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+ 生 き る +
1 :
Rain
:08/02(水) 23:26:43
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
体調が悪い。
どんなに寝ても、薬を飲んでも。
気持ち悪い。
体調の悪さに拍車をかけるかのように、
太陽はかんかん照り。
家に帰る途中の坂道は今の私にはきつい。
太陽にコンクリートが温められて、
地面がゆがんで見える。
意識もどこか朦朧として来た気がする。
しっかりとしない意識に出来る限り集中して、
自分の家を目指す。
吐き気がする。
体が熱い。
どうにかこうにか死に物狂いで家にたどりつくと、
リビングのソファにへたり込んで、
クーラーのスイッチを入れた。
設定気温は24℃。
地球に優しい温度じゃない。
でもそんなこと言ってられない。
しばらく空気が冷えていくのを感じながら、
目を瞑って考えた。
これからどうしようか。
横に置いたカバンに手をかけて、
さっき買ってきたものを取り出す。
妊娠検査薬。
持つ手が少し震える。
自分の気の小ささに少しだけうんざりする。
自分が本当はこんなに弱いなんて思ってなかった。
なにがあっても冷静に対応していけるって思ってた。
箱を開けて説明書を取り出す。
『1分でスピード判定!』
そうですか、と一言。
きっと『コレ』は、妊娠を望んでいる人にとっては、
とても素敵なものに見えてるんだろうな。
私にはこんなに、
怖い物に見えてしまうのに・・・。
クーラーに空気が冷やされて、
少しずつ汗がかわいてきた。
私はユラユラと立ち上がって、
妊娠検査薬を1本片手に、トイレへ向かった。
生理が遅れてから3週間。
最近は具合がすこぶる絶不調。
今までに生きてきてここまでしんどかったことは他にない。
精神的にも、ね。
相手が誰かは自分でもわからない。
援助交際もしてた、ホストに抱いてもらったこともあった。
親は自分の娘がそんなバカな奴だなんてこと知らないんだろう。
私のことをまだ処女だって思ってる。
バカなやつ。
あんたの子供は、こんなにバカでどうにもならない奴なんだよ。
ジーンズをおろして便器の上に座る。
がらにもなく心臓の音がおさまらない。
検査薬のキャップをはずして、自分の股の下に差し出す。
緊張していたら尿なんて簡単にはでないと思ってたのに、案外簡単だった。
あぁ、もう後戻りはできない。
私は検査薬に再びキャップをして、
判定窓を裏にして床に置いた。
見たくない。
怖い。
でも、
本当のことを知らなきゃ。
逃げられないんだから。
目を瞑って、じっと待った。
きっともう1分過ぎてる。
結果はもう、この小さな検査薬に出されているんだ。
私は1つ大きくため息をつくと、
検査薬を裏返した。
2 :
ryo-
:08/02(水) 23:28:35
HOST:ool-45780499.dyn.optonline.net
期待あげです♪
面白そーww
3 :
Rain
:08/02(水) 23:37:24
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
【陽性】
妊娠している。
涙が1粒床に落ちた。
1粒落ちるとまた1粒と、止むことなく涙が溢れた。
目がいかれてしまったんじゃないかって思うほどに・・・。
私が今までしてきたことの罰が、きっと与えられたんだ。
今までずっと自分の好き勝手にやって、
まだガキのくせに私は調子にのっていたんだ。
その罰が今、私に降りてきた。
ズルいよ神様。
こんな、罪悪感も薄れてきた頃に。
不意打ちですよ。
覚悟はできていたこと。
いずれはこうなってしまうんじゃないかって想定していたこと。
それなのに涙がとまらない。
現実は現実として、
しっかりと今私の胸に、
叩きつけられた。
それからは私は、
ネットであれやこれや、妊娠のことについて調べた。
自分に絶望した。
私が調べることといえば、
【中絶】という言葉ばかり。
私って人間は、なんて最低なのだろう。
それに私は考えてる。
どうやったら親に知られずに、
ことを大きくせずに、
お腹の中の子供を引きずり出せるかって・・・。
それに気付いた時、
私は震えた。
人間って、
なんて自己中心的なんだろう。
命を1つ殺めるってこと、
わかってるのに。
命を1つ殺めることに、
こんなに今私は必死だ。
4 :
アマラン
:08/02(水) 23:42:01
HOST:i60-34-207-113.s02.a020.ap.plala.or.jp
アゲ!いいかも
5 :
Rain
:08/02(水) 23:47:26
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
調べているうち、
中絶をするには10万程度の費用がかかることがわかった。
私にはお金がない。
援助交際で稼ぐお金はいつも、その日のうちに消える。
もっともっと、私は稼がなきゃいけない。
自分の今まで使ってきた出会い系サイトに、
片っ端から書き込みする。
もうすでに妊娠してしまっているんだ。
避妊なんて必要ない。
そうすれば避妊がある時よりもっと、
たくさんのお金が1度に集まる。
山のようにメールが届いた。
全ては読みきれないほど、たくさんのメール。
目に付いたものから返信する。
なるべく交渉しやすそうな年代を選んで。
いくつかの約束を取り付けた。
生でやれるとなったら、
その気のない男もコロッと態度を変えて食いついてくる。
稼がなくちゃ・・・。
その時だった。
PiPiPi♪
メールが届いた。
受信音なんてさっきからずっと鳴っているのに、
今の音だけ耳に残った。
携帯を開いて、今受信したメールを開く。
【ハルって言います。
まだ17歳だけど・・・。
俺とメールしない?】
よく来るメールとかわらない。
なぜこのメールに目を留めたのか、自分でもわからない。
17歳なんて相手にならない。
援助交際の客なんかにはとてもならない。
なのに私は、
返信ボタンを押していた。
6 :
Rain
:08/02(水) 23:58:25
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
14時。
私はあるデパートの前に立っていた。
今日はこれから、男の人と会う。
生で3万。手ごろだった。
しばらくすると、目の前に赤の車が停まった。
すぐに窓が開いて、中から男の人が顔をのぞかせた。
「乗って。」
私は言われたとおり、助手席に乗り込んだ。
こういうことはもう鳴れた。
知らない人の車に乗り込むということにも、
もう恐怖心はない。
車はどんどん走って、
高級感のあるラブホテルの地下駐車場へともぐっていった。
車中、男は私にわけのわからない質問を繰り返していた。
車を降りて、ホテルの中に入ると、
キレイにライトアップされたエスカレーター。
上につくと目の前に機械が設置されていた。
男はかっこうつけながら一番高い部屋を選んだ。
部屋はたしかに一番高い部屋ということだけあって、
キレイだし広い。
テレビもベッドも大きいし、
風呂もトイレもきれいで広い。
「すごいですねぇ・・・。」
私はそういうと男は得意げな顔しをした。
「じゃぁ、一緒にシャワー浴びようか。」
そういうと男は一人でさっさと服を脱ぎ始めた。
自分が全裸になったあと、
さも当たり前のように「お前も脱げ」というような顔をした。
私は着ていたYシャツと、
デニムのミニスカートを脱いだ。
すると男が嬉しそうに近寄ってきて、
私のブラのホックをはずし、
パンツをおろした。
「キレイな体だね・・・とても16歳には見えない。」
「早くお風呂に入りましょう。」
私はスケベな目で見てくる男の横を平然ととおりすぎて、
風呂場の中へ足を踏み入れた。
7 :
Rain
:08/03(木) 00:08:30
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
男は浴槽の蛇口を捻ったあと、
シャワーの蛇口をひねって私の体にお湯をかけた。
そのあと自分の体にもお湯をかけた。
男のソレはもう、
反り返るほどに固くなっていた。
男がタオルにボディーソープをつけて、
私の体を勝手に洗い出す。
体を密着させて。
ヌルヌルとした感触が、
気持ち悪い。
一通り洗うとシャワーで泡を落とし、
風呂場の床にマットを敷いた。
そして男は、もう我慢できないといった表情で、
私をマットの上に押し倒した。
首筋、胸、ヘソ、モモの付け根を舌でいったりきたりする。
急に胸にむしゃぶりついてはいやらしい音をわざとたてる。
私は顔をゆがめて快感に耐える。
フリをする。
男はしばらく好き勝手私の体を舐めまわした後、
自分の固くなったソレを私の穴に押し当てた。
「生で・・・いいんだよねっ?」
私が1つ小さく頷くと、
男はすぐにソレを強く奥へねじ込んだ。
男は狂ったように腰をふる。
そして私は目を瞑る。
自分の中に何かが入ってくる感覚。
揺れる感覚。
思い出される恐怖。
全てが終わるのを、目を閉じてただ待つ。
しばらくすると、男は勝手に一人で私の中に果てていた。
「もう1回。」と言った男に、
私が「じゃぁ6万ね。」と返すと、顔をしかめて諦めた。
ホテルから車で待ち合わ場所だったところまで送ってもらい、
お金を受け取って私は車を降りた。
8 :
Rain
:08/03(木) 00:36:27
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
車が去っていったのを確認してから、
私は携帯を開いた。
受信メールあり。
メールを開くと、
相手はあの、17歳のハルからだった。
あれからハルとはなんの意味もない普通のメールを
難度かやりとりしていた。
【アイ今どこにいるの?】
【●●デパート。】
返信を返すとすぐにまたメールを受信した。
【本当に?俺今めっちゃ近くにいるんだけど・・・。会わない?】
特に私はこの後予定があったわけじゃない。
【いいよ。】と簡単に返事を送った。
【すぐ行く。】
それから少しして、右の方からガクランを来た男の人が歩いてきた。
むこうもこちらの様子を覗っているようだった。
ゆっくりとこちらに近づいてきて言った。
「・・・アイ??」
「あ・・・うん。」
ハルは想像していたよりもかっこよかった。
出会い系をやるくらいだから、
どんなもんかと思っていたのに・・・。
目が大きくて、可愛い系だ。
声が少し高くて、
身長はそれほど高くなく170cmくらいだろう。
「アイ、思ったとおり可愛いねっ!」
爽やかな笑顔。
ハルは「じゃぁ行こうか。」と言って、
少し照れくさそうに私の一歩前くらいを歩いた。
なんだか変な感じ。
こんな風に歳の近い男の人と、
まるでデートみたいに街を歩いたのは、
本当に久しぶりのことだった。
「急に会おうなんて言って、いやじゃなかった?」
「え、別に・・・予定なかったから。」
「そっか!」
私のぶっきら棒な答えにも、
ハルは笑顔で対応した。
気付いたこと。
ハルは私の苦手なタイプだ・・・。
もとが冷めていて、
無愛想な私は、
気を遣ってくれる明るい人が苦手。
なんだか一緒にいて申し訳なく感じてしまう・・・。
「俺部活帰りなんだよねー。日曜なのに部活とか最悪だよ。」
「何の部活?」
「陸上部。ちなみに俺キャプテンなの!かっこいいべ!」
ハルはそう言ってニカニカと笑って見せた。
私は少し顔をうつむけてしまった。
「アイは今日なにしてたの?」
「え・・・。」
「ん?」
「買い物・・・。」
「買い物って・・・なんも買ってないじゃん!」
「ぁ・・・。」
私が沈黙すると、
ハルはしばらく沈黙に耐えてから急に笑い出した。
「ははは!まぁいいや。言いたくないことだってあるよなぁ〜。」
「・・・ごめん。」
「ばーか。気にすんな!」
しばらくブラブラと歩いているうちに、
公園を見つけた。
「すげえ。こんな街中にも公園あんのな。」
「初めて知った。」
「俺もっ。」
ハルは走ってブランコに座った。
ゆらゆらブランコを揺らしながら私の方をみて、
おいで、おいで、と手を招いた。
私は黙って隣のブランコに座った。
「首にアザあるけど・・・どうした?」
「え。」
キスマークだった。
私は必死に髪をかいてキスマークを隠した。
「ねぇアイ、彼氏いるの?」
「いないよ。それに・・・今色々大変で。」
「色々大変?なんかあったの?」
ハルが急にブランコを止めて私の顔をのぞきこんだ。
「別に・・・。」
「アイは謎が多いなぁ〜!」
ハルはそう言うとまた笑った。
それからハルはそのことには1度も触れず、
あれやこれやと色んな話を持ち出してきた。
「ふふっ。」
「あぁ〜!!アイやっと笑ったぁ!」
「え。」
「アイ全然笑ってくんないんだもん。よかったぁ〜。」
ハルはなんだか情けない顔をして笑っていた。
それを見たらまたなんだか笑がこみ上げてきた。
「あははっ!」
「えぇ!?今なんで笑ったの!?」
「ごめっ・・・なんでもな・・・ふふっ。」
「そんなツボるようなこと俺言った!?」
「なんでもないの・・・ごめんねっ。」
そういうとハルがすごく優しい顔をして言った。
「アイ、笑ってるほうが可愛いよ。
大変なことあるらしいけど、しんどくなって笑うの忘れたら、
俺がまたアイのこと笑わせてやるからいつでも呼んで!」
「・・・うん。」
急にかけられた優しい言葉に、
私は呆然としてしまった。
そういえばここ最近、
私は笑うことを完璧に忘れていた気がする。
昔から笑うのは得意じゃないけど・・・。
「あっ、もう8時か。帰んなきゃなぁ。アイどこに住んでるの?」
「△町。」
「俺の言えも△町!!偶然じゃんか〜。送ってくよ。」
「え、大丈夫だよ。」
「ダーメ。こんな時間に女の子一人じゃ危ないんだから。」
そういうとハルはブランコから降りて、
また私の一歩前くらいを歩いた。
電車に乗って△町の駅で降りた。
ここからは一人でも大丈夫だと言ったのに、
ハルはダメだと言って家まで送ってくれた。
「そんなの俺の家から遠くねぇな。
アイ無用心だな!今日会ったばっかの男の家の場所教えて。」
「え?」
「はははっ!ばーか!冗談っ。俺悪趣味はねぇから。
飯食って風呂入ってさっさと寝ろよ!」
「あ、うん。」
「じゃーな。またメールする。」
そう言ってハルは手をふりながら去っていった。
9 :
Rain
:08/03(木) 17:31:23
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
家の中に入るとご飯の匂いがした。
それと共に少しずつ、
ハルと過ごすことで忘れていた吐き気が蘇ってきた。
「あら、おかえり。」
「・・・ただいま。」
私は母の顔を見ずに2階へ上がった。
「ご飯は?」
「いらない。」
自分の部屋にたどり着くと、私はベッドの上に倒れこんだ。
吐き気がする。
毛布を固く握り締めて、
吐き気にひたすら耐える。
母親の顔、
無意識に見るのを避けてしまった。
そりゃそうだ。
自分のお腹には今子供がいて、
私はその子供を殺したくて・・・。
母親はそんなこと知りもしない。
顔なんてあわせられない。
自然と涙が溢れてきた。
そのうち視界は涙でくもっていって、
最後には真っ暗になった。
明日学校帰りに一人で婦人科へ行く。
10 :
Rain
:08/03(木) 17:47:14
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
目が覚めると時計はもう既に7時半を過ぎていた。
そういえば昨日は帰ってくるなりすぐに寝てしまったのだ。
困ったことに吐き気が消えていない。
朝食の匂いが、更に体調を悪くする。
階段を降りていくと、
母親がスーツを着て急ぎ気味にこちらを見て言った。
「おはよう。ご飯テーブルの上だから。
お母さん仕事行って来るね!遅れるんじゃないわよ。」
そういうと母親はダッシュで家を出て行った。
私はノロノロと食卓テーブルの前へ行って、
朝食を見た。
冗談じゃない。
食べられるわけない。
私は一口も口をつけずに、
皿ごと流しに放り込んだ。
できるかぎり早く、
シャワーを浴びて髪を乾かした。
あまり時間がない。
でも私には急ぐほどの元気もない。
適当にしたくを済ませて家をでる。
これから電車。
そうとうきつい。
電車の揺れは今の私にとっては恐怖だ。
吐き気に耐えられるかどうか、自信がない。
車中、私はずっと目を瞑って集中していた。
少しでも気を緩めれば、
つわりに負けてしまう。
だんだんつわりが、
前よりもひどくなってきたような気がする・・・。
その日はほとんど丸一日中、保健室で過ごした。
放課後になって、
私は産婦人科へむかうべく校門をでた。
するとそのすぐ前の方に、
あいつが立っているのが見えた。
ユウマだ。
ユウマは私の元彼。
私が今こんな風になってしまったのは全部ユウマのせい。
世界で一番憎い、殺したいほど・・・。
ユウマと私は中学が同じで、
付き合っていたのは中2の夏のことだった。
川沿いである花火大会、
近くのラブホテルの窓から見る花火は、
絶景だといわれた。
だから、ユウマに言われるがまま、
私はラブホテルに・・・。
ユウマとならしてもいいって思っていた。
少し期待すらしていたかもしれない。
でも、予想もしなかったことが起きた。
花火大会が始まる音が聞こえると、
部屋に3人の男が入ってきた。
強姦。
色んなカップルたちが、
空を見上げてキレイな花火を眺めている最中。
私は花火の『ドーン』『ドーン』という音だけを聴きながら、
はじめて味わう鈍い痛みと、
言い表すことの出来ない恐怖と戦っていた。
その時も私はずっと。
固く目を閉じることで、
逃げようとした。
逃げられるわけもなかったけど・・・。
それから私はかわった。
愛情なんか信じなくなった。
強姦されたからセックスが怖いなんて。
そんなかっこ悪い女に私はなるもんか。
その一心で私は、
援助交際を繰り返すようになった。
手当たり次第抱かれて、
心も体も
麻痺してしまった。
11 :
Rain
:08/03(木) 18:07:32
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
私は硬直してユウマを見つめていた。
しばらくすると友達とゲラゲラ笑いながら話していたユウマも、
こちらに気付いて目があった。
沈黙。
一瞬時間が止ったようだった。
ユウマは目をそらすと、
何事もなかったかのように友達と行ってしまった。
私はしばらくそこを動くことができなかった。
憎い。
言葉なんかじゃ言い表せないほど、憎い。
カラスの「カー」と鳴く声で、
私は我にもどって歩き出した。
家の近くの産婦人科、
目の前にして少しだけ腰が引けてしまう。
それでも息を止めて足を踏み入れると、
中に何人か女の人が座っているのが視界に入った。
私は受付にむかった。
「妊娠の検査、してもらいたいんですけど。」
「保険証はお持ちですか?」
「保険証は持っていないんです。
でも、妊娠の検査には必要ないんですよね?」
「必要ではありませんが、
保健がきかないと高くなりますが・・・。」
「いいです。」
「わかりました。」
そういうと、
ボードとボールペンと一緒に、
用紙を渡された。
名前・年齢・住所・電話番号
住所と電話番号には嘘を書いた。
家に連絡されてしまっては困る。
私はその用紙を書きおえると、
もう一度受け付けにそれを提出した。
「座ってお待ち下さい。」
といわれたので、
静かに座って名前を呼ばれるのを待った。
幸せそうなカップルの笑い声や
赤ちゃんの鳴き声が聴こえる。
それはなんだか、
今の私には
とても辛くて・・・。
またいつものように、
逃げるように、
固く目を瞑った。
それから何分か経って私の名前が呼ばれた。
看護婦さんにカップを渡されて、
指定のトイレで尿をとるように言われた。
言われたとおり尿を採って、
トイレにそのまま繋がっている提出カウンターに、
採った尿を提出した。
そしてまた、
自分の名前を呼ばれるのを待つ。
「片倉愛さん。」
「はい。」
今度は看護婦さんの声ではなく、
個室から男の人の声が聴こえた。
静かにドアを開けて、個室に入る。
「今日は妊娠の検査ですね。」
「はい。」
「じゃぁ。エコー検査をしますので、隣の部屋へどうぞ。」
隣の部屋に入ると、
個室がカーテンで2つに仕切られていた。
そのむこうがわから女の人の声がする。
「下半身の服を全て脱いで、そこのベッドに寝てください。」
私は言われるがままスカートと下着を脱いで、
ベッドに座った。
個室を2つに仕切っているそのカーテンは、
下半身と上半身を2つに区切る役割もしていた。
ベッドに横になると、
自分の下半身はカーテンの向こう側。
向こうに人が行き来しているのがわかる。
たくさんの人に裸をさらしてきたのに、
どうしてだろう。
すごく、むなしい。
しばらくするとカーテンの向こうから男の人の声が聴こえた。
私のすぐ前に座っているようだ。
「それじゃぁ、少し冷たいのが入りますよ。」
その言葉と同時に、
私の中に冷たい物が急に入りこんできた。
さすがに濡れていないと、
少し痛い。
12 :
Rain
:08/03(木) 18:19:25
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
「画面を見てください。」
少し顔を斜めにやると、
モニターが設置されているのに気付いた。
どうやらこれが、私の子宮の中を映し出しているらしい。
「この影みえますか?」
「はい。」
確かに影があった。
玉のような形。
でも私にはそれが子供だってことが、
すぐにわかった。
「これが胎児です。」
「・・・。」
そのあと難しい言葉であれやこれやと説明されたけど、
頭になんか入らなかった。
ただ1つ理解できたこと、
それは本当に、
私のお腹の中に赤ん坊がいるんだということ。
そのあと、
尿検査の結果を伝えるので、
待合室にもどるように言われた。
椅子に座っていると、
違う部屋から女の人が看護婦さんと一緒に出てきた。
なにやらもめているようだった。
「配偶者のサインがないと中絶はできないです。」
「でも彼は了解してますから。」
「それでも、同意書には必ずサインが必要なんです。」
「私が認めてるんだから関係ないでしょ!?」
どうやら、
同意書に妊娠させた相手の名前がなかったらしい。
それでもめているようだ。
なんて醜いんだろう。
でも私も同じなんだ。
この人と。
この人のお腹の中にも子供がいて、
この人は産んでやることができない。
私だって同じ。
醜いのは、
私。
「片倉愛さん。」
「はい。」
個室に入ると、
尿検査でもやはり陽性とでたことがわかった。
これで医者も認めて、
私のお腹の中に赤ん坊がいることになる。
「それで、どうしますか?
