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あの夜俺の星が消えた

1 :奈々:08/18(土) 21:54:57 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
奈々と申します。

女ですが、男の人の物語を書きます。

恋愛相談部という小説も書いています。

よろしくおねがいします。

2 :奈々:08/18(土) 21:58:22 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
 彼女は俺にとって光だった。

 彼女は俺にとって笑いの種であった。

 彼女は俺にとって楽園だった。

 彼女は俺のことをどう思っていたのだろう。

 彼女は俺にとって星だった。


♪〜・♪〜・♪〜・♪〜・♪〜・

あの夜俺の星が消えた

3 :奈々:08/18(土) 22:12:15 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
俺の名前は巧。伊藤巧という。


「巧ー!卵買って来てー!」

「やだよー!俺、もう二十歳だぜー!」

「二十歳でも親の手伝いしなさい。」

「わかったよ。行けばいいんだろ!行けば!」

そう言って面倒臭そうにに下に下りた。

「はい。お金!」

「いらねーよ!自分の金で買ってくる。」

「あら。太っ腹ねー。」

  だーもう。うぜー!」

「いっています。」

「気をつけてねー!」

  うるせーな!いちいち。もう小学生じゃねーっつーの!

自転車の鍵をさして、近くのスーパーに急いだ。

スーパーについて野菜コーナーに行った。

「たーくーみ!」

誰かが俺の目を隠す。

「あ?誰?」

「じゃーん。私!」

そう言って手を外された。

「幸!」

「久しぶりー!」

俺の目を隠したのは近所の幸(ゆき)だった。

幸は東京の大学を受験したはず・・・・

「なんでいんの?学校は?」

「やめた!」

「は?なんで?」

「秘密!あっ。巧って今もトマト嫌いなの?」

幸はトマトを持って言う。

「あっ。ああ。」

「ダメじゃん。食べないと!」

幸は俺の頬にトマトを当てた。

「やめろよ!臭ーな!」

「臭いとか言うな!これもちゃんと生きてるんだから、嫌っちゃダメ。」

最後に会ったときより、すごく大人びた幸・・・・。」




4 :奈々:08/18(土) 22:13:20 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
訂正・・・・

最後の

最後に会ったときより、すごく大人びた幸・・・・。」

の 」 はミスです。

5 :奈々:08/18(土) 22:29:40 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「何買いに来たの?」

「卵だよ!」

「巧って独り暮らし?」

「違うよ!」

「じゃあおつかいか?二十歳にもなっておつかいかー!」

「るせーよ!」

「あー。怒ってやんのー!」

「うるせーな!とっとと帰れ!」

「あー!久しぶりの元カノになんてことを言う!」

「お前なー!」

「私が初めてだったんだよね?」

「なっ!」

「緊張しすぎて、入らなかった。そして、最後に無理矢理・フガッ」

俺は幸の口を押さえた。

「これ以上言うな!言ったら絞め殺す。」

幸は静かに頷く。

俺は幸の口から手を離した。

「ゲホッ・ゲッホ・オホッ!」

咳をする幸。

  俺、そんなに苦しく口をふさいだか?

「おい。幸大丈夫か?」

「うっそー!演技だよー!アハハ。騙されてやんのー!」

  違う。

  幸は苦しそうに咳をしてた。

「お前、騙したな!マジで首絞めるぞ!」

「・・・・・・・・・いいよ。絞めて・・・。」

幸の真顔の顔。

「・・・・・。」

それに言葉を失っていた。

「冗談だよー!また、騙されてんじゃん!」

俺は卵を買って、外で幸と別れようとした。

「結局お前はスーパーになにしに来たわけ?」

「内緒!」

「秘密多すぎだし・・・・。」

「だって秘密だもん。」

「そっか。じゃあな!」

「ねえ。タクちゃん。」

「タクちゃんって呼ぶな!」

「ねえ。巧。」

「ん?」

「今度、また会ってくれる?」

幸の真顔。

「それも騙してんのか?」

「ううん。本気。」

「いいよ。」

「じゃあまた、電話する。」

「おう。」



幸に手を振って別れた。


6 :奈々:08/19(日) 01:02:06 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
それから、数日後・・・・

「巧ー!」

階段から母親が呼ぶ。

俺は慌ててエロ本をベッドの下に隠した。

「あ?なに?」

「幸ちゃんが来てるよ!」

「幸が?」

  あいつ、電話するって言ってたのに・・・・・。

俺は階段を下りた。

「よー!タクちゃん!」

「だから、タクちゃんって呼ぶな!」

「ちょっと話があるんだ。」

幸は真剣に言う。

「それって冗談?」

「ううん。本気。」

「あっそう。」

そう言って家を出た。

「で?話って?」

「相変わらずだなー!」

「あ?」

「相変わらずタクちゃんはセッカチなんだから!」

「だから、タクちゃんって言うな!」

「相変わらずこの街も木がない。」

「木か・・・・。」

「東京も木がなくて困ったよ。」



俺はこの時、幸の言ってる意味がわからなかった。

なんで木?って思う自分がいて、でも、それはつっこんじゃいけない気がした。

その意味が分かるのはずっと先・・・・

いや、もうすぐわかるだろう。




「幸って帽子かぶるんだ。」

「うん。可愛いでしょ!?」

「全然。」

「もう。タクちゃんは素直じゃないんだから!」

「だ〜か〜ら〜・・・・」

「どっか店に入って話がしたいんだけど・・・・。」

「わりぃ。俺、金貯めたんだ。」

「えー!私、財布持って来てない。」

「最初っから俺に払わせる気かよ!」

「そうだよ!男が払うのが普通なの!」

「あっ。そう。じゃあ外で話しよう。」

「・・・・うん。」

困ったような顔で幸が言った。


なあ幸。

なんであの時、言ってくれなかったんだ?

言ってくれたら俺は・・・・・・・



「なんで店に入りたがる?」

「暑いもん!」

「外で太陽をいっぱい浴びて、成長しろ!」

「もう、成長なんかしなくてもいい。」

「あ?また、弱気になる。」

「違うよ!二十歳だったらもう成長はしないの!」

「それを言うな!俺は少しでも背が伸びたいんだから!」

「もう、伸びてんじゃん。」

「もっともっと。」

「あっそう。」

「で?早く話をしろよ!」

「うっん。」

幸の呼吸がだんだん速くなる。

「幸?」

「ううん。なんでもない。」

「なんでもないって息、切れてんじゃん!」

「ほんとうになんでもないって。」

「そっか。で?」



あの時の俺は話というものが気になって、幸の異変に気づかなかった。

いや。

気づいていたけど、本人が大丈夫って言うなら大丈夫だろって思う俺がいた。



「あの・・ね?」

どう見てもおかしい。

「幸?どうした?」

「なんでもない。」

「なんでもないことないだろ。」

幸はハァハァと言い出した。

「おい。幸!」

「た・・く!」

「幸?」

「おね・がい。」

「ん?」

「水!」

「水?」

「み・ハァず。」

幸はそのまま俺に倒れ掛かった。

「幸?」

俺は慌てて携帯をだした。

「幸の親にかけるべきか?救急車か?」

俺は119と押した。

「ハァハァハァハァ。」

幸の息はとまらない。

「幸!どうした?」


あの時の俺はただの熱中症かと思っていた。

だってその時はちょうど夏だったから。


7 :奈々:08/19(日) 01:15:28 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
しばらくして、救急車が来た。


「女性の名前は?」

「篠原幸です。」

「年齢は?」

「二十歳です。」

「いつから発作が?」

「20分前からです。」

「とにかく一緒にのってください。」



俺は幸が医者に見てもらってるとき、幸の親に電話した。


しばらくしてから、幸の両親が来た。

「タクちゃん。ひさしぶりね。」

おばさんは冷静に言った。

  なんで冷静なの?幸があんなに苦しんでたのに・・・・。

「すみません。俺が付いていながらも・・・・。」

「いいのよ。気にしないでちょうだい。」

しばらくして医者が出てきた。

「いつもの発作でしょう。今日は入院してもらうことになります。」

「はい。」

  いつものってなんだ?

