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たまには小説も読んでみろよ
- 1 :さすらいのくま:03/10(土) 22:13:58 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
お前のこの一言が、きっかけだったんだ
「たまには小説も読んでみろよ」
それは何気ない、ただの平日で、ただの放課後で
場所はなんとなく寄り道した、結構大きな本屋だった
>>2
- 2 :さすらいのくま:03/10(土) 22:19:38 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
- 初めまして、さすらいのくまです
初めの文でお分かりの方もいらっしゃるとは思いますが、
この話はBLです
所謂、ぼーいずらぶ小説です
くまは今、40度近くの熱があるので、(なら書くな
誤字、脱字などもご愛嬌ってことでよろしくお願いしま……殴
まあ、とにかく! 頑張りますので、くまをよろしくお願いいたしまする 何
- 3 :さすらいのくま:03/10(土) 22:27:37 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
「お! 新刊出てんじゃん」
一際目立つ大きな文字で、「新刊置き場」と書かれたコーナーに行くと、俺の愛読している漫画の新刊があった
何の躊躇いもなく、俺はその漫画を手に取る
「隆! 俺これ買ってくっから待ってて!」
少し離れた、「小説コーナー」で立ち読みをしているらしい隆にそう告げ、俺はレジに並ぶ
うげー……、何か今日は妙に込んでんなぁ……
やっと俺の番が来て持っていた漫画を出すと、
「これもお願いします」
凛とした隆の声と共に、その漫画の上に少し薄めの文庫本が乗った
「隆、お前金持ってねーの?」
俺より少しだけ身長の高い奴を見上げながら俺は聞く
隆は静かに首を横に振って、「金は後で返す」と言った
別に返さなくても良いんだけどなぁ、俺いつも奢ってもらっちゃってるし
そう思いながらも俺は口に出さずにいた
「なぁ、腹減らねぇー?」
我等が帰宅部は、よく教師達に手伝いを任される
……というか、押し付けられる
今日も例によってこき使われた為、俺は腹が減っていた
「そうだな、じゃあ……そこ入るか」
そう言って隆が指したのは、某ファーストフード店
「おう!」
俺は激しく頷いて、隆の腕を掴んで走り出した
- 4 :さすらいのくま:03/10(土) 22:42:02 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
俺はコーラとチーズバーガーを頼んで、席に着いた
隆は確かホットコーヒーとポテト、だっけ
お互いが頼んだものをお互いに摘みながら、軽い世間話
「バーガー食う?」
「ああ、食う」
俺はかじり欠けのチーズバーガーを隆に差し出す
隆も何の躊躇いもなく、それを口に放り込んだ
男じゃないとできないよな、これ
俺はピクルスだけを残した隆を見て笑った
「お前まじでピクルス食わねーよなぁー」
ゲラゲラと品の無い笑い声を上げると、隆もケラケラと笑った
「うっせーよ。つか、これ食える奴の気が知れねぇよ」
「んだと? ピクルスはなぁ、偉いんだぜ?」
「どこがどう偉いのかを文中から抜き出して20字以内で述べなさい」
「何が文中だよ、アホ隆。しかも細けぇよっ」
うっすらと涙を浮かべながら、思いっきり隆の頭を叩く
そんなことをしながら、子一時間経った頃
「_あ、そうだ。金返さねーと」
すっかり忘れてた、文庫本の存在
俺は二カッと笑って、「別に良いって」と言ったが、
隆からは以外な返事が返ってきた
「いや、それお前に読ませようと思って買ったからさ」
少し意味深に笑ったのが気になったけど、俺は「そっか、どーも」と言った
俺は金を受け取って、家路に着いた
愛車のチャーリーで
妙に印象に残ったのは、帰り際に嫌にバカでかい声で奴が言った言葉
「たまには小説も読んでみろよ」
俺は、軽く返事をしたけど
今思えば、これが始まりだったんだ、って思う
- 5 :N:03/10(土) 22:44:39 HOST:u213.d024228218.ctt.ne.jp
- 見てます
ネクスト
- 6 :さすらいのくま:03/10(土) 22:45:05 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
- Σヽ(゚Д゚○)ノ
早速、誤字発見でごわす;
×子一時間
○小一時間
ですね、くまミスは半端ないんで;
これもご愛嬌ってことで え
- 7 :さすらいのくま:03/10(土) 23:14:19 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
Nさま
おお!初コメです(*ノωノ)
ど-も、ありがとうございまする
___________________________________________
あの一言が始まりだった、って気づいたのは、あの日から一日経ってのことだった
てか、今日
「おっはよー!」
満面の笑顔で俺はゆっきーに挨拶する
ゆっきーとは、担任の「雪村先生」だ
ゆっきーも、満面の笑みを浮かべて言った
「遅刻連続更新おめでとう、中山」
そっ……そんな!?
俺は壁に付いてる学校独特の時計に目をやった
時刻は遅刻一分前
思わずふぅ、と安堵の溜め息をつくと、
「一分前だったらセーフ、なんて思ってんじゃねぇよな?中山」
ゆっきーはそれに気づいたようで、俺に大量の宿題を出した
そりゃないぜ、ゆっきー……
「ったくよぉ、ゆっきー冷たいよな」
俺はつんつん、とエビフライを箸でつつきながら不貞腐れたように呟く
今は、昼飯たいむ
所謂、早弁
皆好きなように席を移動して、やりたい放題だ
黒板に荒い字で書かれた「自習」の文字が嫌に目に付く
- 8 :ゆ:03/11(日) 00:44:16 HOST:softbank219192070059.bbtec.net
- 期待あげーー
- 9 :ルナ:03/11(日) 07:38:33 HOST:07032040939663_ep.ezweb.ne.jp
- 文章力があり、とても面白いです!(^∀^)
細かい背景が見える、素敵な小説ですね。これからの更新、待ってます!
- 10 :さすらいのくま:03/11(日) 12:50:50 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
- くまミス発見しました;
○「一分前だったらセーフ、なんて思ってんじゃねぇよな? 中山」
×「一分前だったらセーフ、なんて思ってんじゃねぇよな?中山」
ですね;
一行空けるのが決まりなのに……;すいませんっ;
ゆさま
期待あげ、ありがとうございます
ご期待に添えるか分かりませんが、くまなりに精一杯頑張ります(*ノ∀`*)
ルナさま
文章力がある、だなんて勿体無いお言葉、ありがとうございます
背景が見えるなんて…素敵だなんて…嬉し泣きしそうです(。´Д⊂)
___________________________
「てかさ、ゆっきーって結婚してるっけ?」
禁句にも近い発言をしたのは、俺の隣に椅子を置いて座っている潤だ
皆で隆の机に集まって、椅子をあらゆる角度に置いて弁当や菓子パンを摘み合う
長年使ってます!と言わんばかりの、歴史的な匂いを漂わせるこれまた学校独特の木製の机には、
二つの弁当箱と、四つの菓子パンの袋と、四つの飲み物が所狭しと乗っていて
「おいおい潤くん、あのゆっきーが結婚できると思うのかい?」
にやにやとこれまた禁句的な発言をしたのは小沢
明るい髪色が特徴で、いつも手にはチュッパチャッ○スを持っている
また例のごとくそれを口に含み、小沢は続ける
「な、考えてみ? ゆっきーのシャツよれよれじゃん」
言われてみれば……、と俺達三人は納得し、頷く
「普通の奥さんならさー、亭主の仕事着くらいアイロン掛けんだろー」
それにさ、と色々納得するようなことを小沢は語り出した
俺の弁当の中身が嫌いなエビフライしかない状態になっても、小沢はまだ語っている
「あのさー、小沢ちゃん」
潤が苺牛乳をすすりながら言う
「なんだい、潤くん」
「もしかして小沢ちゃんって、ゆっきーファン?」
確かに、詳しすぎるな
どれだけ観察してんだって話だよな、うん
俺は潤の発言に一人頷いた
それからなにやら二人で言い合いしていたので、
俺と隆は目で合図し、弁当と菓子、そして飲み物を両手一杯に抱えて、いつものあの場所へと避難した
- 11 :さすらいのくま:03/11(日) 13:05:08 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
「やっぱ屋上良いよなぁ」
相変わらずの良い天気に、少し目が眩むけど
俺達は、嫌いな授業の時とかはここによく非難する
飛び降りたりさ、今流行ってんのに何でこの学校はこんなに無用心なんだろね
俺は鍵も何も付いていない、少し錆びれたドアを静かに閉めた
「ああ、そうだ。陽平、今昨日の本持ってる?」
隆は缶コーヒーをぐい、と飲み干す
「おう、多分ポケットにある」
「よく入ったな。そんなに薄かったっけ? あの本」
「俺の神業舐めんなよ」
すっかり忘れていた昨日の文庫本の存在
本には書店名が大きく書かれたカバーが付いている
つか、実は一ページも開いてねぇんだよな
カバーも外してねぇから題名も知らないし
「お前一ページも開いてないだろ」
そんな俺の心を見透かしたように、隆は笑った
すっ……、すごすぎる……
「隆! お前エスパーか!?」
がしっ、という音がしそうなくらい俺は隆の両手を掴む
「バカ言ってないで、本見てみなよ」
その手を何故かやんわりと跳ね返される
俺は言わるままに本を開いてみた
- 12 :さすらいのくま:03/11(日) 13:31:57 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
- ○俺は言われるままに本を開いてみた
×俺は言わるままに本を開いてみた
好い加減うざいですね、はい;
_______________________
「……な、なななっ!?」
何だこの本はー!?
つか、何この題名!?
俺は拳をわなわなと震わせて、隣でくすくす笑ってる奴を思いっきり睨む
奴はそんな俺に視線を向け、肩をすくめてまた笑った
「おま……え、何なんだ! この本は!」
よくもこんな恥ずかしい本買えたよな!と付け加え、俺はコーラを飲み干した
喉を上下させると少し温かくなったコーラの味が口に広がった
「見ての通り、ボーイズラブ小説だけど?」
ぼーいずらぶ?
俺は思わず瞬きをする
「何だそれ」
こんな小説のこと、か?
目の前にある小説をそっと拾ってみる
「男同士の恋愛小説のこと」
_はい?
さらっと何の悪びれもなく言ってのけた隆
「な、何それ。」
「陽平はさ、気持ち悪いって思う?」
俺から本を奪い、隆はぱらぱらとページをめくり出した
よく平気で読めるよな
何とも言えず黙り込むと、隆は真ん中辺りのページを開き、「見て」と言った
「ぬわっ!?」
ちょ、ちょっ……!?
そこには過激、と言い表すしかない文と、絵が載っていて
「な、何見せんだよ!」
紅潮してきた頬
何で俺赤くなってんだ?
鏡を見なくても、頬が熱いから赤くなっているに違いない
「ね、陽平は気持ち悪いって思う?」
「あ、……当たり前じゃんっ。気色悪いよっ」
「……そっか」
なんとなく、その返事が寂しげに聞こえて
俺は久しぶりに罪悪感に苛まれた
- 13 :さすらいのくま:03/11(日) 17:03:36 HOST:61-22-33-34.rev.home.ne.jp
でも、それは一瞬の感情
「あ、陽平今ちょーっと罪悪感沸いてきたっしょー?」
先程までの暗い顔は何処へやら、隆はにやにやと不適な笑みを浮かべていて
くそ……俺の罪悪感は何だったんだよ
ふぅ、と一息ついて、俺は壁に寄りかかった
「男同士……かぁ」
片手で雲を掴んでみるけど、そこに確かな感触はなくて
ただ、虚しく空を切るだけだった
隆も菓子を片手に俺の隣に来て、同じように壁に寄りかかる
そのうち左肩が重くなって、隣からは規則正しい寝息が聞こえてきた
さらさらな隆の髪に、なんとなく指を絡めてみる
俺の指からするり、するりと抜けていく、柔らかく細い猫のような毛
こいつの髪触ると何か落ち着くんだよなぁ……
にしても、だ
さすがに重いな、肩
温かい風が吹いて、傍にあった本がぱらぱらと独りでにページを捲る
暇だし……、折角隆が買ってくれたんだし、な
誰に理由を問われた訳でもないけど、俺は心の中で言い訳しながらその本を手に取った
最初から、これが隆の狙いだなんて気づかずに
隆の特技は狸寝入りなんだと、俺は後で知ることになる
- 14 :ライム:03/11(日) 20:04:08 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- この小説好きです||(*>ヮ<+)||頑張って下さいね☆☆
- 15 :さすらいのくま:03/12(月) 15:44:37 HOST:61-22-35-241.rev.home.ne.jp
- インフルエンザだと発覚したくまです
画面越しに移っちゃったらごめんなさい え;
ライムさま
好き……... Σ(゚ω゚) くまはそんなライムさまが好きです、らぶです 殴 ありがとうございました
________________________
相変わらず重い肩と、同じく規則正しい寝息
そして、柔らかな日差しに見守られ、俺は読書に勤しんでいた
まだ半分も読めていないけど、意外に結構面白い
男同士もそんなに変わらないんだな、と思っていたところだった
「……うはっ」
な、何!
笑いのような素っ頓狂な声を上げ、持っていた本を思わず投げかける
俺は気を取り直し、本を拾い、先程のページを開いた
これも勉強の内だ……
と言い聞かせつつ、目を離したくなるような描写に必死に目を向けてみる
って何の勉強だよ……、こんな知識いらないだろ
でも何故だか目が離せなくなってきた
「ある意味そこら辺のエロ本より過激だな……」
軽く笑いながらそう呟いて、ふと隆に目を向ける
切れ長な目は、綺麗に開いていて
「隆、起こしちゃった?」
「いや、元から寝てなかったし。平気」
「そっか……って、は!?」
じゃあ、もしかして俺の一連の動きも見てたとか?