ご両親はこのことをご存知ですか?」
「親にはまだ話していないんです。」
「では、出産するか中絶すつかもまだ決められないんですね。」
「・・・中絶、すると思います。」
「今週の日曜日にもう一度お越しいただけますか?その時までに・・・。」
「わかりました。」
説明を聞いた後、
私は個室からでて会計をするためにカウンターへ行った。
9800円
保険が利かないだけあって、
やはりそれなりの値段だ。
私は昨日の援助交際で設けた3万円のうちの
1万円を出して支払った。
13 :
みしゃ*(未夜
:08/03(木) 18:32:24
HOST:p1185-ipbf201aobadori.miyagi.ocn.ne.jp
初めて、見させていただきました。
とても・・・心が動かされるような作品です;
応援してます。
14 :
Rain
:08/03(木) 18:32:33
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
産婦人科からでると、
急に緊張がほどけたように、涙が溢れだしてきた。
最近あまりにも、泣くことが多い。
外はもう、暗くなっていた。
涙は拭っても拭っても溢れてくる。
昨日まであれほど泣いたのに、
それでも涙は枯れない。
何度でも何度でも、
溢れてくる。
でもこの気持ちはなんだろう。
申し訳ないという気持ち。
今までこんな気持ちになってことはなかった。
私は今、
お腹の中の子供のことを思って泣いている。
「中絶すると思います。」と医者の前で宣言した時、
お腹の中から「どうして」と聴こえた気がした。
病院の中で言い争っていたあの人のことも、
私の中ではとてもショックなことだった。
病院の中で、
幸せそうに笑うカップルと、
赤ちゃんの鳴き声を聴いて、
私はどうして産んでやることを選べないのだろうと、
自分を呪っても、やりきれない気持ち。
気付けば私は、
今一人ぼっちだ。
1つの命は、
こんなに無力な私が一人で背負うには、
大きすぎた。
孤独と、後悔と、罪悪感と、つわりの気持ち悪さが、
私をどんどんどんどん追い詰める。
「アイ?」
産婦人科の前で座り込んで泣いていた私に、
誰かが声をかけてきた。
それは、
ハルだった。
「どうした!?こんなとこで!なんで泣いてるの!?」
ハルは私が泣いているのに気付いて、
あたふたしていた。
私はただ俯いたまま、顔をひたすら横に振った。
「これから帰るのか?」
「・・・。」
コクンと1つだけ頷く。
「おくってくよ。」
「・・・いい。」
「ばーか。ダメにきまってんだろ。ほら、行くぞ。」
そういうとハルは私の右腕を引っ張った。
私はノロノロと立ち上がると涙をふいた。
ハルは私の右手を握り締めて、
私の一歩前を歩いた。
私はハルに手を引かれるまま、
ただただ歩いた。
15 :
Rain
:08/03(木) 18:38:52
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
みしゃさんありがとう^^
この話は多少実話も混じっているので(多少ですよ!)、
自分の経験がなにかメッセージになればいいなって思ってます。
読んでくれてありがとうございます。
16 :
Rain
:08/03(木) 18:56:36
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
「ハル待って・・・私まだ家には帰りたくない。」
母親の顔は見れない・・・。
見たくない。
「・・・わかった。俺ん家来る?たいして遠くないし。」
「でも、悪いよ。ハルは帰っていいよ。」
「泣いてる女の子を一人残して帰るバカがどこにいる。」
そういうとハルはまた少し強引に、
私の手を引いて歩き出した。
知っている町並み、
どうやら本当にハルと私の家は近いらしい。
「汚いけど、どうぞ。」
「・・・お邪魔します。」
靴をそろえて廊下に上がると、
むこうの方から女の人が顔を出した。
「あれ!?!?ハル、その人は?」
「友達。家に帰りたくないらしいんだ。
ちょっとくらいあげてやってもいいよね?」
「まあ、父さんも母さんもまだ帰ってこないし。
私はかまわらないけど。」
「サンキュ。あ、コレうちの姉。」
私はその女の人の方を見て小さく会釈した、
するとその女の人は私の顔をジーっと見つめたから、
ニコッと笑った。
「ハルにはもったいないくらいだねぇ!
あたしはサキだよ、よろしくね。」
「アイです。」
「アイちゃん!名前もかわいい!」
「姉ちゃん、うるさい。」
「なにぃ!?!?」
温かい家族って、こういう人たちのこというんだろうな。
2人のやりとりを見ていて感じる。
最初、ハルは明るく接してくれて、
気を遣ってくれる人なんだと思ってた。
だから、きっと私の苦手なタイプなんだって思った。
でも、違う。
ハルは天然で明るいんだ。
きっと明るい家庭に育って、
根っから明るい人なのだ。
「お兄ちゃん・・?」
ハルとサキが騒いでいると、
2階の階段から小さな男の子が降りてきた。
「・・・。」
「あっ、弟のカズキ!カズキ、挨拶は?」
「カズキです。・・・5歳・・・です。」
「はじめまして。」
小さな5歳児相手に会釈をする私。
それを見てサキさんは密かに笑っていた。
「俺の部屋2階だから、上がって。」
「変なことするんじゃないわよ〜?」
「うっせ!バーカ!」
ハルの部屋は意外とキレイに生理整頓されていた。
ハルは勉強机の椅子を出して、
私に「どうぞ。」と言った。
私がそこに腰をおろすと、
ハルはベッドに座った。
17 :
Rain
:08/03(木) 19:12:32
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
「それで・・・どうして家に帰りたくないの?
家でなにかあった?」
ハルは1階からもて来た缶ジュースを明けて私に聞いた。
「ううん。別に何も・・・。」
「ふ〜ん。そうそう、アイは謎多き少女でしたね。」
「べつに・・・。」
「また別にかぁ・・・。ならしゃぁない。」
ハルは私に興味があるのかないのかよくわからない。
聴いたかと思えばそこまで知りたがるわけでもない。
私はその場の空気をかえるために、
適当な話題を出した。
「ハルは、彼女いつからいないの?」
「あぁ、俺はねぇ・・・1年くらい前からかなぁ・・・。」
ハルは少し顔を歪めた。
大きな目が少しにごる。
「めーっちゃ好きだったのにさぁ・・・まじハルくんショックぅ・・・。」
「そっか・・・。」
「なんで別れたか聴かないの?」
「え・・・じゃぁ、なんで?」
「秘密!」
「・・・なにそれ。」
ハルはまた少し高い声でケラケラと笑った。
ハルに悩み事なんてあるんだろうか。
その後はまた昨日のように、
ハルが色々と話てくれた。
あっと言う間に時間は過ぎて、
時計をみると21時をまわっていた。
「どう?帰れそう?」
「・・・うん、帰るよ。」
「おくってく。」
「いっ・・・」
「いいって言っても送っていきます!
ったく、学習能力ないやつだなぁ。」
そういうとハルはまた笑った。
外に出ると少し肌寒い。
ハルが着ていたパーカーを脱いで、
そっと私の肩にかけてくれた。
空を見上げると、
星がきれいで。
星の光がだんだんと、
滲んでいくのを感じた。
私、また泣いてる。
ハルは何も言わない。
気付いているんだろうか。
上を見つめて涙が零れ落ちるのを必死で耐えていると、
手に温かい感触。
ハルが私の手を握っていた。
ハルはまた、私の一歩前を歩く。
私の顔は見ない。
振り向きたいのに、
こらえているように見えた。
泣いてもいいんだよって、
言ってくれているような、
そんな気がした。
18 :
蓮華
:08/03(木) 19:29:48
HOST:b210143127116.datacoa.jp
面白い!!ァゲ↑↑
19 :
風鈴
:08/03(木) 19:59:45
HOST:220-213-106-228.pool.fctv.ne.jp
マジどうなるか楽しみです!!
頑張ってください!!
20 :
・+.:('v^*):+.・
:08/03(木) 21:12:46
HOST:07052060091158_vk.ezweb.ne.jp
めちゃひかれました*+.(●艸3U$)かなり好きです(( 从o^◇^)o頑張って下さい◆◇(*O∪O艸嬉)♪+゜
21 :
ちょ
:08/03(木) 22:32:53
HOST:ZK031143.ppp.dion.ne.jp
ぉもしろぉぃハルかっこぃぃ!!
ぁげ↑
22 :
Rain
:08/03(木) 23:18:07
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
それから3日。
当然のように今日も体調は絶不調だ。
あの日からハルは、
ほぼ毎日のようにメールをくれるようになった。
本当にどうでもいい話ばかり、
私が泣いていた理由も知らないくせに、
私を元気付けたいと思ってくれていることだけは、
不器用な私にでもわかる。
いつものように体を無理矢理起こし、
リビングに置いてある朝食を流しに捨てる。
ここ最近の日課。
まともな食事なんてしばらくとっていない。
最近は眩暈もするようになった。
学校ではほぼ授業も受けずに学校で眠っている。
でももうそろそろどうにかしなきゃ、
保健室の先生だってなにか感づくかもしれない。
今日は午後の授業からきついのを覚悟で、
授業に参加することに決めた。
教室に戻ると友達のユカリが駆け寄ってきた。
「アイ!あんた大丈夫?最近体調よくないみたいじゃん。」
「うん・・・なんか不調で。」
「なんかあったらいつでも言って!私協力するからさっ!」
ユカリは今、ユウマと付き合っている。
私は最初猛反対した。
でも「なぜ?」と聞かれると言葉に詰まった。
強姦されたなんて、
言えない。
ユカリとユウマの噂はチラチラと耳にしている。
ユウマは避妊しないとか、
だからユカリはピルを飲んでいるとか・・・。
案外ただの噂ではないのかもしれない。
それにもしユカリがピルを飲んでいるんだとしたら、
それをせずに妊娠した私なんかより、
ユカリはずっと賢い。
「なんかね、こないだユウマに『片倉に睨まれた。』って言われたんだけど・・・。」
ユカリが少し困ったような顔で言う。
「そうなんだ。そんな気なかったけど。」
「だよねぇ。アイがそんなことするわけないよねっ!」
ユカリはすぐに笑顔になった。
私これでも、ユカリのことを気に入っている。
だから、
ユウマにユカリがなにかされないか、
本当は少し心配・・・。
でも、
ユウマの話をしながら幸せそうに笑うユカリを見ていると、
口を出すことができない。
「今日放課後ユウマとデートなんだぁ〜。」
「どこ行くの?」
「カラオケかなぁ!」
無邪気に笑うユカリ。
ユウマと付き合う前ユカリは、
黒髪のわりと真面目な感じの女の子だったのに、
今はユウマ好みの女に成り果てた。
短いスカートに、茶色い髪、濃い化粧。
でも中身は天然なユカリのまま、
「似合ってないよ」そんな言葉言えない。
つわりと戦いながらなんとか午後の授業を終了して、
私は校門の外に出た。
私にはこの後予約がある。
のんびりなんてしていられない、
稼がなきゃ。
私が待ち合わせ場所に使うのはいつも●●デパート。
この日も例外ではないので、
私は●●デパートの前に向かった。
約束の時間の5分前、私の目の前に車が止った。
「アイちゃん?」
「そうです。」
「じゃぁ乗って。」
車に乗り込む。
いつもどおり、
緊張なんてもう、
忘れた。
車に乗ってホテルに向かう途中、
携帯が鳴った。
「見てもいいですか?」
「どうぞ。」
携帯を開くと、そこには『送信者:ハル』の文字が。
【やっほ。元気にしてる?
今日早めに部活終わるんだけど、会わない?
アイがちゃんと元気になったか様子みたいしな♪笑】
少しだけ、胸が痛む。
こんな気持ちは初めてだった・・・。
【ごめん。これから用事あるから。また後で。】
それだけ返信すると、
私は携帯の電源を切った。
23 :
Rain
:08/03(木) 23:31:11
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
車は知らない道を走る。
私はボーッと窓の外を見つめる。
あぁ、心も体も、
どんどん
麻痺していく・・・。
気付くともうそこはホテルの部屋だった。
安っぽいホテル。
男が部屋の鍵を閉める。
「アイちゃん、いつもこんなことしてるの?」
「・・・うん。」
「じゃぁいけない子なんだね・・・。」
男がフラフラとこちらに近づいてくる、
なにか先ほどとは違う・・・。
私はむこうがこちらへ歩み寄るたびに、
後ずさりする。
違う。
この人はなにか・・・ヤバい。
そう思った瞬間だった。
男は私の体をベッドに押し倒して、
ロープで私の腕と足を縛り上げ、
アイマスクをした。
「やだっ!!!」
「うるさいっ!!!!」
そういうと男は私の口を押さえた。
鼻で息を吸い込むと、
何か違和感・・・。
鼻を貫くようなキツイ臭いと、
それと同時に頭がグラグラと揺れる感覚・・・。
ヤバい・・・これはクスリだ・・・。
だんだん意識が朦朧としていき、
体にまったく力が入らなくなった。
自分の中に何かが、
出入りしている。
目隠しをされているから、
前が見えない。
私の体もおかしくなっている。
なにかいつもとは違う。
快感をいつもの何十倍もの強さで感じる。
こんなことになるなら、
ハルに会いに行けばよかった。
24 :
ちょ
:08/03(木) 23:31:11
HOST:ZK031143.ppp.dion.ne.jp
ぁげ
25 :
Rain
:08/03(木) 23:47:18
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
気がつくとそこは、
どこかもわからない空き地のような場所だった。
制服はボロボロで、
下着もない。
まだ手足がジンジンしている。
思うように体が言うことを聞かない。
できる限り力を込めて、
カバンから携帯を探りあてて、
電源をつけた。
センターに問い合わせると、
3件のメール。
【そっかぁ・・・忙しいんだ。
じゃぁ用事が終わったらメールくれよ!】
【アイ?こんな遅くまでどうしてる?返事下さい。】
【何かあって連絡できないなら、
連絡ができるようになったらすぐ連絡して。
会いに行くから。】
全部、
ハルからのメールだった。
携帯を持つ手が震えた。
ハル、
呼べるわけないよ・・・。
こんな姿をハルに見られて、
私はどんな風にあなたに接したらいいの・・・?
ハルはきっと、
それでも私が「別に。」と答えたら、
きっとそれ以上のことは何も、
聞かないだろう。
やっと気付いた。
それがハルの優しさだったんだってこと。
こんな今更になって、
気付いた。
たった2回しか会ったこともないのに、
ハルのことで頭いっぱい。
ハルみたいな人は、
私にとっては、
まるで、
天使みたいに見えたんだよ。
PiPiPi♪PiPiPi♪
携帯が鳴る。
画面を見ると、
ハルからの電話だということに気付いた。
出たい。
でも、
出れないよ・・・。
たとえ鳴り止んでも、
またすぐに鳴り出す携帯。
何度も、何度も・・・。
Pi
「もしもし・・・。」
「アイ!?こんな時間まで連絡しないでなにしてんだよ!」
ハルの声は本気で怒っている。
「俺ともう連絡とりたくなかったなら、
こんな電話迷惑だよな、ごめん。
でも、なにかあったんじゃないかって・・・、
不安になるだろ・・・?」
「たった2回しか会ったこと無いのに、
なんでそんなに必死になれるの?」
私の問いかけに、
ハルが沈黙した。
「・・・、アイのことが好きになったからだよ。」
その言葉と同時にまた、
涙が出てきた。
初めて、
大声を出して泣いた。
今までのように声を殺して泣くことさえ、
できなかった。
「アイ、今どこにいるの?」
「・・・わかん・・・ない。」
「えっ?・・・何が見える?」
「遠くのほおに、赤くて大きい看板が・・・。」
「わかった、アイそっちに向かってあるける?」
「・・・ん・・・。」
電話を切ると私は、
力の入らない足に全神経を集中させて、
必死に赤い看板の見えるほうへ向かって歩いた。
26 :
Rain
:08/04(金) 00:11:23
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
どうにか看板が近くに見えてくると、
前方から大きな声がした。
目がかすんで、よく見えない。
「アイ!!!」
「・・・ハル。」
私はハルの声が聴こえると、
安心でその場に倒れこんだ。
「アイ、どうしたんだよ!こんなになって・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
ハルは何も言わない私に、
それ以上は何も言わす、
グダグダになった私の体を持ち上げて、
背中に乗せた。
ハルの背中から伝わる、
温かい体温。
耳を押し当てた部分から聞こえる、
ゆっくりと繰り返される、
心臓の音。
全部が心地よくて、
私はいつしか、眠りについていた。
「んっ・・・。」
「アイちゃん起きた?大丈夫?」
目を覚まして横にいたのはサキさんだった。
サキさんは濡れたタオルで私のドロやら血やらを
丁寧にふき取ってくれていた。
「すみません・・・わたし。」
「いいんだよ。ただハルがものすごい心配しててねぇ。」
「ハルが・・・。」
「今アイちゃんのご両親の所に一人で行ってるわ。
少し前にアイちゃんうちに来たでしょう?
その時に家に帰りたくないって言ってたから、
ハルが無理に家に帰したくないって。」
「すみません・・・。」
「ねぇ、アイちゃん。
ハルが帰ってきたら、
なにがあったか話してあげてくれないかな?
あの子、本当にアイちゃんのこと心配して、
そうとうテンパってたから・・・。」
ハルのことを思うと、
胸が痛い・・・。
「わかりました。本当に迷惑かけてごめんなさい。」
「ううん、本当に気にしないで。
困った時はお互い様だよ!」
サキさんはそういってニコっと笑うと、
一度部屋を出ていった。
しばらくしてドタドタという騒音が聞こえてきたと思うと、
急に部屋のドアが開いた。
「アイ!!」
ハルが真っ赤な顔をして息を切らしている。
私がのん気に上半身を起こしてジュースを飲んでいるのを見て、
ハルは一気に力が抜けたようにそこに座り込んだ。
「よかったぁ・・・。」
「ごめん・・・。」
「別にいいよ。アイが無事だったから。
と、言いたいところだけど、
無事じゃないんだろ?」
私はうつむく。
すると、ハルは私の寝ているベッドの横に腰掛けた。
ハルは大きな手を私の頭に乗せて、
ポンポンの頭をなでた。
「話したいことだけ話してくれればいい。
俺がアイに問い詰めないのは、
アイが話したくなったら話してくれるって思ってるから。
俺はアイの力になりたいって思ってるよ?」
「・・・。」
「俺頼りないかもしれないけどさ!」
「・・・あのね。」
私はコップを横の机においてハルの目を見た。
「私妊娠してるの・・・。」
「・・・!?」
ハルの顔が少しゆがんだ。
「親にもまだこのことを話してなくて、
中絶するためのお金を集めたくて、
援助交際を・・・。」
「相手はっ!?」
「・・・わかんないの。
私ね、ずっとこういうこと繰り返してきたの。
誰の子供かもわからない。
本当、最低なんだ。」
「・・・。」
ハルの肩が少しだけ震えた。
ハルは
泣いていた。
27 :
Rain
:08/04(金) 14:46:10
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
「・・・ハル?」
「ごめん、今日は?」
「相手がちょっとヤバかったみたい。
クスリやってたみたいでさ、
ちょっとやられちゃった。」
「アイのばか。」
「・・・ごめん。」
ハルは目をゴシゴシと拭いた。
「本当におろすの?」
「だって・・・誰の子かもわからない子供だもん・・・。」
「でも、命だろ?」
私は少しうつむく、
ハルがどうしてそんなことを言うのかわからない。
「でも、私育てられない・・・。」
「・・・そっか。」
ハルは立ち上がって、
私が飲んでいた空になったコップをもって、
部屋から出て行ってしまった。
ハルの様子がおかしい。
いつもの天然で元気なハルとはまるで違った。
その後ハルが、
部屋に来てくれることはなかった。
28 :
羅
:08/04(金) 14:58:13
HOST:b210143127165.datacoa.jp
面白い
29 :
Rain
:08/04(金) 14:58:57
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
次の日、
私はサキさんに異装願いの髪を書いてもらって、
サキさんの私服を借りて学校に登校した。
昨日のあの事件のせいで、
制服はボロボロだったから。
「アイ〜!おはよう!どうしたの??私服じゃん!」
校門の前で話かけてきたのはユカリだった。
あいかわらず短すぎるスカートが似合っていない。
「ちょっと制服ダメにしちゃって。しばらく私服。」
「制服ダメにするって、なにしたのさ。」
「ちょっとね。
・・・・ユカリ腕。」
不意にユカリの腕に目をやると、
包帯が巻かれていた。
「あぁこれね!机の下片付けてたら上からカッター落ちてきてさぁ!」
ユカリの嘘はすぐにわかる。
リストカット・・・?