「発作から早く処置できたから幸さんの病状は悪化していません。」

  病状って?


「ありがとうございます。」

「おばさん。」

「ん?どうしたの?」

「病状って?」

おばさんはおじさんと顔を合わせて言った。

「なんでもないのよ。タクちゃんは早く帰りなさい。
幸の側にいてくれてありがとう。」


おばさんの不思議な動きを俺は不審に思いながらも家に帰った。

そのまま眠りに付いた。

  なあ。

  病状ってなんだ?

  幸は病気なのか?

  発作が起こると知ってたから、店に入りたがったのか?

  じゃあなんで言わないんだ?

  なあ

  幸はなんの病気なんだ?

  なあ

  幸・・・・・。


幸が病気かも知れないと思ってしまう自分に腹を立てていた。

  幸が・・・・

  まさか・・・・

 

その思いを踏みにじるように真実を聞いたのは数日後だった。



8 :奈々:08/19(日) 12:51:21 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
数日後、幸は元気そうに俺の家を訪れた。

「おい。前、どうしたんだ?」

「あー。ただの熱中症だよ。」

幸がなにかを隠してるのはわかる。

でも、幸はそれを俺に知られたくないと思ってるのなら、首を突っ込まないほうがいいだろうと思った。


「そっか。気をつけろよ。」

「ありがとう。タクちゃん。」

「だから・・・・・」

「タクちゃんって言うな!でしょ?」

「俺の言いたいことを言うな!」

「ハハハハハハ。」

幸せに笑う幸を微笑ましく見守った。

この笑顔がずっと続いたらいいのにと・・・・・

「この前の話がしたいんだけど。」

「うん。」

「今度はお金持って来たし。」

「奢ってくれんの?」

「貸すだけ!」

「はいはい。」

俺達は近くのレストランに向かった。

「ちょうどお昼どきだから、混んでるね。」

「うん。」

ちょうど運よく俺達の名前が呼ばれた。

「仕方ないからご飯も食べなよ。」

「どうせ、俺の金だろ?」

「ピンポーン!」

俺はメニューを見て選んでた。

「ねぇねぇ。」

「ん?」

「タクちゃん、これにしたら?」

幸が指したのは『トマトソースのスパゲッティー』

「冗談はやめろ!」

「苦手を克服するのだー!」

「いや!」

「もう。子供なんやから!」

「俺、ステーキにする。」

「えー!そんな高いの頼むん?」

「どうせ、俺の金やんけ!」

「まあ。そうやけど・・・。」

俺はステーキを注文した。

「幸は何を注文したん?」

「秘密!」

「秘密多すぎやぞ!」

「いいやん!」



9 :奈々:08/19(日) 15:20:43 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
しばらくして、俺が頼んだものがきた。

幸はサラダを頼んでたみたい・・・・。


「幸ってサラダ好きやった?」

「別に・・・。」

「幸、肉好きやろ?食べる?」

「ううん。いい。」

「どうしたん。お前、東京行ってから変わったな!」

「そうか?」

「痩せたし、肉も食べへんし、野菜に目覚めたし、元気ないし・・・。何があったんや?」

「あっ。タクちゃん。トマト食べるか?」

「話ごまかすな!何があったん?」

「ちょっとなー!最近、太ってきたからダイエット始めてん!よかったー。タクちゃんに痩せてるって言われた。
頑張ってよかった。」

「ほんまか?」

「疑い深い男は嫌われるよ。」

俺は必死に肉にガッツいた。

「でな。話っていうのは・・・」

幸の言葉に俺は手を止めた。

「なんや?」

水を口に流し込んだ。

「私、タクちゃんのことが好きやねん。」

突然の告白・・・・

  幸が俺を?



なんであの時、俺は「俺も」って素直に言わへんかったんやろう!?

後悔だけが胸にのこった。




「それ、冗談か?」


「うん。そうやで!また、騙されてよる!」


  やっぱり。

  幸が俺に惚れるわけないやんけ。

「お前、いい加減にしろよ!俺はお前の遊び道具じゃないんや!
話があるって言ったから来たのにお前はなにが言いたいねん。
隠し事ばっかりしやがって!
話がないんやったら俺は帰る!」

俺は、立ち上がって家に帰った。


  意味わからん。


  なんやねん


  あいつ・・・・

  なにを隠しとんねん!




10 :雫 餡子  (EJtHT/7YUM):08/19(日) 15:23:04 HOST:d202051047130.cable.ogaki-tv.ne.jp
あげ!!
私も小説かいてるので見に来てください
お互い頑張りましょう!

11 :奈々:08/19(日) 15:53:26 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
アゲありがとうございます!!
小説見ましたよ。とっても素敵な小説ですね!
お互い頑張りましょう。

12 :奈々:08/19(日) 16:12:25 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
幸と喧嘩して1ヶ月がたった。

あれから、幸に会ってないし、幸と連絡もしていない。

俺は幸のことを気にしないようにした。


「巧!巧!」

母親がノックもせずに俺の部屋に入ってきた。

「なんやねん。ババア!勝手に入ってくんなや!」

俺は不機嫌に言った。

「違うねん。さっき、大本さんっていう奥さんに聞いたんやけど、幸ちゃんが総合病院に入院してるって!」

俺は慌てて母親に病室を教えてもらった。

「巧!どこいくん?」

「病院に決まってるやんけ!」

家を飛び出してタクシーを捕まえた。

「総合病院まで!」

  なあ


  幸


  あの時の話ってほんまに好きって伝える話なんか?


  もっと大事な話があったんちゃうの?


さっきまでのプライドを脱ぎ捨てて、幸の病室に向かった。

  504・・・・504・・・・

俺は必死に部屋を探した。

  あった。

そこには『篠原 幸』と書いてあった。

  ここか。

俺は部屋のドアをノックしようとした。

『出て行ってよ!なんで本人に病気を言ってくれへんの!?
どうせ死ぬんやろ!』

『違うって!幸!落ち着いて!』

『出て行って!』

俺はドアを開けた。

「幸?」

「あっ。タクちゃん!」

さっきまであんな声を出してたとは思えないような明るさ。

「あっ。ちょっと外に行ってるな!」

おばさんは病室から出て行った。

「前は怒鳴ったりして悪かったわ。」

「前・・・?あー!全然気にしてないんよ!それより、なんで入院してるってわかったん?」

「・・・・・・・・。」


「もしかして大本さんやろ?」

「あっ。ああ。」

「やっぱり?あのおばさん噂好きやし、すぐに言い振らさはるから嫌やねん。」

「うん。」

「まあ。座ってーや!」

「なあ。幸。」

「ん?」

「お前は、なんの病気なんや?」

「病気?アハハハ。アホやろ!?病気ちゃうって!盲腸!」


「お前、なんか隠してるんやろ?」

「隠してないって!」

「じゃあなんで発作が起こったんや?」

「だから、熱中症!」

「熱中症で発作なんかでないぞ」

「・・・・・・・。」

「この先、黙っててもどうせバレルことやん。話せ!」







13 :奈々:08/19(日) 17:07:22 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「ッ・・・・・・。」

幸は窓を見た。

「タクちゃんには、死んでからバレたかったんやけどなー!」

「・・・・・・。」

「暑い所に数時間・・・数十分居ただけで発作になるんよ。
あの時の発作は病気やから起こってん。
私が病気って知ったんは、今年の春やねん。異変は高校の時から感じてたんやけど、深くは考えへんかった。」