そう思うと、何だか悪いことをしていた訳じゃないのに、顔が赤くなるのが分かった
そんな俺を楽しげに隆は見つめ、笑った
「読んでくれてありがと。陽平」
「お前こんな趣味あったのな」
少し皮肉を込めて俺は失笑する
たっぷりの沈黙の後、隆は口を開いた
- 16 :ライム:03/12(月) 21:29:38 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- インフルエンザですかっっ!
無理しないで、頑張ってくださいねヾ(>_<。
- 17 :さすらいのくま:03/14(水) 20:18:22 HOST:61-22-35-241.rev.home.ne.jp
- ライムさま
インフルエンザです(´っω・`。) ありがとうございます
___________________________
「うん。陽平も結構大丈夫みたいだね、BL」
にこにこと、何の悪びれもなく、隆は笑う
その視線の先は、俺の手元
正確に言うと、少し薄めの文庫本だけれど
思わずため息が漏れる
……ほんと、こいつ意味不明
理解しかねない
俺、馬鹿だし
明るいだけがとりえ、とかよく言われるし
隆みたいに大人じゃなくて
皆俺のこと明るいって言うけど、ほんとは結構暗いんだぜ?
考えだって常にネガティブ方向まっしぐらだもん
「……陽平?」
俺は勝手にどんどん堕ちていった
俺を呼ぶ隆の声も聞こえなくて
押し倒されるまで、気づかなかった
「た、たか……し?」
隆の様子の可笑しさに、気づかなかった
- 18 :さすらいのくま:03/14(水) 20:36:58 HOST:61-22-35-241.rev.home.ne.jp
ちょっと待って?
俺は考え事してたんだよな?
……何、この状況
隆の後ろにある太陽が痛いくらいに眩しくて
思わず目を瞑ってしまった
「……ぶっ、はっ」
濃い、キス
高校生だけど、告られたことだってあるけど、
俺はこんなキス、初めてで
というか、それ以前にキスすらしたことなかった訳で
隆を太陽避けにしよう、だなんて考えた俺が悪かったのか
望み通り太陽は隆の背の真後ろで輝いているけれど、 こんな風に俺の大切な初めてを奪われるのであれば太陽に当たった方がマシだった
目の前にあるのは、少し焦り、というか、迷いの目をした隆がいて
ああ、今こいつにキスされたんだ、って他人事みたいに思った
__キス?
え、何?俺、今こいつに……何された!?
「お、おまっ……、くそ! 俺、したことなかった、のにっ」
うわうわ、何俺泣いてんだ
止めようと思っても、やっぱりだめで
嗚咽まで出そうな勢いで、流れる涙
隆は案の定困った表情を浮かべて、やるせなさそうに俺を見ていた
「……陽平、お菓子あげるから泣き止んで」
床に散らばるお菓子をひとつ、手でつまみ、隆は俺の口に放り込む
俺、ガキじゃねぇんだけど
ぐすっ、と鼻をすすると嫌な音が出て、俺は更に頬を赤く染めてしまった
「陽平、ごめんね。」
「……何が」
分かっていながらも、そう尋ねる俺はほんとガキで
でも、隆は優しいから
「好きでごめんね」
困ったように笑ったんだ
- 19 :レナ (CyR.DZQRRU):03/14(水) 20:55:18 HOST:0x3dc4c014.rev.ncv.ne.jp
- おもしろいですね
頑張ってください
風邪を引いてても 腐女子心はインフルエンザ?と一緒にはなくなりませんよ!(何こいつ
- 20 :N:03/14(水) 21:17:31 HOST:u213.d024228218.ctt.ne.jp
- 面白い!!!
気になるのでネクスト(●'▽`●)
- 21 :さすらいのくま:03/15(木) 00:19:44 HOST:61-22-35-241.rev.home.ne.jp
- レナさま
おもしろいだなんて……(*ノωノ)キャ そうですよね! 腐女子心はなくなりませんよね!(ぶ くまは負けません、腐女子の何かけて!(死
Nさま 面白いだなんて…気になるだなんて… なんて嬉しいこと言ってくれるんですかw ありがとうございます、頑張りますです
__________________________
あのキスの次の日
俺達は、いつもと変わらず、一緒にいた
俺は口をもごもごと言わせながら、隆に放り込まれた飴をひたすら舐める
俺の机の上に開かれた状態で置いてある、あの文庫本
優しい風が窓から吹いてくる
ああ、窓際の席で良かったな、なんてぼーっと考えながら
「陽平ーっ」
静かに物思いにふけっていたい気分なのに……
しょうがない、と少々苛つきながらも、俺は声のした方に顔を向けた
「これさー、美味いと思う? 大沢に押し付けられたんだけどさー」
手には、珍しくチュッパチャップ○を持って、赤茶色の髪を持った奴は立っていた
なんつー呑気な奴なんだ
俺はキスされたんだぞ?
しかも濃いやつ
しかも男
しかも……隆
はあ、と深くため息をつく
でも潤はそんなことお構いなしに、俺にチュッパチャップ○を差し出した
- 22 :さすらいのくま:03/15(木) 16:46:06 HOST:61-22-35-241.rev.home.ne.jp
「いや、これ普通に食えねーって!」
差し出されたそれを見るなり、俺は即座に否定
つか、大沢よくこんなの買ったよな……
何処で売ってるんだ、と思わず疑いたくなる納豆味
中学三年生の平均身長も満たしてない高校一年生は、けろりと笑う
「大丈夫! 陽平なら食えるって!」
な、何なんだチョ○ボール(CM風に
その妙な言い切り、その妙な自信はどこから溢れてきやがるんだ……
「いや、俺神じゃねぇし? 一応正常な高校生だし?」
どうにか納豆味は避けたい、という俺の願いの篭った言葉すら、潤は激しく首を横に振った
「陽平……俺達は小学校時代からの親友だろ?」
うはっ……
で、出た
潤のお得意、そして18番
俺の昔の醜態を並べ、観念させ、自分にひれ伏させると言う恐ろしい「昔話」なのだ
「もうそれ死ぬ程聞いたから。うん、俺が悪かった。食うからその先はしーだぜ、しー」
俺は人差し指を唇に添えて言う
潤は満足そうに微笑むと、俺が先程付き返した恐怖の納豆味チュッパチャップ○を押し付け、念を押すように低く言った
「それ食わねーと、昨日のこと、バラすぞ」
丁寧に何度も区切って、潤はあからさまに睨んだ後、笑って「レッツトライ!」なんぞ言ってやがる
ちょっと待て、何でお前が昨日のことを知ってるんだ
まさか見られてた?
鍵も何も付いてない場所だし、あそこは俺達四人の溜まり場だし……
み、見られてても可笑しくない!?
「じゅ、潤……。お前昨日の見てた、のか?」
「うん。見てたよー。恥ずかしいよね、あんなのバラされたら」
た、確かにっ
つか、恥ずかしいとかの以前にバレたら俺は皆にホモ扱い!?
彼女なしの生活!?
噂になっちゃって妙に男にモテモテな日々……
俺はがくん、と膝をついた
ころころと冷たい床に落ちる納豆味のそれ
くそっ……、隆、許さねぇ!
俺は潤を教室に置いてけぼりにし、図書室にいるだろう隆のもとへ走り出した
……大きな勘違いをしているのに、気づかないまま
- 23 :さすらいのくま:03/19(月) 22:50:07 HOST:61-27-210-249.rev.home.ne.jp
「たか……っ」
勢い良く扉を開けたのは良いものの、どうしたことか、俺は言おうと思っていた台詞を飲み込んだ
悠長に窓際の椅子に腰を掛けて
春の風になびく色素の濃い、指に絡めると柔らかそうな髪
それは日差しに当たっても変わらず綺麗な黒色で、思わず息を飲む
__昼休みの図書室は誰もいねぇからヤリ放題
結構昔に聞いたそんな噂、と言うか情報が思わず脳裏に浮かぶ
それほど図書室には人気がなくて、居たとしても何かの課題の為に嫌々資料を選びに足を運んでいる奴が殆どだ
今日も例のごとくその通りで、ここには隆と俺しかいなかった
呆然と隆に視線を向けていた俺に気づいたのか、その瞳が本ではなく、俺に視線を向ける
その瞬間が、俺は何故だかすごく好きで
やっぱり悠長に椅子に座ったまま、隆は本に視線を移した
……んだよ、放置かよ
ぶぅ、と小さい子供のように頬を膨らませて隆を見上げると、
奴の大きな手が、隣の椅子の上に置かれていることに気づく
その手は上下に動き、ぽんぽん、と音を奏でた
座れ、ってこと……なのか?
俺は昨日のキスのことで文句を言いに来たはずなのに、どうしても嫌だと一瞬でも思わなかった自分を信じたくて
「……陽平」
まるで自分の隣に座るのが当たり前かのように、隆は俺を呼ぶ
素直に座るのも何だか性に合わないんだよな、と思いながら立ったままでいると、
「おいで?」
少し疑問調子な隆の声が耳に届いて
……しょうがねぇな
よっこらせ、と照れ隠しに可愛くない単語を発して、俺はどかっと隣の椅子に腰掛ける
隆は満足そうにそれを見て含笑を浮かべると、また本に目線を置き換えた
- 24 :さすらいのくま:03/20(火) 16:43:55 HOST:61-27-210-249.rev.home.ne.jp
……って、こんな乙女チックに幸せ感じてる場合じゃねぇだろ俺っ!
軽く和みながら、温かい日差しが心地良くて「幸せだなぁ……」なんて思ってた
すっかり隆のペースに巻き込まれてんじゃん、俺
ページをめくり、活字を追う隆をじっと睨む
そう、そう……この調子だ、俺
キスのことをすっげぇ怒ってるっぽく捲くし立てて……
まるで念力でも使うかのように、隆一点に視線を送る
「……そんなに熱い視線送らないでよ」
ぽつり、と隆は苦笑する
「何が熱い視線だよ、あほ隆」
ちら、と隆に目をやると、ばっちり視線が交じり合う
目についたのは唇
思い出すのは昨日のあの舌の感触
冷たくて、でも気持ちよくて
「陽平さ、何か用あるんじゃないの?」
「……へっ?」
訝しげに隆は眉間に皴を寄せて、俺に顔を近づける
ちょ、ち、近いってー!
っていつものことじゃんか……
何俺意識してんだよ、相手は隆だっつーのに!
一人で慌てている俺に、隆はけらけらと笑い声を立てる
「ほんと可愛い、陽平」
「ばっ! てめ、ふざけんのも好い加減にしろよっ」
急に体中の体温が上がった気がした
熱くて、熱くて……特に頬が
隆は今度はくすくすと笑いながら、読んでいた本を丁寧にしおりを挟み閉じる
「俺がいつふざけたよ?」
にやり、と不適な笑みを浮かべながら、じわりじわりと椅子を近づけて来る
……何だっつーんだよ、くそ
ふわりと香る隆の香り
うわ、何か……やばい
- 25 :さすらいのくま:03/20(火) 16:44:38 HOST:61-27-210-249.rev.home.ne.jp
- 急に心拍数まで上がってきて、その音が奴に聞かれないか、と冷汗まで出てきて
「きっ……、昨日、とかっ」
わざと近づいて来ているであろう隆とは別の方向に顔を背ける
それでもぴったりと近づいて離れない隆
何がやばいのか知らないけど、俺は何だか嫌な感じがして
「やばい……」
と思わず呟いてしまった
「陽平、こっち向いて」
耳にぞくりと何かが走る
寒気にも似たそれは、俺の頬をまた赤くした
「ねーぇ、陽平くーん。向いてよー」
つんつん、と俺の腕をつつく隆
そろそろ言うことを聞かない俺に痺れを切らしたようで、隆は俺の頭を撫で始めた
ぽん、ぽん、と一定のリズムを刻みながら
「……やめろ。折角の俺のセットが崩れる」
「セットなんかしてないじゃん。ただの寝癖でしょ」
痛いところを突かれ、俺はう、と唸る
「寝癖じゃないっつの! これは俺の……んぅっ」
手の自由を奪われて
少し痛むけど、掴まれた手は俺をより刺激させる
「……ふっ、んぅ」
生理的な涙が目に溜り始めたところで、隆に唇を舐め上げられて、その涙が頬に伝う
く、苦しい……
色気も何もない俺は、一人肩を大きく揺らしながら息を整えていた
また、キスされた
零れる涙を乱暴に手で拭う
「陽平、ほんと俺……ごめん」
また昨日と同じように、申し訳なさそうに謝って
「お前、何なんだよっ!」
キスしやがって、しかも俺、初めてだったのに
なのに舌まで入れてきやがるし……
好きでごめん、なんて意味分かんねぇことぬかしやがるし……
拭ったはずの涙は、静かに俺の頬を伝っていた
- 26 :さすらいのくま:03/21(水) 11:26:14 HOST:61-27-210-249.rev.home.ne.jp
- ラブコメでいくはずが何だかシリアスになってしまってる……!(゚ω゚)
_________________________________
男泣きなんてほんと、恥ずかしいけど
こいつの前だったら、別に涙を見られても良いかな、なんて
拭いきれないそれは、ぽろぽろと止め処なく流れる
すっかり申し訳ないモードに突入している隆は、眉を八の字に曲げて、俺をただ見つめていた
そんな姿さえも今の俺には逆効果で、更に苛つかせたのだった
「好きでごめんって何だよ……っ」
嗚咽交じりに震える声が、自分でも少し痛々しくて
まるで
「男同士、なんて陽平にとっては気色悪いんでしょ」
謝らないで欲しい、と懇願してるみたいで
……俺は、確かにそう言った
俺は一応ノーマルというか、女の子が好きなわけだし、そう思うのは普通なんだと思う
でも……何か、違和感があって
「俺は根っからのホモだし、別にそう言われるのは慣れてるよ?」
でも、陽平に言われたのはさすがにキツかった、と隆は苦く笑った
そんな風に笑って欲しくない
胸がずきずきと疼く
「俺、片思いは慣れっ子だから。陽平、ちゃんとフって」
何だよ
そんな一言ぐらいで……俺のこと諦めんのかよ
お前の好き、ってそんなもんなのか?
