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。:09/08(金) 16:36:16 HOST:actkyo092098.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
初々しいですЙёッッ
正体がかなり気になります!!
今少しずつですが,保管庫の方の小説も読んでます!!

50 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/08(金) 22:23:51 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。

ほ、本当ですか!?
駄文なのに…ぁりがとぅございますww
これから正体解ってきますょ(お前誰/笑



51 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/08(金) 22:49:12 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
「もう満足?それとももう一回…やる?」

僕はキャラに合わず、意地悪く言った。


聡里は黙って激しく首を横に振る。

まさか僕、楽みたいなヤツにそんなことされるなんてって凄い悔やんでいるんだろうな。


僕もやった後に自分が何したか気付き、焦った。

(何であんなことしたんだろう…?)

これじゃあ聡里に合わす顔が無いよ。

いや、あわしてるけど。


手をそっと聡里の額に当て、

「"メモリーロス"」

と唱えてみた。


まあ、使えないのは分かっている。

あくまでダメで元々……だと思っていると、

「…あ、楽。お早う」

と、聡里はとぼけた口調で言った。


「うぇ!?え??」

あまりのことに、僕は唾をも喉に詰まらせた。


「もしかして、今のこと忘れた…?」

「今のことって?」

吃驚するくらい本当に覚えていないようだった。

暗くも無いのに魔法がうまくいった?

てことは、暗い明るいは関係ないのだろうか?


忘れられたのは本望だが、僕は寂しい気がした。

52 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/09(土) 14:25:12 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
「"リリース"」

本当に明暗が関係していないのなら、解除魔法も今効くのだろうか。

そう思ってまた同じように呪文を唱える。


「リリース?解除?」

僕が意を集中していると、聡里も口を挟む。

と、聡里はハッと何かを思い出したような顔をした。


僕には解除魔法が効かなかったが、聡里には効いたようだ。


「ロイ・スピュード」

聡里がその名前を呟き、気付いた時には僕にもロイの記憶が宿っていた。



僕にはまだ魔法はうまく使えない。

だけど伊月も杏奈も使いこなせている。

それに聡里も、僕よりは魔力が上値に位置する。

多分もう少し魔法に慣れると…―



「お前なぁ…」

聡里がじとっと不快な目で僕を見た。

メモリーロスを解除したから、さっきのことを思い出して当然である。


「うわああっ、ごめんごめん…――」

「…ムカつく」

僕が咄嗟に身を防御すると、聡里は悔しいらしく僕を睨みつける。

予想外のリアクションに、驚きながらも安全とみなして頭を覆っていた手を退けた。


聡里は切ないような悔しいような、曖昧な表情を浮かべ、

「何で楽がキスすんだよ!!」

と言ったのだった。

53 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/09(土) 23:52:49 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
「何でって何が?」

不可思議な聡里の言葉に、僕は首を傾げた。

「うるさい、帰れ」

聡里は睨んだまま、冷たくそう言う。


言われたとおり、無言で部屋を出る。

言う言葉が見つからない。


昨日みたいに逃げるようにして部屋を出た。


家族はいないのか、一回は物静かだった。


本当、何でキスしたのかなぁ。

別にキスすることに不快は無かったし、僕は良いとしてもだ。

聡里を完璧に怒らせた。


どうしよう、現実逃避したい…―





「おい、ガキ。邪魔だよ」

誰かが怒鳴っている声が聞こえる。

また幻聴だろうか。


「聞いてんのかコラ」

更に大きな声で怒鳴られ、僕は目を開けた。

聡里の家…じゃない。



何だ、此処は。

54 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/10(日) 15:02:33 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
いわゆる田舎みたいなところで、僕の目の前には一台の牛滑車。

周りを見渡すと、一つの村のようで民家が立ち並んでいた。

だが民家に住んでいる家の者全員が出ていると言っても言い過ぎで無いほど、道の周りで四つん這いになり、頭をかがめている。


想像でしか感じたことがないが、解りやすく言うと江戸時代行われていた参勤交代のような光景。

だが牛をムチで叩いている人はいかにも西洋的な感じの人だ。


「おいお前、シカトしてんじゃねーぞ!」

僕は、その人に何か硬いものをぶつけられて、自分の状況に気付いた。


もしかして僕、凄い目立ってる…?

妙な緊張感がした。

狭い道の真ん中に立って、明らかに牛滑車が通るのを妨げている。

村の人たちからも緊張感が伝わってくるようだった。


(じ、人骨…)

僕にぶつけられた硬いものは、人の骨だった。


五秒ほど考える。

ここをどかなければどうなるか…。


殺される!


結論が出たときにはもう、牛を仕切っていた人に首襟を捕まえられていた。


「通路の妨げ。お前を処刑する」

55 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/10(日) 15:20:56 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
そう言われた時にはもう、頭に激痛が走っていた。

後ろから違う人に殴られたので、また人骨で殴られたのかどうかは解らない。


動けないけど、意識ははっきりとある。

僕は貨物のたくさん乗ったところに入れられ、どこだかわからないところに連れて行かれた。



「逃げ…ないと」

そう思うのに、体が動かない。

指先まで全て硬直しているようだった。


「誰か居るのか」

先程の人とはまた違う、別の人の声が聞こえた。

貨物車の中は少量差し込んでいる光しか見えない。


「通行の妨げで捕まったヤツか」

その人はふっとため息を漏らしながら言った。

声色を聴く限り、その人は年上と見えたので、僕は"ハイ"と答える。


と、途端に強い明かりが辺りを照らし、その人の顔がしっかりと見えた。

やはり僕より年上のようで、髪の毛は緑色で長く、三つ編みをしていた。

乏しいボロ布を纏ったような服装で、手には手錠のようなものをかけている。


「俺はお前みたいに訳もなく捕まったわけじゃないからな」

と、その人はニコりと笑う。


「訳も無くって?」

「俺、指名手配犯だし。ま、食料なくなったから魔族から盗っただけなんだが」


魔族?

やっぱりここは僕のいた世界と違うのか…。


現実逃避したいって言ったけど、本当に異世界に来てしまうなんて。

56 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/10(日) 15:22:33 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
すみません、誤字です。

一回は物静かだった。

一階は物静かだった。

です。すみません…

57 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/11(月) 17:31:22 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
魔族。

聞き捨てならない言葉だった。

そもそも魔族とは何なのか、深く考えたことはない。

魔族という言葉が存在しているのかも分からない。


「一般的に魔法を使う種族のことを魔族って言う。ま、俺も魔法は使えるがな」

まるで僕の心を把握したような口調でその人は語った。


どうして僕はいきなりこの世界に来たかは知らないが、この世界は魔族が最高権利を握っている。

魔族のものであれば、何であれ各位は自分より上。丁重に扱わなければならない。

ちなみに自分の身分は普通の町民で、魔族に対しての窃盗罪及び暴行罪でここに至っているわけだと言う。

最後に俺の名前はカルチャー・ライディだと付け足して、彼の淡々とした説明は終わった。


僕はというと、カルチャーの早口な説明に理解して付いていくのがやっとで、話の内容に一言も口を出さなかった。



「そういえば、俺も魔法を使えるって何で?」

やっと一息落ち着いて発生したのがその言葉。

魔法を使えるだけで、誰もが誰も魔族って訳ではないらしい。


「俺にも分からない。別に親兄弟は魔法を使えないし、俺の能力も大したものじゃない。ただな…―」

そこまで言って、カルチャーの目が怪しい色で光りだした。

この瞬間を待っていた、とでも言うような不適な目の色。


「"ディストラクション(破壊せよ)"」

カルチャーは、中指と人差し指を二つピチっと揃えて上に向け、そう唱えた。

と、貨物車はドォォンという凄まじい音を立てて破壊された。

中の貨物が車輪や材木と共にあたりに放り散らされ、牛を仕切っている人や滑車に乗っていた他の人も振り向かずには居れないでいた。

「そこらの魔族より俺の方が力あるんでね。逃げるぞ、お前」

58 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/11(月) 17:48:20 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
カルチャーは僕の手を握り、向こうの方を親指で示す。


そういえば、先程まで指先も硬直しきっていたのに動ける。


僕には貨物車が壊れ、牛たちが暴れだしたのに罪悪感は感じられず、とりあえずカルチャーに付いて行った。


大体僕もカルチャーも息が切れたところで膝をがくんといわし、止まった。


「そういえばお前、名前は?」

カルチャーがそう言うまで、僕にはハアハアという走った後に出る荒い息の音しか聞こえていなかった。


「竜田楽…。ちなみにここの世界の住民ではない」

そう言う事を別に驚きもしないで言う僕ってなんなのだろうと思いながら、やっとこの世界の住民に名を名乗ることが出来た。


「楽…?うー、まいいや」

カルチャーは僕が異世界の住民だって事は気にも留めず、名前を軽視して解釈が終わった。


暫く無言でその場をやり過ごしていると、僕の目前で突然強い光を放ち始めた。

光の源はどこにもない。

ただ目が眩む程強い光を帯びているだけだった。


「な、何これっ?」

光の中心が黒くなっていて、僕はそこに吸い込まれている感覚だった。

カルチャーは黙って手を振りながらまたな、と別れの言葉を告げている。

おそらくこのシチュエーションは、現実に帰るときなんだろうと思っているのだろう。

本当にこれで現実に帰るのか分からないが、僕はその光の中に吸い込まれてしまった。

59 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/13(水) 17:22:51 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
やっぱり僕は現実世界に戻っていた。

目を開けると、見慣れた光景があたりに広がっている。


学校、か。しかも自分の教室だ。

僕は気付くと扉の目の前で立ち尽くしていた。

クラスメイト全員が普通に制服を着て前を向いている。

いや、僕がいきなり現れてから先生を含め、皆僕の方を振り向いた。


あれ?

今日は日曜日ではないのだろうか。

先生も皆も、いつの間に着たんだろう、私服のままで。と僕をじろじろ眺める。


「制服はどうした?」

先生が皆の疑問を代表して問うた。

答えようにもない。

今まで非現実世界にいて、帰ってきたらここにいましたなんていえるはずもない。


結局その日は、他のクラスの友達から体操着やら教科書やらを借りてやり過ごした。


「楽!」

休み時間になると机と机を掻き分け、凄い剣幕で聡里が僕の元へ来た。


「どうしたんだよ、あれから一日中探したんだぞ。どこ行ってたんだ?」

「その前に聞くけど、今日曜日じゃないの?」

質問を阻止してごめん、と付けたした。


確かに向こうの世界に行ったのは日曜日。

そこで三十分と過ごしていない。

なのに帰ってくると学校では授業をやっている。



「何言ってんだ?今日は月曜だろ」

聡里は当たり前だろと言うように答えた。

60 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/14(木) 17:49:18 HOST:hvssf10.zaq.ne.jp
全ての世界、地球と同じように時が動いている訳ではないらしい。


向こう、僕の行った異世界は三十分しか経っていないはずなのに、現実では丸々一日経っていたのだ。



杏奈は疑問を持っているのか僕の方をじっと見つめている。

無理もないか。

突然私服で現れたのだから、杏奈だけでなくクラスメイト全員が驚くのも可笑しくない話である。


杏奈は自分の口を指差した。

(ん?)