「なんの病気?」

「体全体が病んでる。少しでも間違った生活をしてたら、臓器が破裂したり、骨がぼろぼろになったり、脳が死んだり、血が止まったりするんよ。」

「発作が起こるのは肺が暑さで圧迫されてしまうから。」

「治るん?」


幸は静かに首を横に振った。

「死ぬのを遅くする努力はしてるよ。薬を飲んだり、食生活に気をつけたり、一週間に4回の点滴とかいろいろ頑張ってる。」

「だから、サラダ食べたんや!」

「うん。」

「頑張ったら35歳まで生きれるって言ってた。」

「そっか・・・・。」

「お願いやから、誰にも言わないで!」

「わかった。」

「・・・・・・・・・・・・・ごめん。帰って!」

「えっ?」

「やっぱりタクちゃんの顔が見れへん。」

「うん。わかった。」

俺は静かに部屋を出た。

「タクちゃん。」

おばさんが俺を呼んだ。

俺は頭を下げた。

「幸から病気のこと、聞きました。」

「少し、話したいんよ。」

俺はおばさんの後についていった。


「幸の病気はもう少し見つかるのが早かったらアメリカに行って手術したら治ってた。
けど・・・・・。
発見したのが遅かったんよ。」



「タクちゃんが悪いとは言わへんけど、あの日、タクちゃんと話てくるって言った日に泣きながら帰ってきて、その夜に体全体が暑い・痛いって訴えてきたんよ。」


「幸の病気は精神からきたものやから、タクちゃんと喧嘩したんだってすぐにわかったんよ。
その日から、幸の病気が悪くなっていって、入院することになったんよ。」



「今の幸を支えられるのはタクちゃんだけやから、側にいてあげて!」

「・・・・はい。」

「タクちゃん知ってるやろ?幸の中学生の親友が高校でイジメにあって自殺したって。」


「はい。」


「あの子、責任感が強い子やから、自分がもっと力になってあげたらよかったとか考え込んだんよ。その時に付き合ってた彼氏の浮気を知ったり、恥かしいけど家族が喧嘩ばっかりしてて・・・・・。」

「・・・・・・・。」

「精神的にボロボロになった幸はその思いを1人抱えたままでいたんよ。」

  なんで俺は気づかなかったんや!?

  幸は笑顔を見せてたから、安心してた。

  でも、そんな気持ち抱えてるとは・・・・・。

「それで、精神科で見てもらったら、精神的にやばくなっていて。そのまま気を使って生活してたらもっと1人で抱え込んでしまって・・・・・・。」


「それで病気になったんですか?」

「原因はわからへんけど、最初は癌か、なんかやって・・・・・。」

「癌?」

「癌がいろんなところにいってしまってね。」




14 :奈々:08/19(日) 17:24:51 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
  幸が癌。。。。

「ごめんね。こんなこと話して!
でも、幸にとってタクちゃんは精神の薬やから、ずっと側に居ってやって!
じゃあ、私は幸のところに戻るね。」


おばさんは涙を抑えながら俺から離れていった。


  幸が癌で35歳までの命・・・・。




その時の俺は自分が今、幸に何をしてあげられるかと悩んでいた。


自分1人が頑張って幸の命が長くなるのか?と思う俺がいた。


おばさんの言葉がプレッシャーになって俺はただ立ち尽くした。





  幸がいなくなる


  幸


  頼むから死なないで!



俺はその時にハッと気づいた。

そして、慌てて外にでた。

ちょうど幸の病室の窓が見える。


「幸ー!!」

俺は命一杯に叫んだ。

「ゆーきー!」

病室のあちこちから患者が窓を開ける。


「ゆーきー!」

外にいる医師や患者も不審な目で見る。

その時、恥かしそうに幸が窓から顔をだした。


「おれなー!幸が好きやー!」

命一杯に叫ぶ。

「同情なんかじゃない!俺は幸が好き!」

「ずっと側におったるから、安心しろー!」

「お前は俺の為に命一杯生きろー!」

「俺が幸せにしたるからー!」


幸は泣きながら答えた。


「巧のアホー!」

「嬉しいやんかー!」

恥かしそうに幸は言った。

窓から幸が咳をするのが見える。

「幸ー!」

「今日は、ゆっくり休めー!」

俺は幸に手を振って家に帰った。


  あー!

  恥かしいことしてもーた!

  なんであんなことしたんや!

  みんな見てたぞ!

  でも・・・・・

  気持ちが言えてよかった。

  俺は幸が好きなんや。

  それが伝えられてよかった。

俺は顔を真っ赤にしながらベッドに寝転んだ。


15 :奈々:08/19(日) 18:26:21 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
俺達はその後、付き合った。

幸と付き合ってから、幸の病状はだんだん良くなっていったが、退院とはいかなかった。

そのまま月日が過ぎて冬になった。

「幸?」

俺はいつもの様に幸の見舞いに行った。

「タクちゃーん。」

幸は笑顔を見せて俺に抱きついてくる。

「おい。そんな大声だすな!」

俺は昼間働いていて、見舞いはいつも夜に来ていた。

よく見つかって怒られたこともあったが、俺は幸に会えない日がとても辛いので無理してまでも幸に会いに来ていた。

「そういえば、幸の誕生日ってもうすぐだよな!」

幸を抱っこして、ベッドに寝かせながら俺は囁いた。

「うん。知ってる?私が冬に生まれなかったら幸(さち)だったんだよ。」

「サチ?」

「うん。幸せっていう字はユキとも読むしサチとも読むの。


「幸にはユキが似合うよ。」

「アハハハ。ありがとう。」

「俺も思い出したよ。」

「ん?」

「幸が中学の時に引越して来ただろ?
その時、幸に一目惚れしたんだ。」

俺は幸と一緒にベッドにのった。

「まじで!私に一目惚れ!?」

「うん。まじ、あの子可愛いって思ったんだ。」

「だから、告白したの?」

「うん。幸が初めての彼女だったんだ。」

「そうなんだ!初めて知った。」

「でさ。俺、告白する前にダチに幸のこと教えてもらったんだ。
紙に書いてもらったからさ・・・・」

「あっ。だから、告白の時に幸(さち)って言ったの?」

「そう。幸が幸(ユキ)って知ったのは付き合ってからだよ。
ほんと、あの時は恥かしかった。」


16 :奈々:08/19(日) 18:39:28 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「アハハハ!巧、可愛いー!」

「幸は中学の時なんで俺と付き合ったの?」

「・・・・・・・。なんとなく?」

「はぁ?」

「まじごめん!でも、付き合っていくうちに好きになったんだよ!」

「はぁ!」

「でも、巧と初めて寝た時は忘れないよ。」

「その話はいいって!」

「でも、本当に嬉しかったんだよ?」

「あっ。雪!」

俺は窓を見て言った。

白く光る雪が降っている。

「雪?まじで?」

「うん。」

「キレー!」

「俺さ・・・・。」

幸の横顔を見ながら言った。

「ん?」

「幸と別れてから結構上達したよ?」

幸はフッと笑った。

「何人の女を抱いた?」

「秘密♪!」

「じゃあ、上達ぶりを見せて。」

俺は幸とキスをした。

寒い夜に俺等は何度も絡み合って、温もりを求め合った。

雪の夜。

俺は大切なものを守る様に抱いた。

「幸・・・・・。好きだよ!?」

呼吸がジョジョに早くなる。

「幸?大丈夫か?」

「うっうん。」

「ほんまに?」

「うっうん。もっとっ!」

幸は俺の頭を押さえつけた!


そのまま幸は気を失った。


俺は幸に服を着させた。

「幸・・・・。じゃあな。」

俺は幸にキスをして、病院を後にした。





17 :奈々:08/19(日) 21:46:32 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「巧!起きや!仕事行きなさい!」

「うるさいな!今日、休みや!」

「あっ。そうやったん!ごめんな!」

母親のせいで俺は目を覚ました。

俺は頭を掻いてベッドから降りた。

  幸のところに行こうかな!?