- 27 :さすらいのくま:03/21(水) 11:26:26 HOST:61-27-210-249.rev.home.ne.jp
- 「……やだ」
ガキっぽく頬を膨らませて俺はそっぽを向いた
顔は見えないけれど、隆の表情はなんとなく検討が着く
少し顔を向けると、案の定困った顔をしていた
「……陽平、何で拭わないの」
まだ涙が流れているのだろうか、と俺は一応目を拭ってみる
すると、気の抜けた笑い声が聞こえて
「目じゃなくって……唇」
すっかり隆の方を向いていた俺の唇に、奴の指が触れる
ゆっくりと唇のラインをなぞりながら、囁くように隆は続けた
「俺、嫌じゃないのかなって期待しちゃうじゃん」
嫌じゃない
嫌じゃないよ
だから、拭うなんて考えもつかなかった
むしろ、もう一回して欲しいって
「……期待してて良いじゃん」
何処かでノーマルとしての、いや、男としてのプライドがそうさせた
この気持ちが恋愛感情なのか、なんて分からないし
そうだとしても、言いたくないから
「……俺、期待しちゃうよ?」
再確認の合図に、触れるだけのキスを落して
頬に添えられた大きな手に、俺もなんとなく手を添えてみたりして
「勝手にどうぞ」
そう言うと、ふわりと隆が微笑んだ
- 28 :ライム:03/21(水) 19:36:01 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- くま様っ最高ですっっ((感動
私の事覚えてますかっ? ライムです☆ 私、本当に好きで何回も見てますっ☆めっちゃめちゃ好きですっ☆後、めっちゃめちゃ泣けます((泣頑張ってください☆
- 29 :さすらいのくま:03/23(金) 16:53:05 HOST:61-27-210-249.rev.home.ne.jp
- ライム様
もちろん覚えてますよb 何回もこんなものを読んで下さってるんですか……! な、泣けるんですか!?Σ(゚ω゚) 兎に角、有り難う御座います^^
□お知らせ
えっと、くまの突然の思いつきで、書き方を変えようと思います
数文最初に書き、真ん中辺りにその章の題名、そして上の文の続き(本文)を書く、的な感じにします
んーっと、説明下手なんで今のじゃ分からなかった方もいるかと思うので早速その形式で続きを更新してみます
見にくかったりしたら気軽にお申し付け下さいませ
______________________________
- 30 :さすらいのくま:03/23(金) 17:32:00 HOST:61-27-210-249.rev.home.ne.jp
そりゃあ期待しても良いっつたぜ?
でも……さすがにこれはないんじゃねぇの?
□一方通行な想い□
「あ、隆だ」
キャラメル色の頭をもしゃもしゃと掻きながら、
俺と並んで歩いていた小沢はそう何気なく呟いた
――た、隆っ!?
名前を聞いただけで心臓が跳ねるような感覚に毎度の事ながら気分が悪くなる
「何処?」
精一杯の通常通りの声で小沢に尋ねると、奴は無言で前方を指差す
もうそろそろ進級の季節
外には満開とは言えないけれど桜の花が咲いている
そんな外の明るい日差しを受けながら前方から歩いて来るのは、紛れも無く隆だった
「――あ、俺用事あったんだわ。先に教室行っといて」
そう言いだしたのは、隣にいる小沢ではなく俺自身で
「おう。潤の席で弁当広げて待ってっからなー」
早々と小沢に背を向けようとした俺に、小沢はにやりと笑うと手を振った
振り向いた衝動で、小沢の後ろにいた隆と目が合ってしまい、なんとなく目を逸らす
だけど気になって少し上目を遣って見やると、少し寂しそうに隆は俺を見ていた
……お前が悪いんだからなっ
許してしまいそうになる心を捻り曲げて、俺はまたぷい、と顔を背け、嫌味なくらいの笑顔を小沢に向ける
「まだ二時間目だろーがっ。お前らもたまにはちゃんと授業受けろよ」
小沢はまた笑う
「そう言うお前だって今からサボるくせに」
「うっせーよ」
言われてみればそうだな、なんて思いながら、俺はゆっくりと廊下を歩き出した
寂しそうにしたって無駄なんだからなっ
悪いのは隆なんだから……
事の起こりは今から丁度一週間前
その日に俺は図書室で隆とキスをした
告白の返事を良い方向に受け取っても良い、とほのめかす様なことも言った
「……どーしよ」
どうしたら良いか分からない
俺のこの気持ちが恋なのかさえまだはっきりとしないのに、俺は……
「期待させるようなこと言って……」
はあ、とため息が聞こえた
それは俺のものじゃなくて、思わずびくりと反応してしまう
今は恐らく授業中
思い切ってため息の聞こえた方に顔を覗かせてみる
「……お前教室居たんじゃなかったの?」
呆れた声は、どちらのものか
「陽平の後を付けて来ましたが、何か問題でも?」
屈託のない笑顔を俺に向け、奴は「天気良いねー」と背伸びを始めた
――嘘だろ?
- 31 :ライム:03/25(日) 03:54:02 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- 覚えててくれましまたかぁっd(感*・・*動)b
何度も読んでます(ps2q*o∀0*)$+° これからも、頑張って下さいネ(*`□ω□*)
- 32 :さすらいのくま:03/28(水) 22:37:48 HOST:61-25-105-139.rev.home.ne.jp
- Yuki聴きながらの更新です
あんましこの歌好きじゃないな……(´・ω・)
ライムさま
覚えてますよっd(ゝc_,・*)
はい、ご期待に添えるか分かりませんが頑張ります
では久しぶりに更新b
- 33 :さすらいのくま:03/28(水) 23:13:42 HOST:61-25-105-139.rev.home.ne.jp
隆は可笑しい
でも、隆に触れて欲しいなんて思う俺が一番可笑しいのかな
□一方通行な想い2□
「お前最近可笑しいって」
傷つけないように、でもはっきりと言って笑う
「可笑しい……ねぇ」
ふぅ、と小さく一呼吸置くと、隆は俺に向き直った
真っ直ぐに目を見据えてくる奴の視線がひどく痛くて、俺は思わず視線を逸らす
「陽平はさ、俺のどこが可笑しいって感じるわけ?」
それにも構わず隆はまだ俺の目を見つめて言う
やば……顔赤くなりそうなんですけど……!
見つめられることなんて滅多にないもんだから、俺は奴の狙い通りに頬を染めていった
「何処って……全部! 何もかも可笑しいだろ!」
しどろもどろに言いながら睨みつけてやると、鼻で笑われた
「例えば?」
まだ言わす気かこの野郎……!
ちら、と視線をやると、隆は楽しげに笑っていて
……むかつく
「そんなの自分で分かってんだろ!」
「分かんないから聞いてるんだよ? 俺、何処が可笑しいの?」
こいつの何処が可笑しいかなんて、例を挙げなくとも安易に分かることだ
あの日から、二人きりになる度にキスしてきて
まだ気持ちの整理もついていないのに、期待させるようなことを言った俺も悪い
悪い、けど……
「あんなこと……とかしてくるようになったじゃん」
「あんなことって何?」
待ってましたと言わんばかりの期待に満ちた隆の目を見た瞬間、しまったと俺は後悔した
後悔しても、もう遅いんだけど
ほら、気づけば俺の頬に隆の手が添えられてる
「ね、あんなことって……もしかしてこれ?」
そう尋ねながら、何時かの様に俺の唇を隆の指が優しく触れる
もどかしくて、触れて欲しくて
指なんかじゃなくて
無性に、温度が恋しくなって
――ただ、それだけ
- 34 :さすらいのくま:03/28(水) 23:17:49 HOST:61-25-105-139.rev.home.ne.jp
- あうー……、またもやミス発見;
意味は合ってるかと思うんですけど、分かりにくくなっちゃいました
×俺の唇を隆の指が優しく触れる
○俺の唇に隆の指が優しく触れる
です
すいませんでした(´・ω・)
- 35 :さすらいのくま:04/01(日) 18:22:56 HOST:61-25-105-139.rev.home.ne.jp
- 温度を感じたくて、触れてみたくて
――ただ、それだけ
□一方通行な想い3□
そっと唇を離すと、目を見開いて、顔を真っ赤にした隆の顔が目の前にあった
俺、何で……キスして……
さあっと血の気の引く音がした
冷たい屋上のコンクリートが今俺達のいる場所を理解させる
そっか、俺屋上にサボりにきて……隆がいて、それで
「……っ」
今度はかあっと頬が林檎色に染まる音がして
思わず手で唇を覆う
どうしよう どうしよう
その言葉ばかりがぐるぐる回っていて上手く頭が働かない
「陽平……今のって、どういう意味?」
そんなこと聞かれても、俺にだって分からない
俺はただ……ただ、何?
何で俺はコイツにキスしたんだ?
自問自答を繰り返してみても答えは一向に出なくて
「毎日お前がキスするからじゃんっ…!」
意味の分からない涙と共に、言い掛かりとも言える言葉を吐き出した
隆はまた驚いたように目を見開いて、小さく「ごめん」と呟いた
違う、違う
俺はお前に謝らせたい訳じゃないんだ
ごめん、なんて聞きたくないんだ
「隆なんて……大嫌いだっ!」
そう力任せに怒鳴り散らして、俺は壁を蹴りつけた
それは隆に対する怒りからの行動なんかじゃなくて、誤魔化してばかりの自分に対しての苛立ちからによる行動で
「もうお前なんか絶交だっ!」
心にもない言葉をぶつけて、俺は屋上の扉を勢い良く開く
その時見えたあいつの悲しそうな顔が頭から離れなくて、俺は力一杯、扉を閉めた――
- 36 :さすらいのくま:04/01(日) 18:48:51 HOST:61-25-105-139.rev.home.ne.jp
教室に戻る気には到底なれなくて、そのまま扉に背を預けてその場に座り込む
……何で俺、絶交だとか大嫌いだとか裏腹なことばっかり言っちゃうんだろう
この扉の向こうにはあいつがいるのに
隆の悲しそうな表情を思い出してしまい、なんだかまた泣けてきた
もしこの場を、潤や大沢に見られたら笑われるだろうな
男泣きなんて恥ずかしすぎる
そんなことを呆然と考えながら、流れる涙が床にぽつりと落ちてゆく様を眺めていた
じわりと冷たい緑色の床に、透明な涙が染込んで
「俺の馬鹿……」
もう隆は口を聞いてくれないかもしれない
目も合わせてくれないかもしれない
一緒に遊ぶことも、喧嘩することもできないかもしれない
「……隆、ごめん」
そっと、そう囁いて
俺は静かに目を閉じた
- 37 :さすらいのくま:04/01(日) 19:08:12 HOST:61-25-105-139.rev.home.ne.jp
- 目を開いた時に、見えた景色
なんてありがちな展開なんだろうと俺は小さく笑んだ
「保健室……か」
消毒液の臭いが鼻につん、とくる
「せんせー。今何時っすかー?」
閉ざされたカーテンの隙間から顔を出して、そこにいるであろう保健医に声を掛ける
けれど、一向に返事は返ってこないし、ベッドから起き上がって辺りを見回してみても先生の姿はなかった
しょうがないから上履きを履いて、本格的にベッドから離れる
俺が立ち上がって背伸びをしていると、保健室の扉が静かに開かれた
そこには片手にコンビニ袋を持った隆が立っていて
俺は背伸びをした状態で固まったまま、隆を見つめている
……隆だ
そう改めて今目の前にいる人物を認識すると、ぶわっと涙が溢れ出た
拭うことも忘れて呆然と立ち尽くす俺に、隆は優しく微笑んだ
「また泣いてる。ほら、拭って」
差し出されたハンカチを手にとって、俺はまた一粒涙を流す
口を利いてもらえたことが嬉しくて、笑い掛けてくれたことが嬉しくて――
「た、たか……しっ、俺、おれっ……」
情けないだなんてこと、言われずとも分かっている
高校生にもなって男泣きなんて恥ずかしくてしょうがないけれど、今はそんなことどうだって良い
ただ、隆のことしか頭になくて
許してもらえた
そう、信じて疑わなかったから
- 38 :ライム:04/01(日) 20:57:39 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- めちゃめちゃ泣けます(>□<泣)頑張って下さいネd(*・・*)b
- 39 :さすらいのくま:04/06(金) 23:39:43 HOST:61-22-37-61.rev.home.ne.jp
- ライムさま
( ゚Д゚)な、泣けちゃうんですかっ 頑張りますねb いつもありがとうございますー
- 40 :ライム:04/07(土) 15:45:03 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- はい(*/艸\)照
頑張って下さいね(☆*v3v愛{{chu☆*+
- 41 :さすらいのくま:04/07(土) 22:36:10 HOST:61-22-37-61.rev.home.ne.jp
- ライムさま
ありがとうございますーw 頑張りますb
- 42 :さすらいのくま:04/07(土) 22:43:55 HOST:61-22-37-61.rev.home.ne.jp
- 今更ながらの訂正
>>21と、>>22の「大沢」は「小沢」の間違いです;
すみませんでした…!