そういえばユカリはあの後、
ユウマとデートだったんだっけ・・・。
「なにかあるんなら話しなよ?」
「・・・やだなぁ、なんもないよぉ。」
「そう・・・。」
一緒に玄関に向かって歩いていると、
急にユカリの足が止まる。
その直線上には下駄箱で友達とゲラゲラと笑っているユウマの姿。
「・・・ユカリ?」
「ううん、ごめん、行こう!」
ユカリの笑顔が引きつっている。
なにかあった。
絶対。
「よう、ユカリ。」
ユカリが下駄箱の方に行くと、
すぐユウマがユカリに話かけた。
「おはよう。」
「今日も放課後空いてるよな。」
「あっ・・・うん・・・。」
遠巻きから見ていても、
ユカリの様子がおかしいのがわかる。
今日は保健室へ逃げずに教室で耐えようと思う、
ずっと授業に出ないと怪しまれるし、
それに、
ユカリのことも気になったから。
昼休み、
私はいつもどおりユカリと食堂にむかった。
ここで友達と集団になって昼食を食べているユウマと、
アイコンタクトをとるのがユカリの日課。
でも今日は、ユカリがあまりユウマの方を見ようとしない。
「ユカリ、今日やっぱなんかおかしい。」
「えぇ!?そんなことないもん。」
ユカリが無意識に包帯を巻いて腕を握る。
いやな予感がする。
30 :
Rain
:08/04(金) 15:02:03
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
コメントをくださる方々、
ありがとうございます^^嬉しいです。
誤字脱字が多くて読みにくいと思います、
本当にすみません。
飽きずに読んでいただけると嬉しいです。
31 :
Rain
:08/04(金) 15:15:03
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
その後なんどかユカリに問い詰めても、
ユカリは「なんでもないよ。」のいってんばりで、
私には何も話してくれなかった。
放課後、
クラスメイトたちが全員帰った後、
教室から外を見ると
校門のところでユウマとユカリが話しているのが見えた。
ユカリはうつむき加減でなにか喋っている様子で、
ユウマはそれを無愛想な顔つきで聞いている。
しばらくすると、
ユウマがユカリの腕を引いて去っていってしまった。
帰ろう。
私もしたくをして教室を出た。
玄関の方へ向かっていると、
廊下で女子生徒が2人、話をしているのが聴こえた。
「知ってる?なんか昨日ユカリとユウマくんやばかったらしいよ。」
「やばかったって?」
「ユウマが昨日、ユカリとやばそうな男2人連れて、
ホテルに入っていくの見た子がいるんだって。」
「えぇ・・・なにそれぇ・・・。」
私はその話を聞き逃さなかった。
「ねぇ!それ本当!?」
「え・・・噂だから本当かは知らないけど・・・。」
「それどこのホテル!?」
「○○駅の方で見たって・・・。」
それを聞くと、
私の足は勝手に走り出していた。
なんだかすごく、
胸騒ぎがする。
私は無我夢中で走って、
駅でまだかまだかと電車を待った。
早く、
早く、
こんなところで足踏みをしている場合じゃない。
「アイ!?」
すると、後ろの方から声が聴こえた。
ハルだ。
「ハル。」
「どうしたんだよ、そんな汗かいて。」
「事情を説明してる余裕ないの!」
「え?」
やっときた電車に大急ぎで乗り込んだ、
状況を把握しきれないハルは、
私を追って電車に乗った。
「ちゃんと説明しろ。」
「友達が・・・。」
「友達?」
心臓がドキドキした。
あの花火大会の日のことが、
消しても消しても、
すぐに蘇ってくる。
手が震える。
私はどうしてしまったんだろう。
息が切れる。
震えが止らない。
○○駅のアナウンスを聞くと、
私はすぐ駆け下りた。
携帯をとりだして、
ユカリに電話をかける。
何度ならしても、
ユカリは出ない。
「ユカリ・・・。」
探しようもないことに気付いた。
ユカリと連絡がとれないなら、
どうやって探せばいいかわからない。
本当にココにいる確証もない。
でも、
今ユカリがどうなっているのか、
不安で不安で、
じっとしていられない。
ハルはただ困ったように、
私の背中をさすって落ち着かせようとしてくれた。
ユカリが電話に出ない。
メールにも返信を返さない。
どこにいるの?
32 :
愛羅
:08/04(金) 15:28:57
HOST:p1163-ipbfp04yamaguchi.yamaguchi.ocn.ne.jp
何ヵ、人事ぢゃなぃ気にさせられる小説ゎ初めて会った気がするー…
主さん!!期待ァゲ↑↑これヵらも読み続ヶるょ〜↑↑
33 :
Rain
:08/04(金) 15:33:26
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
それから私はどうすることもできなくて、
じっと駅のベンチに座り込んでいた。
すると、
携帯が鳴った。
ユカリからのメールだった。
【アイ、どうしたの?】
私はすぐに電話をかけた。
「ユカリ!?今どこにいるの!?」
「えっ・・・どうして?」
「ユウマは!?」
「もうバイバイしたよ。」
ユカリの声には、
どことなく元気がない。
生気が感じられない声、
そんな感じ。
「ユカリ、なにかあったならお願い、話してよ。」
「アイ・・・。」
「お願い。」
ユカリは1つ大きく深呼吸をすると、
急に泣き始めた。
「ユカリ?どうしたの?今どこにいるの?」
「○○公園・・・。」
「すぐ行く!」
私はすぐその公園へむかった、
ハルもついてきているようだった。
公園につくと、
ベンチに座るユカリの姿が見えた。
「ユカリ。」
「アイ〜!」
ユカリは私の姿に気付くと、
抱きついて泣いた。
私はユカリの隣に座って、
ユカリを抱きしめながら聞いた。
「ユカリ、どうしたの?話して?」
背中をさすってやると、
ユカリは少し落ち着いたように話しだした。
「あのね、
昨日ユウマにデートにさそわれて、
待ち合わせ場所にいったら、
ユウマとほかに男の人が2人いて、
ホテルに連れて行かれたの。」
「うん。」
「ユウマが「俺のこと助けて。」っていうから、
私はユウマがその人たちになにか脅されてるのかもしれないって思って、
黙ってついていったら、
服を全部脱がされて・・・。」
「・・・。」
ユカリは代わる代わる3人から犯され、
その行為を写真に撮られたという。
ユウマはその写真を売って、
金にしているらしい。
今日も同じ行為が、
昨日と同じホテルで行われたらしい。
「でも私、ユウマが好きだから・・・。」
「でも私は許せない。」
「アイ・・・。」
ハルは私たちの邪魔にならないように、
公園の外で私たちのことを待っていた。
私はユカリの肩を抱いて立ち上がり、
「ユカリを家まで送る。」というと、
ハルは「俺も送ってくよ。」と言った。
ハルはまた、
なにも聞かない。
ユカリの家の前まで来ると、
私はユカリの包帯をしている腕を握って、
「負けるんじゃないよ。」とだけ言って帰った。
その後ハルは私を家の前まで送ってくれた。
私が「ありがとう。」といと、
ハルは笑顔で首を横に振った。
「なぁ、アイ。」
「なに?」
「俺が昨日アイに言った言葉、嘘じゃないよ。」
「え?」
「たった2回しか会ったことがないのに、
アイのためにあんなに必死になれるのは、
アイのことが好きになったからだよ。」
「・・・ハル。」
「ねぇ。」
「?」
「子供、産もうよ。」
私は耳を疑った。
でもハルの目は真直ぐだった。
「俺が大切にするから。」
私はしばらく沈黙してから、
「考えさせて。」と言った、
ハルは笑顔のまま頷いて、
帰っていった。
ハルが帰ったのを確認すると、
私は家から離れて歩き出した。
私には、
しなきゃいけないことがある。
34 :
ちょ
:08/04(金) 16:19:51
HOST:ZC101038.ppp.dion.ne.jp
ハルまぢかっけぇ↑↑
なんかぅちの彼氏と性格にてます ワラ
35 :
蓮奈
:08/05(土) 12:45:30
HOST:b21014312765.datacoa.jp
あげぃ
36 :
みしゃ*(未夜
:08/06(日) 10:36:52
HOST:p1185-ipbf201aobadori.miyagi.ocn.ne.jp
ぁげぇ・・・
切ないよぉぉぉ・・・がんばれぇ;
37 :
Rain
:08/06(日) 20:18:07
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
携帯を取り出し、電話帳を表示する。
この携帯でこの名前を見るのは、
ずいぶん久しぶり。
ユウマ。
発信ボタンを押すと、
しばらくしてプルルと接続された音が聞こえる。
1コール
2コール
3コール
「もしもし?」
「もしもし。」
「なんか用?」
「今あんたの家の外にいるの。出てきて。」
「は・・・?」
「あんたが出てくるまでずっと待ってる。」
そう言って一方的に電話を切った。
しばらくして、
マンションの中からユウマが出てきた。
「なんだよ。」
私は何も言わずにユウマに歩み寄ると、
手を大きく振りかざしてユウマの頬を打った。
バチンっ!!!
すごい音だった。
ユウマは突然のことにかまえることもできず、
軽くよろめいた。
「なにすんだテメェ!!!」
ユウマが私の髪の毛を掴む、
私は踏ん張ってユウマの肩を抑える。
「ユカリにまで・・・あんた最低!!」
「意味わかんねーんだよっ!!!」
「ユカリにしたこと、あんんたの親にも学校にもバラしてやるんだから!!」
「黙れ!!」
ユウマが私を突き飛ばすと、
背中が思い切り電信柱に打ち付けられた。
「っ・・。」
「ユカリに何聞いたか知らねぇけどな・・・勝手なことしたらわかってるよな?」
「・・・。」
「お前が援助交際してるってことも俺は知ってんだぞ。」
「・・・。」
「警察にお世話になるのはお互い様じゃねぇの?」
ユウマの肩を抑える私の腕から、
自然と力が抜けた。
援助交際に逃げたのは、
私が弱いから。
でも、
援助交際をしなきゃいけないくらい、
私のことを追い込んだのは、
・・・あんたじゃない。
気付くとユウマはすでにマンションの中に戻ってしまっていた。
私は電信柱に体重を預けたまま蹲った。
反論できない自分。
反論する権利のない自分。
私はユウマと同じなの?
ズキン・・・
ズキン・・・
お腹に違和感を覚えた。
ズキン、ズキンと痛む。
だんだん、
その痛みが強くなってきているように感じた。
「っ・・・!!」
次の瞬間だった。
ズキンズキンと痛んだお腹に、
急にハンマーで内側から叩かれたような猛烈な痛み。
「ぅ・・・ぁ・・・。」
それから視界は徐々に狭くなって、
私の意識は途切れた。
38 :
みしゃ*(未夜
:08/07(月) 09:59:47
HOST:p1185-ipbf201aobadori.miyagi.ocn.ne.jp
ぁげ
39 :
夏
:08/07(月) 11:43:30
HOST:i219-167-35-100.s05.a001.ap.plala.or.jp
あげ↑
40 :
舞
:08/07(月) 13:06:32
HOST:ser357664001680315
あげ
41 :
Rain
:08/07(月) 18:13:24
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
「っ・・・。」
目を開くと、
真っ白な天井。
お腹がズキンと痛む。
「ありがとうございました。」
顔を横に向けるとドア。
その外から女の人の声が聴こえた。
なんだか頭がボーッとする。
薬を吸わされたときみたいに、
なんだか宙に浮いているような、
変な感じ・・・。
ドアが開くと、
入ってきたのはお母さんだった。
「バカ!!」
お母さんが泣いてる。
私はまだ状況が理解できない、
理解できるほど、
頭がまだ上手く働かない。
「お母さん・・・?」
「あんたはなにやってんのよ!」
泣き喚くような声。
ちょっとずつ、
頭がはっきりとしてきた。
ズキン。
ズキン。
下っ腹のあたりが痛い。
そのもっと下、
膣も痛い。
「っ・・・。」
ものすごい吐き気がして。
私はベッドの横に置いてあった桶にとっさに手を伸ばし、
その中に嘔吐した。
つわりのような、
でも少し違和感のある、
吐き気。
そして、
下腹部の痛み。
お母さんが後からやって来たお父さんに肩を抱かれ、
ヨロヨロと部屋から出て行くのが見えた。
どういうことか、
わかった。
頭が少しボーッとするのも、
吐き気がするのも、
お腹が痛いのも・・・。
なんだか体が少し軽い気がした。
そう、
大切な何かが1つ、
私の体から出ていってしまったみたいに。
お腹に手を当ててみる。
わかる。
そこにあったはずのものが、
なくなっている。
そこに確かに動いていたはずの鼓動が、
今はない。
どうして。
どうして。
瞳から、
一筋の涙が零れた。
私は、
流産したんだ。
42 :
Rain
:08/07(月) 18:18:23
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
アゲありがとうございます!
遅くなるときもあるかも知れませんが、
必ず更新していきますのでよろしくお願いします。
43 :
Rain
:08/07(月) 18:38:50
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
それから家へ帰るとき、
お母さんも、
お父さんも、
一言も口を開かなかった。
静まりかえる車内。
ラジオを流していたって、
頭の中は無音状態。
たんたんと走り続ける車、
ユウマと会ったときはだいぶ遅い時間だったはずなのに、
今はもう次の日の昼間。
時間をいきなり早回しさせられた感じ。
そして、
私の時間が早回しされている間に、
あまりにも大変なことが起きた。
1つの命が、
なくなったんだ。
産もうって思ってたわけじゃない。
今までずっと、
どうやって中絶しようかって、
必死になっていたはずなのに、
どうしてこんなに虚しいんだろう。
どうしてこんなに、
悲しいんだろう。
携帯が鳴る。
ハルからのメールだった。
【アイ、昨日はちゃんと眠れた?】
ハルはまだ、きっと何も知らないんだ。
「子供、産もうよ。」
ハルの言葉が蘇る。
胸が締め付けられるみたいに、
苦しい。
また目頭が熱くなって、
涙は溢れそうになるけど、
今はダメ、
泣いちゃ
ダメ。
右手と左手を強く握る。
ツメが食い込んで血が出てしまうくらい、
強く、強く、握る。
家についても、
お母さんは口をきかなかった。
お父さんに呼ばれて、
お父さんの部屋に行く。
「そこに座りなさい。」
いつもは仕事で忙しいはずなのに、
今ここにお父さんがいるのも、
全部私のせい。
仕事、
休んだんだね。
「気分はどうだ?」
「大丈夫。」
「ちゃんと説明できるか?」
「・・・。」
「相手は誰だ?」
「・・・。」
黙りこむ私に、
お父さんは頭を抑えた。
「教えられないのか。」
コクン。
1つだけ、
頭を縦に振る。
「・・・今はお前も混乱してるだろう。
話はまだ今度聞く。
その時までにちゃんと、説明できるように頭の中を整理しておけよ。」
「・・・うん。」
「それとお母さん、どれだけ傷ついてるかわかってるよな?」
「うん。」
「これ以上お母さんを傷つけるようなことだけはするな。」
私は頷くと、
お父さんの部屋を出た。
お母さんの顔は見られない。
そのまま自分の部屋へ戻った。
部屋に入ってドアを閉めた瞬間、
涙がいきおいよく溢れ出してきた。
声が我慢しきれずにもれる。
涙が止らない。
まだお腹が少し痛む。
つわりはない。
昨日まであんなに悩まされてきたのに。
まるでなにもなかったみたいに、
なくなってる。
目が覚めた時吐いたのは、
麻酔の副作用だと言われた。
私が眠っている間に赤ちゃんは、
私の中からバラバラにされて掻き出された。
私はなにも知らずに、
眠っていたのに。
どんどん心が闇に蝕まれていくみたいで、
一人では息をしているのも辛い。
私は家を出た。
フラフラと歩いてたどり着いたのは、
ハルの家。
こんなところに来て私は一体どうしたいんだろう。
ハルの家に背を向けて帰ろうとしたときだった。
「アイ!?」
ハルの声。
ハルはちょうど学校から帰って来たところだった。
44 :
Rain
:08/07(月) 19:10:34
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
「ハル・・・。」
「アイどうした!?顔色悪すぎ!」
ハルが駆け寄って私の額に手を当てる。
「あのね、ハル・・・。」
「どうした?」
「私、流産しちゃったの・・・。」
その言葉を口にした瞬間、
ようやく止ったはずの涙が再び溢れてきた。
両手で目を覆う。
ハルの顔も今は見えない。
「ごめんね、ごめんね・・・ハル、産もうって言ってくれたのに・・・わたっ・・・。」
ハルが私のことを抱きしめる。
きつく、きつく。
息が止るくらいきつく、
でも今はそれが、
なんだかすごく心地よかった。
「アイ。ありがとう。
そんなこと本当は口にしたくなかっただろ?
でも、俺の気持ち考えてくれたんだよな。
こんなめちゃくちゃになって泣くくらい、
辛いくせに・・・。
辛いことは今話さなくてもいいんだよ、
言っただろ?
話したくなったらアイが話してくれると思うから、
俺は問い詰めたりしないって。」
ハルの声は少し震えてた。
「ううん。
話したかったの、ハルに。
私、無理なんかしてないよ。」
その後私はハルの家に入って、
サキさんが入れてくれた温かいココアを飲んだ。
真夏のココア。
でも、すごく胸にしみた。
それから、こうなったいきさつをハルに話した。
昨日あの後、
ハルに黙ってユウマに会いに行ったこと。
ハルは怒らないで真剣に私の話を聞いてくれた。
ハルの家からでると、
日はすっかり沈んでいた。
ハルが私の肩に半そでパーカーをかける。
前にもこんなことがあったな。
今日はそんなに寒くないけど、
ハルの気持ちが嬉しい。
空を見上げるとちらほらと星が見えはじめていた。
「なぁアイ。アイの赤ちゃんもあの星の中にいるのかな?」
「え?」
「よく言うじゃん、人は星になるってさ。」
「どうだろ。」
少し顔がほころぶ。
なんだか最初ハルの家に来た時とは違う、
心が軽くなってる。
「アイ、もう援助交際なんかするな。」
ハルの声が急に真剣になる。
星を見上げていた顔を下ろして、
ハルの方を見ると、
ハルも真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「アイは何も理由がなくて援助交際なんかしないって俺は思ってる。
なにかあったんだろ?