示された杏奈の口を目を凝らしてみてみる。


"アトデ ヒガシカン オクジョウヘ"

口パクでそういっているのだが、耳元で囁かれているような気分だった。


「別に今でもいいんじゃねー?」

聡里にも聞こえたのか、僕と同じ疑問を代表して口に出した。



カルチャー、今頃何しているだろうか。

多分まだ向こうは僕と別れて三秒と経っていないだろうが、僕はまたカルチャーに会いたかった。


このまま向こうの世界を放っておいたら、大変なことになりかねない。


何となくそう思っていた最中、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。

61 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/14(木) 18:00:54 HOST:hvssf10.zaq.ne.jp
全ての世界、地球と同じように時が動いている訳ではないらしい。


向こう、僕の行った異世界は三十分しか経っていないはずなのに、現実では丸々一日経っていたのだ。



杏奈は疑問を持っているのか僕の方をじっと見つめている。

無理もないか。

突然私服で現れたのだから、杏奈だけでなくクラスメイト全員が驚くのも可笑しくない話である。


杏奈は自分の口を指差した。

(ん?)

示された杏奈の口を目を凝らしてみてみる。


"アトデ ヒガシカン オクジョウヘ"

口パクでそういっているのだが、耳元で囁かれているような気分だった。


「別に今でもいいんじゃねー?」

聡里にも聞こえたのか、僕と同じ疑問を代表して口に出した。



カルチャー、今頃何しているだろうか。

多分まだ向こうは僕と別れて三秒と経っていないだろうが、僕はまたカルチャーに会いたかった。


このまま向こうの世界を放っておいたら、大変なことになりかねない。


何となくそう思っていた最中、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。

62 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/14(木) 18:01:32 HOST:hvssf10.zaq.ne.jp
すみません、二回投稿してしまいました…

63 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/17(日) 08:39:48 HOST:hvssf02.zaq.ne.jp
そもそも僕が体験したいわゆるSFと言うものは科学的には証明されない、つまり現実で起こりえない物だ。

だけどこうしてちゃんと体験している訳だし、夢って言うのも考えにくい。

イダでそういう事が起こるのは日常茶飯事で、もちろん不思議にも思わなく、むしろ当たり前だと思っていた。

だけどここは地球だ。

百歩譲って僕や聡里の魔力が覚醒し使えたとしても、どうして地球に異世界があるのか。

ただ瞬間移動で、地球外の星にたどり着いたということも考えられる。

人間の形そのものではないが、地球外生物は地球人が思っているより少なくないのだ。

地球人より遥かに発展している生物も多数いる。

やっぱりそう考えると瞬間移動で先進星に行っただけのことなのかも。

時差があったのは、宇宙の移動時間の長さだ。



「遅かったね」

扉を開けるや否や、誘ってきた杏奈とは違う人物の声がした。

ゆっくりと扉を開けると聡里はもう来ていたようで、退屈そうに座り込んでいる。


全開すると傾きかけた太陽と一直線上に伊月が立っていた。

64 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/17(日) 09:07:32 HOST:hvssf02.zaq.ne.jp
「何を話そうかなぁ」

伊月は以前やったように人差し指を立てた。

すると黒かった髪の毛や目が変色していく。


「楽くんは行ったよね?向こうの世界」

ということは伊月も知っていたんだ。


「地球上にある異世界だと思った?それとも瞬間移動で地球とは違う星に行ったって思った?」

読心術を使ったかのように僕の心をそっくりそのまま伊月は言った。


「…後半」

「ううん、外れ。前半が正解。地球でも不可思議な事は多数あるでしょ。幽霊が見えるというのがその例」

「勿論本当に見えているかは分からない。僕も実質見たことないしね。…人間の脳は、30%しか使ってないといわれていることは知ってる?」

僕と聡里は頷いた。

「そ。後の70%の部分が幻覚を見せているということも考えられる」

「話は少し変わるけど、今地球上のの科学は魔法に相当するとも言われている。フル活用していない人間の脳で魔法に相当するんだったら、100%使ったら地球人の感覚で普通では考えられない能力が使えるはず。でもそれには体が着いて行けないので、人間は脳を使えなくしている、と」


なるほど。 僕はこういう話が好きで、今伊月が言った事は大半理解できた。

聡里もここまでは何とか理解できたようだ。


伊月は一息つき、尚も話し始めた。

65 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/17(日) 09:37:15 HOST:hvssf02.zaq.ne.jp
「魔法使いの染色体は96個だよね。本来染色体の数が違うと、外見が全く違う生物に変化するんだけど、僕らの先祖を作った錬金術師は、それを能力とそれについていける体に使う事ができた。だからいわゆる魔法というものが使える」

「例えば無い物を作り出す魔法。空気中の有機物を化合させ、物体を作っているだけ。だから出来ない物もあるけど、このくらいなら初級の魔法」

「楽くんの行った異世界は、空間のズレで出来た穴に吸い込まれて行った世界。空間にズレが出来るのは、大体地球外のものと重なっている当たりか、この辺一体なら聡里くんの家がそう」

ここまで止まることなく、伊月はぺらぺらと言い切った。

聡里を見ると、驚いた表情で自分の顔を指差す。

確かに僕が向こうの世界に行ったのって、聡里の家からだったなぁ…。


「あっちの人はおそらく人間。でも魔法を使える人もいる。僕らより高度な魔法じゃないけど、脳を振る活用しているって訳。そういう人たちがいるところは普通では見えない世界。なぜかというと、その国自体が姿も気配も消しているから」


そろそろ分からないと、聡里は頭を悩ませた。


「要するに地球上で起こり得ないといわれている事は地球人の感覚であって、そんなことは無いということ…か?」

伊月の長々とした説明を一挙にまとめた一言だった。


理解してくれて嬉しい、と伊月は笑顔を見せた。

66 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 09:07:46 HOST:hvssf02.zaq.ne.jp
「ま、説明はこれまでにして。行ってみる?」

長い文章を一気に吐いて疲れているのか、伊月は軽く伸びをした。


「行くなら最初からそうしとけばいいのに。さっきの論文いらなくねえか?」

「少し知識があった方がいいかなと思って」


伊月は太陽の一直線上に立ったままだ。

そして僕と聡里にそこへ立つように指示を出した。

太陽は地球外のものだから、空間のズレが出来ていて異世界に行き易くなる。


僕らは整列を行ったときのように綺麗に並んだ。


「ちょっと目瞑ってて。光が直接目に入ったら危険だから」

と伊月。


僕は言われたとおり目を瞑った。にも拘らず強い光が目の前を覆う。

しかも暑い。

四十度はあろうかと思われるほどの高温。


帰るときには感じたが、行く時は吸い込まれる感覚がない。

そういえば一回目の時もなかったな、とどうでもいい思考が過ぎった時、


目前は東韓の屋上ではなくなっていた。

67 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 09:22:09 HOST:hvssf02.zaq.ne.jp
「やっぱり太陽での空間移動は危険だな…」

ついた瞬間の伊月の第一声がこれだった。

少しは対応の影響を受けるため、光と高温が身体を覆うらしい。

それならそうしとけ、と聡里は伊月を貶す。


僕は聡里と伊月のやり取りには目を向けず、只茫然と目前を凝視していた。

別にここに来たのは初めてではないし、驚いている訳じゃない。

初めてのときもそれほど驚かなかったし…。


問題は六十メートルくらい前で行われている光景。

人が二人居て、右側の人が左側の人に襲われている光景。

僕は右側の人には見覚えがあった。


聡里と伊月も気付いたようで、僕と同じように呆けていた。

この場合って助けたほうがいいのかな。

と思った瞬間、伊月は何を感じたのか立って二人の方へ走り出した。


「カルチャー!!」


僕らも一緒に走り出す。

右側はカルチャーで、左側は軍人服を着た人だ。


「放しなさい」

伊月は軍人服姿の人に静かに言った。


「そういうわけにはいかねぇんで。コイツは指名手配犯でな」

最初は威厳を張ったものの、伊月の顔を見て軍人はいきなり畏まった。


「ロ、ロイ様ではございませんか!?失礼しましたっ」

慌てた様子でカルチャーを放しその場を去って行った。


「ロイ様って?どういうこと??」

68 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 09:23:49 HOST:hvssf02.zaq.ne.jp
誤字です。

東韓→東館 すみません。

69 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 13:27:59 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
「あ、いや。それよりちょっと」

手招きをし、カルチャーも含め三人がその場に座るように指示をする。


「この世界は魔族とそうでない人に分類されるんだ。僕やカルチャーは魔法が使えるけど魔族ではない。…ちなみにさっきの軍人は魔族だよ」

聡里の顔を見るとまた長く続く話を聞かなければならないのかとうんざりしているようだった。


「あー…。つまりすっごく手短に言うと、僕らはこの国を守る戦士だって事だよ」

聡里の心情を分かって、何の前置きもなく伊月は言った。

本当に手短である。


「へー。それは俺も知らなかったな」

とカルチャー。

僕や聡里同様、対して驚くこともなく平淡に言う。


「で。戦士って言われても具体的に何するか分からないし…」

「ん?単に魔族を滅亡させるだけ。魔族は君達が思っているほど多くないし」

「どうすんだ?殺すのか?」

「それでもいいけど、魔力を封印するんだ。普通の人間は魔力さえなくなれば間族を恐れることはないし…」


とまあ、こんな感じで説明は終了。

だがまだ答えていない質問がひとつある。


「何であの軍人ロイ様とか言ってたんだ?」

聡里がみんなを代表して聞いた。

伊月は質問に答えず、

「いずれ教えるから」

とだけ言った。

70 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 13:43:22 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
「伊月、こっちと向こうの時差って規則性がないの?」

僕のその質問で思い出したのか、時計を見て伊月は慌てた。

「今向こうは月曜日の二十三時…」

時計を見ると長針も読み取れないほど物凄く早く動いている。


「身体以外は向こうのものは向こうに合わせて動くからね」

「戻る方法は?」

「戻るのは魔力でも戻れる」

いつもお決まりのように魔法を使うときは人差し指を立てる伊月。

すると僕も見たことがある強い光の中に黒い穴が見えていた。

その中に少しでも指を入れると全て吸い込まれそうだ。

伊月も聡里ももう入って行って僕も、と思いかけた瞬間。

去り際、カルチャーの声が聞こえた。


振り返って見ても誰も居ない。


「カルチャー?」



吸い込まれる感覚がして、もう戻ってきていた。

聡里の家だ。

真っ暗の中で蛍光塗料で光っている時計を見ると、午後11時39分を差していた。


でも、やっぱり…。

戻らなければならない気がする。

71 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 14:54:59 HOST:07002190721449_mg.ezweb.ne.jp
また誤字…振る回転はフル回転です。