自分でもよくキャラが整理できていないので…
では、更新です
- 43 :さすらいのくま:04/07(土) 23:05:14 HOST:61-22-37-61.rev.home.ne.jp
「陽平昼食べてないでしょ?」
そう言われてやっと気づく
壁に掛けられた時計に目をやると、針はもう下校時刻を指していた
二時間目にサボりに出たはずなのに、俺はそんなにも熟睡してしまっていたのだろうか
差し出されたコンビニの袋を覗いてみると、そこには俺の好きなものばかりが詰め込まれていて――
あんなに理不尽なことを怒鳴り散らした相手なのに、どうして隆はこんなに気を使ってくれるんだろう
涙はいつの間にか止まっていた
……でもさっき、あんなに泣いたしなあ
明日は目ぇ腫れるな、と呟くと、隆は眉を潜めた
「陽平ってさ……」
聞き返そうとして顔を上げて、そこで自分が俯いていたのに気づく
眉間に皴を寄せる隆が怖くて無意識に俯いてしまったのだろうか
隆は一つ息を吐くと、いつもの穏やかな笑みを浮かべた
「ごめん、何でもないよ」
なんだか、苛ついた
いつもそうだ……さっきだって、「ごめん」と困ったように笑って呟くんだ
そんな隆を見るのが、俺は苦手だった
謝るくらいなら最初からキスなんてしなけりゃ良かったのに
好きでごめん、なんて告白かどうか分かりもしない
どうしてこんなに、「好き」という言葉を隆の口から聞きたいのかは分からないけれど
……どうしても、はっきりと言って欲しくて
大嫌いだとか、絶交だとか、一方的に悪いのは俺なのに
こんなに優しくするから、俺はまた苛ついて……
「んだよっ……。言いたいことあるならはっきり言えよ!」
こんな自分が、嫌になる
- 44 :さすらいのくま:04/08(日) 16:41:59 HOST:61-22-37-61.rev.home.ne.jp
- よく、分からない
自分の気持ちが、よく分からない
隆に対する俺の気持ち
友達としての友情?
それとも……あいつが俺に抱いてるのと、同じ気持ちなのか……?
ほら、また
お前は傷ついたような顔をする
居た堪れなくなった俺は、思わず唇を噛み締める
「……じゃあ、言うけど」
初めて聞くような隆の声に、思わず目を見張った
穏やかで、優し気で
そんな隆から発せられた声だとは思えない程、冷たい声だった
言って欲しいと言ったのは俺なのに、何故だか、
俺は耳を塞ぎたい思いでいっぱいになった
- 45 :さすらいのくま:04/08(日) 16:43:07 HOST:61-22-37-61.rev.home.ne.jp
「陽平はずるいよ」
自嘲的に笑って、隆は俺ではなく外へと視線を移す
空は赤く染まり始めていて
「ずるいって……何それ」
「急にキスしてきたと思ったら絶交だ、大嫌いだって怒鳴って」
「そ、れはっ……!」
謝ろうと思って、悪かったって思って……そう言おうとしたけれど、隆の表情を見て、俺はその言葉を飲み込んだ
外を見ていたはずの隆は、俺の目をじっと見つめていて
「俺がどんだけ我慢してたか、陽平は分かってんの?」
威圧のある声が、俺の心音を速くさせる
部活生達の掛け声や、楽器の音色が耳に届いているからなんとか零さずにいられる涙
一日に何回も泣いてたんじゃ格好がつかない
……我慢、って何に対してのだよ
無意識に唇を強く噛み締めてしまい、口内に鉄の味が広がる
「気がないならキスなんてするな。早く振れよ。男同士なんて気持ち悪い、って殴れよ」
どんどん荒げていく隆の声と表情に、胸がずきん、と音を立てる
今の隆が、本当の隆なのかもしれない
俺が、こうさせた
隆が傷つくかも、って分かってた
だけど、自分でもこの気持ちの正体が分からないんだ
どうしたら良いんだ?
俺が好きだ、と言えばお前のこんな顔見なくて済む?
俺が男同士なんて気持ち悪いと悪態づけばお前は吹っ切れるのか?
決して気がない、なんてことはなくて
でも今、気持ちに整理のついていない今、曖昧なことを言って良いのだろうか
「っ……、も、意味分かんねぇっ」
一度溢れたら止まらない、その大粒の真珠
がくん、と膝までついて、両手で顔を覆って
まるで小さい子供のようにしゃくりあげる
頭上から小さなため息が聞こえた
そうして、足音がどんどん遠のいて
最後に聞こえた音は、冷たい扉の閉まる音だった
――呆れられた
そう、確信した
どこかで期待していた
泣けばなんとかなるなんて腐った考えを持っていたわけじゃないけれど、当たらずとも遠からず、拭うことぐらいはしてくれるだろうと思っていた
「たか……しぃ」
周りの音はシャットダウンされたように聞こえなくなって、扉の閉まる音だけが俺の耳に残っている
気づいた時には、空も、俺の思いに比例していた
- 46 :さすらいのくま:04/08(日) 16:43:59 HOST:61-22-37-61.rev.home.ne.jp
- やっと聞こえてきた音は、俺の大嫌いな雨の音だった
ザーザーと、まるで今の俺みたいに泣いていて、煩わしい
勿論傘なんて遅刻魔の俺が持って来ているわけもなく、漫画やドラマでよく見るシーンを体験しているわけだ
鞄で濡れないようにガードしながら、雨宿りのできそうな場所へ走る
「……あー、寒い」
春の風は妙に寒い
もうそろそろ夏になろうとしているのに、どうしてこんなに肌寒いのだろう
隣に……いないから
隆の顔が脳裏に過ぎる
寂しい、会いたい、怖い
共通点のない想いがぐるぐると俺の中で回る
雨宿りなんてもう良いや
俺は鞄を普通に肩から斜めに掛けて、水溜りを蹴りながら家路についた
「……最悪」
思わず誰もいないのにそう呟いてしまった
何処を探しても見つからない鍵
がん、と冷たい鉄の扉に拳を叩きつける
今日は家に誰もいない
俺は母子家庭で一人っ子だから、母親が帰ってくるまでは家に入れない
……鍵、取りに行くかな
また濡れなくちゃならないのかと思うと、気が滅入る
多分引き出しに入れたままだろう
俺は、右のポケットの中に目当ての鍵が入っているのにも気づかず、もう一度雨の中へ走り出したのだった
- 47 :さすらいのくま:04/08(日) 16:44:28 HOST:61-22-37-61.rev.home.ne.jp
- 「……ない」
何処を探しても、鍵は見つからない
外はもう薄暗くなりつつあった
この時間帯の学校は思ったより、ずっと不気味で
俺は渋々学校を後にした
ほんと何処にあるんだよ……
これまでに何度もこんなことはあったが、今日は雨までプラスされているからずっと気が重い
その上、隆ともあんなことになってしまったから悲惨で笑うに笑えない状況だ
仕方ない、今日は誰かに泊めてもらうか
迷惑承知で携帯を左ポケットから取り出してみると、新着メールがあった
「……潤か」
何故か、ああ、コイツかよ みたいな気分になってしまう
俺はきっと隆からのメールだと期待したのだろうか
自分からあんな態度を取っておいて……つくづく自分に嫌気がさす
携帯の電池も、もう残り一本だ
潤からのメールを開くと、今の俺にとっては嬉しい誘いだった
「今日親いねぇから泊まりに来いよっ♪」と底抜けに明るいメール
潤とは幼なじみだから、当然家の距離も近い
今いるこの道路から見えるマンションが、潤の家だ
……なのに、俺はそのメールに返信もせず、気づいたら通話ボタンを押していた
ザーザーと降りしきる雨の音が、すごく煩わしい
- 48 :ライム:04/08(日) 18:47:20 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- 更新されてるっ(p嬉qw0∀Q*)+。.*
頑張って下さいね(*`□ω□*)
- 49 :さすらいのくま:04/27(金) 23:54:07 HOST:61-22-35-48.rev.home.ne.jp
- ライム様
いつも書き込みありがとうございます…!
めさめさ更新遅くなってしまい、誠に申し訳ございません;
- 50 :さすらいのくま:04/27(金) 23:54:34 HOST:61-22-35-48.rev.home.ne.jp
- どうして俺はこの場にいるんだろう、とか考えても遅くて
俺は神様的はメールを送ってくれた潤に一言メールを返すと、鼻をかすめる夕食時の香りに気づいた
子供の様に泣きじゃくっていた場面を幾度と見られたことにも気づき、俺は羞恥に頬を赤らめる
かすめる程度の匂りがどんどん強くなっていき、もうそろそろ出来上がりだと知る
ふかふかの目にきつすぎない黄色のソファーから後ろ髪を引かれる思いで立ち上がり、小まめに掃除されているキッチンへと俺は足を運ぶ
こいつは……俺のことが嫌いになったんじゃねぇのかよ
少し前まで、泣き出した俺にため息を吐いて冷たく出て行った相手だとは思えない
まあ、俺も泣きすぎだけど
「陽平何してんの」
もしかしたら俺への態度は変わらないんじゃないか、とか期待してたけど、向けられた視線は少し変わっていた
言動は相変わらず優しいけれど
「な、んか手伝おうかな、って」
らしくもなく控えめにどもってしまうのは、相手が隆だからなのだろうか
「良いよ、別に気にしないで。陽平は座ってて」
にこりと微笑むと、隆はまた俺に背を向けてパスタを更に盛り始めた
当たり前なんだけど、背を向けるのなんて当たり前なんだけど……
今の俺には、こんな小さな距離でさえ不安にさせる要素の一つで
こんなにも人との距離を気にするのは初めてだ
- 51 :さすらいのくま:04/27(金) 23:55:07 HOST:61-22-35-48.rev.home.ne.jp
- 「でも……」
思わずもじもじと手をこねていると、隆は盛り付ける手を止めて、くるりとこちらに向きなおした
少し眉を下げて、でもほのかに微笑みも混じっている
まあ、俗に言う苦笑いというものだと思う
「陽平、どうした? いつもは自分の家か、ってつっこみたくなるほどくつろいでるくせに」
「悪かったな」
笑いながら言ってきた隆に俺も同じように冗談を言い合う時の笑みでそう言い返す
冗談だよ、と付け足して隆は皿を運ぶのを手伝って、と笑った
「あ……俺、これ好き」
思わず手渡された皿に盛り付けられたパスタを見てそう口に出していた
子供っぽいけれど、俺はミートソーススパゲティが小さい頃から大好きだった
さっきまでは緊張のせいで食欲なんて全くなかったけれど、大好物を目の前に俺の腹はぐぅ、と音を鳴らす
それを聞いてか聞かずか知れないが、隆はくす、と笑う
「陽平ってほんとこれ好きだよなー」
「うん、超好き」
「超とか今時言わねーよ」
二人で笑いながらリビングまで食事を運ぶ
こんな些細なことが嬉しくて、俺はいつもよりも自然な笑顔になっていた
- 52 :さすらいのくま:04/27(金) 23:55:47 HOST:61-22-35-48.rev.home.ne.jp
- 「いただきまーす」
ぱん、と両手を合わせ、俺は大好物に食らいつく
それを見て隆がまた微笑んでいたのが、少し俺を嬉しくさせた
「美味い?」
頬杖をついて笑みを浮かべながら尋ねてくる隆に、俺はどきどきしながら頷く
そのことが引き金となって、俺はまた「乙女モード」になってしまった
ふと外を見やると、まだ雨は地面を打ちつけている
その雨の音が、俺の浮かれていた気持ちを再び沈めた
それを見計らったかのように、俺のポケットから小さな振動が伝わる
静かな部屋にはバイヴの音さえも響く
「携帯鳴ってるよ」
「あ、……うん」
俺はポケットから小刻みに震えるそれを取り出し、新着メールを開く
「……は?」
てっきり潤からだと思っていた俺は、送り主とその内容に思わず声を零した
「どうした?」
「……いや、なんでも、ない」
そう言って電源を落として、乱暴にポケットにつっこんだ
- 53 :さすらいのくま:04/28(土) 00:08:10 HOST:61-22-35-48.rev.home.ne.jp
- 「ごちそうさまでした」
今度は軽く両手を合わせてお辞儀して、隆に「美味かったよ」と笑った
「陽平、どうしたの」
皿を運ぼうと立ち上がったら、がくん、と膝をつく体制になってしまった
掴まれた手首から隆の温度が伝わって、俺は何故か胸を高鳴らせる
「え? 別に何もないけど……」
「じゃあ、さっきのメール誰からだった?」
「……んなこと別に関係な……んぅっ」
最後まで言い終える前に口を塞がれ、俺は変にくぐもった声を出してしまう
乱暴なキスなのに、俺は唇が離れると喪失感に苛まれた
もっと、なんてすがるような瞳で見てしまう
生理的に潤んだ瞳からは、今にも雫が零れそうで
「もう陽平帰りなよ」
その言葉に、ずきんと体の真ん中が痛むのが分かった
―――――――――――――――――――――――――――
一応注意書きしておきます
くまは、あらかじめワードで下書きして、
ある程度溜ったらこちらに投稿しています
……ので、コピーしているとかじゃないので、あしからず(・ω・)
- 54 :ライム:04/28(土) 20:47:00 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- この小説、本間にめちゃ好きですヾ(o´▽`o)/
頑張って下ちゃい(*^□^)∧(^□^*)
- 55 :あると:05/04(金) 09:38:18 HOST:u52182.koalanet.ne.jp
- 表現が凄く上手です^^
キャラの性格とかもそれぞれよく判るし、感情の描写がとても上手だと思います・∀・ これからも頑張ってくださいねbb
- 56 :さすらいのくま:05/04(金) 15:11:41 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- ライム様
そんなに好き、だと言ってもらえて嬉しいです(ノ∀`)
頑張ります! 毎度更新遅くて申し訳ないです;
あると様
書き込みありがとうございます(つられて敬語)
一番悩んでいたキャラの性格や感情の描写でしたが、そう言ってもらえて幸いです
頑張ります(笑)
どうもありがとうございましたー!