話さなくてもいいよ。
でも、アイが辛い分はこれから俺が支えるから、
だから、もう自分の体傷つけるようなことすんな。」
「・・・ありがとう。」
「約束できるな?」
「・・・うん。」
ハルは私の返事を聞くと、
さっきまでの真剣な顔とは一転、
いつものように明るく笑った。
そして私の手を軽く握って言った。
「それで、できればお付き合いをしていただければと・・・。」
照れくさそうな笑顔。
「別にこのままの関係も悪くはないけど、
彼氏になったらアイのこともっと傍で支えられるだろ?」
目をそらして言い訳を言うような顔。
なんだか今は、
全部が愛しい。
「・・・いいよ。」
「え?」
「いいよ!!」
ハルの顔がどんどん笑顔になっていく。
私の手を握る力を強めて、
反対側の手でガッツポーズを小さく作る。
「やったぁ!」
「ふふっ・・・。」
「なんで笑ったんだよ?」
「ハルってなんかバカだよね。」
「はぁ!?なんだよそれー・・・まぁいっか。」
そういうとハルは私の口に小さなキスをした。
ハルとのはじめてのキス。
私は、
確かに幸せだったよ。
ねぇ、ハル。
45 :
舞
:08/07(月) 21:12:11
HOST:ser357664001680315
あげなんか切ないですねっっ。おもしろいです☆頑張ってください。
46 :
ちょ
:08/07(月) 21:40:32
HOST:ZK030009.ppp.dion.ne.jp
きになるきになるぁげぁげ↑
47 :
Rain
:08/07(月) 22:20:10
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
それから1週間。
医者に言われたとおり学校を休んだ。
術後、体に負担をかけてはいけないからだ。
ここしばらく、
お母さんの顔をよく見ていないし、
声も聴いていない。
いつも私が階段から降りてきたのに気がつくと、
背を向けて違うほうへ行ってしまう。
1週間ぶりに学校へ登校する今日も、
同じ。
「行って来ます。」
家を出ると、
サンサンと照りつける太陽。
いつか、
妊娠検査薬を使ったあの時と同じような、
そんな日。
私のお腹は軽くなった。
でも、
背中に背負う何かは重くなった。
ハルやサキさんに、
何度も私は悪くないと言われた。
流産したのは、
私が何かしたからじゃない。
でもね、
私が殺したのと同じだよ。
ずっと殺したくて、
援助交際して、
クスリまで吸わされて・・・。
だけど、
思ったより心に負った傷は深い。
罪悪感も、
胸がズキズキするのも、
時々下腹部に痛みがあるように感じるのも、
中絶のことしか考えられなかった自分や、
その体で男に体を売った自分に、
赤ちゃんが罰を与えているのかもしれないとさえ思う。
でも聞いてる?
私の赤ちゃん。
私はあなたのこと絶対忘れない。
この罪悪感も、
胸の痛みも、
体が覚えてる下腹部の痛みも、
絶対に、絶対に忘れないから、
私のこと
少しでもいい、
許してね。
私はそれらの物を全部受け止めて
生きていける気がした、
それは、
ハルが支えてくれるからってことも、
わかってた。
「おはよう。」
1週間ぶりに入る教室。
流産したことは、学校も友達も知らない。
いつもどおりの教室。
いつもどおりのクラスメイト。
ただ、
1つだけ違っていたことがある。
教室に1つだけ、
ポツンとあいた席。
「ねぇ、ユカリは?」
「ユカリ?ここ3日間くらい来てないよ〜。」
「体調でも崩したの?」
「いやぁ・・・なんかやばい噂流れてるけど・・・。」
寒気がした。
自分のことばかりですっかり忘れていた。
ユカリとユウマのその後・・・。
「噂ってどんな?」
「なんかやばい商売してるって噂広まってさぁ・・・。
自分の裸の写真売って金にしてるって、
で、学校で一気に男子達に目つけられて・・・。
来なくなっちゃったんだよねぇ。」
「・・・。」
ユカリはあの後もずっと、
写真を撮られ続けていたんだろうか。
私はユウマを殴ってやりたい怒りをどうにか静めた。
ユウマにはこれ以上ないくらいの恨みがある。
私を強姦したこと、
ユカリを傷つけたこと、
そして、私を流産させたこと・・・。
怒りで肩が震える。
どうすればいい、
どうすれば。
いっそ自分の援助交際の話などどうでもよかった。
ユウマが学校にバレして私が退学になったって、
警察のお世話になったって、
別にそんなことどうでもいいと思えた。
だけど、
頭に蘇るのはお父さんの言葉。
お母さんをこれ以上傷つけるようなことはしないでくれと、
すがるような目で、
訴えてきたこと・・・。
どちらにも身動きが取れない状況。
今心配なのはユカリ。
電話にも出ないし、
メールの返信も一切返さない。
48 :
ちょ
:08/07(月) 22:22:04
HOST:ZK030009.ppp.dion.ne.jp
ぁげ↑
49 :
Rain
:08/07(月) 22:41:48
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
その日それから私は、
休み時間ごとにユカリに電話した。
ユカリは電話にでない。
家にかけてみても、
誰もでない。
私は、意を決してユウマのクラスへ足を運んだ。
「ユウマ呼んでもらえる?」
入り口の付近にたむろっている女子に頼むと、
わかったと言ってすぐにユウマに声をかけてくれた。
ユウマはコチラを確認すると、
面倒臭そうにクラスから出てきた。
「なにか?」
「ユカリは?」
「体調悪いんじゃねぇ?」
右手を強く握りしめて怒りを堪える。
「噂流れてるって。」
「本当だったらショックだな〜!
ユカリがそんなことする奴だって思ってなかったし!」
急に声を少し大きくして周りに聞えるように言う。
頭に血がのぼって、
涙が溢れてきそうだ。
「ユカリと連絡がとれないの。」
それを聞いてユウマがニヤっと笑う。
そして私の耳元に口を近づけて行った。
「俺、ユカリと会える場所知ってるよ。」
その後ユウマは「今日の放課後俺について来れば?」
と言って、教室の中に戻って行った。
頭の中が真っ白になって、
しばらくその場に立ち尽くしていた。
どうやらユウマは、
学校ではユカリに騙されていたかわいそうな彼氏を演じているらしい。
許せない。
その後、色んな子から噂を聞いた。
ユカリはそのことが噂で学校に広まった後、
男子に性的嫌がらせを受けてたと言う。
そしてユカリは、学校に来なくなったと。
放課後になって再びユウマのクラスを訪れると、
教室の中から私に気付いたユウマは、
なんの悪びれもなく私に笑顔で手を振って近づいてきた。
「じゃ、行きましょうか。」
ユウマが私に笑顔で話しかけるのを見て、
女子たちがなにかこそこそと話している。
くだらない誤解なら迷惑だ。
ユウマと2人で歩くのは、
数年ぶり・・・。
まさかまた2人で歩くことになるなんて
夢にも思っていなかった。
世界で一番憎い、
こいつと・・・。
電車に乗りある駅で降りる。
日はどんどん沈んでいって、
辺りが怪しい雰囲気をかもし出す。
大きな通りから、
ユウマは狭い通りへと入ると、
ビルの中へ入っていった。
イヤな予感。
でも、
この中にユカリがいるかもしれない。
私は1つ大きく深呼吸をして、
ユウマの後に続いた。
携帯はセンターのボタンを押せば、
すぐハルに発信できるよう準備して・・・。
50 :
ちょ
:08/07(月) 22:45:39
HOST:ZK030009.ppp.dion.ne.jp
うざぃくらぃぁげます ワラ
51 :
Rain
:08/07(月) 22:56:04
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
狭い階段を登っていくと、
そのまま細い廊下に繋がる。
主に紫がベースの、
気持ちの悪い空間・・・。
ユウマは突き当たりのドアの前で立ち止まって聞いた。
「ユカリに会いたいんだよね?」
「早く会わせて。」
この中にユカリがいるの?
ユウマがゆっくりとドアを開くと、
私の目の前に広がったのは信じがたい光景だった。
「もっと強く突いてっ!!」
裸で4つんばになり淫らに腰を振るユカリの姿と、
ユカリの体にむさぼりつく数人の男、
そして、
カシャカシャとカメラでその風景を撮影する男。
「そ・・・んな・・・。」
「わかった?どういうことか。」
私の後ろでユウマが言う。
「ユカリは変わったんだよ。
今はもう毎日誰かに激しく突かれないと
生きていけない体になったんだ。」
私はユカリに駆け寄ってユカリの肩をつかんだ。
「ユカリ!ユカリ!!こんなとこで何してんのよ!
早く逃げよう!?」
「アイ・・・。」
ユカリはまるで心を奪われた、
人形のような眼差しで私を見た。
体には無数のキスマークがあった。
「ねぇアイ、気持ちいいよ?一緒にする?」
「何言ってんの!早く立って!逃げるの!!」
ユカリの肩に腕を回して担ぎ上げる。
ユカリは力を抜いたまま歩こうとしない。
「アイ。無駄だよ。そいつもう男無しじゃ無理だから。」
「あんたどこまで最低なのよ!ユカリを返して!!」
ユカリの体を私一人の力で支えて歩くことはできなかった。
「ユカリ?
アイにも教えてあげなよ、セックスがどれだけ気持ちいいか。」
するとユカリが私のことを後ろから抱きしめた。
イカ臭い臭い。
ユカリから漂う。
精液に臭いがプンプンする。
「ユカリやめて。」
ユカリは私の耳を甘噛みしながら胸をまさぐる。
私の言葉なんてユカリには届いていない。
「やめてってば!!」
ユカリを突き飛ばす。
今のユカリには私の言葉は届かない。
どうしようもなくて、
私はその場を逃げ出した。
52 :
舞
:08/07(月) 23:02:14
HOST:ser357664001680315
あげ⌒
53 :
シぁ-汰シ
(J/87JYCguQ)
:08/08(火) 00:47:18
HOST:05004031044063_ea.ezweb.ne.jp
涙がとまりませんでした。命について深く考えさせられました。
更新期待しています。
(●*>凵<p[a g e]q)*゜・。+゜
54 :
みどり
:08/08(火) 00:47:56
HOST:d-219-121-137-128.d-cable.katch.ne.jp
あげ!!!!
涙でそう;;
55 :
Rain
:08/08(火) 01:33:43
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
元来た道を無我夢中で走る。
何も考えたくない。
どんなに思い出さないように努めても、
浮かんでくるユカリの哀れな姿。
胸が苦しい。
散々走ってたどりついたのは、
ハルと初めて会ったときに見つけた、
街中になじんでいない公園だった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
息が切れる。
こんなに走ったのは何年ぶりだろう。
私はブランコに座って空を見上げた。
ユカリの姿がまぶたの裏にまで焼きついて消えない。
私がいないうちに、
色々なことが変わってしまった。
ユカリの目に私はうつっていなかった、
本当に壊れたおもちゃのようになっていたんだ・・・。
ズキン
ズキン
下腹部が痛む。
胸も、
頭も、
なにもかもが、
ズキン
ズキンと
音をたてて痛む。
ユカリを守れなかったのは、
私のせいのような気がした。
気付けば私は、
何1つ守れてないじゃないか。
自分の中で生まれた命も、
大切な友達も、
そして、
自分自身も。
無力な自分に腹が立つ。
負けたくない。
自分に、
ユウマに・・・。
私は立ち上がると、
もう一度あのビルへ向かった。
狭い通りに入ったところで、
誰かにぶつかった。
「っ!・・・すみません。」
顔を上げると、
それはユカリだった。
「・・・アイ・・・。」
私はそのままユカリと歩いて駅に向かった。
ユカリの目には光が戻っていた。
男達にもてあそばれて、
腰を振っていた人形のような瞳とは違った。
「アイ・・・ごめんね・・・。」
どうして?
謝りたいのは私の方なのに・・・。
ユカリがユウマと付き合うことになったとき、
もっとちゃんと止めろと言えばよかったのに。
そうすれば、
こんなことにはならなかったのに・・・。
「ユカリ・・・、学校来ないの?」
「あはは・・・行けないよぉ・・・噂、すごいし。」
ユカリは虚しそうに笑って俯く。
「毎日あそこに通ってあんなことを?」
「あれね、けっこう悪い仕事じゃないと思わない?
気持ちいい思いして、写真撮られただけで、
けっこう私にもお金まわってくるんだっ・・・」
バチン!!
「バカ!!」
私は無意識のうちに、
ユカリの頬を強く打っていた。
ユカリの言葉が痛くて、
聞きたくなかった。
「私にまで強がらないでよ。
私知ってるよ、ユカリがそんな子じゃないって。」
「・・・私・・・ユウマが好きなの・・・。それでも・・・好きなの。
ごめんね、アイ。」
ユカリはそれでもユウマが好き。
私がこんなにこんなに憎んでいる、
ユウマのことが、
こんなにもユカリを傷つけているのはユウマなのに、
それでもユウマが、
ユカリは好きだと言う。
私には理解できない。
「でも・・・、もうどうしたらいいかわからないのっ。」
急にその場に崩れ落ちるユカリ。
壊れたように、
狂ったように、
泣き出した。
私はユカリの肩を引き寄せて抱きしめた。
私が今ユカリにしてあげられることなんて、
こんなにも無力なことだけ。
「ユカリ、学校来て?お願い。」
「でも・・・。」
「ユカリのことは私が守るから・・・ね?」
「・・・うん。」
その後私はユカリを家まで送って家へ帰った。
お母さんはまだ、
私の目を見ない。
56 :
舞
:08/08(火) 01:35:45
HOST:ser357664001680315
あげ⌒
57 :
Rain
:08/08(火) 01:51:41
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
次の日、ユカリはちゃんと学校へ現れた。
周りからの痛いくらいの視線。
どんなにユカリは苦しい思いをしているだろうか。
男子達のいやらしい目つき、
また獲物が帰ってきたかといった表情。
「おはよう、ユカリ。」
「アイ・・・おはよう。」
ユカリには当然元気はない。
思っていたとおりの周囲の反応。
私だって毎日こんなんじゃ学校が怖くなる。
「周りのことは気にしないっ!
ってか、あんな噂信じるほうがどうかしてるっしょ!!!」
周りに聞えるように声を荒げる。
ふとドアの方に目をやると、
ユウマの姿があった。
面白くなさそうな顔をしている。
そしてしばらく黙って私たちの方を見た後、
わざとらしく教室の中に入ってきた。
「ユカリ!!お前心配したんだぞ!?
本当にもう具合悪いのか!?
今日俺送っていくから!!」
ユカリが斜め下を見て「うん・・。」と小さく返事をする。
私はすぐにユウマとユカリの間に割って入った。
「だーめ!!今日ユカリは私と帰るの。ね?ユカリ。」
「え・・・あ・・・うん。」
「ユカリ?俺はユカリと帰りたいんだけど?」
「ぇ・・・。」
「ユカリ!!」
私がユカリの方を見て軽く怒鳴る。
ユカリ、
お願いだから、
負けないで。
「・・・ごめんユウマ。
私アイと話したいことあるし、
今日は他の人と帰って、ごめんね。」
ユカリがそう言うと、
ユウマは小さく舌打ちをして教室を出て行った。
ユカリの肩が少し震えている。
「ユカリよくやった!!偉いね。」
私がユカリの頭をゴシゴシと撫でると、
ユカリは少し安心した表情を見せた。
その後も、
学校にいる間中ユカリへの周囲の視線は、
ゆるぎないものだった。
こんな監視されているみたいにジロジロみられたら、
ユカリにだってストレスがたまってしまうだろう。
放課後、
私はHRが終わるとすぐにユカリの手を引いて教室を出た。
ユウマには会わせない。
校門を抜けると、
ユカリは大きくため息を1つついた。
「アイ、ありがとう。」
「なに言ってんの、あたりまえでしょ?」
いつもの帰り道を歩く私たち、
ユカリはしばらく沈黙してから私に言った。
「ねぇアイ。」
「なに?」
「私、昨日ユウマが好きって言ったじゃない?
本当に好きなの。
あんなことされたのに、私、大好きなの。」
「うん。」
「でもね、幸せじゃないの。」
「うん。」
「ユウマに片思いしてたあのときの方が、
ずっとずっと幸せだった。
だから、・・・だからね、私。」
ユカリは大きく息を吸い込んだ。
「ユウマと別れます!!
それで、しばらくは片思いかなっ。」
そういうとユカリは少し苦しそうに笑った。
私はユカリに方へ歩み寄ると、
頭を撫でた。
「ユカリ、あんた偉いよ。」
「偉くなんかないよ、自分で選んだの。」
「そっか。私協力するからね。
人の噂も何日まで〜っとか言うし、
大丈夫、やり直せるよ!」
「・・・うん!」
ユカリの笑顔は悲しげだったけど、
どこかすっきりしていた。
ユカリの恋は叶ってほしい、
でもそれ以上に、
ユカリに幸せでいてほしい。
ユウマはユカリを決して幸せにはしない。
だから、
この選択は絶対に間違ってないよ。
58 :
舞
:08/08(火) 02:00:10
HOST:ser357664001680315
あげ⌒
59 :
Rain
:08/08(火) 02:18:45
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
あれから3ヶ月が過ぎた11月上旬。
まるであの日々が嘘だったかのように、
穏やかな日々が流れる。
お母さんは少しずつだけど、
私に声をかけてくれるようになった。
少しずつ、
少しずつ、
それでもいいと思えるようになった。
自分で壊してしまった信頼という名の積み木は、
もう一度ゆっくり、
積み直していこう。
「ハル!!」
「アイ。」
あれから2人はごく平凡なカップルのように、
幸せで、
温かい時間を一緒に過ごしてきた。
ハルの手を握ると、
ハルは私の手を握り返す。
それだけで幸せと感じられた。
ユウマと付き合うことで覚えてしまった恐怖も、
ハルが打ち砕いてくれた。
ハルなら信じられる、そう思えるようになった。
「そろそろ寒くなってきたなぁ・・・。」
「ですねぇ・・・。」
近頃は風が冷たくなってきた。
でもそれは私とハルの距離を近くする。
寒いと言えば、
寄り添う。
「ねぇハル。ハルは足りなくないの?」
「なにが?」
「私。」
「どういう意味?」
私はわかりやすくふてくされた顔をしてみせる。
付き合って3ヶ月と少し立つのに、
キス以上のことは何もしていない。
でもそれもユウマの優しさなのかなと感じる。
私が援助交際をしていたから、
ユウマは私のことを大事にしたくて、
私を簡単には抱かない。
そう感じるの。
「アイは足りてる?」
「何が?」
「俺。」
「どういう意味?」
「こういう意味っ。」
そう言ってハルは私の口に小さなキスをする。
幸せ。
これが幸せってきっと言うんだな。
最近よく感じる。
前までの私なら感じることのなかった、
喜び。
級にハルが私の手を強く握る。
「どうしたの?」
「あのさ、アイ。」
「俺のこと知りたい?」
唐突な質問。
「ハルが話したいことだけ話してくれればいい。
でも、やっぱり知りたいかな。
でも無理強いはしたくない。」
「じゃぁ、聞いて?」
「うん。」
ハルが私の目を真直ぐ見る。
「俺が1年以上彼女作らなかったのはね、
前の彼女がすごく好きだったからなんだ。
んで、その彼女にものすごい裏切られて、
情けないけど、ちょっと人を好きになるのが怖くなってたから。」
「裏切られたって・・・?」
「アイとほんの少し重なる部分あるんだ。
それでも聞きたい?」
「聞きたい。」
「妊娠したんだ、俺のその時の彼女。」
「ハルの!?」
ハルは焦ったように首を横にふった。
「違う違う!元カレだってさ。
はじめは、言い寄られて仕方なくしたって言ってたんだ。
だから、許せなかった。その相手の男が。
だから俺、そいつのこと殴りに行ったんだ。」
「うん。」
「いざ殴りに行ってそいつの胸倉掴んだらさ、
彼女が言うんだよ、「お願いだからやめて!」って。
俺はお前のためにしてるのになんでって思った。
そしたら彼女「産む」って言うんだよ、
その男の子供。そいつと2人で。」
「・・・。」
「結局もう、あいつはその男に抱かれた時点で、
俺から心はそいつに戻っちまってたんだ。」
ハルが少しうつむく。
「情けないのに俺めっちゃ泣いてさぁ・・・。
しばらく彼女のこと忘れられなくて、
部活でも走れなくなってめっちゃ周りから怒鳴られて、
絶対もう誰も好きになんねぇーって思った。」
「じゃぁなんで、私にメールくれたの?」
「最初は興味本位で、からかってやろうと思ってメールしたんだ。
こんなとこで男釣ってんじゃねぇって。
でもメールしてたら、
なんか予定が狂っちゃって、
アイに興味持ってた。」
「初めて会ったとき、めっちゃ可愛くて驚いて、
その後アイってなかなか笑わないから、
「ぜってー笑わせてやる!」ってむきになって、
いざ笑わせてみたらむちゃくちゃ可愛くってさ。
アイの笑顔もっと見たいって思っちゃいました。」
そう言ってハルはまたいつもの笑顔で笑った。
ハルが私に自分のことを話してくれるなんて、
今まではなかった。
だから、
ハルから話してくれたことがすごく嬉しかった。
でも同時に、
それだけその人のことが好きだったのかって、
少しだけ嫉妬した。
60 :
舞
:08/08(火) 02:22:10
HOST:ser357664001680315
感動やぁ⌒あげ⌒☆〃
61 :
Rain
:08/08(火) 02:34:28
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
ユカリはと言えばすっかり元気になっていた。
噂も消えて周りからの視線もなくなって、
ただユウマは面白くなさそうだったけれど・・・。
それでもユカリはユウマのことが好きだ。
「ねぇアイ見て!ユウマめっちゃかっこいいよ!!」
教室の窓からグラウンドを見て言う。
ユウマを含む男子達がサッカーをしているようだ。
「あんたもこりないねぇ・・・。」
「いいでしょ〜!」
スカートの丈が少し長くなったユカリ。
すっかりユウマと付き合う前のユカリに戻っていた。
あの事件のあと、
私はユカリを婦人科へ連れて行って、
性病と妊娠の検査をさせた。
結果は白。
どれだけ安心したことか。
あんなことを続けていたら、
きっとどこかで問題がおきてしまう。
今のユカリはあの時よりも幸せそうに見える。
ユウマを遠くから見る。
それがユカリの幸せのようだ。
私は、
最近まわりから「明るくなった。」といわれることがある。
援助交際をして体を売ってた、
心の体も麻痺していた、
あの時とは私は違う。
楽しいことを楽しいと感じ。
嬉しいことを嬉しいと感じ。
キレイなものをキレイと感じられるようになった。
そしてなにより、
悲しいことを心の底から、
涙を流して悲しいと感じることを、
1つの命が教えてくれた。
今でもまだ少しかじることのある、
下腹部のズキン、ズキンという痛み。
そして無性に泣きたくなる夜もある。
私の傷が完璧に癒えることはないけど、
今はそれでいい。
「時にアイさん!」
「なに?」
ユカリが満面の笑みで私に歩み寄る。
「本日合コンがあるのですがぁ・・・、
人数合わせに協力してくださいませんか!?」
「はぁ?いやだよ、私にはハルいるし。」
「そんなのわかってるってばぁ・・・人数あわせ、ね?