そう思って準備をした。

「巧ー!」

「なんや?」

「友達来てるよ!」

「友達?」

俺はゆっくりと下に下りた。

「春平!」

「よお!元気だったか?」

それは高校のときの俺のダチだった。

「元気だけど、どうしたん?その髪!」

「あー!染めてん。似合ってる?」

「うーん。ちょっと。」

「なんやねん。その微妙なちょっとは・・・・。」

「まあ上がれや!」

「お邪魔します!」

俺は春平を自分の部屋に案内した。

「どうしたんや?急に!」

「お前、彼女おるか?」

「彼女?おるけど・・・。」

「まじで!巧も無理か・・・・。」

「なんやねん。」

「いやー。合コンの人数が足りひんって後輩に頼まれてるねん。」

「お前も行くんか?」

「俺は彼女いるし・・・。」

「へー。お前に彼女か・・・・。」

「おう。今、ギターの練習してんねん。」

「なんで?」

「クリスマスに彼女の好きな曲を詩ってやるために。」

「へーー。詩ねー!」

「お前もやってみる?」

「それええな!」

俺は春平からギターを習うことにした。

幸の誕生日に幸の好きな曲を贈ろうと思って・・・・。

18 :奈々:08/19(日) 22:22:14 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
それから、幸の病状は良くなっていったが、俺はギターの練習で見舞いに行けない日があった。

数日後、俺はギターを手に入れて喜んでいた。


「あのー。伊藤さんですか?」


俺に1人の女の子が声をかけてきた。


「そうですが、誰?」

「あっ私、幸の友達の佐藤と申します。」

「あー。幸の・・・・」

「あの。少しお話があるんですが・・・・。」

「いいよ。」

俺達は近くのレストランに向かった。

「で?話って?」

「幸のことなんですが、伊藤さんが見舞いに来ない日が多いと幸から相談を受けまして・・・・。」

「幸から?」

「もしかして、浮気してるのかって心配してました。」

「浮気?ありえない。ちょっと忙しくて会いに行けないの。」

「仕事より彼女を優先したらいいじゃないですか!?
幸は病気なんですよ!」

「仕事じゃないんだ。」

「じゃあ浮気ですか?」

「だー!違う!」

「じゃあなんですか?」

「いえない!」

「どうしてですか?幸が不安な気持ちを抱えているんえすよ!」

「それでも言えない!」

「幸が可愛そうです!
幸せにするって言ったんじゃなかったんですか?」

「あんた、佐藤さんだっけ?」

「はい。」

「幸の友達かなんだか知らないけど、他人の恋愛に突っ込まないでくれる?
俺は、俺のやり方で幸を幸せにすんの!
あんたが突っ込んでくると話がややこしくなる。」

「私は幸の気持ちを・・・・」

「俺が何を考えてるか、なんで他人のあんたに言わなきゃなんないの!?
幸の幸せを思ってるんだったら、黙って見といてよ!」

「伊藤さんが会いに行かないからいけないんでしょ!?」

「だから、理由があるて言ってんじゃん!」

「これだから、言ったんですよ!
こんな軽い男はやめとけって!」

俺はプッツンという音をたてて佐藤の胸ぐらを掴んだ。

「さっきから言ってるけどさ。他人の恋愛にゴチャゴチャ入ってくるんじゃねーよ!
軽い男で悪かったな!」

俺は不機嫌にテーブルを叩いて家に帰った。

  幸の笑顔のためにギターを頑張ってる・・・・

  それはだめなのか?






19 :奈々:08/20(月) 00:40:43 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
家に帰ってしばらくして幸から電話がかかってきた。

「もしもし?」

『もしもし?巧?』


  なんでこんな時だけ巧って呼ぶんだよ!

「なに?」

『今、公衆電話からかけてるから手短に話すね。』

「ああ。」

『なんで久美を怒鳴ったりしたの?』

「ああ。あの女か・・・。ムカついたから・・・。」

『巧がムカついたとしてもあれは私の友達だよ!?』

「知ってるよ。」

『久美は私達の事を心配してくれてるんだよ?』

「でも、他人の恋愛に突っ込みすぎだし・・・・。」

『でも、私の友達なの!元はと言えば巧が見舞いに来ない日が増えたのが原因でしょ?』

「俺だって忙しいんだよ!」

『仕事なの?そんなにお金が必要?』

たしかに俺は最近、仕事を頑張って金を貯めてる。

けど、それは・・・

「欲しい物があるんだよ。」

『それは、私より大切なものなの?』

「大切というか・・・・」

『もういい。わかった。』

「もういいってなんだよ!わかったって何がだよ!」

『結局、巧は私がいなくても寂しくないんだね。私は自分から巧に会いに行けないし、すごく悲しいのに。』

「俺だって会えねーのは辛いよ。」

『じゃあ会いに来なさいよ!』

「今は行けない。また、明日行くから。」

『絶対だよ?待ってるから・・・。』

「うん。」

  明日・・・。

  それは幸の誕生日。

  俺は最高のプレゼントを持って幸に会いに行く。



20 :奈々:08/20(月) 12:22:10 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
俺はその日、休みをもらってた。

俺は気まずく病院に向かった。

「幸?」

俺はゆっくりとドアを開けた。

そこには昨日の女がいた。

「悪いけどさ。席外してくれない?」

女に優しく言う。

「あっ。はい。」

幸は不機嫌なのか俺を見ようとはしない。

「誕生日おめでとう!!」

幸はビックリしたかのように俺を見た。

「あっそっか。私、最近検査ばっかりだったから、忘れてた。」

「自分の誕生日忘れるなよ!」

「アハハ。」

幸のいつもの笑顔。

「その後ろに背負ってるものは?」

俺のギターに幸は疑問を抱く。

「あー。これ?幸の誕生日に好きな歌を歌ってやろうと思ってさ。だから、練習で見舞い来れなかったんだ。
ごめんな。」

幸は涙を見せながら首を横に振った。

「もー。泣くなよ!」

「ねぇ。」

「ん?」

「聞かせて。」

俺は幸に微笑むとゆっくりギターを弾いて歌いだした。


その間も幸の涙は止まらなかった。



  なぁ幸。

  幸の悲しみも苦しみも寂しさも全部俺が受け止めるから。

  だから、俺の側を離れないで!

  幸せにする。

  だから、離れないで。

  一生ずっと側にいて!

俺が歌い終わって幸を見たら、涙をいっぱい零してた。

「もー!」

俺はタオルで幸の涙を拭いた。

「タクちゃん。ありがとう。」

「プレゼントはもう一つ。」

俺は幸に小さな箱を渡した。

「なにこれ?」

「まあ開けな!」

幸はゆっくり箱を開けた。

「鍵?」

幸はゆっくり鍵を出した。

「俺等の家。マンション買った。」

幸は涙を抑えた。

「あと、もう一つのプレゼント!」

俺はまた小さな箱を渡した。

「開けて!」

幸は箱を開けて、ポロポロと涙をこぼした。

「指・・・輪・・?」

「幸・・・。たとえ幸が病気だとしても、幸が死ぬかもしれへんくても、俺は幸と一緒にいたい。
幸の悲しみも苦しみも全部受け止めるから、ずっと一緒におって。
毎日、その笑顔を俺に見せて!
俺と・・・・結婚してください。」


「でも・・・・。私、死ぬんやで!」

「俺が死なさへん!俺がいっぱいいっぱい幸せにして、幸の病気治したる。
たとえ、幸が死んだとしても、俺はお前と別れる気はない。
離れてるけど、幸以外、俺はありえへんから。
俺のお嫁さんになってください。」


「うわーん。ううっ」

幸は子供の様に泣いた。

「幸・・・。返事聞かせて?」

「私も・・・っ巧が好き。」

「うん。」

「巧のっお嫁さんにしてください。」

俺は幸を抱きしめた。

21 :奈々:08/20(月) 14:37:33 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「あんな。俺、頑張って働いて貯金の金を崩してん。
幸が願ってるんやったら、式も挙げられるし、子供だって産める。
これは、幸が病気やからってことじゃない。
いや。ちょっとそうかもしれんけど、幸が幸せになれるんやったら、俺は幸のためになんでもしたるから。」

「巧・・・・・。」

「ん?」

「ありがとう」

「うん。」





22 :奈々:08/21(火) 23:44:11 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
それから、数日が経った。