- 57 :さすらいのくま:05/04(金) 15:13:15 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- 「……っ」
嫌だ、帰ってやらない
そう言えたら良いのに
ぐ、と拳を握りしめて、震える唇を噛み締める
少しの反抗心から、俺は立ち上がるとソファーに腰を下ろした
それが気に入らなかったのか、隆は眉を潜めると皴を作る
「陽平。お願いだから困らせないで」
先程よりも優しい声音で、
そう言いながら隆は俺の隣にそっと腰を下ろす
困るってなんだよ
……俺のこと、好きなんじゃねぇのかよ
口を開けば溢れそうなこの気持ちが出てきそうで、
ぎゅ、と再度強く唇を噛んでしまう
じわりと口内に広がる鉄の味に一瞬戸惑う
「困るとか、帰れとかって……」
そう言って、気づいた
俺は口を開いてしまったんだ、と
心でどんなに制止しようとしたって止まらなくて
隆の眉と眉の間に深く皴が刻まれても止まらなくて
「隆はそんなに俺と……いるの嫌なのかよっ」
「そんなこと言ってないだろ」
「言ってんじゃん! 帰れとか、意味分かんねぇんだよっ」
- 58 :さすらいのくま:05/04(金) 15:14:43 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- そこまで怒鳴ると、隆の小さなため息が耳に届いた
びくりと思わず肩が揺れる
途端、怖くなった
嫌われた、俺……嫌われた?
「捨てないで……」
ふ、と全身の力が抜けるのが分かった
俺は、眠ってしまったらしい
まだぼんやりと霧がかかったような頭を無理矢理起動させて、カーテンの傍へと立ち上がる
シャッと音をたててカーテンを開くと、少し欠けた半月が顔を覗かせた
「夜か……」
どうやら雨は上がったみたいだ
ポケットに突っ込んだ携帯電話を手探りで取り出して、電源を入れる
電気どこだ……?
きょろきょろと辺りを見回してみるが、分かるのはここが隆の部屋だということ
何度か来た覚えがあるし、なにより……
携帯電話が示していた時刻は、21時だった
- 59 :さすらいのくま:05/04(金) 15:21:15 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- まだそんなに遅くない時刻だ
それを見て、ふぅと安堵のため息が漏れる
受信BOXを開いて、母親から届いたメールをもう一度読み直す
「今日は家に帰って来ないでね……か」
たった一行、何の説明もなしにそう綴られたメール
次の瞬間、ガチャリと如何にもなドアの開く音がした
「……そういうこと」
「へ? ……た、かし?」
今度はカチ、と明かりの灯く音と共に、部屋が明るくなる
暗闇に慣れてしまっていた目を、しきりに瞬いた
タオルを片手にスウェットに身を包んだ隆は、小さく笑った
よく見ると髪が濡れている
「おばさん男連れ込んでんだ?」
からかうような声でそう笑われて、思わず俺は羞恥に顔を染めた
「人の独り言勝手に聞くなっ」
そう言ってぼふ、とベッドに飛び乗り、枕を投げつける
「聞こえたんですー」
飛んできた枕を軽々とよけ、隆は笑った
- 60 :陽炎:05/04(金) 19:20:15 HOST:p172.net219126038.tokai.or.jp
- 初めまして!!同じBL書かせていただいているのに、くまサマの文才とは天地の差で・・・。
お師匠様と呼びたいくらいです・・・。頑張ってください!!
- 61 :さすらいのくま:05/05(土) 13:59:38 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- 陽炎様
始めましてー! 桜舞を書いていらっしゃる方ですよね? そ、そんな天地の差だなんて;笑 お師匠様!?( ゚Д゚) くまこそお呼びしたいくらいですよ…! 出来る限り頑張ります(・∀・)
書き込みありがとうございましたー!
- 62 :さすらいのくま:05/05(土) 14:04:40 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- それが恥ずかしくてぶつぶつと文句を言っている間に、隆は俺の隣に腰かけていて
思わず素っ頓狂な声を出すとまた笑われた
「……風呂、入ってきた?」
「うん。陽平も入る?」
変な意味で言ったんじゃないことは重々承知しているつもりだけど、やっぱり心拍数は上がるばかり
口を開けば声が上ずりそうだ
俺は静かに頷いて、手渡されたバスタオルを手に浴室へと向かった
服を脱衣所らしき場所で畳んで置く
持って来たバスタオルからは、隆の香りがして
……うわ、俺変態っぽい
服を全部脱いだところで、手が止まった
下着はどうすんだ?
同じの穿く(は)のも生理的に嫌だけど、借りるのも気が引ける
他の奴の家に泊まりに来たって、そんなこと気遣いもしないのに
妙に、意識してしまう
後で考えよう、と結論を先延ばしにし、目の前の戸を開いた
- 63 :さすらいのくま:05/05(土) 14:05:27 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- 霧がかかったようにぼんやりしていて、良い香りが鼻をかすめる
クリーム色のタイルが目に優しくて、なんだか安堵する
同じクリーム色の浴室用の椅子があって、床に座るのも気が引けた俺はそれに座ることにした
……にしても、綺麗すぎる
タイルもピカピカだし、排水溝には詰っているはずの髪さえもない
「ってどこ見てんだ俺は」
こんなお宅訪問みたいな真似……馬鹿みたいだ
ふぅ、と息を吐くと、ガラッと戸が開いた
「うわっ」
驚いた拍子につる、とタイルに足がすべる
やべ……尻餅つくっ
早くも素っ裸で、しかも人の家で尻餅をついた自分を思い浮かべながら、ぎゅ、と目を瞑る
だけどいつまで待っても痛みはやって来ず、聞き慣れた声の呻きが聞こえただけだった
「え……あ、隆!?」
その声が隆だと気づくのに少々時間をかけてしまったが、下を見ると隆が下敷きになっていて
慌てて退こうとすると、ズキンと足首が痛んだ
「っ……」
鈍い痛みに歯を食いしばる
さっきすべった時に捻ったのかな……
「良いから、無理に退かなくても」
「え、でも」
「足、捻ったんだろ」
ごめん、と小さく呟く
隆は優しく笑って、良いよと返してくれた
でも……ちょっと、俺には耐えられない状況だったりするんだ
- 64 :さすらいのくま:05/05(土) 14:08:15 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- 温かい風が髪を通り過ぎていく
濡れた髪も徐々に乾いてきた
俺には少し大きい隆のトレーナーに身を包んで、少し気恥ずかしい
背後には隆がいて、俺はその隆の膝の中に座っていて
恋人みたいだ、なんて思ってしまう
骨ばった指が、俺の髪に優しく絡められる
「はい、終わり」
「あ、ありがと」
足には丁寧に湿布が貼られている
それを見ると、なんだか先程のことが脳裏に蘇ってきて……頬が染まるのが分かった
「ごめん、髪まで洗ってもらって……あ、乾かしてくれてありがと」
恥ずかしくて、ベッドのシーツを握る
きちんとアイロンをかけてある様で、湿っていない
お母さん綺麗好きなのかな……?
風呂場と言い、このベッドのシーツと言い、きちんと定期的に清掃されているように見える
- 65 :さすらいのくま:05/05(土) 14:09:04 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
「ううん。俺陽平の髪好きだし」
さらさらだよねー、と呑気に笑う隆に、俺は笑い返せなくて
「好き」その言葉に過剰に反応してしまう
別に俺のことが好きだ、とか言われたわけじゃないのに、なんで俺……
「陽平?」
「え、……あ、何?」
突然名前を呼ばれたせいか、心臓はどんどん早く脈打つ
「顔、赤いよ」
ドライヤーの熱気のせいだ、とか風呂上りだから、とか腐る程理由はあるのに
どれにも当てはまらなくて
俺、もしかして……
こくりと、喉が鳴った
- 66 :陽炎:05/06(日) 18:58:58 HOST:p172.net219126038.tokai.or.jp
- 二回目です。アゲです↑↑ な、何故桜舞を・・・?そんな、恐縮です><!!
ちょっとした隆ファンであります|柱|ω・)w
- 67 :まろ:05/06(日) 22:04:01 HOST:07002190702272_ef.ezweb.ne.jp
- 初めまして♪
さすらいのくまさんのこの話、大好きです(^ω^*) 今まで小説読んでも書きこんでなかったんですが、陽平の可愛ぃさに思わず書き込みしちゃいました笑)
あ、書きこんでませんが、陽炎さんの小説も読んでます(^O^)
- 68 :さすらいのくま:05/07(月) 16:03:54 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- 陽炎様
書き込みありがとうございます(・∀・) 桜舞、読ませていただいています 千冬くんがすきです ←基本受けらぶ た、隆ですか!? わー…嬉しいです!
書き込みありがとうございましたー!
まろ様
初めましてー! わわ、お名前可愛らしいですねっ だ、大好きだなんて…嬉しいです! え、では、こんなくまが初書き込みですかっ(・ω・`ノ)ノ 陽平可愛いって言ってもらえて感動ですw 受けは可愛さと感度と鈍感さが命だと、くまは思(略)
書き込みありがとうございました
- 69 :さすらいのくま:05/07(月) 16:05:34 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- 俺が口を開こうとしたとき、空が泣き始めた
それに気づいた隆は立ち上がると、この部屋によく似合った寒色のカーテンを静かに閉める
なんか、タイミング悪かったかも……
自然と肩が落ちてしまい、慌てて首を横に振った
俺何思ってんだろ……
また、自分の気持ちに逃げようとしている
隆が隣にいるだけで、意識してしまって碌に(ろく)笑うこともできない
隆に想いを告げられたときだって、嫌悪感なんてこれっぽちも感じなかった
唇を重ねたときも、驚きと嬉しさで混乱して……
この気持ちを、友情なんて言葉で片付けられない
自分の中ではっきりとそれは育っていたんだ
俺が気づいていなかっただけで、惹かれていた
ほんの少し芽を出していた気持ちが、隆の行動によって花になりつつある
- 70 :さすらいのくま:05/07(月) 16:06:14 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- そうか……やっぱり、俺
「隆」
「ん? どうしたの?」
隆は窓から視線を逸らすと、俺に向かって優しく微笑む
ぎゅ、と再度強くシーツを握りしめると、自分が緊張していることに気づいた
やっぱりまだ迷う気持ちのある俺は、情けなく視線を巡らせた
そうすると、少し離れた場所にあった写真立てが目に入って
……あ
隆らしいシンプルなデザインのそれに、ぴったりと収まっている写真を見て、つい笑みがこぼれた
「俺、好きだよ」
迷いも緊張も何処かに消え去って
「え、何が……?」
俺の胸にあるのは、きっとこの気持ちだけ
「隆が、好き」
俺の隣には隆がいて、隆の隣には俺がいる
屈託無くカメラに向かって笑う俺と、それを見て優しく微笑んでいる隆
落書きと言って良い汚い字で殴り書きされた字は、きっと小沢と潤の字
「カップル誕生だ」
そう読み上げて笑うと、隆も優しく微笑んだ
- 71 :さすらいのくま:05/07(月) 16:11:28 HOST:61-22-32-71.rev.home.ne.jp
- はー…やっと、くっつきました…! 遅
陽平って何受けなんだろう、とか思いつつの両思い編ですw
隆も何攻めなのかがよく分からない…(駄目じゃん
まあ、健気攻めということで(をい
強気受けが好みなくまですが、どう考えても陽平は強気じゃないっすね
ではでは、一章終了のご挨拶でしたー!
- 72 :ライム:05/07(月) 21:25:02 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- 一章終了お疲れ様です(人^□^)八(^о^人)
まぢ因好きだちゅ(〇*^v^)σ
次の作品も待ってます(☆*v3v愛{{chu☆*+
- 73 :まろ:05/08(火) 00:53:37 HOST:07002190702272_ef.ezweb.ne.jp
- 可愛ぃとか、ありがとぅです(^-^)
さすらいのくまさんの名前もなんか好きです(^O^*) はぃ初書き込みです('_^*)
陸&陽平、おめでとぅ★ 第二章も楽しみにしてマス(=^▽^=)
- 74 :陽炎:05/08(火) 20:50:25 HOST:p172.net219126038.tokai.or.jp
- くまお師匠様!!お疲れ様です!!
もー隆と陽平カップル、大好きです!! 2章も頑張ってください!!
- 75 :さすらいのくま:05/20(日) 16:36:58 HOST:61-22-37-65.rev.home.ne.jp
- ライム様
ありがとうございますー!