72 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 20:27:36 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
「行くなよ」

聡里もカルチャーの声が聞こえていたのだろう。

僕のしようとしている行動を把握し、抱きついて引き止める。


「正直戦士とか魔族とか嫌なんだ」

そんなこと言われたって僕も嫌だ。

非現実(ではないと伊月は言っていたが)な世界に足を踏み入れたくないし、救世主とか真っ平だ。

普通に高校生活っていうか人間としての人生を歩みたいとも今回になって考え出している。

だが、それとこれとは別。


昨日今日知り合った人だろと言われたら言い分け出来ないが、向こうの世界の感覚ですぐに戻らないと取り返しのつかないようなことになるような気がして…。


「行くな…――」

顔を蹲せ、より強く僕を抱きしめてきた。

僕以上に嫌がっている…ような。



「そういえば…伊月は?」

三人の中で一番早くに帰って来ているはずの伊月がいない。


大方、瞬間移動で先に帰ったのだろうと思うけど。

73 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 20:27:36 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
「行くなよ」

聡里もカルチャーの声が聞こえていたのだろう。

僕のしようとしている行動を把握し、抱きついて引き止める。


「正直戦士とか魔族とか嫌なんだ」

そんなこと言われたって僕も嫌だ。

非現実(ではないと伊月は言っていたが)な世界に足を踏み入れたくないし、救世主とか真っ平だ。

普通に高校生活っていうか人間としての人生を歩みたいとも今回になって考え出している。

だが、それとこれとは別。


昨日今日知り合った人だろと言われたら言い分け出来ないが、向こうの世界の感覚ですぐに戻らないと取り返しのつかないようなことになるような気がして…。


「行くな…――」

顔を蹲せ、より強く僕を抱きしめてきた。

僕以上に嫌がっている…ような。



「そういえば…伊月は?」

三人の中で一番早くに帰って来ているはずの伊月がいない。


大方、瞬間移動で先に帰ったのだろうと思うけど。

74 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 20:27:37 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
「行くなよ」

聡里もカルチャーの声が聞こえていたのだろう。

僕のしようとしている行動を把握し、抱きついて引き止める。


「正直戦士とか魔族とか嫌なんだ」

そんなこと言われたって僕も嫌だ。

非現実(ではないと伊月は言っていたが)な世界に足を踏み入れたくないし、救世主とか真っ平だ。

普通に高校生活っていうか人間としての人生を歩みたいとも今回になって考え出している。

だが、それとこれとは別。


昨日今日知り合った人だろと言われたら言い分け出来ないが、向こうの世界の感覚ですぐに戻らないと取り返しのつかないようなことになるような気がして…。


「行くな…――」

顔を蹲せ、より強く僕を抱きしめてきた。

僕以上に嫌がっている…ような。



「そういえば…伊月は?」

三人の中で一番早くに帰って来ているはずの伊月がいない。


大方、瞬間移動で先に帰ったのだろうと思うけど。

75 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/18(月) 20:28:43 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
…あれ??

何か連続投稿してすみません;

76 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/20(水) 17:33:24 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
有無を言わず、その日は聡里の家に泊まった。

向こうの世界で五分しか費やしていないので、僕も聡里も疲れるわけもなく、眠れなかった。


何もしないのも暇なので、テレビをつけ、適当にチャンネルを回してみる。

何気なく手を止めると、野球のハイライトシーンが流れていた。

おそらくニュースでやっているものだ。


『…ピーコックス、対パールズ戦で九回の裏アンディ・マイエット選手、逆転のツーランホームラン…』

ニュースキャスターだと思われる人がそう言っていた。

僕は、多分聡里も、同じ名詞が耳に残っていた。


アンディ・マイエット選手…。


アンディ。


帝藤杏奈の以前の名前だ。

伊月は、名前を聞くと思い出すといっていたので間違いはない。


テレビを消して聡里の方を見た。

やはり聡里も分かっているようで、頷く。


この瞬間、僕は完全に覚醒したように感じた。

77 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/20(水) 17:37:25 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
お詫び
パールズやピーコックスと言うのは、言うまでもなくプロ野球のチームにありません。
もちろん、アンディ・マイエットという人も居ません。

野球ファンの皆さまは気分を害するかもしれませんが、現実とかけ離れたものにするため、あえて架空のものを作りました。

ご理解とお詫びを心より申しあげます。

78 :W:09/20(水) 19:12:40 HOST:p2153-ipbfp201yamaguchi.yamaguchi.ocn.ne.jp
これってBLなん?

79 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/20(水) 22:06:35 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
w様

はい、BLですよ。
正確に言うとBL部分のあるSFでしょうか…;
これから進展していこうと思っていたので;

80 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/20(水) 22:21:19 HOST:hvssf03.zaq.ne.jp
「アンディ、ねぇ…」

その場に寝転がって聡里が呟く。


「今考えると伊月も杏奈も忘れてたのが不思議だよね」

「あぁ…」

曖昧な返事をしながら聡里はあくびをした。

僕もつられて同じように口を開ける。

周りの環境もあって、ようやく眠気が襲った。



「あのさ、楽。俺真剣な話、向こうに行きたくない」

床に布団を敷き、寝かけている僕に聡里は言った。

向こうとは多分異世界のことである。

「僕もだけど」

「いや、危険だからとかそういう意味じゃなくてその…」

「その?」

「あ、ごめん。何でもない」

そう。と返事をして、またうとうととしかけたとき、

「なあ楽」

聡里がまた僕の名を呼んだ。

「何?」

「お前、変な意味じゃなくて俺が好きか?」

「そりゃ友達だし…」

「そ。良かった」


そう言ってから朝まで、僕達が会話することは無かった。

81 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/23(土) 14:21:04 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
聡里が何故あんな事を言ったのか分からなかった。

ただ物寂しげに何かを伝えようとしていたのは分かる。


「おはよ」

そう言いながらニ、三度身体をゆすって聡里を起こす。

眠たい眼をこすって悟りは起きた。


「家にカバンとって来るね」

と立ち上がると、後でと聡里は手を振った。


聡里の家を出、

「"ムーブメント・モーメント(瞬間移動)"…」

昨日思ったことを試してみようと、意を集中して言ってみた。




何も起こらない。

やはり気のせいだったのだ。 僕はそう思って走って家まで通学カバンを取りにいこうとした。


手に違和感がある。

ふっと見てみると、僕はカバンの取っ手をしっかり握っていた。


「あ…」


全体を通して見、制服までも着用していることに気付くのにそう時間はかからなかった。

82 :白夜:09/24(日) 22:23:34 HOST:softbank220044238073.bbtec.net
秘かにずっと読んでました!!面白いですです!!あげ☆ミ

83 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/26(火) 19:18:11 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
白夜 様++

ぁげありがとうございます。
面白いだなんて凄ぃ嬉しいです☆+(yωy*)

84 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/26(火) 19:38:46 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
どうせそう時間もかからないし、聡里が用意するのを終わって家を出るまで待っていよう。

そう思って辻元と表札のついてある塀に凭れ掛かった。




誰かに呼ばれたような気がして、ふと左を向いた。


「竜田くん!」

見覚えある容姿が手を振って走ってくる。


「帝藤、姉…」

「杏奈でいいわよっ!」

杏奈は空中で七回転もしたくせに、はあはあと息を切らしながら言った。


「で、何?アンディ」

前世の頃の杏奈を思い出した、ということを伝えようとわざとその名を呼ぶ。


「だから、杏奈でいいってば。て言うか思い出してくれたのね、やっと」

「何のよう?伊月みたいに突然僕らは戦士だとかそういう系言わないでね」

今度は大魔神でも倒してくれとか言いそうで、僕は最初に忠告しておいた。


「…あー。戦士のことも知ってるんだ。それよりその伊月がいないんだよね…」

「え?」

「竜田くん知ってる?」


伊月と別れたのは昨日の深夜。

しかも何も言わず気付いた時にはもう居なかった、ていう別れ。


伊月の居場所で考えられるのは向こうの世界だと思う。

85 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/26(火) 20:36:50 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
「異世界にいると思う」

そう告げると、杏奈は軽く返事をして学校の方へ向かった。


暫くしてガチャとドアが開き、聡里が驚いて立っていた。


「カバン取りに行くの速くないか?」

暫くと言っても、制服に着替えるくらいの時間なのだから十分もかからない。


「あ、その…」

状況をどう説明していいのか分からず、とりあえず聡里と歩き出した。


聡里はカバンから惣菜パンを取り出して僕に突き出す。


「朝メシ食ってないだろ?」

「え、でも聡里の昼食なんでしょ?」

「いらねぇ。食え」


僕は頷き、パンを受け取った。

袋から取り出し、口に含む。



…とくん


一瞬だけ高鳴った心音に僕は驚いた。

聡里に優しくしてもらったのはこれが初めてではないのに、優しさがいつもに増して心にしみた。



聡里を見ると、無表情のまま前だけを見ていた。

86 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):09/27(水) 22:29:45 HOST:hvssf09.zaq.ne.jp
「あんた達何なワケ?」


教室のドアを開け、一番最初に目に入ったのが杏奈の顔。

で、一番最初に耳に入った言葉がその台詞だった。


「うわ!お前こそ入った途端その台詞はなんだよ」

開けて至近距離で仏頂面の女子を見て驚いたのか、聡里は一歩後ずさった。


「人の弟が居なくなったってーのに何二人で仲良く登校してんのって言ってるの」

「知るか。昨日までは一緒に居たんだよ」

「あの、だから異世界じゃないの…?」

二人ともが敵対しているようににらみ合っている中、僕が口を挟む。


「……、あたし異世界への行き方知らないんだけど」

と杏奈は呟いた。その後すぐに、

「そうだ。あんた達連れて行ってくれる?やっとあたしのことを思い出してくれたみたいだし」

と目を輝かせた。


「別に良…」

「絶対に嫌」


僕の了承の言葉を、聡里の拒絶の言葉で遮られた。

87 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/01(日) 12:14:43 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「はぁ!?何よ辻元くん。それでも戦士なの?」

杏奈は目の前にあった机をバン、と叩いた。


「それを言うなら伊月だって戦士じゃない?」

と僕。

僕の言葉に暫く沈黙が続いた。


「だ、だって心配じゃない。あたしは異世界行ったことないんだもん…。お願い!」

さっきまで強がっていた杏奈が行き成り涙目になっていた。

顔の前で手を合わして訴える。


聡里は尚も冷たく、

「…そんなに言うんなら千里眼でも使ってろよ」

と言い放った。


「あぁ!」

千里眼など思いつきもしなかったようで、杏奈は表情を変えて頷いた。


教室内と廊下に誰も居ないことを確認し、杏奈は目を閉じた。


「"クレア・ヴォーヤンク"…」

88 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/01(日) 15:53:30 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
十分と経った。