って言っても、相手3人で私1人しか用意できなくてさぁ・・・。
アイかわいいし、絶対いてくれなきゃ困るわけ!」
「意味わかんない。」
拒否った努力もむなしく、
私はその日の放課後、
ユカリに腕を引きずられ、
合コンへ行くはめとなった。
62 :
舞
:08/08(火) 02:39:38
HOST:ser357664001680315
ハルとはどうなんの⌒??気になりますネ⌒☆〃あげ
63 :
Rain
:08/08(火) 02:51:40
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
約束しているというカラオケに着くと、
中に男の人が3人座っていた。
その中の一人を見て私は唖然とした。
「ハル!?」
「・・・アイ!?!?」
一番端で面倒臭そうに座っているのはハルその人だった。
話を聞くとどうやら、ハルは急にこれなくなった1人の
人数あわせのために使われたらしい。
相手の学校はハルの通う学校だったのだ。
「いやぁ、人数合わせの2人がカップルだったとはねぇ!」
2人の男のうち片方が喋る。
「まぁいいじゃないですかぁ!自己紹介しましょ??」
ユカリが声を高くしていうと、
私たちを抜くその他4人が「いぇ〜い!」とベタに盛り上がった。
「じゃぁ俺から!
俺は○○高校3年のツヨシで〜す。
ちなみにサッカー部です!」
代わる代わる自己紹介をしていく。
「俺は○○高校出身、19歳のプー太郎、タクで〜す!」
その人があいさつをすると、
全員がプー太郎かよと軽くツッコミを入れながら笑った。
「私は●●高校1年のユカリですっ、
よろしくお願いします。」
ユカリがいつもより声のトーンと高くして言う。
男たちの反応はそれなり、
ユカリは普通にかわいいほうだ。
「●●高校1年のハルカです。よろしくお願いします。」
自分の番になると少しモジモジしながら喋りだすハルカ。
ハルカはユカリの友達でもあるけど、
私の友達でもある。
人見知りの激しい子だ。
でも、慣れた人には相当明るい。
「じゃぁ、そこのお2人さんもどうぞ!」
ツヨシが私とハルの方を見て言う。
「あ、えっと、●●高校1年のアイです。」
「○○高校3年のハルです。
ちなみにアイの彼氏なんで、
そこんとこよろしく!」
ハルは他男子2名の方を見てわざとらしく訴える。
最初はカラオケで盛り上がる。
ユカリとハルカは歌っている隙に男をチェックする。
ユカリの目は本気、
おいおい、
ユウマへの思いはどこへ?
はたから見ていて少し笑ってしまう。
ツヨシは色黒で背が高く、
顔はそれなりにかっこいい。
タクは色白でツヨシに負けじと背が高い、
髪を茶色く染めていて、
少しホストっぽい雰囲気が出ている。
ハルはというと、
肌はこんがり焼けていて、
目が大きくて背が2人に比べて少しだけ低い。
はっきり言ってしまえば、
カッコイイ系よりもカワイイ系だ。
歌っている最終にチェックをするのは男だった同じ。
ツヨシとタクの視線が痛い。
まぁ、見ているのはユカリとハルカだけだけど・・・。
ユカリは身長がそれなりに高くて細い、
胸だってそれなりにあるしスタイルはいい。
髪も長くて姫系だ。
ハルカは逆に身長が低くて少しぽっちゃりしているのがかわいい。
気配りができるし優しいし、
男ウケはいいはず。
ここは戦場かと思うほどお互いの視線が痛い。
なんで私たちはここにいるんだろうと、
ハルと私はずっと2人でジュースを飲んでいた。
68 :
Rain
:08/08(火) 15:08:45
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
そのうち、全員のテンションが上がっていって、
半ば合コンということも忘れながら盛り上がった。
盛り上げ上手のツヨシがその場を仕切る。
しばらくして会場はカラオケから
タクの家へうつった。
タクは実家が裕福らしく、
タク自身がプー太郎でもなんら問題なくらい、
贅沢な一人暮らしをしていた。
「酒飲みますか〜!」
そう言ってツヨシが途中コンビニで買ってきた
缶ビールやらチューハイやらを出してきた。
この中にいる全員がまだ未成年だ。
「はいはい!私飲みます!」
ユカリが手を上げてツヨシからチューハイを奪うと、
缶を開けて一気に飲み始めた。
「おぉ・・・なかなか立派だねぇ。」
それを眺めて感心するタク。
ハルはその光景を他人事のようにみながら、
苦笑していた。
私は机の上に並べられた缶の中から、
アルコール度数の低いチューハイを選んで2つとると、
片方をハルに渡した。
「はい、ハル。」
「俺酒苦手なんだよなぁ・・・。」
「そうなの?」
すると、
それをさり気なく聞いていたタクが言う。
「ハルは酒が苦手なんじゃなくて、
酒癖が悪いんだろっ!」
それを聞いてツヨシも便乗する。
「そうそう!
ちょっと飲むと顔真っ赤にして人に絡むんだぜ?」
私はハルの顔を見てニヤっと笑うと、
缶のふたを開けてハルの口元にグイグイとおしつけた。
「や、やめろって!」
「いいじゃんかぁ!私ハルが酔ったとこも見たいもん!」
「そうだー。彼女に隠し事はよくないぞ〜。」
横からちゃちゃを入れるタク。
その様子を実ながらハルカとユカリが笑っている。
そんな感じでそのあとも6人は酒を飲み続け、
私が気付いて時計を見たときには既に、
夜の9時半を過ぎていた。
「そろそろ解散しますか、
今日会ったばっかりの女の子たちを
こんな遅くまで引き止めておいたらご両親に怒られます。」
そういってタクが立ち上がると、
それぞれが帰り支度を始めた。
私も準備しようと横に目をやると、
泥酔状態のハル。
「・・・ハルくん?」
「あぁ?」
壁に寄りかかってグダグダしている。
「帰れる?」
「余裕。」
そういうとハルはよっこらしょと立ち上がって、
カバンを持った。
ヨロヨロとするハルを支えながら、
マンションのエレベーターに乗り込む。
「今日は楽しかったです!」
ユカリが満面の笑顔で言う。
「俺らも楽しかったよー!」
ツヨシが言うと、タクが大きく頷く。
「また6人で集まって遊びましょう?」
「それいいね、
俺ちゃっかりユカリちゃんの連絡先ゲットしちゃったし〜。
連絡するよ。」
それを聞くとツヨシは驚いた顔をしてタクの頭を叩く。
「お前、抜け駆けか!?!?」
「お前がトロいんだよ。カメ。」
「はぁ!?!?」
そのやり取りを少し笑いながら眺めると、
しばらくして6人は解散した。
ハルカとユカリは家が遠いから、
タクが車で送っていくことになった。
ツヨシはマンションから右の道へ、
私とハルはマンションから左の道へと進んだ。
「ちょっとハル・・・大丈夫?」
「余裕・・・。」
「さっきからそればっか。」
頭を抑えながら歩くハル。
相当やられているらしい。
呆れがちに見つめていると、
急にハルがその場に大きく転倒した。
ドテ!!
「いってぇ・・・・。」
「ハル大丈夫!?!?」
「余裕だって。」
「いいから捕まって。」
私はハルの肩を支えると、
2人よろよろと歩き出した。
今考えるとこのときから、
ハルは少しずつおかしくなってきていたのかもしれない。
少しでも早く、
気付いてあげたかった。
ごめんね、ハル。
72 :
Rain
:08/08(火) 17:41:04
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
あれから何度か6人で集まって騒いだりした。
ユカリはタクさんに気があるらしい。
私が言うのもなんだけど、
タクさんの外見や喋り方は、
ほんの少しだけれどユウマに似ている。
最近ハルと会うのはこの6人で集まる時ばかり、
それ以外はハルも忙しくて時間が取れない。
ハル部活に忙しい。
最近はなんだか調子がよくないみたいで、
焦って自ら練習量を増やしてハードにしていると、
ツヨシから聞いた。
「アイ、今日ハルくんは?」
ユカリがキョトンとした顔で聞く、
私は首を横に振って答えた。
ハルとは上手いこと連絡が取れない。
ハルは部活が終わって家に帰ると、
疲れてすぐに眠ってしまうらしい。
メールをする時間も、
電話をする時間もない。
1日3通のメール。
少し寂しい。
「でも今日部活早く切り上げて来るって言ってたぞ?」
ツヨシが言う。
今はツヨシがなんだか羨ましい。
学校に行けばハルがいるんだもん。
私は全然会えないのに・・・ちょっとズルい。
「そういえばあいつ、最近元カノからメールが来たとか言ってたぞ?」
「・・・え?」
「あれ、アイちゃん聞いてない?」
ツヨシは少し渋った顔をした。
そんな話、私はハルから聞いていない。
「まぁ、気にしなくていいんじゃない?
今はアイちゃんにぞっこんなのは俺から見てもわかるし!」
「・・・。」
不安ばかりがつのる。
ハルは元カノのことが大好きだった。
その時のことを話しているときのハルの顔、
すごく苦しそうだったのを覚えてる。
それくらいハルはその人のことが好きだった。
「ツヨくん、ハルの元カノ知ってる?」
「え?・・・ん〜まぁ・・・。
でも、タクの方が知ってると思うよ。なぁ?」
そういうとツヨシはタクへと会話のバトンをまわした。
「そうだなぁ・・・。」
「どんな人だったんですか?」
「考えてみると、ちょっとアイちゃんに似てるかもなぁ。
見た目とか結構・・・。」
「そういえばそうかもな。」
ツヨシが相づちを打つ。
胸が苦しくなる。
「初めて会ったとき、めっちゃ可愛くて驚いて・・・」
ハルの言葉が蘇る。
もしかしたら、
ハルが見ていたのは私の中にある、
元カノに似た部分だったんじゃないだろうか。
「でもまぁ、けっこうな別れ方したしなぁ。
あの子にはもうこりごりだろ、ハルも。」
タクが苦笑いしながら言う。
ピンポーン♪
チャイムが鳴る。
「はいよ。」
タクはそう言って立ち上がると玄関に向かった。
訪れたのはハルだった。
「遅れてごめん。」
少し息を切らし気味に登場するハル。
私はすぐに気付いた、
ハルの右足の包帯。
「ハル、足どうしたの?」
「あ?あぁ、部活で転んで。
最近よく転ぶんだよ、足がもつれること多くて。」
「疲れてるんじゃないですか?」
ハルカが心配そうに声をかける。
ハルはいつも通り爽やかな笑顔で首を横に振って、
大丈夫というサイン。
今までのいきさつをずっと見つめていたユカリが急に立ち上がる。
「タクさん!私と一緒になにか食べ物買いに行きましょう?」
「え・・・。」
「いいから!!ね!?」
「あっ、じゃぁ俺も行くよ!」
慌ててツヨシも手を上げる。
「じゃぁ、私も!」
続いてハルカも立ち上がる。
「そ、そうだな。じゃぁお前ら2人は留守番しててくれるか?」
「え、わかった。」
ハルはキョトンとした顔で頷く。
ユカリが気をきかせて、
私とハルに2人だけの時間を作ろうとしてくれたのだ。
おせっかいなユカリのやりそうなこと・・・。
4人はゾロゾロと部屋を出て行った。
73 :
舞
:08/08(火) 18:00:51
HOST:ser357664001680315
気になる⌒⌒あげ↑↑
74 :
Rain
:08/08(火) 18:06:51
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
久しぶりの
2人だけの時間。
「2人きりは久しぶりだな。」
ハルがいつもの笑顔で言う。
「そうだね。」
「ごめんな、
今まで時間作ってやれなくて。
でも、俺もう引退したから!」
「そうなの?」
「あぁ、ちょっと長かったけど今日付けでおしまい。
大学入っても陸上は続けるつもりだけどな。」
「ハルは推薦だっけ?」
「あぁ、陸上で推薦貰った。」
いつもどおりのハルの笑顔。
でも私の心には1つだけ、
引っ掛かっていることがある。
元カノと連絡をとってるって・・・本当なの?
「ねぇハル。」
「ん?」
「ハルさ、最近何かあった?」
「別にないけど・・・。」
ハルの顔が少し曇ったのを、
私は見逃さなかった。
「ツヨシくんから聞いたんだけど、
元カノから連絡きたんだって?」
「あぁ・・・。」
いつもと違うハルの様子。
なんだか怖い、
寒気がした。
「別に話したくなかったらいいの!」
「あいつ、彼氏と別れたらしいんだ。」
「え・・・?」
「俺最近まで全然知らなかったんだけど、
あいつあの後すぐその男に中絶させられたらしいんだ。
で、それが精神的にショックで欝状態になってたらしくて・・・。」
「・・・。」
「会いたいって言われたんだ。」
「会うの?」
「会わないよ。ちゃんと断った。」
胸の中がモヤモヤする。
なんだかふいに、
泣きたくなる衝動。
「会ってあげなよ、
その人ハルの支えがほしいんだよ。」
「でも俺にはもう関係ないよ。」
「嘘!!」
部屋が静まり返る。
時計の秒針の音だけが聞える。
「ハル、関係ないなんて顔してない。
私だって赤ちゃん失ったからわかるよ、
その人がどんな気持ちか・・・。」
「・・・。」
ハルはなにも言わない。
「私はもうハルがいなくても大丈夫。
もうじゅうぶん支えてもらったよ。」
「おい、アイっ・・・。」
「バイバイ。」
私は呼び止めるハルの声も聞かずに、
バッグを持ってタクの部屋を飛び出した。
意地を張ってしまった。
本当は一人で大丈夫なわけなんかない。
ハルがいないと今の私はいなかった。
だけど、
ハルの苦しそうな顔を見ると、
どうしようもなかったんだ。
ハルは元カノのことが大好きだったの。
私にだってわかる。
私といることより、
その人といることのほうがハルにとって幸せなら、
私はハルの幸せを選ぶ。
自分が傷ついても、
今まで私を幸せにしてくれた、
ハルの幸せを、
私は1番に、
願ってるの・・・。
75 :
舞
:08/08(火) 18:09:22
HOST:ser357664001680315
あげ
76 :
Rain
:08/08(火) 18:25:33
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
あの日から半年、
私は高校2年生になっていた。
ハルからの連絡は、1度もない。
時々ツヨシくんやタクさんに会ったりすると、
ハルの噂を聞く。
元カノと付き合っているらしいという話、
ツヨシ自身ハルとは大学が離れてしまったから、
確かなことはわからないと言うけれど・・・。
そして私は、
また援助交際をはじめた。
全てはハルのいなかったあの頃に戻っている。
このごろは下腹部の痛みがあまりにも強い。
私は産婦人科へ訪れた。
「不妊症・・・ですか?」
「えぇ、妊娠が完璧にできないわけではありませんが、
可能性はかなり低くなってしまっていますね・・・。」
「そうですか・・・。」
「失礼な質問ですが、
無理な性交を行ってませんか?」
「え・・・。」
「体にも心にも負担になるような・・・。
体は心よりも素直にストレスを感じるんです。
医者の口からこんなことを言うのはなんですが、
しばらく性交を控えたほうがいいかと・・・。」
外へ出ると、中途半端に温かい風、
6月の半ば・・・、
少しずつ温かくなってくる時期だ。
私は家への道をトボトボと歩く。
不妊症・・・。
流産が原因なんだろうか、
それとも医者がいうとおり性行為が原因なのだろうか。
でも、
そんなことがどうでもいい。
私はきっと一生子供は産まない。
きっともう、
本気で誰かを好きになることなんかない。
私はそのままフラフラとスーパーへ立ち寄った。
スーパーの中は少し寒い。
私は腕を擦り合わせながら歩く。
「アイちゃん?」
振り返ってみると、
そこにいたのはハルの姉、
サキさんだった。
「サキ・・・さん・・・。」
「久しぶりねぇ、買い物?」
「あ、いえ・・・。」
「最近どう?彼氏できた?」
「全然・・・ハルくんは、元気ですか?」
それを聞いてサキさんははぁとため息をついた。
「ハルは陸上ばっかりよ。
そのわりにタイムは下がる一方。
あげくにあの子よく転ぶのよ・・・。
本人も最近はストレス溜まっちゃって大変。
彼女なんてできないよ。」
「え・・・でも、元カノと寄り戻したって・・・。」
「寄り!?戻すわけないでしょ。
それどころか、あの子本当に精神的にどうかしちゃったのねぇ・・・、
ハルにストーカーみたいなことまでして。」
初めて聞くハルの話。
噂で聞いていたのと全然違う。
ならばどうしてハルは、
あの後私に連絡をしてくれなかったの?
サキさんと別れたあと、
私はスーパーを出て、フラフラと歩いた。
頭の中が真っ白、
いや、逆に色んなことを考えなければいけなくて、
パンクしそうになっていた。
77 :
Rain
:08/08(火) 19:24:00
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
家へと向かう急な坂を登っていると、
上から誰かが降りてくるのがわかる。
光の反射で、顔が良く見えない。
むこうがこちらを見て立ち止まる、
私は額に手をかざし、
目を細めてそちらを懸命に見た。
だんだん光に目が慣れてきて、
その姿がはっきりの浮かび上がってくる。
「・・・ハル。」
そこに立っていたのはハルだった。
半年振りに見るハルは私の知っているハルと少し違っていた。
髪を茶髪に染めているからだろうか・・・。
それにハルは少し、痩せたみたいだ。
「久しぶり。」
ハルがこちらを見てニコリと笑う。
どうしたらいいかわからない。
私はただハルの方を見つめて硬直していた。
私は黙って歩き出すと、
ハルの目を見ずに、ハルのすぐ横を通り過ぎた。
半年前と変わらないハルの香り・・・。
私には、ハルのつけている香水の匂いがわかる。
ハルと過ごした短い時間が、
一気に頭の中を駆け巡る。
「アイっ!」
私の名前を呼ぶハルの声。
もう彼が私の名前を呼んでくれることはないと思っていた。
私は歩く足を止める。
でも振り向くことはできない。
今振り向いたら、
泣きそうだから。
「アイは今、幸せ?」
ハルの突然の問いかけに、
答えることができない。
それに、
そうでなくてもその質問に、
私がなんと答えればいいのかわからない。
「ハルは?」
ハルに背を向けたまま問いかける。
「俺は幸せだよ。
でも、アイといたあのときの方が、
もっとずっと幸せだった。」
今更になってそんなことを言うハルに、
私はなんと言葉を返せばいいかわからなかった。
ならどうして、
連絡をくれなかったの?