「ババア!」

俺は珍しく母親を呼んだ。

「なに?」

「俺、結婚するし!」

「は?何行き成り!」

「金は貯まってる。」

「ていうか、誰と?」

「幸と。」

「なっ。いつのまに?」

「今年の夏から付き合っててん。」

「夏って全然、時間が経ってへんやん。」

「俺等には時間なんて関係ない。どれだけ愛し合ってるかで決めたことや!」

「まあ。巧がそう言うんやったら・・・・。」

「今週の日曜日に幸の両親と会うし、ババアも親父を連れてきて!」

「どこに?」

「病院!」

「幸ちゃん、まだ入院してんの?」

「まあ。」

「わかったわ。」

「あっ。それと、来週の火曜日にこの家出て行くし!」

「えっ?」

「急で悪いな!幸と結婚するんやったらって思ってマンション買っといた!」

「でも、幸ちゃんは入院してるやん。」

「退院したら、一緒に住む。」

幸の病気のことは母親には言わない。

また、日を改めて言おうと思っている。

「あんた、一人前になったなー!」

「いつまでも子供とか思ってんなよ!」

「あんたは私等の子供よ。いつまで経っても子供よ。」

「離れろババア!抱きつくな!」

「照れるなよー!」

「照れてへんわー!離れろー!」

「いやー!あんたはいつまでも私等の子やー!」

「わかったから、離れろ!」



23 :奈々:08/22(水) 19:08:20 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
俺はババアを突き飛ばして仕事に出かけた。

「幸?」

仕事の昼休みに幸の病室を覗いた。

「巧!!」

幸は嬉しそうに言う。

「親に言えたか?」

「うん。言ったよ。そしたら、すっごく喜んでた。」

「そっか。良かった!」

「今週の日曜やんな!」

「おう。忘れんなよ!?」

「忘れへんよ!」

「それでな。親父とかに幸の病気話してもええか?
広まんようにするから。」

「ええよ。私のお母さんになる人やもん!」

幸は笑顔で言った。

「じゃあ、夜言っとく。」

「あっ!式はもしもの時のために医師も出席しはるから。」

「わかった。また、パンフレット持ってくる。」

「あと・・・・。」

「まだあんのかい!?」

「うちの荷物もマンションにいれていい?」

「当たり前やん。幸の両親にも言って手伝ってもらう。」

「ありがとう。」



24 :奈々:08/23(木) 23:18:51 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
俺はその夜、仕事から帰って両親の前に座った。

「真剣な話やからマジで聞いてほしいねん。」

俺の真面目な顔を見た両親は俺の顔を窺った。

「この度、幸と結婚することになった。」

「知ってる。聞いた。」

「それで、幸の病気について話がある。」

両親は不安そうな顔で顔を見合わせた。

「幸は癌で見つかるのが遅くて助からんらしい。
早期発見でアメリカに行って手術したら治ったらしいけど・・・。」

「でも、結婚・・・・」

「頑張ったら・・・・35歳まで生きれるって。」

母親の言葉をさえぎった。

「俺はそれを承知で幸に結婚してほしいって言った。」

「そんな簡単に言うけど、大変なことやねんで!」

「大変なことぐらいわかってる。もう子供じゃないねん。
でも、幸が苦しんでるのを見捨てるわけにはいかへん。
幸の苦しそうな顔を見てると俺まで辛いねん。」

「巧の気持ちはわかるけど・・・」

「俺は好きな奴を守るだけや!ずっと幸の側におる。
親父達も好きやったから結婚してんやろ?」

「そうやけど!癌なんか好きで解決できることじゃないぞ!」

「好きやから守ってやりたいねん。俺が幸を幸せにしなかったら誰がすんねん。
俺はほんまに幸が好きや。
一緒にいたい。
二度と幸の苦しんだ顔見たくない。

25 :奈々:08/26(日) 00:09:14 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
幸を・・・幸せにしたいんだ・・・」

俺の必死の訴えに両親は首を縦に振った。

「幸ちゃんを幸せにするんやで!」

俺はその夜、笑顔が耐えなかった。

 

  幸を幸せにするという自信と

  幸が俺と一緒になるという現実感が

  嬉しくて嬉しくて・・・・・

  こんな気持ちになったのは初めてだった。

  俺はその日、幸の病気を忘れて眠りについた。







― それから三ヶ月 ―

「幸!」

俺はいつものように幸の病室を訪れた。

「巧!」

幸はいつものように俺に抱きついた。

俺等は新婚。

病院でも夏に幸に告白してたのが噂になって、幸の病室はいつも満員だった。

「おー。あいかわらずラブラブやなー!」

病室から声があがる。

「ちょっと!ちゃんと病室に帰ってください!」

看護士さんが病室で言った。

「はいはい。」

「じゃあまた、来るね。幸ちゃん。」

「うん。待ってる!」

さっきまでの人が全員帰って行く。

「篠原さん!てんてきしますねー!?」

「だから、幸って呼んでって言ってるじゃん。」

「プライベートの時は幸で、今は仕事中だから篠原さん。OK?」

「わかった!」

幸は腕をめくった。


「篠原さん!?次、あの人達が来たらちゃんと追い返してくださいよ!?」

「えー!せっかく出来た友達だよ?」

「友達でも病院は遊ぶ所ではありません!病気を治すところです!」

「わかってるけど、あの人達といたらとってーも楽しいの!」

確かに幸はあの人達が来るたびに笑顔になる。

「楽しいのはわかりますが、暇なら散歩にでも行ってください。」

「散歩に行ったら、発作が起こるもん。」

「もう3月ですよ!?寒くもないし暑くもない。」

「だって巧がいないと、暇なんだもん。」

「もー。相変わらずラブラブですねー!」

「さっちゃんは彼氏いるの?」

「えっ!?わっ私は・・・」

「あー。いるんだ。その指輪は彼氏から?」

「はい。てんてき終わりました!」

看護士は逃げるように病室を出て行った。




26 :奈々:08/26(日) 22:02:39 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「幸せそうだな!」

幸にそっと話しかけた。

「昼は病院の友達とかと遊んでるし、夜は巧に会ってるからとっても幸せだよ!?」

「幸が幸せなら俺も幸せ。」

「てれるじゃん!!」

「あっ。これ。式の写真。」

俺は幸に封筒を渡した。

「あー。可愛く撮れてるー!」

幸は笑顔で写真を見る。


俺は夜まで幸の側にいた。



― それから一週間 ―

今日は仕事が休みなので幸の側にいるつもりだ。

「幸!」

「巧!」

いつもの光景。

「今日はみんな居ないんだ。」

「うん。さっき看護士さんに怒られて帰っちゃった。」

幸はなぜか笑顔でいう。

「なんで笑顔なの?」

「えっ?聞きたい?」

「カッコいい研修生がいたの?」

「違う!子供が・・・出来たの!」

幸の言葉に一瞬黙り込む。

「子供?」

「そう。巧との子供!?」

「こ・・ども・・?」

「今日、最近体調が悪いから検査したら産婦人科に行ってくれって言われて行ったら・・・」

「子供ができてたの?」

「うん。いや・・なの?」

「いやじゃないよ!めっちゃ嬉しい。」

強い力で幸を抱きしめた。

「でもね!」

幸の言葉に力を弱める。

「私、体が弱いから産めるかどうか・・・!?」

「産めない場合もあるん?」

「私の場合、結構元気になってきててこのままいけば大丈夫らしいけど・・・。」

「けど・・・?」

「体調を崩したまま産んじゃうと赤ちゃんも私も危ないって。」

幸の言葉に俯いた。

  俺等に子供。

  それはとても嬉しいこと。

  だけど、それで2人の命を落す危険もある。

「産むの止めよ?」

「どうして!?」

「だって幸が死ぬかもしれないんだよ!?」

「私は死んだっていいの!赤ちゃんさえ産まれればそれでいいの!?」

「幸が死んだら俺が悲しいんだよ!」

「死ぬほど赤ちゃんが出来たの嬉しいのになんでわかんないの?
自分を犠牲にしてまで赤ちゃんを産みたいのにどうしてダメなの?」

「幸・・・・。」

「巧は嬉しくないの?私達の子だよ!?
なんで命賭けて子供を産んじゃいけないの?」

「俺だって嬉しいよ。でも、幸が大事だから!」

「なんで私が死ぬことを考えんの?
死なないかもしれないんだよ。ずっと死に怯えてたら生きてる意味ないじゃん!!」

幸の言葉に自分の弱さに気づいた。

  俺は幸を失いたくなくて、怯えていた。

  ずっと幸が死なないのが幸の幸せだと思っていた。

  けど、結局は幸の死が恐かっただけ。
  
  幸の幸せと言い訳して逃げていただけ。


「ごめん。幸。俺、バカだった。一緒に頑張ろう!?」

「うん。」




27 :奈々:08/29(水) 23:43:09 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
幸はホッとしたように言った。