僕も含め、皆じっとして動こうとしない。


杏奈はピクリとも動かずにずっと目を閉じている。

で、それを心無く見つめる聡里と僕。


「…っ」

杏奈が目を閉じたまま眉間にしわを寄せた。


そして次の瞬間、カッと眼を見開いたかと思うと、

「み、見えない…」

と喘ぎ声を混じらせながら言った。


「見えないって?」

「伊月…ロイの姿が見えない」

杏奈は顔を青ざめていた。


千里眼で見えないってことは、やっぱり…。


「死、ってこと?」

言った最中思いついた。

この世界では7時間ほど経っているが、向こうはきっと物の5分だ。

あれほどの魔力を扱える者がそんな短期間で命を落とすようなことは無いだろう。


「あたし、やっぱ行くね。辻元くんは嫌がっているから竜田くん、行き方教えてくれない?」

杏奈にそう言われ、僕は頷いた。

89 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/04(水) 17:19:25 HOST:hvssf09.zaq.ne.jp
正直言うと、僕にも行き方なんてよく分かっていない。

ただ、昨日の場合は太陽と一直線上に並んでいた。

でもそのやり方じゃ、危険らしい。


「来て」

僕は杏奈の手を引っ張った。

成功するか分からないが、聡里の家にも空間があるはずだ。

そこから行ってみよう。


「待てよ!」

僕らは聡里の呼びかけに反応し立ち止まった。


「楽は行くな」

「…何でよ?」

「うっせーな!お前には言ってねえよ」

聡里は怒っていたようで、椅子を蹴りながら声を張り上げた。

一回目はそれほど嫌がっても無かったのに、何故今になってそんなに怒る必要があるのか、僕には分からない。


「聡里…、酷いよ。伊月が心配じゃないの?」

僕はそう言って聡里を睨む。

一瞬困ったような顔を見せ、聡里は俯いた。


「じゃ、行けよ。その代わり二度と戻ってくるな」

倒れた椅子を元に戻し、自分の席に座りなおして、読書をし始めた。





"二度と戻ってくるな"

と言う言葉に杏奈は怒っていたが、僕にはそんな物は感じず、むしろ言われた悲しさが込み上げてきた。

90 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/04(水) 17:46:04 HOST:hvssf09.zaq.ne.jp
「何であんな事言ったのかなぁ…」

急に冷たい態度を取られて、僕は涙ぐんだ声で呟いた。


「何か気に触るようなことしたかな…?」

そう考えると、今までしてきたこと全部悪いことのように思えてしまう。


大丈夫だよ、と杏奈が慰められている中、

「あの…」

と見知らぬ女子が僕たちに話しかけてきた。


「急にすみません。帝藤さん…、だよね?」

話しかけることによほど緊張しているのか、その子の顔は真っ赤だった。


ごくり

生唾を飲み込む音も聞こえるほど、あたりは一瞬シンと静まった。


「帝藤さんが好きです」

蚊の鳴くような声で確かにそういうと、緊張続きで疲れたのか、がくんと肩を落とした。


「……あたし、同姓と付き合う気ないよ…、て」

行き成りの告白で驚いただろうが、杏奈は目線を下に向けもっと驚いていた。


「俺これでも男ですけど」

確かに制服であるズボンをはいている。


それにしても何て女顔かつ女声なんだろう。

僕も女みたいといわれたことはあるが、まさか声色も女声とは。

と僕が見とれていると、杏奈は両手を顔の前であわせ、

「ごめん、ちょっと待って」

とその子に言っていた。


悲しそうに俯いたが、口元がにやけているように見えた。


『伊月くんならもうすぐ戻ってくるよ』

そう聞こえたのはすぐ後のことだった。

91 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/05(木) 19:27:10 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
「行こ」

杏奈は申し訳なさそうにその子に会釈し、僕に言った。


パシ

僕がその場を去ろうとすると、彼は杏奈ではなく僕の腕を掴んだ。


「君…辻元聡里くん?」

「…違うけど」

深刻な顔で見つめられ、僕はきょとんとした。

「嘘つくんじゃない」

彼は睨みつけると同時に手に力を込めた。


「…いっ」

あまりの痛さに体がピクっと動いて顔を顰める。


「やめろ、ミドラス!」


空間が光ると共に僕と彼の手が離れた。


目を開けると目の前には予言通り伊月が居て、右手にまるでお伽話の戦士が持つようなソードを持っていた。



「ミドラス…。彼は聡里くんじゃないよ」

ミドラスと呼ばれた彼は、チッと舌打ちし姿を消した。



僕を聡里と間違えて襲ったって事は、

聡里の命でも狙っているのだろうか。

92 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/06(金) 17:06:08 HOST:hvssf11.zaq.ne.jp
ミドラスが消えたすぐ後、伊月はソード空中でを手から離しため息をついた。


手から離れたソードは地面に着地する前に消えた。


ここまでされると、本当に自分が戦士なんだという自覚が持てる。

まさかこれほどまで有り触れた戦士だったとは思わなかったが。



「ミドラス……って?」

僕は不安になって聞いた。

最悪の場合、聡里はミドラスに殺されるのではと思ったからだ。


「ミドラスは、カルチャーと同じ罪人なんだ。ただ指名手配とかじゃなくて本当に囚人。ま、つまりなんでここに居るかって言うと、脱獄したってことだよね」


通りでミドラスの顔など見たことが無いと思った…。

どうして聡里のことを探していたのかと聞こうとすると、杏奈が先に口を開いた。


「じゃあ何であたしに告白なんてしてきたの?」

「…分からない。姉さんは"戦士"の中で唯一の女だから、とかかな?」


二人が話しているのを見ると、前世のロイとアンディに重なって見える。

幾ら生まれ変わったとは言え、今と前じゃもちろん別人だ。


それは僕らも同じだが。

93 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/07(土) 10:01:28 HOST:hvssf08.zaq.ne.jp
先程まで誰も居なかった廊下が、生徒達で溢れるようになった。

唯今7時。 つまり僕たちはここに6時半頃からいたことになる。


杏奈と伊月は尚も二人で話すのを止めなかったので、僕は1人教室に戻った。

教室の前にはカバンが1つ、風紀委員であろうと思われる生徒が鍵を取りに行ったような形跡が残っていた。

多分鍵がかかっていると思ったのだろう。

教室の鍵は職員室にあるから、僕は言いに行こうかと一瞬思ったけど、そのまま教室に入った。


窓際の三列目の席に聡里は本を持ったまま寝ていた。

通りで風紀委員が来ても気付かない訳だ。


寝顔は誰でも愛しく見える。


僕は起こしもせず、聡里の寝顔を見ていた。

どうせホームルームまでは時間があるし、起こす必要も無いと思ったからだ。



僕はいつも通りに教材をカバンから取り出し、机の中へと入れた。

5分ほど経ったが、風紀委員はまだ戻ってこない。


僕は聡里の前の席に座り、何の本を読んでいたのだろうと顔を覗き込ませた。

"詳記"

タイトルが確かにそう見え、文面を見てみると活字。

しかも一目で分かるほどページ数が多かった。


教室を出るときはさほど不可解に思わなかったが、何故聡里が読書なんてしているのだろう。

国語の教科書を音読する宿題なんて、嫌いだとか言ってホンの一度もやらなかったのに。

単なる気の迷いってヤツかな?

僕が自分の席に戻ろうと立ったとき、


「空間が正常に戻る」

寝言だろうか聡里がそう言った。

94 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/07(土) 11:18:14 HOST:hvssf08.zaq.ne.jp
よく間違えているのですが、通りって言うのは道理です。

95 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/08(日) 13:02:43 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
科学とは無縁だと思っていた聡里が行き成りマニアックな言葉を発したから驚いた。


「っんだよ、鍵開いてんじゃん」

ガラガラと音がして、鍵を取りに行った風紀委員が教室へ入ってきて愚痴っていた。


「竜田ぁ、教室居たのなら教えろよ!」

僕を見つけ、文句を言う。


「ごめん」

そう言って自分の席に戻った。


時間が経つにつれ、生徒の数が段々と増えてきた。

伊月と杏奈もいつの間にか戻ってきていた。


担任教諭が教室に入ってきて、みんなが席についても聡里は起きない。


「辻元、起きろ」

先生が幾ら叫んでも身体をゆすっても聡里は起きなかった。

僕を含め、クラス一同が聡里の方を向く。



「辻元くん」

「聡里」

「聡里くん」

これは単なる偶然で、僕と伊月と杏奈がほぼ同時に聡里の名を呼ぶと、先程のことがウソだったように聡里は目を覚ました。

96 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/09(月) 13:46:25 HOST:hvssf05.zaq.ne.jp
「俺、そんなこと言ってたの?」

休憩時間、聡里にあの変な寝言の意味を聞くと、やはりそんなことは覚えてないらしかった。

寝言を気付かないのはよくあることだが、聡里は眠ってしまったことも分からなかったらしい。


「…ごめんな、楽」

聡里が急に俯いて謝った。

何故?と僕が聞いてみると、

「二度と戻ってくるなとか言ってごめん」


そういえば何故聡里はそんなこと言ったのだろう。

少し疑問に思ったが、謝罪してくれたしそれほど深く考えなかった。



97 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/09(月) 13:55:53 HOST:hvssf05.zaq.ne.jp
「楽くん!」

後方から突然名前を呼ばれ、僕は振り返った。

「大変だよ」

伊月が扉の前に立ってはあはあと息を切らせながら言った。


杏奈も居て、二人ともいつも以上に真剣な顔つきだ。


「どうかした?」

僕は二人の所へ歩み寄りながら聞いた。


「待て、楽!」

聡里に腕を強く摑まれ、僕はそのまま後方に引き寄せられた。

「な、に…?」

後ろを見てみると、何処となく悲しげな表情でこちらも真剣。

何も分からないクラスメイトの皆はいっせいにざわめいた。


「お願いだよ聡里くんっ。話を聞いて!」

「嫌だ!」

「どうしてそんなに嫌がるんだよ!?」


伊月にそういわれ、気が緩んだのかどうか知らないけど、聡里の力が弱まっていた。

咄嗟に腕を振り放し、二人の元へ走って行く。


「楽、何で…」

愕然とした顔で聡里は僕を見ていた。


「だって、僕は戦士だから!」

大変の規模がどのくらいのものか想像はついていた。

下手をすれば、多分この世がなくなるくらい…だと思う。



「…分かった。楽がそう言うなら」

あれほど嫌がっていた聡里がやっと了承をしてくれた。

98 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/11(水) 13:39:09 HOST:hvssf05.zaq.ne.jp
聡里は決心したような顔つきでツカツカとこちらへ向かってくる。