ならどうして、
あの時本気で私を追いかけてきてくれなかったの?
どうして?
私はハルに聞きたいことがたくさんあるのに、
ハルは私に何も聞かない、
ハルは私のことを引き止めない、
ずっとそうだった。
涙をこらえて、ハルの顔を見るために振り返る。
ハルはずっとこちらを見つめていた。
ハル、本当に痩せたみたい。
少し疲れているように見えるよ。
そういえばサキさんが言ってたっけ、
陸上がうまくいかなくてストレスが溜まってるみたいだって。
顔立ちはあのときより少し大人びている、
半年で人はこれほどに成長するものなのかな。
ハルの手や足に見える絆創膏や、カサブタ。
そんなになるまで頑張って、
あなたは走ってるの?
ハルの気持ちが読めない。
あの時私を追いかけてこなかったハルの気持ちも、
今こうやって私の前に立っているハルの気持ちも。
私にはハルの気持ちがわからない。
だから、
知りたいよ。
私がいない時間に、
どんなことがあって、
なにをして、
どんな気持ちだったのか、
知りたい。
私はあなたのこと、
もっと知りたい。
私は気付くと、
ハルの胸に飛び込んでいた。
ハルはあの時のような無邪気な笑顔じゃなく、
大人になった優しい笑顔で、
私のことを抱きしめてくれた。
これからまた、
新しい2人がはじまる。
これからはもう、
なにがあっても離れたくない。
そう思ってたのに。
78 :
舞
:08/08(火) 20:06:49
HOST:ser357664001680315
思ってたのに??めちゃ続き読みたいあげ
79 :
ちょ
:08/08(火) 21:40:09
HOST:ZK029179.ppp.dion.ne.jp
うぇんなんか悲しい結末・・・?
80 :
みしゃ*(未夜
:08/08(火) 22:57:50
HOST:p1185-ipbf201aobadori.miyagi.ocn.ne.jp
やっぱり・・・切ないね・・・。
ぁげぇ。
81 :
Rain
:08/09(水) 01:17:46
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
それから私は、
頻繁にハルに会いに行くようになった。
ハルが忙しいという時は、
私から会いに行く。
私の知らないところで、
ハルが変わっていくのはもういやだ・・・。
ハルの優しさに私は支えられてきた。
話したければ話してくれればいい。
心の中に土足で踏み込むようなことを、
決してしないハル。
そんなハルと一緒に過ごすことで、
もしかしたら私は救われたのかも知れない。
だから私も、
ハルに同じように接しなきゃって、
あの時は思ってた。
でもそれは違うって気付いたの。
私は私なりの愛で、
ハルを思いやりたい。
私はハルのこと、
なんだって知りたい。
そんな風にハルと過ごしているうちに、
気付くともう8月が始まっていた。
あの季節が再び、
やってくる。
私とハルが、
出あった季節・・・。
「ねぇ、ハル。
夏休みも終わっちゃうし、
せっかくなんだからどっか行こう?」
「どっかって?」
「ん〜・・・どこでもいいよっ!」
「なんだよそれぇ・・・。」
「じゃぁさ、前みたいに6人で集まって海に行かない?
うん!それがいいよ!決まりねっ!」
私はハルの返答も聞かず、
一人ではしゃいで携帯を取り出した。
電話帳の中からユカリの名前を探して、
メールを送る。
「お前ら、まだつるんでたんだな。」
「お前らって?」
「俺以外の奴ら。」
ハルが少し面白くなさそうな顔をする。
きっと自分だけ仲間はずれにされたような気になっているんだ。
ハルのスネた顔がかわいい。
「でも、私と誰かさんのせいでけっこう気まずくなっちゃって、
2ヶ月に一度会えるかどうかだよ?
ツヨシくんとタクさんになんて。」
「そりゃぁ・・・どうもすみません。」
ハルがふてくされる。
ハルの顔の傷が気になる。
「ハル、頬の傷、どうしたの?」
私はそっと手を伸ばしてハルの頬に触れる。
ハルはまるで猫みたいにその手に頭を擦り付けると、
少しため息がちに言った。
「まじ・・・最近ありえねぇほど転ぶ。」
「それかなり前から言ってなかった?」
「あぁ・・・、ってか普通に歩いてても転ぶ!
しかも最近間接が痛いんだよなぁ・・・。」
ハルが腕の関節を鳴らしてみせる。
「ハル、老化?」
「バーカ。」
ハルが私の額にデコピンをする。
「ねぇハル、今年は去年寂しい思いさせられたぶん、
わがまま言ってもいいかな?」
「え?あぁ、いいよ。大学生は暇が多いしなっ。」
ハルはそういうと腕を上に伸ばしてまのびした。
「あ・・・、そういえばハルの誕生日逃しちゃった・・・。」
ハルの誕生日は2月。
私たちの離れ離れになっていた時期。
「それは俺も同じだろ。」
私の誕生日は4月。
これまた私たちの離れていた時期。
「じゃぁさ、俺プレゼントするよ。」
「えぇ!?いやいや、いいよっ。」
「やだね、決めたから!」
そういうとハルは立ち上がって手を出した。
「さぁ、行きましょうお姫様。」
私はその手をとって、
少しふてくされたように立ち上がった。
82 :
Rain
:08/09(水) 01:38:00
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
電車に乗って、
2人で街にくりだす。
馴染みのデパートの前、
2人はここで出会ったんだ。
「アイと初めて会ったのはここだったよなぁ・・・。」
「そうだね、もう1年も前のことなんだ。」
「あの時は俺も若かったなぁ・・・。」
「まだたったの1年しか経ってないでしょうが!
おじさんみたいなこと言わないでよね、みっともない。」
「へいへい。」
そう言ってハルは笑う。
1年前より、少し大人びた顔で。
デパートの中に入ってジュエリーショップを見る。
ハルはなにか、私にアクセサリーでもプレゼントしてくれる気なのだろうか。
「あっ!かわいい・・・。」
目に飛び込んできた十字型のピアス。
小さなワンポイントのシンプルなデザインだった。
「ピアスねぇ・・・。」
横でハルが渋った顔をする。
お前まだピアスホール空けてねぇだろという視線。
私が視線を無視して鼻歌を歌うと、
ハルが小さく笑って言った。
「2人でピアスホールあけよっか。」
「え?」
「アイの学校禁止?」
「私髪長いし!隠せば大丈夫!」
私は必死で訴える。
それを見てハルが笑う。
「2セットだと、・・・ん〜、まあいいか。」
「ねぇハル!1セットでいい!」
「へ?」
「方耳ずつホールあけて、1個ずつつけよう?」
ハルはそれを聞いて少し考えると、
わかったと笑顔で1つ頷いた。
ピアスを買った後、
薬局でピアッサーを2つ購入してハルの家へ帰った。
「いくぞ・・・?」
「いいよ。」
ハルが緊張した声を出す。
ピアッサーを私の耳にかまえている。
根性無しのハルのマヌケな姿が愛しい。
「本当にいいのか?」
「いいってば!ホラ、早く!」
「・・・おう。」
カシャンッ
一瞬の痛み。
その後は耳がジンジンと弱く長く痛い。
「思ったほどでもないよ?」
「・・・本当に・・・?」
「じゃぁ次はハルの番〜。」
私はハルを押さえつけたピアッサーを構える。
「ちょっ!ちょっと待て!心の準備が!!」
「問答無用!」
カシャンッ
「いってぇ〜・・・。」
耳を覆ってさり気なく苦しむハル。
私は右耳に、
ハルは左耳に穴を空けた。
ジンジンとする痛み、
今はそれさえも幸せと感じる。
一度手放してしまった幸せが、
私の元へ帰ってきた実感がわく。
もう、
二度とハルの手を放さないよ。
絶対。
83 :
舞
:08/09(水) 08:55:40
HOST:ser357664001680315
続きが気になる⌒あげっっ
84 :
Rain
:08/09(水) 16:17:21
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
「海なんて久しぶりだなぁ!!」
さんさんと照りつける太陽。
青い空に広くキレイな海。
夏休みも終盤ということで、
私の提案で6人で海へやって来た。
「このメンバーで集まるのも久しぶりだしね。」
ユカリが言う。
今ユカリはタクと付き合っている。
ユウマへの気持ちが完璧になくなったわけではないけど、
だいぶ吹っ切れたらしい。
最近ではツヨシとハルカがいい感じらしく、
この6人もおさまるべくしておさまったって感じだ。
「ハル!海入ろうっ!」
「あぁ。」
「じゃぁ俺もっ!」
私とハルとハルカとツヨシは、
一目散に海に飛び込んだ。
それを砂浜に座ってみている、
ユカリとタク。
「ユカリとタクさんは入らないの〜?」
「俺らはいいや〜。ゆっくり遊びなぁ〜。」
砂浜から手を振るタク。
大人は海では遊びませんってか?
「うわっ!!」
声に気付き振り返ると、
ハルが溺れかけていた。
「ハル!?!?」
私は急いでハルの方まで泳ぎ、
ハルの体を抱きとめた。
「どうしたの?平気?」
「ごめん・・・足がもつれて・・・、俺上がるな。」
「え、じゃぁ私も。」
ハルは少し辛そうな顔をして陸へ上がると、
みんなからは少し離れたところに座った。
「ハル、大丈夫?」
「最近おかしいんだ・・・。」
「なにが?」
「俺、もう陸上できないんだ。」
ハルの悲しげな横顔。
私は耳を疑った。
高校の時から、
あれほど頑張ってきたのに、
どうして?
「少し走るだけで転ぶんだよ。」
「どうして?」
「足がもつれるんだ。急に体に力が入らなくなったり・・・。
もう終りだって体がいってんのかな。」
「だってハル頑張ってたじゃん!」
「頑張っても頑張っても、全然ダメ。もうダメなんだよ。」
苦笑するハル。
髪についた海の水が、
ポタポタと落ちる。
「アイちゃーん!ハルー!」
遠くからツヨシの呼ぶ声。
「あ、呼んでる。行こう?」
「あぁ。」
ハルが立ち上がろうとして、
転ぶようにまた腰をつく。
「ハル?」
ハルが険しい顔をしている。
「アイごめん、先行っていいから。」
「ダメだよ。ホラ、つかまって。」
私は手をさしだすと、
ハルは少し考えてから私の手に捕まって立ち上がった。
ハルの様子がおかしい。
胸がセカセカする。
とにかくイヤな感じ。
ハルが変わっていってしまってるような、
そんな気がしてならない。
85 :
舞
:08/09(水) 16:30:22
HOST:ser357664001680315
あげ
86 :
Rain
:08/09(水) 16:36:26
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
海で散々遊んで、
ユカリの作ってきたお弁当を皆で食べた。
ふとハルの方に目をやると、
ハルが笑ってる。
少し安心した。
こんな風に楽しい時間が、
ずっと続いていけばいいと思った。
たぶん今が、
これからの一生のうちで、
一番楽しい時期なんじゃないかってわかる。
いわゆる青春ってやつなんだ。
私は、
もしもハルと出逢っていなかったら、
きっとこんな風に、
海に来て皆で笑いあって、
バカやってりできなかったって思う。
ハルは私に色んなものをプレゼントしてくれた。
笑うという動作も、
楽しいという気持ちも、
悲しいという気持ちも、
愛しいと思う心も、
誰かをこんなにも好きになれるということも。
全部ハルが私に教えてくれた。
だからこそ、
もう2度とハルから離れないって、
そうハルと再会した時に誓った。
私に、
ハル以上の人なんかもういない。
「んじゃぁ、これでお開きってことで!」
タクの家の前まで車で戻ってきて、
タクが言った。
ユカリはこのままタクの家に戻って、
ツヨシはハルカを送っていくらしい。
私はハルと一緒に帰る。
「今日は楽しかったよ、
またこの6人で騒げるって思ってなかったしね。」
「アイちゃんとハルのカップルが復活したから、
これからはまた前みたいにしょっちゅう集まれんだろっ。」
ツヨシが嬉しそうな顔で笑う。
それを見て、ハルカもユカリも嬉しそうな顔をする。
「じゃぁまたな。解散!!」
そういうと、
6人はそれぞれの道へ歩き出した。
こんなに楽しい時間を共有しあえる仲間、
大切にしていきたい。
ずっと。
「ハル、体調とか大丈夫?」
「余裕だって。」
「ならいいけど・・・。」
「俺ん家くるだろ?」
「いいの?」
ハルは笑顔でもちろんと頷いた。
私は嬉しくなってハルの腕をつかんだ。
それを見てハルは優しく笑ってた。
「あれ、今日は誰もいないんだ、ハルの家。」
「姉ちゃんも色々あるみたいだからな。」
夕方の薄暗いハルの部屋。
なんだかいつもとは違って見える。
階段を上がってハルの部屋に入る。
もう、何度となく来たこの部屋。
ハルの匂いがする、
一番心地いい空間。
私はハルのベッドにダイブした。
「はぁ〜。今日は疲れたねぇ・・・。」
するとハルも私の横にダイブした。
「だな。」
ハルは1年前より少し無口になった。
大人になったからなのかな。
目の前に横たわるハルが、
愛しい。
「ねぇ、ハル。」
「ん?」
「ハルが足りない。」
「なんだよそれ。」
そう言ってハルが笑う。
「ハル、私大切にされてるのすごく嬉しい。
でも、もっと求めてほしい。」
仰向けに寝転ぶハルの体に上半身を乗せる。
ハルとの距離が近い。
87 :
Rain
:08/09(水) 16:53:07
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
ハルの胸に私の胸を乗せると、
お互いの鼓動がわかる。
そんな距離。
「後悔しませんか?」
ハルが少し真剣な目をして言う。
「後悔なんかしません。」
私はもっと真剣な目で見つめ返す。
その言葉を聞くと同時に、
ハルが体をぐるんとまわして、
私の上にまたがった。
両手を押さえられる体勢。
なんだかいつもとは違うハルにドキドキする。
ハルは私の腕を抑えてまま、
私にキスをした。
優しくて、
長くて、
深いキス。
「・・・っ。」
「アイ、キスだけで感じるの?」
「ちがっ・・・。」
ハルの唇が耳元にくる。
ハルの息が、
私の耳に伝わる。
「アイの体触った奴が全員ムカつく。」
ハルが耳元で小さな声で言った。
ハルは今までこんなことを言ったことがなかった、
いつもふざけてて、
ヤキモチなんて全然妬いてくれなくて、
いっつも笑ってるハルの本音が、
やっと聞けた気がした。
「俺と一度離れてから、
また援助交際してたんだろ?」
ハルは手際よく私の服を脱がせる。
「・・・ごめん。」
私が少し俯いて答える。
ハルは私の上半身を持ち上げて、
ブラのホックを外す。
「バカ。」
ハルはもう一度私を優しくベッドに寝かせると、
真直ぐ私の目を見た。
少し怒ってる。
「でも、ハルが引き止めてくれなかったから・・・。」
「本当に俺が必要だったら、
アイはもどってきてくれるって思ってた。」
はじめて聞く、
ハルの本音。
「アイは戻ってこなかったけど、
やっぱ俺がアイのこと必要だったから、
アイと偶然あの時会って我慢できなくなっちゃった。」
ハルが情けない笑顔を見せる。
ハルのすることには、
1つ1つに
私を思いやる優しさがある。
そんなこと当にわかってたはずなのに、
どうして追いかけてきてくれなかったのなんて、
わがままだよね。
私がハルのTシャツに手をかけて上に持ち上げると、
ハルは自らそれを脱いだ。
ハルの体は細くて、
無駄な脂肪がない感じ。
筋肉だけがほどよくついている。
キレイな体。
「筋肉も落ちてきたんだ・・・情けねぇ体。」
苦笑するハル。
私はぶんぶんと顔を横に振って否定した。
ハルはゆっくりと私の体に愛撫を始めた。
私の体中の神経が、
ハルの舌や指先に反応する。
どうでもいい男に抱かれていた時には、
これっぽっちも感じなかった感覚。
88 :
みしゃ*(未夜
:08/09(水) 17:08:11
HOST:p1185-ipbf201aobadori.miyagi.ocn.ne.jp
ハル・・・どうしたんだろぅ;
89 :
ちょ
:08/09(水) 17:23:17
HOST:U237081.ppp.dion.ne.jp
続きがみたぃ・・・
90 :
Rain
:08/09(水) 17:48:28
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
ハルは私の胸を舌で愛撫しながら、
手をスルリとパンツの中にすべり込ませた。
「んっ・・・。」
小さく声が漏れる。
ハルの指が私の中をではいるするたびに、
小さく震える。
ハルの目はこんなときでも優しい。
私を見つめるハルの視線。
これ以上にないくらいの幸せを、
私は今感じてる。
私はハルの手を押さえてハルの目を見た。
「ハル、もういいよ。」
そういうとハルはニコっと笑って、
ベルトをはずし、ズボンのチャックを下ろした。
ハルはズボンを脱ぐと、
自分のソレを私にあてがった。
「本当にいい?今ならまだ止められるよ?」
「いいの、お願い・・・。」
ハルはグッと私の中に、
自分自身を押し込んだ。
ハルと1つになる。
ずっとずっと、
こうしたかった。
「ぅ・・・あっ・・・。」
ハルが腰を動かすたびに、
声をこらえても漏れてしまう。
今まで感じたこともなかったような、
強烈な快感が私の体を支配する。
ハルからの、
愛を感じる・・・。
ハルの顔を見ると、
余裕をなくした顔。
吐息が時々漏れる。
なんだかハルの感じる顔は、
すごくセクシーだ。
しばらくしてハルは、
私の胸の上に果てた。
肩で息をして、
疲れている様子のハルは、
私の横に倒れこんだ。
「ハル、大丈夫?」
「余裕。」
「本当?」
「あぁ、まじ幸せ。」
ハルがちょっと照れた顔で微笑む。
私は自分の胸の上をティッシュで拭いた後、
ハルの胸に自分の頭をのせてた。
ハルが私の頭を、
そっとなでる。
今まで以上に、
ハルが好きになる。
どんどん気持ちは大きくなるばかりで、
ハルのことを思うと苦しいくらい。
私たちはそのまま、
眠ってしまった。
91 :
Rain
:08/09(水) 17:58:05
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
目を覚ますと外はすっかり暗くなっていた。
時計を見ると、9時を指している。
「やばっ・・・。」
私はすぐに体を起こして、
一緒に眠っているはずのハルに目をやる。
確かにハルはそこにいる、
でも、
おかしい。
ハルは体中に汗をかいていて、
息遣いが変に荒い。
なんだかすごく、
苦しそう。
私はハルの胸に手を置いて、
ハルの体をゆすった。
「ハル?ハル!?大丈夫!?」
何度体を揺すっても、
ハルは目を開かない。
ただ苦しそうに汗をじっとりかいて、
呼吸を荒げるばかり。
私は怖くなってすぐに携帯を取り出し、
病院に電話をした。
救急車を待っているあいだ、
私はハルにどうにか服を着せた。
「ハル、すぐ救急車くるからねっ!」
ハルはずっと苦しそうな顔。
しばらくして、
救急車が到着した。
私は病院に着いた後、
ハルの家に電話をかけると、
サキさんが出た。
ハルが病院に運ばれているあいだに
家に帰ってきたらしい。
ハルは薬を投与されて、
だいぶ落ち着いたらしく、
さっきの苦しい様子はなくなっていた。
私はハルの横でずっと手を握っている。
「アイちゃん!」
「サキさん・・・。」
多急ぎでかけつけたのか、
サキさんの額には汗が滲んでいた。
サキさんはハルの眠る顔を見て、
少し安心したようだった。
「サキさん、ハルのご両親は?」
「仕事先に電話入れたから、すぐ来ると思う。」
すると、
病室に看護婦さんが現れて、
サキさんは連れて行かれた。
私はずっと、
ハルの手を握り続けていた。
92 :
Rain
:08/09(水) 18:13:52
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
ずっとハルの手を握っていた。
ハルの手は暖かい。
大丈夫、
ハルはちゃんと生きてるじゃない。
きっと、
お腹を冷やして寝たせいだよね。
私は心の中で何度も自分を励ます。
ハルの手は、
暖かい。
1時間くらい経った頃だろうか、
サキさんが、
ご両親と弟を連れて病室へ戻ってきた。
私はハルの手を放して立ち上がり、
ハルのご両親に向かって深くお辞儀をした。
「あなたがハルの・・・、お会いするのは初めてですね、
サキから色々とお話は聞いています。」
「あいさつもしないですみませんでした。」
私はもう一度深く頭を下げた、
それを見てハルのお母さんは笑顔で顔を上げてと言ってくれた。
笑顔がハルに似てる。
この人がハルを産んでくれた人なんだ・・・。
お父さんも優しそうで、
ハルがどれだけ家族に愛されてきたのかが伝わってくる。
私はハルから離れて病室のすみの方へよけると、
サキさんに聞いた。
「サキさん、ハルは・・・?」
サキさんはそれを聞かれて、
少しビクっとしたあと、笑顔を作った。
「筋肉に異常が起きただけだって。」
「筋肉の?」
「えぇ、発作みたいなものだそうよ。」
「大丈夫なんですか?」
「えぇ、大丈夫。」
私はそれを聞いてホッと胸を撫で下ろす。
サキさんに、もう遅いから今日は帰りなさいといわれて、
私は頷いて病室をでることにした。
その時に見えたハルのお母さんの横顔が、
なぜか泣いているように見えてしかたなかった。
目が覚めればハルは元気になる。
また2人、
幸せな時間が待ってる。
私はそう信じてる。
93 :
夏
:08/09(水) 21:51:11
HOST:i219-167-35-100.s05.a001.ap.plala.or.jp
あげ↑がんばってください!