「私の両親には自分で言っとくから。」

「俺は俺の両親に話すよ。」

「ねぇ巧?」

「ん?なに?」

「ごめんね。わがままばかりで。なんで、巧はわがままな私と別れようとしないの?」

「ほんと、幸ってわがままだし甘ったれだし頑固だし・・・。
だけど、それが好きなんだ。そんな性格の幸だから俺は結婚しようって言ったの。
幸は何も心配せずに俺の隣で笑ってたらいいの。俺はその幸を幸せにするから。」

幸はまた涙を見せた。

「もー!泣くな!」

俺は幸の涙を拭いた。

「たくっみ!」

「ん?なに?」

「私、巧と出会えてよかった。ありがとう。」

幸は俺の腕にしがみ付いた。

「わかったから泣くな!俺が泣かしたみたいじゃん!」

「たくちゃんが泣かしたー!」

「おい!!」

「だって。もう、幸せすぎて何がなんやら・・・!?」

「バーカ!俺はもっと幸を幸せにするつもりだよ。」

「たくーーーー!!!!!」

「だから、泣くな!!」



28 :奈々:08/30(木) 00:04:26 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
それから、数ヶ月が経った。


幸のお腹は膨らんでいた。

俺は必死に仕事をして金をためた。

「もうすぐですね。幸さんも赤ちゃんも健康なのでこのままだったら元気な子が産まれてきますよ。」

先生の言葉に嬉しくて叫びたかった。

「よかったな。赤ちゃん元気やって!」

廊下で車椅子に乗った幸が言った。

「ほんまや!あとは幸だけやで!頑張って元気でいてや!」

「うん。!お母さん、頑張る!」

幸は俺に笑いかけた。

「あのー!妊娠しはったんですか?」

「はい。そうですけど。」


突然女の子に声をかけられた。

29 :奈々:09/09(日) 00:44:20 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「いきなり声かけてスイマセン!!」

「いえ。」

「私、夏の告白を見てたんです。すごい勇気ですね。」

「あっいや。」

「結婚しはるんですか?」

「あっ。もうしたんです。」

「そうなんですか。えっとお名前は?」

「篠原幸です!!」

幸は笑顔で答える。

「私、長谷川美紀っていいます。」

「長谷川さんも車椅子なんですか?」

「はい。篠原さんと同じ病気なんですよ。」

「あっ。そうなんですか。」

「実は私も彼氏がいまして、いろいろと私達合うんじゃないかとずっと思ってたんです。
また、話したいんで病室に行ってもいいですか?」

「あっ。全然OKですよ!?」

「ありがとうございます!じゃあ彼氏のいないときに。」

「はい。待ってます。」



30 :奈々:09/12(水) 23:43:01 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
久しぶりの休みに俺は病院へと急いだ。


あれから、子供の為に仕事をいっぱいいっぱいにやってる。


幸に会えないときも・・・。


「幸?」

病室を覗くと前の女の子が。

「たくちゃん!?」

幸はベッドから降りようとした。

「幸!?ベッドから降りんな!?完全に治ってないんやし。」

「はーい!?」

幸は子供のようにベッドに戻った。

「君、えーと・・・」

「美紀ちゃん。」

俺が考えてる時に、幸が口をはさんだ。

「そうそう。長谷川さん。だよね?」

「はい。」

長谷川さんは微笑んだ。

「じゃあ、私は帰りますね。」

長谷川さんは車椅子を回した。

「あっ。気をつかわないでください。幸、寂しがりやなんで、俺のいない時にいてくださって
助かってますし。」

「寂しがりやってなによー!?」

幸はほっぺを膨らませた。

「とにかく、幸も長谷川さんといたほうが嬉しそうやし、
いてやってください。」

「はい。」

長谷川さんは嬉しそうに言った。

「美紀ちゃんも彼氏いんねんって!?」

「へー!?長谷川さんは何歳?」

「19です。」

「俺等と二個下か!?」

「そうですね。」

「彼氏は?」

「22です。」

「俺等と同じか。」

「はい。」

「結婚の予定は?」

長谷川さんは頬を赤らめた。

「結婚しはるんですね!?」

「はっはい。

31 :奈々:09/12(水) 23:56:44 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
彼が昨日・・・。」

長谷川さんは幸せそうに左手を見せた。

「あれ?これって?」

「そう!?私等と一緒なんだよねー!?」

長谷川さんの左手と幸の左手が並んだ。

「巧さんってすごいですね。こんな高いの。」

「どうしてこれを?」

「彼に幸さんの指輪を見せたんです。
そしたら・・・」

「よく買えたね。その彼氏。俺、貯金まで崩したのに。」

「何言ってんの!?美紀ちゃんの彼氏は次期IT社長なんだよ!?」

「社長婦人になるんだ。」

「社長婦人だなんて、そんな。まだ・・・・」

「また、その彼氏にも会ってみたいな。」

「彼にも話ときます。」

それから、時間が過ぎて、長谷川さんは検査の為病室を出て行った。

「美紀ちゃん。アメリカ行くんだって。」

幸の言葉に幸を見た。

「治るんだ。美紀ちゃん。」

「うん。早期発見だったんだって。」

「成功したらいいね。」

「ねぇ。なんで私は治らないの?美紀ちゃんは治って私は・・・・・」

俺は幸を強く抱きしめた。

「不公平だよ。」

「大丈夫。幸も治るから。大丈夫だから。」

俺は幸の背中をさすった。

幸は泣きながら、俺にしがみついた。

32 :亜也美:09/13(木) 00:07:40 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
幸は泣き疲れて眠りについた。

俺は廊下に出た。

「あの。」

長谷川さんが前にいた。

「長谷川さん。」

「幸さんも一緒にアメリカに行きませんか?」

「えっ?」

「幸さん、言ってました。お金がないから手術ができないって。」

「長谷川さん。違うん・・・・」

「お金なら彼に頼んでみます。」

「長谷川さん!?。」

「どうか。幸さんも!」

「長谷川さん!?」

俺は長谷川さんに大きな声で言った。

「幸は、治らないんだよ。
アメリカに行っても治らないんだよ。」

「わかってます。幸さんはお金がって言ってたけど、なんとなく気づいてました。
けど、そんなの受け入れられない。」

「幸の今の望みは美紀ちゃんが元気に帰ってくることだよ。
そうすることで、赤ちゃんを産む元気もでると思うんだ。」

「ゆ・きさん。」

長谷川さんは涙をみせた。

「悔しいよ。俺だって、幸を見殺しにしたくない。
でも、発見が遅かったから何もできないんだよ。
何もしてやれないんだよ!?」

長谷川さんは首を横に振った。

「巧さんが幸さんにしてあげることは一つだと思います。
側にいてあげてください。」

「うん。そうだよね。」

「私も幸さんのためにも元気で帰ってきます。
治ってみせます。頑張ってきます。
だから、巧さんも幸さんを支えてあげてください。」

長谷川さんの言葉に頷いた。

「幸さんに伝えてください。
アメリカに行くのが早まったと。」

「いつ行くの?」

「明後日です。」

長谷川さんはそう言うと自分の病室に帰っていった。

「伝えとくよ。」


33 :奈々:09/13(木) 17:01:05 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「巧?」
幸は目を覚ました。