ざわめいていた生徒の声が、全く聞こえなくなっていた。

よく見ると、皆止まっている。


僕はすぐに勘付いて時計を見た。

やはり止まっている。

分針でなく、秒針が止まっているのだ。


壊れている訳じゃない。

そうする理由は分からないが、伊月か杏奈が時間を止める魔法を使っているのだろう。


杏奈と伊月が黙って教室から出て行く。

それにつられて、僕らも後を付けて行った。

二人は一言も喋ることなく、校門まで出た。


周りの人はやはり静止していた。


「出来る?」

魔法を使うよと言わんばかりに伊月は人差し指を立てた。


「瞬間移動」

「…多分」

「じゃ、先行くから早く聡里くんの家に来てね」


そういって二人は消えた。


「行こうか」

半強制的に連れて来られた聡里を少しでも宥めるために、僕は笑って見せた。

すると、聡里が僕の腕を掴んで自分の方へと引き寄せた。

「…?」

驚いていると、聡里は黙って背中に手を回し、僕を力強く抱きしめた。



99 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/11(水) 13:39:23 HOST:hvssf05.zaq.ne.jp
違和感はない。

男性に抱きしめられて嫌だとは感じない。

前にもこういう光景があったし…。


ただ驚いた。

聡里が僕を抱きしめたことに驚いたのではない。


僕か聡里の心音が高鳴っていた。


「俺、楽が恋愛感情として好きだ」

顔は合わさず、耳元でそう呟く。

単純な語句でしかないのに、聡里の言ったことを理解するのに数秒掛かった。


「な、何で!? 僕が悪ふざけでキスした時とかすっごく怒ってたじゃんっ」

「お前が先にするからだろ」

聡里は腕の力を緩め、僕と視点をあわせてそのまま顔を近づけた。


「これで帳消しって事で良いか?」

聡里の唇が僕の口を塞いだ。

「…んっ」

吃驚して身体が強張る。


「ごめん」

聡里は顔を遠ざけて言った。

「どうせ向こうに行くだろ?何があるか分からないから早めに言っといただけ」

にっこりと笑った後、聡里は目を瞑った。

呪文を唱えると、先程の二人のようにその場から居なくなった。



多分…僕も…


僕は後を追うように瞬間移動魔法を使った。

100 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/23(月) 18:28:48 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
目を開くと、聡里の家の居間。

今度は魔法が上手くいったようだ。


「…遅い」

少し怒り気味で伊月が呟いた。


「とりあえず行くよ」

伊月は人差し指を上に立て、もう片方の手を前に突き出した。


相変わらず何も感じなく、ただ気付けばもう聡里の家の中ではなくなっていた。


着く場所は行く度に変わるようで、今度は暗い建物の中。


暗いので無意識に手で探っていると、冷たいものに当たった。

ぺたぺた手を付けてその物が何なのか確認する。

どうやら壁のようだ。 手触りからして石の壁だ。


途端にあたりが明るくなった。

光の源を探すと、杏奈の手中に火が灯っている。


以前に住んでいた王城の地下牢の構造に似ている。

三人は明かりがついたことを確認し、同じ方向に進んで行く。

僕もあとをつけて行った。


誰も何も口にせず、ただカツカツ四人の歩く足音だけ聞こえていた。

4,50mほど進んだ後、先頭に立っていた伊月が足を止めた。


牢屋…。 本当に囚人が入れられていそうな檻がそこにあった。

誰か中に居そうだが、暗くてよく見えない。


伊月は少し顔つきを変えて、もう少し前に進んだ。

杏奈も同じくらいの距離進み、二人はその場に座り込んだ。


「説明するから、こっち来て」


伊月はこっち、と地面を叩く。 

言われたとおり、僕と聡里はそこに座った。


101 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):10/23(月) 18:29:07 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
「空間が正常に戻ってきている」

伊月の第一声に僕と聡里は驚いた。

すかさず詳細を教えてくれと伊月に頼む。


「どういうこと?正常に戻って何が悪いの?」

「空間が正常に戻ったら、現実世界とこっちの世界の時差が全く無くなるってことになる。そうなると地球の自転は遅くなるか速くなる。どっちにしても人間の住む環境ではなくなってしまう」

「でもここの世界は地球上にあるものじゃないの?」

「うん、限りなく宇宙に近いけど。大気圏内だけど、地上より遥か離れている。空間にずれがあって尚宇宙に近い世界だから、時間が経つのに差があるんだ」

「それと僕ら戦士の関係は?」

「空間が元に戻るのは、多分魔族の長が復活したから…。でも誰が長なのか、何処に居るのかも解らない」

「長?」

「うん、まあ言えば魔王みたいな感じ。一応今は僕がその長の代役やってるんだけど、魔族はそれで信じてるみたい」


伊月は平然と語った。

そういえば以前、伊月のことを誰かが"ロイ様"って呼んでいたな…。


伊月は遠まわしに僕らに早く魔族を隠滅させるように言いたかったようだ。

僕は納得したが、色々疑問が残った。

魔族はともかく、戦士って何人ほど居るのだろう。

杏奈、伊月、聡里、僕、カルチャー…。

今解っているので5人、そう考えるときっと複数居るはずだ。


「戦士は8人。ちなみにミドラスも仲間」


なんか戦士の割には囚人が多いな。

と思っていると、突如まわりにビーーッという耳を劈くような音がした。


「始まった…」

伊月が呟いたと同時にさっきまで暗かった地下牢が一気に真昼のように明るくなった。

皆驚いて思わず目を瞑ると、警吏のような格好をした人物につれられた囚人のような人がこちらの方へ歩いてくる。

囚人なので顔は布で覆われて見えなかった。


伊月は親しげかどうかはともかく、警吏に話しかけた。


102 :白夜:10/31(火) 20:22:41 HOST:softbank220044238073.bbtec.net
聡里、可愛いです。なんか微笑ましいです。更新頑張ってくださいvあげです!

103 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):11/03(金) 15:53:32 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
「カルチャーか?」

伊月の問いかけに警吏は冷や汗を流していた。


「い、いいえ違います」

「嘘つくな」

「申し訳ありません、上官の命令でして」

穏やかないつもの伊月とは違うイメージで、冷淡にそういうと警吏は恐縮した。


「とりあえず、こっちにその囚人渡してくれる?」

警吏はどうしたらいいのか分からない様子で動かなかった。


伊月は囚人の手を掴み、走り出した。

僕らもとりあえず後を追う。


走ると前から流れてくる風の影響で囚人の顔を纏っていた布が舞ってどこかへ流れて行った。

伊月が言うより前に予想していたが、やはりカルチャーか…。


広い草原に出た。 さっきの建物はもう見えない。


「遅い、じゃないですか」

カルチャーが怒った様子で伊月をみた。

「ロイさん2分で戻ってくるって言ったじゃないですか」

「ごめん、時差が縮まって来てるみたいだから」

もう少し遅れたら、カルチャーは殺される所だったらしい。

まぁ事情はよく分からないが、こうなる予定だったということだ。


「カルチャーの死刑は免れたし、とりあえず先に仲間探し…」

突然僕と聡里を除き三人が殺気を放った。


「逃げて」

104 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):11/03(金) 15:54:49 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
白夜様

ぁげありがとうございます☆
なかなか更新しなくてすみません

可愛いなんて言って頂きありがとうございます!!

105 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):11/04(土) 15:59:10 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
言った時にはもう遅かった。


ザシュ

皮がちぎれるような音が響き渡った。


「痛ってぇぇ」

うめき声が聞こえて振り返ってみると聡里の右腕から血が流れていた。


「さ、聡里!腕…」

僕はオロオロとし、聡里の方に駆け寄った。


「いけるよ、大したケガじゃない。それよりアイツ…」

聡里は笑って自分の右方を差した。


示された方向を見ると、口から血を流して四つん這いになっている生物を発見した。


"狼"…

のような人間。

ルックスそのものは人間で、形は狼。


彼はギラリと睨みを効かし、狼が威嚇するような吠え方で呻った。


「何だよ狼」

聡里も彼に負けじと威嚇した。


お互いがにらみ合っていると、彼の方がキャウンと叫んでその場に倒れてしまった。


「え、何?」

「麻酔だよ」

ニコニコして伊月がいつの間にやら現れた。

学校で見た戦士の格好をしている。


伊月はソードを彼に突きつけて呟いた。


「ルリィ、か…」


106 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):11/23(木) 18:18:08 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
狼はすぐに目を覚まし伊月の剣に噛み付き、そのまま上体を起こす。

剣はグニャと曲がって彼が離すと元に戻った。


「ルリィ?人語は解してるんでしょ?」

傷んだ剣の箇所を撫でながら伊月は言った。


「ルリィって何?」

僕は聞いた。


"ルリィじゃない"


テレパシーのように、頭の中でそう聞こえた気がした。

何度もそう繰り返す。


「な、何…?」

頭が痛くなってきた。


狼はもと来た方向へ行き、聡里の腕も伊月の姿も通常に戻っていた。


「なんだよ今の」

聡里はぽかんとして狼の方をずっと見ていた。


「じゃ、行こうか。仲間探し」


先程までの過程はなかったかのように伊月はそういっていた。




107 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/08(金) 18:38:12 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
「まって伊月。今の何…?」

三歩ほど進んでから僕が呼び止めた。


「狼(ガイス)。本名はルリィ・ウォーチャー。この辺り一帯の権力者の子息だよ。それがどうかした?」

伊月はにこっと笑って言った。

権力者の子息が何故狼の格好をしているのかとかは気にならないようだ。


「特に気に留めるほどのことじゃないよ。生まれたときから野生動物に育てられただけ」

文面をよく理解するとさらりと凄いことを言っている。


言われたとおり、僕も聡里もそれほど気にはしなかった。

冒険にそんな知識は要らないと思ったからである。



108 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/08(金) 18:38:39 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
「楽」

聡里が静かに言った。三人に気付かれないよう静かに。


「さっき言ったこと…」

「今更何を言っても無駄だよ。僕も好きだったし」

僕はにっこり笑って答えた。テレパシーとはこのことか、聡里が何を言おうとしているのかは分かっていた。


「……え? 過去形?」

「あ、違う。えと…"好きだよ"…これでいい?」


まさか人生初めての告白が同性でしかも幼馴染の親友だとは思っていなかったので、いや自分が聡里への気持ちに気付いていたことが恥ずかしくて酷く赤面した。


「ほ、ホントに? 俺がどうなっても?」

言ってる意味がよく分からなかったが、聡里は真剣に言っていた。


僕は聡里の胸元を掴んでぐいと引き寄せた。

顔面と顔面の距離がわずか三センチほどになったとき、僕は聡里の唇にキスをした。



「これでも信じてくれない?」

僕が言うと、聡里は同じように赤面していた。



109 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/08(金) 18:39:03 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
暫く伊月の後に歩いて行くと、壊れた家屋が見つかった。