94 :
舞
:08/09(水) 22:24:42
HOST:eaoska178029.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
今ゎパソコンカラ来ましたー。パソコンのほうがカキコしやすいなぁワラw
あげあげーーー
95 :
Rain
:08/09(水) 23:02:06
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
みしゃさん・ちょさん・夏さん・舞さん
その他にもアゲをしてくださった方々、
毎回コメントとアゲしてくださって本当に感謝してます、
1人1人に丁寧なコメントもできず、
申し訳ないです。
読んで下さる方が1人でもいるかぎり、
責任持って必ず完結させますので、
今後ともよろしくお願い致します。
96 :
Rain
:08/09(水) 23:16:02
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
次の日、
私は朝目が覚めるとすぐに家を出て、
ハルのいる病院へと足を運んだ。
病室に入ると、
ハルが上半身を起こしている。
目が覚めたのだ。
「ハル、来たよ!」
「アイ、ありがとな。」
いつものように笑うハルの笑顔。
ホラ、
いつものハルだ。
最近ハルは頑張りすぎていたから、
きっと体がついていかなかったんだね。
「具合はどう?」
「あぁ、全然。
でも検査もしたいし〜とか色々言われて、
しばらく入院することになったよ。
まぁ、大学もほとんど単位とれてるしな。」
「そっかー。じゃぁハルだけ夏休み長引くね、いいなぁ〜。
私毎日お見舞い来るからね!」
「バーカ。毎日なんて来なくていいよ。」
優しく笑って「バーカ。」と言うのは、
ハルの前々からの口癖。
「あとさ、あの4人には黙っておいてくれないか?
かっこ悪いだろ?たいしたことないのに入院なんて。」
ハルの考えそうなこと。
私は少し笑って頷いた。
ハルの手を握ると、
ハルはすぐに握り返してくれる。
眠っているハルは、
私の手を握り返してはくれなくて、
昨日は寂しかった。
だけど今こうして私の目の前で、
元気な顔で笑っているハルを見ると、
すごく安心することができた。
「私明後日から学校だよ〜。」
「おぉ、がんばれよ。」
ハルが私の頭をゴシゴシなでる。
私は猫みたいに気持ち良さそうな顔をして、
ハルになついた。
このときはまだ、
ハルはすぐ元気になって、
また6人で騒いだり、
2人でいちゃいちゃしたり、
当たり前みたいになった幸せな日々が、
すぐにもどってくるって、
なんの確信もないくせに信じてたんだ。
このときだって、
ハルは弱くなってた。
笑顔だって少し、
疲れてたよね?
どうしてもっと早く気付いてあげられなかったんだろう。
どうして半年間も、
ハルから離れてしまったんだろう。
その時間に、
ハルとしたいことなんていっぱいあったのに。
その時間ならまだ、
なんだってすることができたかもしれないのに。
ハルといる時間を、
少しでも多く、
そう思ったのに・・・。
97 :
Rain
:08/09(水) 23:34:02
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
あれから1ヶ月、
ハルはまだ入院を続けている。
サキさんには、
ハルは今まで陸上で体に負担をかけさせたために、
少しだけ休む時間が必要なのだと言われて納得していた。
特別なことがないかぎり、
絶対にハルの所へ通うようにしていた。
だからなのかな?
毎日傍にいすぎるせいで、
ハルの小さな異変に気付くことができていなかったのかも。
私には今も、
ハルは入院したての頃のように元気で、
何の問題もないように見えていた。
でも違ったんだね。
思えばハル、
前よりもッと、
痩せてたよね。
でもそれは、
動いていないせいだって、
私は勝手に理解しようとしていたのかもしれない。
その日病室に行くと、
ハルの様子がおかしかった。
病室の戸を開けた先にいたハルは、
窓の方をむいて、
どこか遠く、
果てしなく遠くを、
見つめていた。
「ハル?来たよっ!今日は差し入れ!
じゃぁ〜ん、果物たくさんのゼリーで〜すっ!」
ハルは私の声に気付いてハッと我に返った。
私のことを見たハルの笑顔は、
いつもと同じ笑顔だった。
「おぉアイ。ゼリーかぁ!さんきゅー。」
いつもと同じように見えるのに、
いつもとは違うハル。
少しだけ私も違和感を感じていたのに、
なんだか知るのが怖くて、
気付かないフリをした。
私はゼリーのフタを空けると、
スプーンとゼリーをハルに渡した。
ハルは笑顔のままそれを受け取ると、
スプーンですくったゼリーを口に運んだ。
「うめぇ・・・。」
ポツりと一言呟いた。
それからしばらく、
ハルは俯いて動かなくなった。
私はハルをずっと見つめていた。
なんて言葉をかければいいんだろう、
ハルはどうしてしまったんだろう。
しばらくして、
鼻水を小さくすする音。
ハルはとっさにスプーンを持った手で、
顔を一度擦ると、
何もなかったような顔で私のことを見た。
「まじうまいな!また買ってきてよ!」
「う・・・うん。」
昨日までとは違う、
ハルの態度。
知りたいようで、
知りたくない。
それにハルは、
そのことをまるで私に隠そうとしているかのように、
笑うんだよ。
いつもみたいに、
ううん、
それ以上に、
ハルは笑ってくれるの。
その日病室をでると、
病院の廊下でサキさんに出会った。
サキさんの雰囲気も、
ここ最近かわった。
前まで若々しい感じだったのに、
最近はまるで落ち着いてしまって、
まるでお母さんのようだ。
「サキさん・・・あの・・・。」
「なに?アイちゃん。」
「今日ハルに会いに行ったら、なんだか様子が違うんです。」
サキさんはそれを聞いて少しうつむいた。
しばらく考えた後、サキさんはまた笑顔を作って私に言った。
「なんでもないと思うよ。
きっとずっと入院してるから、あきたんじゃないかな?」
私はその言葉で、
無理矢理自分を納得させた。
98 :
舞
:08/09(水) 23:49:17
HOST:ser357664001680315
あげ⌒
99 :
Rain
:08/10(木) 00:04:32
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
やがて時間は流れて、
クリスマスがやって来た。
ハルは今日も病院のベッドの上だ。
私も毎日病院に通うのがあたりまえになって、
そのことに違和感さえ感じなくなってきていた。
ハルがいつもみたいに笑う。
今日もコンビにでゼリーを買ってきた。
ベリー系の、
ハルの好きそうなやつ。
最近ハルは甘えているのかなんなのか、
私に「食べさせてよ。」という。
私はなんだかそれが嬉しくて、
スプーンですくったゼリーを
ハルの口へ運ぶ。
最近ハルはおかしい。
こんな言い方をしたら変だけど、
少し我侭になっている。
今まではそんなこと言わなかったのに、
最近ハルがよく言う言葉。
「アイ、キスして。」
そう言われて私が意地悪でしなかったりすると、
ハルはスネてしまう。
まるで子供みたいに。
「手握って。」
とか、
「ハグしてよ。」
とか、
最近ハルはやたらに私の体に触れたがる。
自分からは触れてくれないくせに、
私にばかりさせて少しズルい。
でもそう言うとハルは、
「入院してるんだからサービスしてよ〜。」と言う。
私は病室についている水道で、
ハルに背を向けて手を洗っていた。
次の瞬間だった。
ガシャンという大きな音、
振り返ると、
ハルがベッドの下に転落していた。
「ハル!?」
私はすぐにハルに駆け寄った、
ハルは立ち上がろうとしている。
でも、
どうして?
ハルは立てないんだ。
しばらくその光景を、
手も差し伸べずに見ていた。
ハルは1人で立つことができないんだ。
私の頭は真っ白になった。
呆然と立ち尽くしていると、
看護婦さんが気がついて、
ハルのことを支えていた。
そのへサキさんがやって来た。
「ちょっ、ハル、大丈夫?」
やがてサキさんは私の様子に気付いて、
私を病室から連れ出した。
100 :
Rain
:08/10(木) 00:04:50
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
「アイちゃん、あのねっ・・・。」
「どうしてですか?ハルは立てないんですか?」
「だからっ・・・。」
「どうして!?はじめはただの検査入院だって言ってたじゃないですか!」
「アイちゃん!お願いだから聞いて!」
病院の廊下が静まり返る。
どこかの病室から、
ジングルベルが聴こえてくる。
私とサキさんの間に、
冷たい空気が流れた。
「ずっと、ハルに口止めされてたの。
アイには絶対に言わないでくれって・・・。」
私は唾を飲む。
聞きたいけど、
聞きたくない。
逃げたい。
でも私はその衝動を抑えて、
そこに留まった。
「ハルね、筋ジストロフィーという病気なの。」
「え・・・?」
「遺伝性の病気でね、
どんどん筋肉の働きが悪くなっていく病気なの。
本当はもっとずっと幼い頃に発病するはずの病気だったのに、
どうしてかわからないけど、
ハルはその病気の潜伏期間が長かったの。」
「・・・。」
頭が上手く働かない。
サキさんの言葉を1つずつ、
丁寧にならべて頭の中に入れていく作業で、
私は精一杯だった。
「潜伏期間が余りに長かったせいでね、
発病してからの病気の進行がすごく早いらしいの。」
「ハル・・・死んじゃうんですか・・・?」
「いいえ、死なないわ。
でもね、ハルは1人では歩けなくなるし、
物を持つこともできなくなる。
着替えだって一人ではできなくなるし、
トイレだって自分の力じゃできなくなるわ。
そして、1人で呼吸することもできなくなる。」
「それじゃぁ!」
「首を切開して、人工的に呼吸をさせる機械をとりつければ、
呼吸することは可能なの。
だから、ハルはすぐには死なないわ。」
「でも・・・それじゃぁ・・・ハルは・・・。」
私はその場に崩れ落ちた。
今までの色々なことが蘇ってくる。
6人でお酒を飲んだ日、
ハルが帰り道で転んだこと。
ある日足に包帯を巻いて、
タクさんの家に来たこと。
半年振りに再会したあの日、
ハルの体のいたるところに、
傷があったこと。
海でハルが溺れかけたこと。
思い出せばキリがないくらい・・・。
ハルは少しずつ、
おかしくなっていっていたんだ。
少しずつハルの力は弱くなっていって、
ハルはそれでも陸上をしたくて、
走って、
走って、
でも体はそれについていかなくて、
海に行ったあの日は、
陸上をあきらめてすごく辛かったんじゃないかな。
2人が繋がった日、
ハルは優しく私を抱いてくれたのに、
私が目を覚ました時のあの苦しそうな顔。
私が起きるどれくらい前から、
ハルは苦しい思いをしていたの?
ハルのお母さんのあの悲しい顔、
サキさんもハルのご両親も、
ハルが入院したあの日から、
全部知ってたんだ。
急にハルの様子がおかしくなった日。
ハルはきっと自分の病気のことを知ったんだね。
どんなに辛かっただろう。
どんなに泣きたかっただろう。
どんなに、
どんなに、
怖いだろう・・・。
それでもハルは、
私に笑ってくれた。
どんなに自分が苦しくて不安でも、
私に心配かけたくなくて、
笑ってくれてたんだね・・・。
本当のことを知らされて、
全てのことを理解できた。
おかしいと思っていたのに気にしないようにしていたことも、
全部全部、
理解することができた。
私は久しぶりに、
涙を流した。
101 :
りな
:08/10(木) 00:48:50
HOST:actkyo121134.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
初めまして。
読んでるうちに感動したのでコメントさせて頂きました。
これからも応援しているので頑張って下さい**
102 :
舞
:08/10(木) 01:11:53
HOST:ser357664001680315
あげ⌒
103 :
Rain
:08/10(木) 01:41:35
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
泣く私の肩を、
サキさんはずっとさすってくれてていた。
こんなに胸が痛いのは、
あの日以来・・・、
流産してしまった、
あの日以来だ・・・。
私はその後、
フラフラと立ち上がってハルの病室に戻った。
病室に入ると、
ハルは眠っていた。
優しい、
ハルの寝顔・・・。
今一番辛いのは、
ハルなんだよね。
重い病気と闘って、
怖いのは
ハルだよね。
眠っているハルは、
いつもと同じ。
ハルがそんな重い病気におかされているなんて、
信じられない。
でもそう言われてわかったの。
ハルの細い腕。
私を抱いた時よりずっと細いその腕・・・。
ベッドから落ちた時に、
必死で立ち上がろうとした、
細い足・・・。
ハルは、
もう走れないんだ。
あんなに、
走るのが大好きだったのにね。
神様はどうして、
こんなに残酷なことをするんだろう。
ねぇ、神様、
どうしてハルにこんなひどいことをするんですか?
どうせこんな辛い思いをするなら、
そんな思いするのは私だったらよかったのに。
援助交際して、
妊娠して、
流産して、
そんな最低な人間の私がどうして今はこんなに
ハルに幸せにしてもらえたのに。
どうして、
努力家で、
優しくて、
こんなどうしようもない私を救ってくれたハルに
こんなにつらい思いをさせるんですか・・・?
今はどうしようもなく、
神様が憎い。
空の上で見てるなら、
引きずり降ろして殺してやりたい。
それくらい、
憎い・・・。
眠るハルの手を握る、
暖かい・・・。
生きてるよ、ハル。
ハルはまだ生きてる・・・。
ハルの手に、
私の涙が落ちた。
今はまだ、
本当のことを受け止めたくないんだ。
泣いたりしてごめんね、
ハル。
泣きたいのはハルなのにね。
でも、
今だけは許してくれるかな?
もし今ハルが起きていたら、
呆れた笑顔で
「バーカ」って、
また言ってくれるのかな?
でもハルは目を開かない。
ハルの表情は疲れきっていて、
なんだか見ているのが辛い・・・。
ハル、
今度ハルが目を覚ました時には、
私が笑ってあげるから。
だから、
もうハルは無理しなくていいんだよ。
そんなボロボロになってまで、
私に優しくしてくれなくたって、
いいんだよ。
もう、
いいんだよ。
104 :
湊
:08/10(木) 01:47:04
HOST:softbank219035060015.bbtec.net
今一気によまさせていただきました。
なんかこのお話読んでると何回も涙流れてくるんですけどw
続きもっと見たいです!
それとこのお話しのこのあたりがRainさんの実話なんでしょうかね?
105 :
Rain
:08/10(木) 02:00:09
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
ハルが目を覚ましたのは12月25日、
次の日の朝だった。
「ハルおはよう!」
「アイ・・・。」
「どうしたの?具合悪い?」
ハルのキョトンとした顔。
私は辛い気持ちを抑えて、
笑った。
「変な顔〜!」
「なんだよっ。」
「なんでもなーい。ねぇ、今日は牛乳プリン買ってきたんだぁっ。
食べさせてあげるねっ。」
私牛乳プリンのフタをあけて、
スプーンですくった牛乳プリンを
ハルの口元に運んだ。
今だったら、
どうしてハルが食べさせてと
ダダをこねたのかがわかる。
もう、腕を動かすのも辛いんだよね。
「おいしい?」
「うん。」
「本当!?じゃぁ私も食べよっと。」
そう言って自分もプリンを食べる。
甘くておいしい。
ハルと同じ物を食べて、
2人でおいしいねって言える。
それだけで幸せ。
「ハルー、今日外出てみない?」
「・・・え?」
ハルの焦った顔。
私は決して笑顔を絶やさない。
「お医者さんは構わないって!
車椅子借りて外行こうよっ。
どうせハル面倒臭がりだから歩きたくないんでしょ?」
私はからかうようにハルの頭をツンツンとつつく。
ハルは少し考えてから、
何も言わず私の目を見て1つだけ頷いた。
車椅子にハルを乗せて、
私がソレを押して歩く。
「どうですか〜王子様っ。」
「快適です。」
ハルは久しぶりの生の太陽に、
目を細める。
今日はあまり寒くない、
冬にしてはいい天気だ。
ハルが微笑んでくれている。
それだけで嬉しい。
「ハル、寂しくない?」
「なにが?」
「入院してから、私と家族にしか会ってないでしょ?