「目覚ました?」

「うん。」

「長谷川さんがね。アメリカに行くの明後日になるんだって。」

「なんで?」

「それは知らないけど。」

「ちょっと美紀ちゃんの所に行って来る。」

「幸!?」

ベッドから降りようとした幸の腕をつかんだ。

「このままじゃ美紀ちゃんと別れの挨拶が出来ない。」

「最後じゃないんだし。
それに彼氏もいると思うよ。
邪魔しちゃ悪いよ。」

「でも、来月って言ってたのになんで、明後日なの?
不自然だよ。」

「幸。」

「美紀ちゃんには元気で帰ってきてほしいの。」

「じゃあ一回行ってみよ!?俺も一緒に行く。」

俺は幸を車椅子に乗せて、長谷川さんの病室に戻った。

「長谷川さん?」

俺はドアをノックした。

「どうぞ!!」

俺はゆっくりとドアを開けた。

「幸ちゃん!?」

「巧から聞いたよ!?明後日になったんだって!?」

「うん。ちょっとあってね。」

「検査の結果が悪かったの?」

「幸!?」

俺は幸の腕をつかんだ。

「いいんです。」

長谷川さんは首を横に振った。

「悪かったんじゃないの。幸ちゃんと一緒で子供が出来たの。」

「おめでとー!?」

さっきまで暗かった幸が明るくなった。




34 :奈々:09/17(月) 13:19:45 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
「でも、子供が出来たからって、なんで早まるの?」

幸は長谷川さんに問いかけた。

「子供が成長してから、手術したら私にも赤ちゃんにも影響があるんだって。
だから、赤ちゃんが幼い時に手術しとこうって。」

「じゃあ。美紀ちゃんは治るんだ!?」

「成功確立は低いけど…。」

長谷川さんの言葉に幸の表情が曇る。

「大丈夫だよ。赤ちゃんのためにも、幸さんのためにも頑張ってくるから。」

幸の表情を見て、長谷川さんは明るく言った。

「それに彼にプロポーズをしてもらったのに、すぐに死ぬっていうのもね。」

「いつ帰ってこれる?」

「分からない。けど、なるべく早く帰ってくるから。」

「うん。待ってる。頑張ってね。」

「幸さんも。」

長谷川さんの笑顔に納得の表情を浮かべた幸は静かに病室を後にした。



35 :奈々:09/18(火) 21:46:26 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
長谷川さんは二日後、朝早くに幸に挨拶に来て、アメリカに発った。

「長谷川さん。行っちゃったよ!?」

俺が夜、見舞いに来た時に幸が寂しそうに言った。

「大丈夫だって。長谷川さんは絶対に戻ってくるから。」

俺は幸の頭を撫でた。

「でも……」

「大丈夫。俺がいるしな!?」

うんっと幸は笑顔で言った。

  夏の始まり。

  長谷川さんは笑顔を浮かべて旅発ったという。

  どうか、元気に帰ってくるように。

  俺等はそれだけを思った。



  幸は、毎日長谷川さんに手紙を書いた。

  こっちはお金がかかって迷惑だ。

  でも、幸の幸せそうな顔を見ると、
 
  それでもいいかと幸を許してしまう。


それから、猛暑に入った。

俺は仕事をたくさん入れ込んで、幸の見舞いも頑張って行ったが
それでも、行けない時もあった。

幸はしっかり稼いで来てと

苦笑いで言って許した。

ある日、暑い中上司に誘われて、深夜に酒をガブガブ飲んだ。

深飲みは久しぶりで機嫌が良くなった。

家に帰宅して、冷蔵庫から水を飲むと電話がかかってきた。

半酔っ払いのまま電話に出た。

「もしもし?」

『もしもし!?総合病院ですけど、伊藤さんですか?』

  総合病院!!!!!!!!

「そうですけど……。」

『幸さんの陣痛が始まりました。』

「幸の!?」

『急いで来てもらえますか?』

「すっすぐ行きます。」



36 :奈々:09/18(火) 22:17:46 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
↑はミスです。

『猛暑に入った』

ではなく、

『紅葉の季節に入った。』

です。



37 :奈々:09/18(火) 22:37:28 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
俺はタクシーを捕まえて、病院へと急いだ。

俺が来た時には幸は治療室に入っていた。

俺は、幸の両親と俺の両親を呼んだ。

「幸ちゃんは?」

俺の母親は心配そうに聞いた。

「まだ、中の様子はわかんない。」

俺はずっと廊下で産声が聞こえるのを待った。

朝方の四時。

廊下に産声が響いた。

俺はベンチから立ち上がり、医師が出てくるのを待った。

「おめでとうございます。元気な女の子ですよ。」

医師の言葉に全員が胸を撫で下ろした。

「幸は?」

俺は医師に問いかけた。

「幸さんも元気ですよ!?」

医師の言葉に涙を浮かべた。

「巧!?泣いちゃダメ!?もうお父さんなんでしょ!!」

俺の母親が俺に言った。

「うるせーな!?わかってるよ。わかてるけどよー!?」

嬉しくて涙が止まらなかった。

「伊藤さん。幸さんがお会いしたいと。」

看護士さんが俺に言った。

「幸が?」

「はい。」


38 :奈々:09/20(木) 22:56:33 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
俺はゆっくりと幸に近づいた。

「幸!?頑張ったな!?」

幸の汗をそっと拭いた。

「もぉ!?めちゃくちゃ痛かった。」

半ベソで幸は俺の腕を掴んだ。

「女なんだってな!?」

「うん。名前何にする?」

「それは後にして、今日はゆっくり休めよ!?」

「うん。そうする。疲れた。」

「お母さんが弱かったら子供が泣くぞ!?」

「わかってるもん!?」

俺は廊下に出て、親を見送った。

親はまた、夕方に来ると言った。

俺は、仕事場に電話して、今日は休むと言った。

「幸!?また、夕方に来るから!?ゆっくり休め!?」

「うん。」

幸はグッタリした表情で頷いた。



39 :奈々:09/21(金) 19:45:22 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
それから、冬の始まりを迎えた。

「幸?」

俺は、週末、子供を連れて幸の病室を訪れた。

「タクちゃん!?推奈ちゃんも!?いらっしゃい♡」

幸は嬉しそうに微笑んだ。

「ごめんね。家事も子育ても任せちゃって。」

「大丈夫だよ。ほとんど保育園に預けてるし。」

「本当にごめんね。」

「長谷川さんから手紙来た?」

「うん。元気だって。もう少しで手術だから頑張るんだって!?」

「そっか。よかったな!?」

「ほら!?推奈ちゃん。おいで!?」

幸の膝に推奈をのせた。

あれから、幸と話し合って名前を推奈に名づけたのだ。

「そうだ!?先生がね。一時退院していいんだって!?」

「一時退院!?」

「うん。一児の母だし、寂しいだろうって!?」

「幸の体は大丈夫なの???」

「うん!?だから、一時退院が許されたんだよ!?」

「じゃあ、幸は初めて俺等の家に来るのか!?」

「来るじゃなくて、帰るだよ!?」

「そうだな!?何泊できるんだ?」

「三泊!?」

「たったの三泊??」

「当たり前だよ!?ギリギリでOKもらったんだから!?私の体が崩れる。」

「それはそうだよな!?で?いつだ?」

「再来週の金曜日!!」

「じゃあ。その日、迎えに行くな!!!?」

「うん。」

「一泊は幸の両親と過したら?」

「えっ!?でも…!??」

「大丈夫!?俺も、幸の実家に泊まるし!?
最近、幸の両親に推奈見せに行けてないし!?
喜ぶんじゃない!?」

「ありがとー!?」



40 :奈々:09/21(金) 21:28:42 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
それから、幸の一時退院の日がやってきた。