「殺気…」

伊月は呟いて身構えた。


「ロイ様ぁ! 何故魔族を裏切るのです? 私はあなた様を殺したくないぃぃっ」

一人の魔族が涙を流していた。

そう言っておきながら両手には武器を持っている。


そいつのそばには死体が転がっていた。

情景からしてこの家の住人のものであろう。


「下がって皆!」

伊月が叫んだと同時に魔族は武器を振りかざしてきた。

だがコントロールが悪すぎる。武器は隣の家に激突した。


「壊ずぞぉぉっ。ロイ様ぁぁ!」

不要のところにも濁音を含ませ、魔族が無闇に武器を振り回す。


「カルチャー、そっち頼む!」

「はいよっ」


僕らの丁度中心に倒れてきた柱に危険を察知し、伊月は咄嗟に言った。


伊月は僕の手を引いて右方向に飛びのいた。

僕は伊月の負担にならないよう、浮遊術で体重を減らした。


浮いている最中、カルチャーが杏奈を抱きかかえて左方向に飛びのくのが見えた。

その後を聡里が着いて行く。


そちら(特に聡里の無事)ばかり気を取られ、僕は銃を向けられたのに気付かなかった。


「こいづ殺ず…」

荒い息を吹きかけ、魔族は言った。


スチャ、と銃を構える音が聞こえ僕は目を瞑った。



110 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/08(金) 18:39:21 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
「楽くん、起きて? 大丈夫?」

何が起こったのか分からない。

ただ伊月の呼ぶ声が聞こえたので目を開けた。

どうやら精神的ショックで気絶していたようだ。


最初に眼中に飛び込んできたのは、返り血を浴びて真っ赤な伊月の顔だった。


「さっきの魔族は…?」

僕は恐る恐る辺りを見回した。

血まみれの銃と、そのすぐそばに魔族は倒れていた。

胴体と右手が引きちぎられている。


「…ひぁっ」

ショッキングな光景に僕は悲鳴を上げた。


「大丈夫? また気絶しないでね」

いつも通りの笑顔で伊月は言った。




111 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/08(金) 18:39:34 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
「伊月! その怪我…、大丈夫?」

伊月が後ろを向いた時、痛々しい傷跡が見えた。

流血している血が渇いていないから、今負った傷だろう。


「…もう痛くないけど、責任はとってくれる?」

伊月は表情を崩さず笑顔のままでそういった。

顔は優しげだが、その優しげな表情でそう言われると裏があるようで物凄く怖い。



「せ、責任って…」

「そんな怖いものじゃないよ。目瞑って?」

言われた通り目を瞑ると、何か柔かいものが唇にあたった。


ディープキスって訳じゃないけど、聡里以外の人とこういう行為はしたくない。

だが押さえつけられているのでもないのに逃れられなかった。


「ごめんね。僕男色だから」


やはり笑顔で言った。

112 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/09(土) 14:59:07 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
何も言わずに伊月が僕の手を引っ張り出した。

反対側から聡里達が歩いてくる。


「竜田くん。大丈夫だった?」

杏奈は自分の弟より僕を心配してくれた。

ま、あれほどの魔力を持っているのなら多少のことがあったって死ぬ訳はないだろう。


僕は杏奈の側面を通る時にこくんと頷き、迷わず聡里の元へ行った。



「じゃ、とりあえず家屋は直しておくか…」

そういってカルチャーは壊れた家屋に手を伸ばした。

改まって魔法を使われると、何か懐かしい気がして僕はそれを凝視していた。


壊れた二軒が元通りになった(元の形は知らないが)。

だが死人は家の前に放ったらかしだ。


カルチャーはそばに穴を掘り、死人を埋めた。


どうして復活させないのか聞いてみると、

「死んだ者を生き返らせちゃ駄目なんだよ」

と言った。



113 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/09(土) 14:59:24 HOST:hvssf14.zaq.ne.jp
作業が完全に終わり、また三人は歩き出した。

三人には行き先が分かっているのだろうか…?



僕も行こうとしたとき、一枚の紙が目の前を通った。

ひらひらとその紙は地面に落ちた。

何気なしに拾ってみると、そこには赤ん坊の写真と"look for baby(赤ん坊を探してください)"という文章が載っていた。


特徴のところを見ていくと、身長や肩にホクロがあるなどと書かれている。


赤ん坊の名前は"ルリィ・ウォーチャー"


あの狼だろうか?

114 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/11(月) 20:20:49 HOST:hvssf09.zaq.ne.jp
戦士の手がかりが見つからないと、戦士探しはきわめて難しい。

僕らに共通しているものもない。


テレポートで戦士の所へ飛んで行けばいいのに。


僕はもう、ルリィのことが気にならなくなっていた。

確かに見つけて探し主に渡せば、権力者だからきっと多量の謝礼金がもらえる。


でもそれどころではない。



「伊月ー…」

聡里に呼ばれた伊月は、無言で振り向いた。


「戦士の手がかりって何かねぇの?」

やっぱり気にかかっていたようで、僕の考えていることと同じ質問をした。


「あと、戦士の所にテレポートしたり出来ないの?」

と僕は付け足しておいた。


「戦士の手がかりって言うのは今のところ魔族以外の魔法を使える者って事ぐらいしかない。…あとテレポートするのは特定の場所にしか出来ないからね」

「じゃ魔族って具体的にどんなの?」

「長の信者だよ。長の代役は僕だったから、僕のこと"ロイ様"って呼ぶ人じゃないかな」


成程。

伊月の話を聞く限り、戦士探しは難航しそうだ。

115 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/11(月) 21:25:39 HOST:hvssf09.zaq.ne.jp
僕は横歩く聡里の顔を見た。

伊月と違ってしかめ面でこっちも表情を崩さない。


(聡里…)

4,5日前に聡里に自分のことが好きなんじゃないのかと言われた時は分からなかったけど、多分ずっと前から聡里が好きだ。


「何か顔についてる?」

前とは違う理由で見つめていた僕に、またベタな質問をしてきた。


「…いや。ただ、聡里の顔を見ておきたくて」

言っておいて自分にも言葉の意味がよく分からなかった。

顔なら毎日見られるのに。


聡里が遠くに行きそうで気をしっかり保てない。


僕はもっと近くによって、手を繋いでみた。

(聡里っ…)

行かないで、と手を強く握る。



何故だか分からないが、どうも聡里がどこかに行ってしまいそうな気がする。


また暫く荒地を歩いて行くと、繁華街のようなところに出た。


「とりあえずこの辺の宿泊先でも探そう」

伊月は笑って見つけたらテレパシーでも何でも連絡するように言った。


二手に分かれて、という手間は省けた。

すぐ傍に宿泊先があったからだ。 …ラブホテルだったけど。



それでも動き回るよりかはいいと、三人はホテル内に入って行った。


116 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/12(火) 20:53:26 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp

「じゃ、お休み」

僕は個々に部屋へ入って行く皆に言った。

空いているらしく、お金に余裕もあるので一人ずつ部屋が割り振られた。



部屋へと入り、一人では広すぎるダブルベッドに横たわった。

今日起こったことが走馬灯のように脳裏に過ぎって行く。


戦士になって魔族を滅する。

と、言われたが、そもそも魔族とは僕らの子孫ではないのだろうか…。

僕も人間に生まれ変わったけど魔法は使えるから魔族じゃあないのかな。

戦士と魔族の境界線ってなんだろう。






「楽…」

あれこれ考えていると、扉の向こうで聡里の声が聞こえた。

僕は飛び起き、扉を開けた。


「遊びに来た」

聡里は笑ってそういった。


え、ええ? 遊ぶって…。


変な想像をして赤面していたようだ。

「何もしないから安心しろよ」

と、聡里はやさしく言ってくれた。


聡里は傍にあった椅子に座り、僕を手招きした。


117 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/12(火) 20:53:38 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
前にもこういう場面があった。

ただ、今はもう自分の意志で聡里の所まで行ける。


聡里の隣に椅子を持って行き、そこに座った。


「…何?」

僕は恐る恐る呼んだ理由を聞いた。


「お前、本当に俺のこと好きなのか?」

「うん。本当に好きだよ」

「敵対しても?」

「うん」

「そ、か」


聡里が曖昧な返事をすると暫く沈黙が続いた。

僕は無言で立ち上がり、備え付けのシャワー室に入った。

別に変な意味ではなく、ただ何となくシャワーを浴びようと思ったのだ。


服を脱いで、蛇口をひねると初め冷水が出、徐々に温水に変わっていった。

シャワーから出てくる湯が雨のように滴る。



なんだろう、この罪悪感。

何かとんでもない罪を犯しているような気がしてならなかった。


「さと…っ」

愛しい人の名前を呼ぶ。

しかしその行為こそが罪のような気がして、僕は言葉を詰まらせた。


118 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/13(水) 17:48:34 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
"楽さん"

頭の中で誰かの呼ぶ声が聞こえた。


「だ、誰!?」

"良かった。シンクロしてたのでテレパシーが通じたみたいですね…"

「誰なの?」

"俺のことは…。それよりこの間、飛んだご無礼をすみません"


この間のことってなんなのだろう。

声の主は尚も続けた。


"ところで今、水浴びをしてらっしゃいますね?じゃあテレポートも出来るでしょう"


声は途切れた。

次の瞬間、


「うわああ!!」

目前に半透明の男性が現れた。


"やっぱ完全には無理かぁ…。…心だけだ"

彼は喋っているのに口を動かしていない。


「ル…っ」

"あ、言わないで。俺のことはガイスでお願いします"


どこかで見たことがあると思ったらこの前の狼だ。

なぜか本名で呼ばれるのを躊躇っていた。


"何故か無性に水浴びがしたくなったでしょう。俺はマインドコントロールとテレパシーくらいしか上手く使えないんですよね"

この間の野性の狼のような表情は見られず、伊月同様穏やかだった。


「喋れないの?」

"ええ、狼の言葉しかね"

「じゃあ何で人間の言葉を理解しているの?」

"そりゃ本能でしょう"


僕は何故か一番肝心なことを聞かないでいる。

"何故ガイスはここに、僕に会いに来たのか"を。

そんな僕の心情を悟っているのか、ルリィ基ガイスは言った。


"聡里さんには構わないほうがいい。俺は…"


シャワーの水が止まった。

と同時にガイスの言葉も止まった。


シャワーの水が止まったことについては分からないが、水を浴びることによってガイスと話が出来ていたことは分かる。



…聡里に構うなってどういうことだろうか。

119 :愛浬:12/13(水) 20:12:21 HOST:p202163184226.tst.ne.jp
あげ

120 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/14(木) 15:10:23 HOST:hvssf01.zaq.ne.jp
愛浬 様+
上げぁりがとうございマス★

121 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/16(土) 15:37:59 HOST:hvssf11.zaq.ne.jp
風呂から上がると聡里は寝ていた。


そんなに長く入っていたかなぁ…。

寝息を立てている彼の隣に座った。


以前のように聡里の髪の毛に指先を絡ませた。

やはり無音の室内ではクシャ、と音がする。


身体に半分しか掛かっていない掛け布団を製した。

そして僕も布団の中に入る。


ダブルベッドといえど、結構距離は縮まっていた。


無邪気な寝顔に心音が高鳴る。

(こういうシチュエーションって絶対心臓爆発しそうだよなぁ…)


そんな僕の心と反対にすやすや寝ている彼を見ていると何だか悔しかった。


聡里のいるほうとは逆を向いて寝ることにした。


122 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/16(土) 15:38:08 HOST:hvssf11.zaq.ne.jp
目が覚めたときには正午すぎだった。

おかしい。昨日寝たのが大体9時ごろだとして、14時間も寝たのか?