大好きだなんて、嬉しいです
これからも二人をよろしくお願いします(ぺこり)
まろ様
いえいえ、こちらこそありがとうございます
初書き込みだなんてくまには勿体ないですよー;
ぬるいBL小説ですが、隆と陽平をこれからもよろしくお願いします(礼)
陽炎様
お師匠様…!?【゚Д゚】
そ、そんな…恐縮です;
やっとくっついた二人ですが、好きだと言ってもらえて嬉しいです
2章は初っ端から喧嘩ですが…お楽しみ頂けると嬉しいです
皆様、長い間更新を停滞していて申し訳ありません
2章は初っ端からぬるい喧嘩(しかもすぐ仲直り)ですが、
悩んだ話ですのでお楽しみ頂けると嬉しいです
- 76 :さすらいのくま:05/20(日) 16:39:12 HOST:61-22-37-65.rev.home.ne.jp
- 「隆なんか……別れてやるっ!」
肩で息をしながら怒鳴り散らすと、やっと奴は俺に視線を注いだ
手には某書店のカバーの付いた文庫本を持ち、隆は頭にクエスチョンマークを浮かべている
地面に転がったコーラのペットボトルを拾い上げ、隆にそれを向けてみせる
「陽平?」
別れる気なんてさらさらないことを、隆は分かっているようだ
少しだけ笑みを浮かべて視線を本に落としてゆく
「どうしたの、いきなり」
そう言いながらも視線は活字を追っていて、かちん、と思わず頭に血が上りそうになる
……二人っきりなのに
嫌な音が鼻をすすると部屋に響いて、さすがにこれには隆も顔を上げた
すっかり潤った瞳を見届けると、隆の瞳も僅かだが揺らぐ
「寂しかった……?」
真顔でそう聞かれると何も言えなくなる
だけど俺のつまらないプライドが、首を縦に振ることを躊躇わせた
- 77 :さすらいのくま:05/20(日) 16:41:56 HOST:61-22-37-65.rev.home.ne.jp
- 何も言えずに黙りこくっていると、そっと顎を上げられて、反射的に目を瞑る
「……?」
だけどいつまで待ってもそれはやって来ない
片目だけ開いてみると、すぐ傍に隆の顔があって
かあ、っと顔が熱くなる
……キスされるかと思った
拳を握り締めて、唇を噛み締めると、我慢していたものが零れた
いつからこんな風になったのだろうか
ただの友達だと思っていた、だけど
「期待させんなっ……あほ隆っ」
恐らく迫力のないだろう目で睨みつけて、コーラのペットボトルを投げつける
空になったそれは思いの外威力はなく、虚しくも再び床に転がった
付き合うことになり、もう一ヶ月が経とうとしている
付き合い始めてから隆は触れてこなくなった
それだけでも不安なのに、二人きりでいる今も隆は活字を追って
今日こそは、と思っていたのに
- 78 :さすらいのくま:05/20(日) 16:43:57 HOST:61-22-37-65.rev.home.ne.jp
- 不安は高まるだけで
「ごめん、陽平……俺」
「うっさい!」
飽きられたのか、そんなことを思っていた時に隆は口を開いた
その続きが聞きたくなくてわざと遮るようにして俺も口を開く
決して綺麗とは言えない部屋に視線を向ける
ここは、俺の部屋
隆の部屋の様に整頓された、涼しげな部屋ではないけれど、俺の名前に合ったような部屋だ
暖色系の家具で統一している
オレンジ色のカーッペットを握り締めて、隆に目をやった
染めたことのない綺麗な黒髪、それと同様の黒い瞳が俺の瞳を捕らえる
「俺、帰るね」
少しの沈黙の後、見慣れた指定の鞄を手に立ち上がる隆
- 79 :陽炎:05/21(月) 20:06:47 HOST:p117.net219126049.tokai.or.jp
- くまお師匠様!!
第二章ですね!!もー早く見たくて見たくてうずうずしてました!! アゲです↑↑
- 80 :綺羅:05/25(金) 23:47:51 HOST:p5093-ipad03fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
- 楽しく読ませていただきました。
くま様の作品、私のものとは比べ物にならないくらいお上手で、尊敬しますw 私くま様の作品好きですよw 期待アゲですw
- 81 :さすらいのくま:05/26(土) 15:13:59 HOST:61-22-35-240.rev.home.ne.jp
- 陽炎様
お師匠様、だなんて恐縮です(・ω・`ノ)ノ ←2
うずうずしてくださって、ありがとうございますw
いつも書き込みありがとうございます
綺羅様
読んでくださり、ありがとうございます
違っていたら大変申し訳ないのですが、「secret love」をご執筆なされている綺羅様…じゃないですか?
くま、近親相姦萌えぽいんとなので…照
尊敬だなんて勿体無いお言葉、嬉しく思います
お互い更新頑張りましょう(・∀・)
- 82 :さすらいのくま:05/26(土) 15:16:48 HOST:61-22-35-240.rev.home.ne.jp
- 今、話さなきゃだめになる気がする
本能的にそんなことを思った
「え、あ……どうしたの」
気づいた時には、強く、隆の制服の袖を握っていた
皴になるんじゃないか、とかもうどうだって良くて
縋るような目で見てしまう
「寂しかった、帰んないで」
自分が発した言葉だなんて思えないほどの甘い言葉に、自分も目を瞠(みは)る
だけど一度発した言葉を取り消すことなんて出来ない
ほんのりと桃色に染まった隆の頬に手を添えて、そっと唇で触れる
その瞬間びくりと隆の肩が揺れて
「別れるとか言ってごめん」
- 83 :さすらいのくま:05/26(土) 15:21:11 HOST:61-22-35-240.rev.home.ne.jp
- 思っていたよりも言うのは簡単で
変な意地を張っていた自分が可笑しく思えてきた
でも、と往生際の悪い俺は続ける
視線は床に落としたまま
「俺だって不安になるんだよ」
一ヶ月も触れてもらえなかったら、誰だって不安になるじゃん
そう呟くと、俺の頬に骨ばった手が添えられる
俺の頬が熱いのか、隆の手が冷たくて気持ちが良い
思わずそれに手を重ねると、抱きしめられた
「今までは体だけだったから」
隆の声が、自分の体全体に響き渡るような感覚
心音さえも届きそうで
その言葉に少し嫉妬心を抱きながらも、見抜かれまいと声を発する
「……体だけ?」
「片思いばっかりだったし」
は、と吐き捨てるように笑うと、隆は腕に力を込めてきた
ぽつぽつと、小雨のような一定のリズムで言葉を落として
抱きしめられているから、表情は見ることができないけれど
俺は隆の声に耳を傾ける
- 84 :さすらいのくま:05/26(土) 15:32:32 HOST:61-22-35-240.rev.home.ne.jp
「初めて、なんだ」
どくん、と心臓が跳ねるのが分かった
体に悪いな、と馬鹿みたいなことを考えながら
なんて言おうものかと考えていると、隆が再度口を開いた
「だから、大事にしてたつもりで……何もしなかったんだけど」
不安にさせてごめんね、そう優しく響いた隆の声
今にも零れ落ちそうなそれを、唇を噛み締めて堪える
こう何度も泣くわけにはいかない
ましてや、「俺が初めて」なんて言葉が嬉しくて泣くだなんて男の恥ではないか
噛み締めると鉄の味が口内に広がった
今口を開けば声が震えそうで、深く吐息する
「しょうがないから、許す」
やっと発せた声は、思った通り震えていた
本当は嬉しくて堪らない
だけど、やっぱり俺にもプライドってものはあるわけで
「陽平、可愛い」
「ば、かやろー」
可愛いなんて言葉さえも嬉しくて堪らないんだ
もう、不安にさせるなよ
――そう蚊の鳴くような声で囁いた
- 85 :陽炎:05/28(月) 10:39:57 HOST:p117.net219126049.tokai.or.jp
- 陽平かわい〜!!隆カッコイー!!くまお師匠さまサイコー!!
そう叫びたくなってきました!! これからもずっと読ませていただきます!!|柱|w・`⊂)
- 86 :綺羅:05/28(月) 21:18:29 HOST:p4071-ipad203fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
- そうです♪
私も近親相姦萌えです(*'U`*)(p'v`q)
くま様の小説の雰囲気が好きです(ノ∀`●) アゲときます★
- 87 :さすらいのくま:05/29(火) 18:39:57 HOST:61-22-38-43.rev.home.ne.jp
- 陽炎様
受けを可愛いと言ってもらえるなんて…!
生みの親(何だそれ)として、すごく嬉しいです(・∀・)
隆格好良いですか!? …くまにはヘタレに見えてしょうがないのですが;
最高だなんて;(あわわ)
ありがとうございます、陽炎様もご執筆頑張ってくださいね
綺羅様
やはりそうでしたか…!
ここにあるBL小説にはほとんど目を通していますので(・∀・)
皆さんお上手で自分が恥ずかしくなります;
近親相姦は萌えポイントですよね(笑)
雰囲気、こんなくまの駄文にもあるのでしょうか…
とても嬉しいです、ありがとうございました
- 88 :さすらいのくま:05/29(火) 18:40:20 HOST:61-22-38-43.rev.home.ne.jp
- 忘れていたことが、ある
「陽平おはよ」
「あ、おはよ」
教室に着くと真っ先に声を掛けて来たのは、赤茶の髪を今時風に立てさせた潤だ
中学三年生の平均身長をも満たせていないその身長には、牛乳がとても似合う
が、当の本人のお気に入りは「苺牛乳」らしい
潤に目をやって、それを持っていない時は全くと言って良いほどない
授業中にも平然と机の上に置き、「勉学時の友」だとか言っている
そんな潤に見られていたことを、俺はすっかり忘れていた
まだ付き合う前の頃、屋上で……キスをしていたところを
――じゅ、潤……。お前昨日の見てた、のか?
――うん。見てたよー。恥ずかしいよね、あんなのバラされたら
一度思い出してみればなんのその、溢れ帰るように記憶は俺の脳に入り込む
「てか、お前珍しいな。遅刻じゃないのって」
そう、今日の朝――目が覚めたと同時に――それを思い出した俺は、朝食も抜きに全速力でダッシュして来たのだ
- 89 :さすらいのくま:05/29(火) 21:32:24 HOST:61-22-38-43.rev.home.ne.jp
- 幸い今日は目が覚めた時刻が早かったらしく、教室には俺と潤しかいない
あー……いつもならまだ寝てんのになあ
時計に目をやって吐息すると、本題を忘れかけていることに気づく
「それはどうでも良いんだけどさー……あの、あれ」
いざ言うとなると、やはり聞きにくい
だけど本当にあの現場を見られたのか、どうしても確かめなくてはならない
いくらこの高校が男子校だからと言って、嫌悪感を覚えない奴なんてそうそう居ないだろう
覚悟を決め、潤をしっかりと見やる
「……何」
ただことではないと感じ取ったのか、潤はへらっとしていた表情を堅くした
「結構前の話なんだけどさ」
「うん」
やっぱり言いづらい
覚悟を決めたはずなのに、やはり躊躇ってしまう
潤は一つ息を吐くと教壇からすぐ近くの席に腰掛けた
- 90 :さすらいのくま:05/29(火) 21:34:21 HOST:61-22-38-43.rev.home.ne.jp
「ちょいと椅子借りるよ」
俺に一言了解を得ると、潤はその席……俺の席に座り直す
潤は、まだ鞄が置かれた状態の木製の机に顎を置くと、手に持っていた苺牛乳を俺に手渡した
「飲みな。ゆっくりで良いから話してみ」
手の中にある紙パックのそれを見る
可愛らしいピンク色の背景に、赤の如何にもな苺の絵が正面に大きめに書いてある
少し上にはこれまた可愛らしいポップな字で「苺牛乳」と書かれていて
あまりにも、俺の席で突っ伏している赤茶毛の幼なじみに似つかわしい飲み物につい苦笑してしまう
「あのさ、お前……見た?」
自分でも主語が抜けていることは分かっていたし、気づいていたけれど訂正する気にはなれない
「……何を?」
可愛らしく小首を傾げるでもなく、不愉快そうに眉間に皴を寄せると、潤は聞き返す
折角可愛い顔をしているのだから、小首でも傾げてみれば良いものを
そう言えば殴られることは体に教え込まれたから、口が裂けても言いはしないが
「あの、屋上……で、俺と隆が、居て」
結構月日が経っているからか潤も思い出せないらしい
うーん、と唸る潤に安堵の息を漏らすも束の間、掌を拳で軽快に叩く音が届いた
- 91 :ライム:05/31(木) 06:21:22 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- 最近来れてなかったですけど、めちゃめちゃイイですd(*・・*)b
本間に因好きですうd(*・・*)b 頑張ってくださいね☆
- 92 :さすらいのくま:06/16(土) 16:39:41 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
- ライムさま
お久しぶりですー!
いつもお褒めのお言葉ありがとうございます
更新はもう少し先になりますが、待っていていただけると幸いです
- 93 :陽炎:06/16(土) 22:24:12 HOST:p117.net219126049.tokai.or.jp
- この頃書いていただけなかったので、ちょっと寂しかったです。
更新、待ってます!
やっぱり陽平君カワイーです!!(><)
- 94 :アスカ:06/17(日) 21:18:16 HOST:p5133-ipad204niigatani.niigata.ocn.ne.jp
- さいこぉですね!!!!!!!!!