「幸?準備できたか?」

俺は、病室を覗いて言った。

「うん。あれ?推奈は??」

「今日は金曜やぞ!?保育園!?」

「そっか。なんか入院してたら、日にちとかわからん。」

「アッハハハハハ!?しっかりしろよお母さん!?」

「わかってる!?」

幸の膨らんだホッペをひねった。

「ソロソロ。行こうか!?」

「うん。」

俺は、幸の車椅子をゆっくり押した。

短時間の夫婦生活が送れる。

俺等は喜びをおさえきれずににやついた。


金曜日は夫婦で楽しく話した。

推奈の面倒が見れて、嬉しそうだった。

二日目…

「巧ー!?起きろ!?」

幸がフライパンを叩きながら寝室に入ってきた。

「なんだよ!?うるせーな!?」

「一回やってみたかたかったんだ。」

幸は幸せそうに笑った。

「推奈が起きるやろ!?」

「あっ!?忘れてた。」

「酷い母親や!?」

「まぁまぁ!?今日は、2人で出かけようや!?」

「推奈は?」

「私の両親が預かってくれるって!?」

「そっか。」

「せっかく病院からでたんやもん。な?いいやろ?」

「しゃあないな!?」

俺等は推奈を幸の両親に預けて2人で出かけた。

「幸?寒ない?」

「大丈夫!?」

幸は笑顔で言った。

「ちょっと飲み物買ってくるな!?何がいい?」

外にお店が出ていたので、飲み物を買いに行くことにした。

「コーラー!?」

「あかん!?オレンジシュース!!」

「パインは?」

「パインでおまけしといたるわ!?」

「やったー!?ありがとう!?」

俺は、幸を残して、ジュースを買いに行った。

レジに並んでいると、人ごみが出来ていた。

「大変!?女性が倒れてるって!?」

俺の後ろに並んでいる女が友達に話しているのを聞いた。

俺は慌てて幸の場所に行った。

幸の周りには人ごみが出来ていた。

「幸!?」

俺は倒れてる幸にかけよった。

「誰か!?救急車呼んでください!?」

周りに叫ぶと1人の男が電話し始めた。

「なんで、車椅子から降りたん!?
降りたらあかんやん!?」

幸は咳き込みながら、そっと俺に言った。

「もう。生きている意味ない。
生きたくない!?」

そっと俺に囁くと静かに倒れた!?





41 :奈々:09/21(金) 21:32:00 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
幸が倒れてる側に俺の吸っている煙草が落ちていた。

「幸?お前、煙草吸ったんか?あかんやんか!?」

俺は、幸の前では煙草を吸わなかった。

だから、幸は俺が煙草をすっていることは知らないはず。

なのに……

ピーポーピーポーピーポー

救急車のサイレンが寂しく響く。

「幸ぃ!?」

俺は倒れこむように幸を抱きしめた。

42 :奈々:09/21(金) 21:46:47 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
―――夏―――

ガラッ。

「伊藤さん。また、来てるんですか?」

「看護士さん。」

「そろそろ、この病室にも他の患者さんが入ってくるんですよ。」

「来たらあかんのは、わかってるんですけどね。
病院の前を通るとこの病室に来てしまうんです。
いつもの様に明るい笑顔があるって思ってるんですけど、
やっぱり星はなかったです。」

「星?ですか?」

「幸の笑顔は光り輝く星みたいでした。」

「そうですね。幸さんの笑顔は皆さんを幸せにする笑顔でした。」

「寂しいですね。もう笑顔がないと。」

「もう、来ちゃダメですよ。」

看護士さんの言葉に頷いた。

看護士さんはゆっくりと病室を出て行った。

コンコン。

誰かが病室のドアを叩く。

「幸さん?」

病室のドアが開かれて懐かしい顔の女の子が立っていた。

「巧さん!?お久しぶりですね!?」

「長谷川さん!?手術成功したんだね。」

「はい。今年の三月に。幸さんに手紙を送ったんですけどね。」

俺は俯いた。

「それから、リハビリとかして、歩けるようになったんです。
帰ってくるのが遅くなったんですが。」

「そうなんだ。」

「あのぉ。幸さんは?」

「・・・・・・」

「検査ですか?」

「なんでこの病室が空っぽだと思う?」

「えっ!?」

「わかってるんでしょ!?長谷川さん。」

長谷川さんは首を横に振った。

「受け入れられないのはわかるけど、それが人生なんだよ。」

「幸さんは、お亡くなりになったんですか?」

「うん。」

長谷川さんは涙をいっぱい浮かべた。

「聞かせてもらっていいですか?」

長谷川さんの声は震えていた。

「いいよ。座り。」


43 :奈々:09/21(金) 22:11:41 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
あの後、救急車で運ばれた幸は一命を取りとめたが、目を覚ましたのは一週間後だった。

幸は自分で気づいてたのだと言った。

自分がもうすぐ死ぬことを。

最近、なぜか自分で感じていたのだと言う。

推奈も産まれた今、幸せなのに死んでしまうという恐怖が幸をつぶした。

このまま恐怖で怯えているのなら自分から死のうと
幸は俺の部屋で見つけた煙草を持ち歩いて死のうとしたのだという。

俺は幸に謝った。

頼って来れなかった悲しみにわかってあげれなくて。

幸は家事も子育ても任せているから、これ以上負担はかけたくなかったと言っていた。

俺は、逆に頼ってきて欲しかった。

幸に頼って欲しいと言ったら、幸は前と変わらず笑顔を見せた。

それから、幸の誕生日を迎えて、23歳に幸はなったのだが……

それから、二週間後。

洗い物をしていた

すると、病院から電話がかかってきた。

幸が倒れたと。

原因は臓器の異変。

詳しいことはわからないが、俺は推奈も連れて病院に急いだ。

俺が病院について、治療室に急いだ。

「たくちゃん!?」

「幸!?」

「私、まだ死にたくない。」

「幸!?頑張れ!?」

「私、メッチャ幸せやもん!?」

「頑張れ!?推奈も応援してるで!?」

窓越しでの会話。

幸の呼吸はどこかおかしかった。

「私、もうあかんかも。」

「そんな弱いこと言うたらあかん。推奈の母親やろ!?」

「推奈!?巧!?」

「ん?」

「ごめんな。お母さん弱くて!?」

「幸!?」

幸は無理矢理笑顔を見せた。

「お母さん。メッチャ幸せやったで!?」

幸は推奈を俺に微笑むとゆっくりと呼吸を整えた。

「緊急手術をします。」

医者の言葉にただ頷いた。

「幸を助けてください。」










その思いは天に届かず、手術中に幸は安心して天へと旅立って行った。

23歳の誕生日が終わってすぐ。

幸は23年という短い障害を最後の最後まで俺に笑顔を見せて、
俺の元から離れて行った。






44 :奈々:09/21(金) 22:26:09 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
俺は長谷川さんに話し終えて、ゆっくりと長谷川さんを見た。

「長谷川さん。幸は長谷川さんが治ってきっと喜んでるよ。」

「私、1っ人が治ったっって!?」

「幸のぶんまで、同じ病気を持った人として幸せに生きてね。」

俺は、これ以上長谷川さんの涙を見れなくて、病院をあとにした。

外は真っ暗だった。

病院に来た時は、夕方の赤い空だったのに。

俺は、空を見上げた。

  星がない。

  今、星がない。

  この街にも

  俺にも

俺は、車で山道を走った。

中学の時、幸をつれてここまで星を見に来た。

あの時の俺には、二つの星があった。

けど、今の俺には一つの星しかなくて、

一番側にあった愛してる星は、頭上の星になった。

幸は星になって暖かく見守ってくれるだろう。

幸の笑顔は今も、俺の頭上で輝き続ける。




幸は俺にとって星だった。

とても綺麗で

明るくて

皆を勇気付ける

変わった笑顔。

その笑顔で

俺は幸を好きになり、

その笑顔で

何度も癒され、励まされた。

あの夜、

幸が最後に見せた

綺麗な笑顔は

一生忘れられない、笑顔になる。

幸という星みたいな明るい存在を

今にも

過去にも

未来にも

刻みつけようと

俺は、ゆっくり歩き出す。

長くなるけど、

また

君に会える時が来る。


だから、俺は歩き出す。

幸という星のために












あの夜俺の星が消えた




―END―

45 :奈々:09/21(金) 22:27:56 HOST:ntkyto112069.kyto.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
書き終わりました!?


この達成感がすごく感じいいです!?

また、違う小説も書こうと思っています。

その時も、またよろしくお願いします。



奈々


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