まだまぶたは重い。 凄く眠い。

だが時計を見ると12時…。


聡里はまだぐっすり寝ていた。


「大変だぁっ」

「どうしたの、伊月」

初めて見る慌てた伊月の表情に僕も驚いた。

はあ、はあと息を切らせて何を言っているか分からない。


「こっちの進む時刻が昨日の夜で物凄く早くなったらしいの」

「え…」

「今は本来の時間計算で行くと、夜中の1時なんだって」

伊月に代わって杏奈がそういった。道理でまだ眠いはずである。

だが時刻は昼の12時。 チェックアウトの時間はとっくに過ぎている。


「このままいくとお前等の世界危ねぇぞ。今はロイさんが時間止まらしてるのか知らねぇけど」

まだ寝巻き姿のカルチャーが言った。

僕同様、皆今まで寝ていたようだ。


聡里もこの騒ぎに目を覚ました。


「とりあえず今は正常に動いてるみたいだけど…」


「"ミドラス・シード"の消息を追うか。それが先決だろ」

突然カルチャーが言い出した。

「でも、特定の場所でなければ瞬間移動できないんじゃないの?」

と僕。


「まぁな。人の像が頭に浮かんでたらそいつの所にはテレポートできるんだが、アイツは魔法ガードしてた。でも今は行けるはずだぞ」

「じゃあ早く行こうよ!」

「切り替え早ぇな。んなら俺と一緒に行くか、楽」

と、カルチャーは笑顔でてを差し伸べてきた。

僕が手を取ろうとした瞬間、その手をパチッと払った者がいた。


「…俺が行く」


123 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/18(月) 22:01:53 HOST:hvssf09.zaq.ne.jp
言った主は聡里だ。

まぁこの中で一人称が"俺"なのは聡里とカルチャーくらいだし。


「聡里が? 僕行くよ?」

「いや、駄目だ」

「一緒には?」

「駄目」


きつくどこか切なげに彼が言う。

どうしてもならば理由が知りたいが、僕は言われるままにした。

僕が頷いたと同時に二人はテレポートの体勢に入っていた。


「さと…っ」

名を呼ぶ最中に聡里とカルチャーは消えていた。


二人がミドラスのところへ行ったと見た後、僕は肩を落とした。


「どーして僕が行っちゃ駄目なのかなぁ」


「はいコレ」

杏奈は鏡を僕に渡した。

「何これ…」

「鏡よ。見たら解るじゃない」

「そうじゃなくて…」

「千里鏡ってやつ? 能力を鏡に映せば良いの」


僕は言われたとおり、鏡に千里眼の能力を移してみようと試みた。

だが、千里眼って言っても具体的にどうすれば良いのか解らない。

ただ目を凝らして手渡された鏡を見ていた。

124 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/18(月) 22:02:08 HOST:hvssf09.zaq.ne.jp
五分とたった。

勿論鏡には何も映し出されてない。

それでも伊月も杏奈も黙って見ているだけだ。





「このまま行ったらおれたちどーなるんだろうな」

「どうなるってなにが?」

「わかんないけど多分星になる」

「なんでほしなの?」

「…死んだらみんな星になるんだよ」


幼い頃のどうでも良い記憶がフラッシュバックしてきた。

幼い子供は文末を疑問系にしたがる。

それは僕で、答える側はいつも彼だった。



「痛っ…」

能力の使いすぎか意識を集中しすぎか、頭痛がしてきた。




「じゃあさとりもぼくも死なない!」

「ばーか。人間はいつか消えるの。未来は無くなるんだよ」

「えー…」



痛い、頭が割れそうだ。


千里眼如きでこれほど能力を使うなんて、僕には戦士や魔族という言葉が向いてないのだろう。

聡里の方がよっぽど…。



やっと鏡に像が浮かび上がった。

ここからは能力を使うことなく楽にしていられる。

125 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/19(火) 20:54:54 HOST:hvssf09.zaq.ne.jp
聡里とカルチャーの像が浮かんできた。

僕のイメージしていた通りの牢獄に二人はいる。

隣にはいかにも少女的な少年がいた。


「お前がミドラスか」

ちゃんと声も聞こえる。ちなみに今のは聡里だろう。

「へー。辻元聡里…か。会いたいと思っていたけどまさかそっちから来てくれるとはね」

そういえば、初めてミドラスに会ったときは聡里を探していた。

二人の会話からして初対面。

しかも聡里はミドラスの存在を知らなかったはずだ。

ミドラスは何故、聡里のことを知っていて探していたのだろう。


「ロイから聞いたけど、俺ら戦士全員集めたら魔族を封印できるんだろ?」

「そんなこと知らねぇ」

「でもごめんね? 俺明日には処刑されるだろうから」


脱獄したからねー

とミドラスは文末に付け足した。


「そういえば良いの? 牢獄の中魔法使えないよ?」


ま、待って。

ミドラスのいる牢獄の中が魔法使えないってことは、聡里とカルチャーはテレポートでもう戻って来れないってことじゃないのか?


126 :!!!:12/25(月) 23:57:39 HOST:softbank220022237035.bbtec.net
すごいおもしろいですd(≧∀≦*)
これからも頑張ってください。
エロくなくていいんで2人がラブラブなシーンを増やして
ほしいです(人´∀`*).☆.。.:*・゜

127 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/26(火) 16:33:28 HOST:hvssf12.zaq.ne.jp
!!! 様

コメントありがとうございます。
面白いって言っていただけて光栄です♪
ェロなくて申し訳ありません;;
性的描写が苦手でo(/Дヽ))o
ラブシーンゎこれから増やして行きます★


128 :白夜:12/27(水) 13:48:16 HOST:softbank220044238073.bbtec.net
聡里とカルチャーピンチだよ!うはー!どうなるんでしょう・・・!(無駄にテンション高くてすいません;
あげます+.*

129 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/31(日) 14:05:24 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
白夜 様

ありがとうございます!!(^∇^)
名前出して感想いただけるなんて嬉しいです♪
今ネタ考え中なのでもうしばらくお待ちください。
勝手ですみません;;
必ず更新しますので!!

130 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/31(日) 15:02:08 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
(楽…)

ん…

あれ、あれ〜??

能力の使いすぎなのか、昨日あまり寝ていないからなのか、いつの間にか寝入っていたようである。

(楽、聞こえてんだろ…)

誰かが脳中へ呼びかけている。

声質からして聡里なんだけど、向こうは魔力が使えないはずだからそんなことはない。


(楽!聞いてんのか)

「あ、はい…」

(伊月に頼んでこの中壊してもらえ。そっちからなら出来るだろ)

「やっぱり聡里か。何でテレパシー出来てるの?後僕が千里眼使ったこともどうして解ったの?」

(……よく考えればそうだな。まあ細かいこと気にすんな。とりあえず脱出が先決だ)

「…解ったよ」


テレパシーが途切れ、僕は伊月のところへ駆け寄った。

「そんなことしたら中にいる三人にも怪我を負わせてしまうよ」

頼むや否や、そう言って断られてしまった。


「じゃ、どうしたら…」

「死刑が始まる直前に逃げ出せば良いよ。ミドラスはそれで逃げ切ったみたいだからね」

言った途端、伊月はハッと何かを思い出したように立ち上がった。


「もしかしたら…。聡里くん、聞こえてたらその牢獄内に結界張ってくれる?」

(あ、おう。張ったぞ)

「よし、これなら…"ディストラクション"」

爆発音は遠く離れたここまで聞こえなかったが、牢獄は破壊されたようだ。

「早く逃げて、監視員が来ない間に!!」



131 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):12/31(日) 15:02:17 HOST:hvssf04.zaq.ne.jp
嫌な予感がした。

聡里達はたぶん、テレポートできる環境の所まで走って逃げているだろうと思う。

何とも言えぬ嫌な予感がして、僕は咄嗟に聡里のところまでテレポートしていた。


だが、上手くいかないようでやっと三人が見える程度のところに僕は立っていた。

必死に彼の元へ走っていると、信じられない光景が目前に浮かんだ。


「お前は残って俺の変わりに死刑囚になれ」

と、ミドラス聡里の胸元を思い切り突き飛ばした。

予知していなかった聡里は当然よけきれずにその場に倒れた。


「おまっ…。何してんだよミドラス!!」

カルチャーが立ち止まって聡里を助けようとする。

「いってぇっ」

と、カルチャーが叫び声を上げた。

ミドラスがカルチャーの肩を握っている。

僕の腕を掴んだ時の力だ、きっと。

しゅん  と二人はどこかへ消えてしまった。

多分、伊月の所だろう。


ようやく聡里は立ち上がろうとするが、もう遅いようで警吏が追いかけてきた。

「さとりーーーっ」

渾身の力で叫んだ。

はぁはぁと息を切らせて目前を見ると、聡里の顔があった。

魔法が上手くいったようである。


「聡里…」

聡里の胸に蹲って呟いた。


「ごめん、ごめん…楽」

彼が優しく抱擁する。

「聡里のせいじゃないよ…。ミドラスは何であんな事…」

「いいんだよ。気にすんな」


気にすんな、て言われても気になる。

ミドラスも仲間のはずなのに。

嫌悪感は抱かなかったが、疑問ばかりが残る。


ガサと音がして草むらが動いた。

聡里はいち早く危険を察知して戦闘態勢に入っている。


"そんな警戒しないで下さい。俺です"

声の主は僕らの前に現れた。


「お、おかみ…!?」


132 :白夜:12/31(日) 21:00:45 HOST:softbank220044238073.bbtec.net
お帰りです、ゅぅきさん!
わわわ、全然展開が読めませんよ!惑わし作戦ですね(ぇ
ゆっくりでもいいんで頑張ってくださいwあげです

133 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/04(木) 17:19:55 HOST:hvssf13.zaq.ne.jp
白夜様
ありがとうございます☆
はい、惑わしです(乗った/ワラ
…受験生(一応)なので更新直々遅れて本当すみません;;
がんばりマス♪

134 :ゆうき (60sEkmD/Hs):01/06(土) 10:38:59 HOST:zaqdadc06f7.zaq.ne.jp
「聡里に用?」

”ああ。こっち来て下さい”

ガイスは聡里の腕を引っ張ってできるだけ僕から放そうとする。

慌てて着いていこうとすると、

”楽さんはだめです”

と止められた。



何分か経っている。

聡里とガイスが話をやめようという気配はない。

会話しているのは解るが、言っていることは解らない。

読心術で探ろうとするのもなんだか怖かった。


(なに話してるのかなぁ。ガイスは昨日僕に聡里とは関わるなって言ってたし…)