隠れファンでした!(キモ
惚れますた!愛してます!(蹴
というか初めまして!!!!←おそっ
- 95 :ライム:06/19(火) 06:59:47 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- いつも覚えててくれて、めっちゃ嬉しいです(*^□^)!
更新ゆっくりでいいですよ。 ちゃんと待ってますから+゜
- 96 :黒崎星歩:06/19(火) 16:04:13 HOST:i220-109-146-64.s05.a023.ap.plala.or.jp
- はじめまして!今初めて読んだんですけど、
大好きですっ!と叫びたいです*ワラ* 僕も一応小説書いてるんですが、この作品とは天と地程の差です(泣 これからもガンガン!アゲてくのでがんばってください♪
- 97 :。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。:06/23(土) 10:21:28 HOST:actkyo065142.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
- 初ァゲですッッ読み始めて一瞬で引き込まれてしまいました!!初めてかもしれませんッッ
続きもとても楽しみにしてます!!更新頑張って下さいッッ
- 98 :さすらいのくま:06/23(土) 11:39:18 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
- 皆様書き込みありがとうございます…!
陽炎様
寂しかっただなんて…勿体無いお言葉です
毎度更新停滞してしまって申し訳ありません
受けを可愛いと言ってもらえるのは本当に嬉しいです…
ありがとうございました
アスカ様
か、隠れファン…!?
出てきてくれてありがとうございます (何それ
くまもアスカ様に惚れまし(止)
あ、は、初めましてっ ←
ライム様
ありがとうございます..(・ω・`)
ゆっくりで良い、だなんて
救われます ←おおげさ
こちらこそいつも覚えてくださっていて、応援してくださって感謝しっぱなしです
本当にありがとうございます
黒崎星歩様
初めましてー!
「淫らに鳴いて」の黒崎星歩様…ですよね?
お褒めの言葉ありがとうございます
お互い更新頑張りましょう(・∀・)
。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。様
わ、初めまして!
何度かお目にかかったことはあるんですけど、まさかくまのスレに書き込みしてくれるとは…
ありがとうございます
とても励みになります
またまた停滞してしまって申し訳ありません
やっと期末考査が終わったので、更新したいと思います
- 99 :さすらいのくま:06/23(土) 11:41:51 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
「あー!あれだろ、あの陽平が」
それ以上言わないでくれ…!
そう叫びそうになったときに、勢い良く教室の扉が開いた
思わずどきりと胸が鳴った
見知った姿なのに、俺の胸は見るたびに締め付けられるんだ
柔らかい黒色の髪が窓からの光に照らされていて、余計に大人びた印象を与える
「おはよ、陽平」
隆は右肩にかけていた鞄を自席の机の上に置くと、俺にそう笑いかけた
「おは……よ」
語尾が消えてしまいそうなくらいに小さい声になってしまった
未だに隆の笑顔には慣れない自分に少し笑える
幸せを噛み締めていると、隣で不機嫌そうな声が漏れた
「隆! なんで俺には挨拶なしなんだよ!」
隆を一生懸命見上げると、潤は俺と隆を交互に視線を泳がせる
「まあ、良いけど」
何か意味ありげに吐息すると、潤は笑って俺の席に腰掛けた
……やっぱ知ってんのかな、潤
きっとこいつだったら理解してくれるに違いないだろう
だけど、やっぱり……
- 100 :さすらいのくま:06/23(土) 11:42:51 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
「……平? 陽平?」
「あ、何?」
はっとして顔を上げて自分が俯いていたことに気が付いた
心配そうに見る隆と潤に笑いかけると、二人共ほっとしたように会話を続けた
「でさー! そのとき陽平泣いてて」
「は!?」
机に掌を、それは裁判中に弁護士が意義を唱える姿のように叩き付けた俺を見ると、潤がびくりと肩を揺らした
それと比例するように隆の眉と眉の間に、刻まれた皴
「んだよー……びっくりさせんな」
足を宙に浮いた上体で前後にばたばたと動かすと、潤はにやりと笑んだ
「あー……そっか。ダーリンとの逢引を見られて恥ずかしいんだな」
「は? お前何言って……」
逢引だとか、ダーリンだとか、理解し難い単語に首を捻る
- 101 :さすらいのくま:06/23(土) 11:44:08 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
「さっき、お前見た? とか切羽詰った顔で聞いてきたしさー」
「なっ……!? お前、やっぱ見てたのかよ!」
――隆とキスしているところを見られていた
そう確信して、俺は穴があれば入りたい気分にさせられる
穴がなければ掘ってでも隠れたい……
「別にお前の泣き顔なんて見慣れてるし、そんなに怒ることないじゃん」
赤色と茶色の入り混じった髪をぐしゃぐしゃと掻き毟る潤は、なんでもないことのように言う
俺にさっき手渡した苺牛乳を奪い取ると、潤はそれを美味しそうにストローで吸う
泣き顔?見慣れてる?
混乱する俺の肩に、骨ばった手が乗るのが分かった
「陽平の勘違いだよ。潤は何も知らない」
優しく笑む隆に思わず縋りつきたくなった
- 102 :さすらいのくま:06/23(土) 11:47:05 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
- 「潤、ごめん。ちょっと陽平借りるな」
携帯電話の画面と睨めっこしながらストローの先を噛む潤にそう告げると、隆は俺の腕を引っ張った
潤の返事も聞かぬ間に教室から出る
廊下は少しだけ教室よりも肌寒く感じた
地面に座り込んでいる連中達と挨拶を交わす隆に、ほんの少しだけ不安を覚える
どん、と肩と肩がぶつかる音がして、顔を上げるとピンク色の頭をした男子生徒と目が合った
嫌でも人目を引くであろうその髪色は、不思議と悪そうな感じがしない
ピンク頭の隣には、灰色に近い髪色をした無愛想な男子生徒が立っていて、そいつは俺に頭を下げた
「すいません。ちょっと前方不注意で」
なんでこいつが謝るんだ、と思いながらも、思わず笑顔で返してしまう俺
ピンク頭に目をやると、少し頬を桜色に染めて申し訳無さそうにしていた
「じゃ、俺達急ぐんで」
灰色頭がそう言うと弾かれたようにピンク頭が頭を下げて、二人共言葉通り急いだ様子で駆け出して行った
「あんなピンク居たっけ? 俺初めて見たんだけど」
もう小さくなった二人の背中を指すと、隆がふふっと笑う
「あいつら有名だよ? ほんと陽平って疎いよな」
疎いという言葉に少々不愉快さを覚えながらも、俺は黙って頷いた
やっぱりこいつの笑顔には弱いらしい
- 103 :さすらいのくま:06/23(土) 11:53:44 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
- ***
屋上の重苦しい扉を開けると、綺麗な空が広がっていた
雲一つ無い晴れ空だと朝の天気予報で言ってたけど……ほんとうに今日はそれらしい
天気予報があっている時刻に起きることがあまりないからか、なんとなく新鮮な気分になる
「陽平さ、潤にキスしてるのを見られたって思ってたんだろ?」
ずきん、と胸を何か鋭いもので突かれた気分になる
隣に座る隆の横顔はとても寂しげで、声は掠れていたから
隆はきっとまだ気にしている
同性と言う壁を、俺がノーマルだったことを
街で可愛らしい女の子を俺が目で追いかける度に、隆は傷ついたように笑うのを俺は知っているから
頷くにも頷けずに黙りこくっていると、乾いた笑いが聞こえた
無理に笑うことないのに
不安も何もかもぶつけてくれて良いのに
「俺は……隆にぶつけただろ。なんだって」
やっとの思いで呟いた言葉に隆は不思議そうに笑った
論点がずれていることなんて承知だ
俺を大切にしているから触れられない、とそう言われた日から
やっぱり俺達は進展していない
大切にされているんだと嬉しい反面、俺だって男なんだと思ってしまう
「確かに、潤に見られてたらと思ったら怖くなった。でも……俺は、お前が思ってるよりもお前のこと」
言い終わらないうちに抱き寄せられる
より速さを増す心拍数
香水でもシャンプーの香りでもない、隆の香りが甘く香る
「もう、良い。俺……我慢できない」
囁くように言われ、ずくんと芯が熱くなるのが分かった
「俺、も」
安堵したように笑った隆の顔に、またも射抜かれた
- 104 :陽炎:06/23(土) 16:14:14 HOST:p117.net219126049.tokai.or.jp
- とてもキュンときました!
隆カッコイー! 陽平カワイー! キャーと叫びたくなりました【黙 イイッす!お師匠様!【ぇ これからも頑張ってください!!
- 105 :アスカ:06/24(日) 22:11:51 HOST:p5133-ipad204niigatani.niigata.ocn.ne.jp
- つい出てきちゃいました☆
ひゃほぅー!!どぅなるんだ!?そうなるのか!?(ぅおい くまサマ・・・もったいないお言葉・・・アイシテマス ウザくてすんませんーーー!!!!!
- 106 :さすらいのくま:06/28(木) 19:05:50 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
- 陽炎さま
きゅんとして頂けて本望でございます! ←?
わわわ、勿体無いお言葉ありがとうございましたっ''
お師匠様だなんて、恐縮で(ry)
ありがとうございます!
とても励みになります (´ω`*人)
アスカさま
出てきちゃってくれてありがとうございます 笑''
そうなるんです! ←どうなるんだ
長らくお待たせして申し訳ありません
やっと初体け(ry)です ←
うざくないです! 全然うざくないです!
ありがとうございましたー!
くまも愛してま(止)
ではでは、更新です。
- 107 :さすらいのくま:06/28(木) 19:09:21 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
清潔に保たれた部屋を見回してみる
……なんか、落ち着かねぇ
適当に座ってて、と告げたきり戻って来ない隆の背中をぼんやりと思い浮かべながら、大きな音を立ててソファーに座る
いつ座ってもふかふかで、綺麗なソファーに顔を埋めて目を閉じた
瞼の裏に浮かぶのは、隆の笑顔で
なんだか乙女みたいな自分に苦く笑った
やっぱりするのかな……
俺はあれでも誘ったつもりだし、隆もその気なのだろう
こうして俺を部屋に呼んだのだから
「つか、どっちが突っ込むんだ?」
虚しく、寒色で統一された部屋に俺の疑問が響く
そうだ、そういえば男同士ってどうやってするんだよ!
今更気づいた更なる疑問に声を荒げそうになる
さほど性欲も強いわけじゃないからか、自分を慰めることは片手で数えられる回数しかしたことがない
強いわけじゃないというよりも、人よりも結構低いのかもしれない
実を言うと同学年の奴等の使う用語だって、俺にとっては宇宙語を解読するのと同じくらいに、意味を理解するのは酷なことで
こんな俺が男同士のセックスの仕方だなんて、分かるはずがない
突っ込み合う、なんてことできないし……どうやってするんだろ
考えるのも面倒になってきた俺は、深く吐息して、深くソファーに顔を埋めた
- 108 :さすらいのくま:06/28(木) 19:11:07 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
- 「……ん、ぅ」
何か温かいものに包まれているような感覚がして、目が覚めた
うわ……俺寝ちゃったんだ
隆に申し訳ないな、と思いながらも少しだけ安堵する自分が居る
ゆっくりと起き上がると何か骨ばったものに腕がぶつかった
「痛って、んだこれ」
まるで骨と骨がぶつかったような痛みに思わず顔を歪ませる
思いっきりそれを掴み取ると、見慣れた大きな手だった
なんで……?
温かいものの正体は、隆だった
俺を包むようにして幸せそうに寝息をたてている姿に、思わず笑みが零れる
愛しい、そんな気持ちが溢れてくる気がした
あまりに気持ち良さそうに眠っているから、起そうかと少し逡巡したが起すことにした
もう一度布団に潜り、隆と向かい合わせになる
規則正しい寝息が髪に触れて、少しくすぐったい
- 109 :さすらいのくま:06/28(木) 19:13:12 HOST:61-22-37-134.rev.home.ne.jp
- 思わず目を閉じてしまいそうな心地よさに抵抗し、隆の額に手を添える
温かくもないけれど、冷たくもない
そんな微妙だけれど心地の良い温度だった
そのまま、綺麗な黒色の髪に指を通す
しばらくその姿で幸せを感じていたものの、ふつふつと悪戯心が芽生えてきた
マジックで落書きはありきたりだし、でこぴんするのも迫力にかけるなあ……
枕に膝をついて頬杖をつきながらぼんやりと隆の顔を見る
自然と唇に目がいってしまいそうになり、一人で首を振った
だけど欲は堪え切れなくて
――少しくらい、良いよな?
触れるくらいの口付けをして、そっと唇を離した
それでもなんだか物足りなくて、もう一度だけと唇を重ねる
俺は何をやっているのだろうと自分自身に苦笑しながらも、止められない
何度も何度も触れるだけのキスをくり返して、唇を離そうとしたとき、
「う、わ」
- 110 :陽炎:06/28(木) 20:10:51 HOST:p117.net219126049.tokai.or.jp
- キャー!!【黙
するのか?しちゃうのか!?【黙 お師匠さまぁ!! メッチャくちゃドキドキしちゃいますよぉ! 頑張ってください♪
- 111 :。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。:06/30(土) 11:42:28 HOST:actkyo120162.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
- 最近はあまり頻繁に来れなくてきづいたら結構進んでますねッッ
どの小説にも読み返すとかなり恥かしいもので(照)みられていたとは.....!!(笑 陽平はホント可愛いですねッッ個人的には潤がツボなんd(強制終了 続きとても楽しみにしてます!!更新頑張って下さいッッ
- 112 :ライム:06/30(土) 12:03:29 HOST:05004013799213_ea.ezweb.ne.jp
- お勉強が忙しくって最近來れなかった…って思ったら+゜
めたA更新されてて感動です(*^□^)∧(^□^*) これからも頑張って下さいね+゜ ころころと変わる展開にドキドキです(/∀〃照)(照ノω〃)
- 113 :さすらいのくま:06/30(土) 15:39:34 HOST:61-27-214-89.rev.home.ne.jp
- 陽炎さま
しちゃうのです え
どきどきして頂けて本望です 笑''
初のあれなシーン、頑張ります 何
わわ、微妙にネタバレなレスごめんなさい
。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。さま
皆様の期待に添えるかは分かりませんが、くまなりにハイスピードで進めてみました 笑''
そんな.. でも、書き込んでいただけて嬉しいです(∀)
そ、そんなに可愛いですか、ね え
わわ、実はくま的に1番潤がお気に入りなキャラでしてっ;
楽しみだと言って頂けて、とても励みになります!