同じようなことをもっと具体的に言われてて、

もう話しかけるな、とか言われたらどうしようか。

とかいやな思いが募る。



やっと戻ってきた聡里の表情は僕の予想していたとおり曇っていた。

「さと…」

「楽。ガイスはどうやら戦士らしい」

「え?」

「って自白してきた。よかったな、探す手間が省けて」

とまあ曇っていた表情が突然明るくなった。

聡里の背後にいたガイスも笑顔だ。

でも二人とも何か無理している…ように見える。

135 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:11:06 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「やあお帰り。警備員に捕まったりしなかったんだ」

帰ってくるなりミドラスがニコニコ笑いながら言った。


「お前どういうつもりだよ?」

「もう解ってるんじゃないの?ガイスに聞いたんだろ」

ミドラスが言った途端、聡里は黙り込んでしまった。



何だ、今の。

何か今、妙なものが見えた。

七つの正三角形と、一つの逆三角形。



「どちらにしても後一人だね。あと一人見つかれば自動的に魔族は滅亡するっぽい」

「え、そうなの?」

「うん。今までよりこの世界全体の魔力は圧倒的に少なくなって来てる。つまり僕らが集結すると魔族の力が消えるようになっていたんだ」


良かった、これで元の世界に帰れる。

あと一人さえ見つかれば…。

僕は嬉しくて仕方がないのに、聡里の顔は深刻だった。

136 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:11:18 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「おい聡里。今の聞いたか?」

ミドラスが聡里の耳元でそう囁いている。

多分、僕にも聞こえるようにわざとそうしている。


「俺やガイスは"接触"したから解っているけど、"アイツ"には教えなくて良いのかよ」

「…そんなことしたらアイツは…」

何の話だろう。 僕には全くわからない。

"解ってくださいますよ。俺らだって聡里さんに何もしてないじゃないですか"

「いい。どうせ後一人なんだから」

「それじゃ、俺が言うぞ」

「やめろ!絶対に言うな!!」

「…解ったよ」


どうしよう…。 "アイツ"って僕のことかな?

何の話をしているのか気になる。

読心術、使おうか。気が引けるけど。


「…楽」

やばっ、ばれた。

勝手に人の心読むなとか言って怒られないかな…

まだ読んでないけど。


「ちょっと、来て」

聡里がそういって手招きした。

どうやら怒ってはいないようである。



137 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:12:02 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「どうしたの?部屋の中でもいいじゃん」

わざわざ外に呼び出して、聡里なにする気だろう。


「前にも何度も聞いたけどお前、本当に俺が好きか?」

「うん」

「恋愛の類だぞ?」

「…どうしてそんなこと聞くの?」

僕が聞くと、聡里はこの上ない切なげな顔をした。

その顔がやけに愛おしく、僕はもっと聡里に近寄った。


「ごめん。今まで愛してやれなくてごめんな」

「…何言ってるの?じゃあこれからめいっぱい好きになってくれればいいじゃん」

まるでこの世の終わりのように言う聡里に、僕は笑って言った。


「楽、好きだ」


なっ…

何で? 身体が動かない。

聡里がやってるの?


聡里はそのままだん、と音を立てて僕を押し倒した。


「い、痛っ」

頭を打ち付けて怯んでるうちに、聡里は思い切り僕を地面に押し付けた。



怖い

なんか、聡里じゃないみたいで怖い。


「やめっ…聡里、どうしたの?」


『お前らが一人いなくなると俺は覚醒できる。空間が正常に戻ると俺は永遠に魔力を失わない』

行き成り聡里の声が二重音声のようになって言い出した。


「な、に…?」


『いいだろう?お前も。自分の愛した奴に殺されるのは本望だろう?』

何言ってるの?

まさか、マインドコントロール…?



『残念だな。俺はちゃんと"聡里"本人だ。だからお前を愛しているし、殺すのも気が引ける』

「どういう意味だよ?」

『覚醒だよ、楽。本来の意思を取り戻しただけだ。お前等の言う、"魔王"としてのな』


え…

聡里が魔族…。


『お前の敵だよ』

僕の敵…。


138 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:12:18 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
やだ、やだ!! 聡里を返して!


「返してっ」



突然魔族が怯んだ。


"だから早く言ってくださいって言ったのに"

脳内に声が聞こえ、力が緩んだ。 僕の力でも抜け出せる。


「自分のコイビト殺そうとしてどうすんだよ」

「ミドラス、ガイス…」

どうやら二人が助けてくれたようだ。


"楽さん。残念ながら聡里さんの言うとおりです。何故俺が聡里さんに襲い掛かったかわかりました?"

ガイスが哀しいものを見るかのような目で聞いた。


ということは、

妙な違和感も、ミドラスが聡里を襲おうとしたのも、聡里がこの世界に来るのを躊躇っていたことも、

聡里自身が"魔王"だったのなら全てつじつまが合う。


「どっちにしろ聡里はもう終わりだ。俺らに殺されるか、あと一人が揃って消えるか」


やめて。

やだよ、聡里が殺されるか消えるかなんて。


「どうする?」

と、ミドラスは何もない空気を握った。


「うああっ」

突然聡里は苦しみだした。 あの力を脳に直接伝えているんだろう。

二重音声になってない。僕の知っている聡里だ。


「やめて、ミドラスっ」

と僕が叫ぶと、ミドラスの手は開いたまま動かなくなった。


「楽…っ、解ってんのか?こいつは魔族だぞ!?」

「解ってない!解らない!!だって…」

「どうせロイは最後の一人とも顔見知りだろう。今頃通信してるかもしれない。そいつが現れたら聡里はどっちにしろ死ぬんだよ」

「……」

お願い、覚醒なんてしないで聡里。

戦士も現れてほしくない。

もう元の世界に帰れなくていいから、覚醒しないで…。



139 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:12:44 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
僕は無我夢中で彼のところへ走って行った。

ガイスもミドラスもとめるが、そんなことどうでもいい。


"楽さん、どいてください。俺とミドラスで聡里さんの動きを止めてる間は大丈夫ですから"

「ロイに言って来い。魔力解いたら、こいつは覚醒する」

すなわちそれは、僕らの中の誰かを殺すということだろうか…。

僕はとにかく何でも対処出来そうな伊月に伝えようとした。


「たった今知った。おかしいと思ったんだ、戦士は7人のはずなのに」

伝える前に伊月がそういった。

今までずっと、伊月にもマインドコントロールが掛かっていたようである。

「じゃあ最後の一人は?」

「…いない、死んだ」

「死んだの?」

「あの時、家屋にいたのがそうだよ…。もっと早く気付くべきだったんだ。無意識だけど本望的に聡里くんはあの魔族に殺しをさせたんだよ」

「…本当に聡里は魔族なの?」

「うん。それだけは避けられない」


聡里は無意識とはいえ、人を殺して僕や伊月まで殺そうとしていた。

確かに僕らを襲ってきたあの魔族は操られているみたいだった。


どうしよう、戦士が一人居なくなったら覚醒するって言ってた。

つまりガイスとミドラスが魔力を解けば本当に覚醒してしまう。




140 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:13:07 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「さと…」

「…ミドラス、狼、魔力を解け。そしてすぐ俺を殺せ。このままじゃお前らに無駄な体力消費させることになるから」

聡里がたまりかねたように呟いた。


「ダメだよ!」

「初めてこの世界に来た時から自分は魔族だって分かってた。なのに何も対処しなくて、人を殺した。仲間に殺されるのも当然の報いだ」

「聡里…」

「ごめんな楽。愛してやれなくて」


彼は泣いていた。 彼の涙を見るのは記憶の中じゃ初めてだ。


「格好つけなくても俺は最初からお前を殺すつもりだよ」

ミドラスは笑いながら言っている。

みんなは泣きもせず笑いもせず、ただじっと見ているだけだった。


ふっと、周りの重力が重くなった気がした。

魔力が解けたのが、身体で解るようになっていたのだ。


「誰もこんな役やりたくないだろうから俺がやる」

ミドラスが手を空気にかざして、刃物を取り出した。


「楽、恋人が死ぬとこ見たいか?どっか行け」


ミドラスが言ったのも聞かず、僕はその場から動けなかった。

聡里が生きておく訳にもいかない。覚醒して完全に魔族の長になったら、絶対この世は滅ぶ。

でも死んでほしくない。


"みんな星になる"って聡里が魔族として覚醒した時の予言だったのかよ…。

じゃあ、大外れじゃん…。



141 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:13:27 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
"愛してる、好きだ"


もう彼自身が消えた後だったけど、確かにそう聞こえた。


「僕もだよ」


142 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:13:46 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
ピピピピピッピピピピピッ


「ん…」


あれ?いつの間に自分の部屋にいるんだ?


夢だったのかな。 にしてはリアルな。


ふと時計を見た。8時。

「ち、遅刻だ…」

解っていても慌てもせずにゆっくり身支度を始めた。


あのままの日程だと今日は期末テストだ。

と思うと、行き成り急がなければという思考が過ぎった。


いつも通る通学ルートに何だか違和感を感じた。

あるものがない。

"辻元"って表札の家。


やっぱり夢じゃない。


「竜田くん、おはよっ」

肩を叩かれ、振り返ると杏奈がいた。


「杏奈…。聡里どうなったのかな」

「聡里?誰のこと?」

「あ、いや」


そっか。やっぱりこういうのってみんなの記憶は消されるんだ。




143 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:14:02 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
「テストは延期だ」

数学の答案用紙が完成していないとかで、テストは延期になった。

教室中から歓喜の声が上がる。

僕も素直に喜んだ。 こんな状況でテストなんてしたくないし。


「替わりに今日は転校生が来ている」

担任は"彼"を手招きで呼んだ。




…嘘



「辻元聡里です」

彼は伊月や杏奈が転校してきたときのように丁寧に挨拶した。


144 :ゅぅき (qNWBKsIEFA):01/08(月) 12:19:27 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
最後グダグダですー。

まあ一応完です。すみませんわけ解りません自分でも。
次こそは必ずもっと上手く書けるように努力します。

読んでくださった皆様ありがとうございました。
終わることが出来てよかったー。

145 :白夜:01/08(月) 14:08:26 HOST:softbank220044238073.bbtec.net
ゅぅきさんお疲れ様ですっ。ハッピーエンドでよかったですよー!
またあの二人がラブラブしててくれたらいいですw

受験、大変ですよね。私も受験生ですよ;頑張ってください!
感動を有難う御座いました!!

146 :ゅぅき:01/08(月) 15:42:50 HOST:hvssf06.zaq.ne.jp
白夜様☆

ありがとうございます((照//
ホント、ハッピーで良かった。。。
自分的バッド方面なんで((汗;;
感動だなんて、そんな文才ないですよ…;;
でもありがとうございます♪
あ、新しく小説作ってみたんで、また読んでください!!
白夜さんのも読んでマス☆(知るか

同板で"lovefeelng"て奴です。


受験互いに頑張りましょう♪(誰



ピコ森
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