ライムさま
お勉強、お疲れ様ですー!
自分なりに頑張ってみます (・∀・)
ありがちな展開になっていないか心配ですが…そう言ってもらえると救われます
皆様、書き込みありがとうございました
ではでは更新です
- 114 :さすらいのくま:06/30(土) 16:19:14 HOST:61-27-214-89.rev.home.ne.jp
背中から抱きすくめられ、思わずびくりと肩を揺らす
ベッドも不快な音を立てながら揺れて、なんとなく変な気分になった
腹辺りに隆の腕が巻かれていて抵抗したくてもできない
「隆起きてたのかよっ!」
じたばたと足を揺らしながら足掻くと、隆が困ったような笑みを零した
「起したのは陽平でしょ」
そう耳元で囁かれ、腰がずくんと疼く
同時に頬に熱が集中するのにも気が付いてしまい、体中が熱い
居た堪れなくなり、爽やかな水色のベッドシーツを力いっぱい握り締めた
「うっせ……馬鹿」
何度もキスをされたら起きたくなくとも目が覚めてしまうだろうとは思うけれど、
改めて自分のしたことの恥ずかしさを認識させられてしまうと、穴があれば入りたい衝動に駆られる
「でも、嬉しかった」
「……っ! 恥ずかしいこと言うな!」
くるりと向きを変えられ、向かい合う形になってしまうと、もう駄目だった
真っ直ぐ隆を見ることができなくて、それでも見たいという矛盾した気持ち
結局目を伏せていると、頬に手を添えられた
顎を上に向けられて必然的に隆と視線がぶつかる
頬がさっきよりも熱を持ったのが分かった
- 115 :さすらいのくま:06/30(土) 16:20:12 HOST:61-27-214-89.rev.home.ne.jp
- 「可愛い。陽平――大好き」
ふわりと、今まで見てきたどんな笑顔よりも優しく笑ったような気がして
どんな声よりも優しい声音でそう言われた気がして
かちこちと鳴る時計の秒針が、疎ましく思えた
「ん……んっ」
最初は触れるだけだったものが、段々と激しさを増す
歯の裏側までも舐められ、中心が大きさを増した
口内で動き回る舌を追いかけるのに夢中になり、飲みきれずに零れ落ちた唾液も気にならない
キスだけで達してしまいそうなのを必死に堪えて、隆のシャツを強く握り締めた
「ふ、あ……ん」
離れていく唇を名残惜しそうに銀色の糸が引く
最後に下唇をぺろりと舐められた
中心はもう膨張しきっていて、今にも達してしまいそうだ
キス、上手すぎなんだよっ……
言うのも悔しいので心の中で毒づいて、もう一度触れるだけの口付けを交わす
- 116 :さすらいのくま:07/07(土) 19:58:03 HOST:61-27-214-89.rev.home.ne.jp
- 「ごめん……俺、できるだけ優しくするけど、無理かも」
切羽詰ったように言うと、ゆっくりと隆は俺を押し倒した
丁寧に外されていくボタンにもどかしさも覚えながら、俺は目を閉じる
吐息して目を開くと、困ったような隆の顔があった
「やっぱり今日はやめる?」
自分だってきついだろうに、隆は優しく言った
そんなところにもときめきながら、俺は首を横に振る
「俺も、我慢……無理だし」
そう呟くと、嬉しそうに隆が笑った
服を脱ぎ終えると、なんとも恥ずかしい気分になった
同じ男なのに……馬鹿みてぇ
そう思うけれど染まる頬は何もかもを物語っているだろう
ぼんやりと天井を見ていると、変な感覚が押し寄せてきた
「ひゃっ……な、何してんだよっ」
「気持ち良くない?」
隆は桜色の突起を指で優しく転がすと、片方を口に含んだ
その瞬間、電撃が走ったみたいに肌が粟立つ
- 117 :アスカ:07/08(日) 01:47:29 HOST:p5206-ipad201niigatani.niigata.ocn.ne.jp
- うひゃお!w更新してるw
うわぁーー続きが気になるなる!(ウザイですね ついに・・・ついに!!ワーイ←ハハハ ウザイ ウザくないですか!?なら・・・来ちゃいますよ??何度も こんな時間にアハハハ
- 118 :陽炎:07/08(日) 13:18:40 HOST:p117.net219126049.tokai.or.jp
- お師匠様!
もう、もう・・・。 まだまだこれからなのにもうドキドキワクワクぞくぞくがとまりません!!(><) 頑張ってください!
- 119 :さすらいのくま:07/13(金) 22:42:20 HOST:61-27-214-35.rev.home.ne.jp
- アスカ様
全然うざくありません!
こんな時間に全然お-け-です(つω^)
何十回でも何百回でも来ちゃってください ←
続きを読みたいと思ってもらえて、すごく励みになります
書き込みありがとうございました
陽炎さま
お師匠様だなんて恐縮で(ry)
まだまだこれからです..にゃんにゃん(古)し-んは始まったばかりです 何
ドキドキワクワクぞくぞくΣ(´Д`;)
が、がむばります!
書き込みありがとうございました
ではでは、更新です
- 120 :さすらいのくま:07/13(金) 22:45:06 HOST:61-27-214-35.rev.home.ne.jp
「や、ん」
片方は優しく転がされたままで、くすぐったいような気持ち良いような、微妙な感じがする
女じゃないのに……こんなとこが感じるなんて
次々と漏れる甘い声に自分でも吐き気を覚えそうになった
「も、そこ……やめ、ろっ」
じたばたと再び抵抗すると、隆が優しく頭を撫でる
「今から、陽平きついと思うけど……できるだけ優しくするから」
そう言いながら、制服のネクタイを緩める仕草が俺の頬を染める
隆は上半身だけを脱ぎ終えると、テーブルの上に置いてあったボトルに手を伸ばした
透明な液体のような何かが、骨ばった隆の掌へと垂れてゆく
少し多いんじゃないかと思うほどにたっぷりそれを出し終えると、隆は何度かも分からない言葉を口にした
「できるだけ、優しくするから」
そう隆が何度も言ったわけが、分かった気がする
四つん這いの状態で、顔を枕に埋めて痛みに耐えた
後ろから聞こえる水音に恥ずかしくなるけれど、やはりそれよりも痛みの方が勝っていた
「やっ……い、った」
普通は何かを受け入れる役目を持たないそこが、安易に広がるわけがなく
多いんじゃないかと思っていた液体だって、全然足りないくらいだ
中々指が入り込めず、だんだんと冷や汗にも近いものが出てくる
- 121 :さすらいのくま:07/13(金) 22:57:15 HOST:61-27-214-35.rev.home.ne.jp
- 「は、あっ……苦し……も、無理っ」
「ん、あとちょっと我慢して、な」
もう嫌だと首を振りそうになったとき、隆の手が俺の額に触れた
汗で張り付いた前髪を優しく整えて、触れるだけのキスを落として
揺らぐ視界で隆を見ると、切羽詰ったような表情を浮かべていた
苦しいのは、俺だけじゃない
ゆっくりと首を縦に振り、ぎゅっとシーツを握った
*
やっと三本入った頃には、快感も少しだけれど感じるようになった
かき混ぜるように動く指に腰が揺れる
恥ずかしいと思いながらも、体はもっと強い快感を欲していて
「ひゃっ……ああっ」
噛み殺してきた甘い声よりも高い声が漏れ、思わず口を塞ぐ
それより……なに、これ
思考回路がめちゃくちゃになりそうなくらい、気持ちが良くて
「ここ?」
少し口元を上げ、隆はもう一度そこを刺激する
- 122 :さすらいのくま:07/21(土) 15:23:07 HOST:61-27-214-35.rev.home.ne.jp
- 「あ、あっ……や、そこ……だめっ」
「前立腺、見つけたかな」
「な、に? や、ああっ」
聞いたことのない単語に首を傾げると、指がゆるゆると引き抜かれた
「あっ……」
喪失感に声を漏らすと、隆は苦く笑った
「陽平、反則だよ」
「ば、っか言ってんじゃねぇよ……っ」
余裕があるように見せたいなんて意地は全くなくなって、出る言葉に付く声でさえ弱弱しく余裕のない音で
視界がゆらゆらと揺れて見えるのはきっと、涙なんかが溜っているからなんだ
だけどそれを認めるのが嫌で毒づこうとしても、本気で拒絶なんかできるわけじゃない
抱いたことも、まして抱かれたこともない俺に余裕を求めるのは無理だろうか
目の前に居るこいつでさえも、切羽詰った様子なんだから……無理なんだろうけど
きっと、初めてじゃないはずなのに
嫉妬心なんかが生まれてきそうだったところで、指とは比べ物にもならない質量のそれが入ってくる
「やっ……い、いきなり!? あっ、んっ」
突然の挿入に素っ頓狂な声があがったと思えば、次には甘い声が部屋に響いた
- 123 :さすらいのくま:07/21(土) 15:55:42 HOST:61-27-214-35.rev.home.ne.jp
その声に隆は少しだけ安堵したような表情を浮かべていて、不安だったのだと今更ながら思う
なるべく声は出さないようにと唇を噛み締めるものの、まだ半分しか入っていないそれに耐えるのは酷で
「いた、いっ……んっ、あんっ」
ぶち、と何かが切れた気がして、痛みが脳内を占領する
「……ごめんな、あと、ちょっとだから」
額に張り付いた俺の前髪を、隆は優しく指で直してくれて
その仕草に、少しだけれど幸せを感じた
*
(ケツ痛ぇ……)
面白くもないテレビをぼんやりと眺めながら、隣から聞こえる寝息に耳を澄ました
規則正しく聞こえる寝息にほんの少しだけ、ほんの少しだけ愛しさを覚えながら
「幸せそうに寝やがって……」
怒りを込めて呟いたつもりのそれは、思ったよりも柔らかな声音だった
- 124 :さすらいのくま:07/21(土) 15:56:04 HOST:61-27-214-35.rev.home.ne.jp
- もう行為から軽く二時間は経っているだろうに、体のだるさは一向に消える様子がない
(出したら眠くなる、なんてのは男の性だから別に責めるつもりはねぇけどさっ……)
「ん……よ、へ?」
「っ!」
(お、起しちゃった?)
隆は完全に開ききっていない目で俺を捕らえると、そっと俺を抱き寄せた
隆の香りと、汗の匂いが鼻を擽(くすぐ)る
起してしまったことに後悔しながらも、目を覚ましてくれたことに嬉しさも感じていた
「陽平……好きだよ」
そう言いながら額にキスを落とす隆は、なんだか子供みたいで可愛らしい
脈拍のない愛の言葉一つで、こんなにも満たされるなんて思ってもいなかった
(俺も好きだよ)
心の中で告げるのが今の俺には精一杯だった
あの日、俺と隆が一緒に帰らなかったら、きっと俺達は友達のままだったんだと思う
偶然が重なり合ったのではなく、きっと必然だったのだと思う
――たまには小説も読んでみろよ
また眠りの世界へと旅立って行った隆の寝顔を眺めていると、あの日の隆の声が聞こえた気がした
たまには小説も読んでみろよ fin
- 125 :さすらいのくま:07/21(土) 16:17:26 HOST:61-27-214-35.rev.home.ne.jp
- はい、「たまには小説も読んでみろよ」の作者、さすらいのくまでございます
一応、本編はこれで終わりです
今書いている小説が終わったら、番外編を書く予定です(宣伝とかやらしい)
正直、更新が停滞することも多く、やめた方が良いのかとも思いました
そんなときにタイミング良く応援の書き込みがあったおかげで、最後まで書き上げることができました
どの書き込みにも、本当に励まされ、感謝しています
大袈裟だと笑われそうですが、すごく励みになりました
また、書き込みはしてないけど読んでやってたぜ、と言う方にもお礼を言いたいと思います
本当にありがとうございました
誤字脱字は多かったり、情景も伝わりにくかったりと反省する点の多い「たまには小説も読んでみろよ」でしたが、 書いていて楽しかったです
これからも誰か一人にでも「更新が待ち遠しい」と思っていただけるような小説作りに精進したいと思います
special thank you.
N様 ゆ様 ルナ様 ライム様 レナ様 あると様 陽炎様 まろ様 綺羅様 アスカ様 黒崎星歩様 。*。+゚σ(o´∀`悠) ゚+。*。様
では、また会えることを楽しみにしています(・∀・)
- 126 :さすらいのくま:07/28(土) 15:17:09 HOST:61-22-37-193.rev.home.ne.jp
- 保存の為、あげです;;
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