ツヨシくんとか、タクさんとかに会いたくない?」
それを聞いて少し俯くハル。
「こんな情けない姿見せられるかよ。」
「・・・そっか。」
「・・・うん。」
私は知ってる。
本当のハルは結構寂しがりやで、
皆で騒ぐのだって大好きだったし、
絶対に今だって寂しいはずだ。
だけど、
自分のこんな姿って、
そんなこと言わないで。
ハルはハルだよ。
今も昔も変わらない、
ハルのままだよ。
しばらく外を歩いてから、
また病室に戻る。
もうなじんでしまった病室。
その病室のベッドに、
またハルがすっぽりとおさまる。
「なんか飲みたい?」
「とくには・・・。」
そう言ってハルは私の方を見る。
私はハルに近づいて、
ハルの唇に小さくキスをする。
唇を離したときのハルの驚いた顔、
傑作だったよ。
「なに?そんな驚いた顔して。」
「い、いや・・・。」
赤面しているハル。
そんな彼が、
愛しい。
話をしているうちに、
だんだん日は沈んでいった。
ハルと過ごす1日は、
すごく
短いよ。
こんなんじゃ時間が足りないよ、
ハル・・・。
次の日も、
その次の日も、
私は毎日病院に通う。
私のもつ時間の全てを、
ハルについやしたっていい。
でも、最近は日に日に感じるの、
ハルが弱くなっていってるって。
ハルは最近、
小さな動作もあまりしなくなった。
私の手を握り返す手の力も、
弱くなっていた。
どんどんハルが遠くなっていくように感じる。
私は、そんなのいやなんだよ。
112 :
Rain
:08/10(木) 13:01:09
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
2月
「え・・・退院?」
「えぇ、お医者さまから許可がおりたの。
1週間くらいなら退院しても構わないって。」
「それは・・・どうして?」
私はその言葉に、
喜んでいいのか、
悲しんでいいのかわからなかった。
まるで、
それが最後になるような言い方。
その1週間を過ごしたら、
ハルはもう二度と
あの家には帰れないんじゃないだろうか・・・。
案の定、
私の予想は間違っていなかった。
ハルの病気の進行はとても早い。
ハルの呼吸器官が止ってしまうまで、
もう秒読み段階に入っているらしいことも聞いた。
もうそろそろ人工的に呼吸させるための機械を、
ハルの喉を切り開いてとりつけなければならないそうだ。
ハルはまだそのことを、
よくわかっていない。
それからハルはわけもわからず退院した。
車椅子をお父さんに押されて、
久しぶりの我が家。
私はせっかくの家族の時間を邪魔しちゃいけないと、
その場にいるのを遠慮しようと思ったのに、
サキさんも、
ご両親も、
私に「傍にいてやってください。」と言ってくれた。
車椅子に座るハルの体は、
前とはとても比べ物にならないほど
か細くて・・・。
昔のハルの面影は、
あまり残っていなかった。
ハルは久しぶりの我が家に満足げな表情を浮かべていた。
最近ではハルはすっかり無口になった。
きっと喋るのも、もう辛いんだね。
でもハルは笑顔を絶やさない。
決して微笑むことをやめない。
ハルは笑ってくれるんだ、
私は泣かない。
ハルが疲れ切った顔で眠っていたあの日、
私は誓ったんだ。
ハルが笑うなら、
私も笑うよ。
ハルが泣いても、
かわりに私が笑うから。
ハルがいつか笑えなくなっても、
私がずっと代わりに・・・。
ハルの家族は本当に暖かい。
ハルが病気じゃなかった時と同じような笑顔で、
ハルを見つめる。
みんな、なんて強い人たちなんだろう。
ハルの幸せそうな笑顔。
あぁ、家に戻ってこれて、
よかったんだ。
そう思った。
これが最後だとしても、
ハルはよかったんだね。
病院にいる時のハルの笑顔は、
どこか辛そうで、
それでもハルは笑ってて・・・。
だけど今のハルの笑顔は、
本物だ。
心の底から笑ってるね。
なら私は、
この短い時間で、
もっと
もっと
あなたの本当の笑顔が見たい。
1週間のうちの最初の3日間は、
ハルは家族と過ごした。
私はハルには会いに行かず、
家でじっとこれからのことを考えていた。
ハルの家族が私に残りの4日間を、
全て預けてくれた。
113 :
Rain
:08/10(木) 13:18:41
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
1日目、
私は車椅子のハルをつれて、
電車に乗った。
行く先は、
私たちが出会ったあの街。
「久しぶりだなぁ・・・。」
「だよねぇ・・・。」
思い出す。
ハルと初めて出会ったあの日。
ハルは制服を着てて、
部活帰りだって言ってた。
私は、
妊娠してて、
お金が欲しくて援助交際をした帰りだったっけ・・・。
このときはまだ、
私は笑うことすらうまくできなかったのに。
そうだ、
そのときからもうハルは、
笑ってくれてたよね。
あの時見つけた公園に訪れる。
初めて来たあの日となにも変わらない。
私はブランコの方に車椅子を押した。
「乗ったよね、このブランコ。」
「アイ、なかなか笑ってくれなかったんだよな。」
ハルのブランコを見つめる目が優しい・・・。
ハルも昔のことを思い出しているのかな。
もうあの頃のようには、
決して戻れない。
ならあの時に、
もっともっと
ハルのこと大切にできればよかったのに。
私がもっと、
上手に笑えればよかったのに・・・。
2日目、
今日は出逢って初めて、
ハルを我が家に招待した。
お母さんに事情を話したら、
笑顔で了解してくれた。
「いらっしゃい。」
玄関に入ると、
お母さんが笑顔でハルを出迎えた。
ハルは少し照れた顔で笑った。
お母さんは料理を作ってくれた、
ハルが飲み込みやすいように、
ちゃんと考えた料理。
「おいしい・・・。」
ハルが呟く。
お母さんも嬉しそうな顔で、
ハルのことを見ていた。
いつか出来た、
私とお母さんの間にあった壁は、
すっかりなくなっていた。
私が流産した時も、
私を支えてくれたのはずっと、
ハルだった。
3日目、
今日はハルに少しサプライズを用意した。
ハルは本当はいやがるかもしれないって思ったけど、
私はどうしてもこうしたかったの。
私はハルを連れてある場所に向かった。
それは、タクさんの家だった。
ハルははじめそれに気付いて驚いていたし、
少しためらった顔をしていたけど、
私はそんなものを無視して、
タクさんの部屋に向かった。
タクさんの部屋の戸を開けると、
クラッカーの音が鳴り響く。
「ハル、誕生日おめでとう!!」
5人がいっせいに声を合わせる。
本当のハルの誕生日は病院にもどるその日だったけど、
それじゃぁお祝いができないからと、
今日誕生日を祝ってやることにした。
「お前ら・・・。」
タクが近づいてきて、
ハルの頭を小突く。
「なに病人らしい面してんだよっ!」
「らしくねぇなーハル。」
ツヨシもそれに続く。
「思ったより元気そうな顔してるね!」
「よかったぁ。」
ユカリとハルカがハルの顔を覗き込む。
みんな、
いつもと変わらない笑顔。
ハルはなんだか恥ずかしそうな顔をしていたけど、
でもやっぱり嬉しそうだった。
みんなハルに会いたがっていた。
病気のことを話したその日は、
皆床に崩れ落ちて泣いた。
だけど、
今はみんなこんなに笑ってる。
そのことがこの上ないくらい
とても嬉しかった。
そして、
ハルも笑ってた。
117 :
Rain
:08/10(木) 18:13:32
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
最終日、
私はいつもどおり学校が終わった後、
ハルの車椅子をおして家を出た。
向かう先はハルの出身校だった。
グラウンドを見ると、
陸上部が走っていた。
ハルもこうやって、
このグラウンドを走っていたんだね。
私はそこへある人を呼んでいた。
ツヨシだ。
ツヨシとハルは入学してからずっと仲が良くて、
卒業するまでこの学校で、
ずっと一緒にすごしてきた仲間。
ハルにとっての大切な友達だ。
ツヨシは私よりも長い時間、
ハルと過ごしてきた。
私とツヨシは車椅子に乗るハルの
右側と左側にたち、
ハルの肩にそれぞれ腕を回した。
ハルは少し驚いていたけど、
どういう意味か理解したのか
か細い足をフルフルと震わせて、
一生懸命立ち上がろうとしていた。
ツヨシの方を見ると、
ツヨシの目に涙が溜まっている。
それを見て、
私もつられてしまいそうになるのを、
グッとこらえた。
どうにか私とツヨシに肩を支えられて、
ハルは立ち上がった。
久しぶりに自分の足で踏みしめる大地。
ハルは高校生の頃走っていたこのグラウンドを今、
ゆっくり
ゆっくり
1歩ずつ
体に刻み込むように踏みしめて歩く。
力の入らない足に、
一生懸命集中して
ヨロめきながら、
それでも
ハルは歩く。
しばらくして、
鼻をすする音、
それはツヨシのものだった。
ハルの肩を支えて、
一緒に
ゆっくりと歩きながら、
ツヨシはハルの震える足を見て、
泣いていた。
「ハル・・・俺・・・。」
「バーカ。」
ハルが笑う。
泣いているツヨシの顔を見て、
ハルは、
それでも笑う。
ゆっくりと時間をかけて、
それでもハルはグラウンドを一周した。
再び車椅子に座った時の
ハルの達成感に満ち溢れた顔は、
今でも忘れない。
学校の校門を出ると、
ツヨシは反対方向へと帰る。
ようやく涙がとまったツヨシを見て、
ハルが言う。
「ツヨシ、ありがとな。」
ツヨシはハルのその言葉をかみ締めるように、
一度目をつむった。
そして再び目を開いて、
笑顔を作った。
「俺もだ、ハル、ありがとう。」
ツヨシが手を差し出すと、
ハルはその手を握った。
2人は握手すると、
反対方向へ進んだ。
明日はハルの誕生日。
そしてハルは、
病院にもどらなくちゃいけない。
でも、この4日間で、
たくさんハルの笑顔を見ることができた。
嘘じゃないハルの、
本当の笑顔。
私はなんだか、
満足していた。
118 :
舞
:08/10(木) 18:31:15
HOST:eaoska178029.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
あげ
119 :
Rain
:08/10(木) 18:40:06
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
ハルは今日誕生日だ、
そして今日病院にもどったら、
もしかしたら手術があるかもしれない。
喉を切り開いて、
機械をとりつける手術。
学校の授業なんて、
最早聞いていなかった。
早く学校が終わってほしい。
そして、
すぐにでもハルの元へ行きたい。
学校が終わると私はいちもくさんに病院に向かった。
右手には紙袋、ハルへの誕生日プレゼントだ。
病室の前に立つと、
中から怒鳴り声が聞えた。
「ハル!!わがままもいい加減にしなさい!!」
その声はサキさんのものだった。
怒鳴っているのに、泣いている。
そんな声。
私はゆっくりと病室の中に入った、
そこにはハルのご両親の姿とサキさんの姿があった。
ハルのお母さんは泣いていて、
お父さんはそのお母さんの肩を横でさすり、
サキさんは1人立ち上がって泣きながら
ハルの方を見て顔を真っ赤にしていた。
空気が重たい。
私は状況が理解できずに
その場に立ち尽くしていた。
「俺は手術はうけない・・・。」
「ハル!」
「俺のことは俺が決める!」
「でもあんたそれじゃぁ・・・。」
サキさんは言葉を口にしようとしてためらった。
瞳からはボロボロと涙が零れている。
「それじゃぁ・・・、ただ・・・死ぬだけなのよ?」
「それでもいい。」
「そんなのヤダ!!!」
私は横から割ってはいった。
ハルが死ぬ。
そんなの絶対いやだ。
絶対
絶対
ヤダ。
「アイ・・・。」
「ハルやだ・・・死んじゃうなんてやだよ・・・。」
ハルは困ってような顔で私のことを見ていた。
泣きそうだ。
でも、絶対に泣くもんか。
「アイ、こっち来て・・・。」
ハルが切ない顔で私を呼ぶ。
私は言われたとおりハルの傍へ行ってハルの手を握った。
ハルは真直ぐ私の目を見る。
でも私は、
そらしてしまいそう・・・。
「アイ、俺辛いんだ。」
「え・・・。」
「だんだん力がなくなっていって、
今じゃアイに自分から触れることも出来ない。
抱きしめてやることも、
守ってやることもできない・・・。
アイが泣いても涙をぬぐってやれないし、
アイがスネても頭なでてやれない。
時期に笑うことすらできなくなるかもしれない。
俺、そんな俺を世話しながら疲れていく
アイや家族の顔なんて見たくないんだよ。
だったら今、
俺は死にたい。
アイや友達や家族に愛されて、
笑顔をかえすことができる今が幸せなんだ。
だから幸せのまま、
死なせて?」
ハルが泣いてた。
いつもはあんなに笑ってくれるのに、
ハルが泣いてた。
サキさんもハルの気持ちを聞いて、
何も言えなくなっていた。
私の目からも、
涙がこぼれた。
こぼれた涙はハルの頬に落ちた。
泣かないって決めたのに。
そう、
私は笑うって決めたんだ。
ハルが泣いたら、
私がかわりに笑ってあげるんだって、
決めたんだ。
私は涙を止めることができない。
だけどね、
笑えるよ、
ハル。
私は無理矢理に笑顔を作った。
ハルは皆に泣いてほしいわけじゃないんだ、
最後まで笑っていてほしいんだよね。
わかってる、
わかってるよ、
ハル。
私は笑うからね。
どんなに涙がでたって、
私だけは笑っていてあげるから。
ハルは疲れたら、
泣いたっていいんだよ。
私の笑顔を見て、
ハルも泣きながら笑ってくれた。
ハルの気持ちを聞いたサキさんとご両親は、
ハルに手術をさせるのをとりやめた。
これからは、
ハルが死んでしまうのを
見ていることしかできないけれど、
ハルは言ったよね、
幸せのまま死なせてほしいと、
約束する。
ハルの呼吸が止ってしまうその瞬間まで、
私たちはハルを幸せにしてあげるよ。
私はずっと、
笑っていてあげるからね。
120 :
ヵな
:08/10(木) 18:51:20
HOST:FLA1Aan014.chb.mesh.ad.jp
ぇっ?!
ハル死んじゃうの??
そんなのヤダ。。。。。手術してよ!!
アゲ
121 :
Rain
:08/10(木) 19:02:42
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
私がハルにあげたのは、
みんなに書いてもらった寄せ書きと、
みんなが笑顔でうつっているたくさんの写真。
ハルは喜んでくれたみたいで、
毎日毎日その写真を見つめている。
あれからハルは、もっともっと弱くなった。
そして、
眠ってしまうことが多くなった。
私が病院に行く頃にはほとんど眠っていて、
たまに起きていると思うと、
ずっと写真を見つめている。
「ハル、ゼリー食べる?」
ハルは動かない首を少しこちらに向けて、
少し不思議そうな顔をした。
ハルはほとんどものが飲み込めず、
最近は点滴に頼って生活している。
私が買ってきたのは飲むゼリーだった、
私はキャップをあけてそれを少し口にふくんだ、
そしてそのままハルにキスをした。
唇を離すと、ハルの嬉しそうな顔。
かすれた声で「甘い。」と言った。
私はなんだかハルが愛しくてしかたがなくて、
ハルの頭をなでた、
するとハルは気持ち良さそうに目を瞑って、
眠ってしまった。
それを見ていた私も、
つられて眠くなってしまった。
ハルのベッドに上半身をあずけて眠る。
ハルのぬくもりが、
伝わってくる。
目が覚めたのは夕方。
目をひらくと、私の頭にハルの手が乗っていた、
ハル
私の頭をなでてくれたの?
でも、そのハルの手が少し冷たい。
私はバッと起き上がった。
そして理解する。
ハルが息をしていない。
私は呆然となってナースコールを押した。
今はまだ、信じたくない。
ハルが死んだ?
そんなことあるわけないよね。
そんなこと、
あるわけない。
私は両手で頭をおさえた。
するとそこに、
看護婦さんが現れて私を突き飛ばした。
壁に背中を打ちつけた、
その場に崩れ落ちる。
目の前では看護婦さんが、
ハルに一生懸命声をかけている。
それでもハルは、
動かない。
嘘だよね?
涙がボロボロと溢れてきた。
ハルが死んだ、
そんなの嘘だ。
覚悟していたこと、
それなのに、
信じられない。
だって、
ハルはついさっき
ゼリーを食べて
笑顔で
「甘い」って
私に言ったんだよ?
ついさっきまで、
笑ってたじゃんか。
なのに、
どうして?
そのうちお医者さんがあらされて、
ハルの脈を確かめた。
お医者さんは小さくためいきをついてから、
私の方を見た。
「残念です・・・。おうちのかたにご連絡を。」
私はずっと頭を抑えてうずくまっていた。
ハルが死んだ。
だってそんなこと、
あるはずないのに・・・。
そのうちサキさんが来て、
私を車で家へ送ってくれた。
私は涙がとまると、
今度は放心状態で、
なにもできない人形のようになっていた。
気がつくと私は、
自分の部屋にいて、
さっきまでのことは夢なんじゃないかって、
そう思った。
122 :
千尋
:08/10(木) 19:40:09
HOST:221x117x57x149.ap221.ftth.ucom.ne.jp
ハルが死んじゃった。。。
あげ!!!
123 :
みしゃ*(未夜
:08/10(木) 21:05:22
HOST:p1185-ipbf201aobadori.miyagi.ocn.ne.jp
え・・・本当・・・????????
死んじゃっ・・・た?の・・・??
ぁげ。
124 :
爽蘭
(7ft2qJtqa2)
:08/10(木) 21:25:57
HOST:EATcf-152p251.ppp15.odn.ne.jp
わぁぁぁ。
今日初めて読みました。
いっき読みしながら泣いてます。
Rainさん、文才力、ありすぎですよ!!!
この小説、ぜひ、小説化&ドラマ化したほうがいいですよ!
最後まで、頑張って書いてください
125 :
舞
:08/10(木) 21:43:15
HOST:ser357664001680315
感動です!!ハル死んじゃったの……??(涙)切ない!!
126 :
Rain
:08/10(木) 21:48:16
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
それからあまり日も経たない頃、
私にお客さんが来た。
サキさんだった。
サキさんは真っ黒い服を着ていた、
これからハルのお葬式らしい。
サキさんは私にどうしても出席してほしいと言った。
私はお母さんが無理矢理用意した黒い服を着て、
サキさんの車に乗った。
ハルが死んだあの日から、
私は部屋に閉じこもって、
現実逃避してた。
ハルが死んだわけないって、
自分に言い聞かせてた。
不思議とハルが死んだあの瞬間以外、
涙はでなかった。
サキさんのついたわよという声で、
私は我にかえった。
サキさんに手を握られて、
ハルの眠る場所へ向かう。
そこには、
ツヨシ、タク、ユカリ、ハルカ
全員がいて、
みんな泣いていた。
「アイ〜・・・。」
泣きながら私に抱きつくユカリ。
私はただボーっとしていた。
まだ納得できない。
納得したくないの。
「最後にハルの顔、見てあげて。」
再びサキさんに手を引かれて、
木箱の前に座った。
そっと覗き込むと、
そこにはハルがいた。
「ハル・・・。」
ハルはいつものように、
眠っているだけのように見える。
死んでいるようになんて見えない。
ハルの横には私が誕生日にプレゼントした色紙が
そえられていた。
ハルが持って行ってくれるんだね、よかった。
思い出した、
ハルが死んだ日、
目が覚めてハルの手は私の頭を
優しく包み込んでいた。
無い力を振り絞って、
私に触れてくれたのかな。
もう自分の力じゃ、
私に触れることすらできないって、
ハルは泣いた。
でも、
ハルは最後に、
私に触れてくれたんだ。
また私が寝ている間に、
苦しい思いさせちゃったね、
ハル、
ごめんね。
やっと今まで溜め込んでいた涙が、
こぼれた。
ハルが最後に見た私の顔は、
きっと笑顔だったはずだ。
そうであってほしい。
だって笑って最後まで、
ハルを幸せにするって決めてたから。
やがてハルは火の中に入れられて、
骨だけになってしまった。
これで本当に、
ハルはいなくなっちゃったんだ。
そう思ったら、
涙が止らなくなった。
でもハル、
私もう泣いてもいいよね?
ごめんね。
「アイちゃん。」
サキさんが私の方へきて、
手を開いた。
そこにはいつかハルが買ってくれたピアスの片割れがあった。
「コレは焼けないからって言われたの。
アイちゃんとおそろいのピアスよね?
もらってあげて、ハルの形見。」
私は小さな十字型のピアスを受け取った。
そしてサキさんは続けて、
白い封筒を取り出した。
「あとこれ、ハルの病室から見つけたの。
ハルがアイちゃん宛てに書いた手紙みたい。」
「・・・手紙?」
私はそっとその封筒をうけとった。
ピアスとこの封筒が、
ハルが私に残してくれた最後のプレゼントだった。
127 :
ちょ
:08/10(木) 22:00:01
HOST:ZK029250.ppp.dion.ne.jp
はる・・・
128 :
Rain
:08/10(木) 22:03:42
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
アイへ
今アイはどんな気持ちでこの手紙を読んでるのかな?
きっと俺が死んで、泣きじゃくってるんじゃないか?
とか、ちょっと心配してます。
病気のことは最近知らされたばかりで、
なかなか実感はないんだけど、
どうやら俺には時間があまりないらしい。
だから、鉛筆を握れる今のうちに、
アイに手紙を残します。
アイ、よく聞け。
これから俺が書くことは、
俺がいなくなっても絶対に守ること。
約束だからな?
どんなことがあっても自分を大切にしろ。
これからは俺がアイを守ることはできない。
だから、強くなれ。
援助交際なんてすんな、自分をもっと大切にしろ。
アイは俺が愛してきた、なにより大切な存在なんだから。
楽しい時は笑え、悲しい時は泣け。
俺はアイの笑ってる顔が好きだよ。
アイが笑ってくれるから、俺は幸せだった。
でも、悲しい時は我慢しないで、
泣いたっていいんだよ。
俺はアイの涙をもうぬぐえないけど、
アイを励ましてくれる仲間は、ちゃんといるんだから。
幸せになれ。
アイには、俺の分まで幸せになってほしい。
なんか無責任な言い方だけど、
俺はアイにすごく幸せにしてもらえたから、
だから、アイにも幸せになってほしいよ。
こんな情けない彼氏で本当にごめんな。
アイを本当に幸せにするのは、
俺でありたかったのに・・・。
最後までアイを幸せにすることは、
俺にはできないみたいなんだ。
本当にごめん。
アイ、ありがとう。
ずっと愛してるよ。
ハル
129 :
ちょ
:08/10(木) 22:07:38
HOST:ZK029250.ppp.dion.ne.jp
まぢでやばぃ
130 :
舞
:08/10(木) 22:20:00
HOST:eaoska178029.adsl.ppp.infoweb.ne.jp
涙でてきたーー。感動やぁ。もうすぐ、完結?
131 :
Rain
:08/10(木) 23:09:53
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
それから時は流れて、8月。
私はハルと出会った日に見つけた、
あの公園でブランコに乗っていた。
空を見上げる。
今日の天気はかんかん照り。
とても暑い。
私はハルからの手紙を何度も読み返していた。
その日も同じ、
ブランコに乗って、
ハルの手紙を読み返した。
ハル、
ハルに言いたいことがあるの。
ハルは私を幸せにしたかったって言ったけど、
私はハルと出逢って、
幸せだったよ?
ハルと出逢って私ははじめて、
「生きる」ということの
尊さを知ったんだ。
本当はね、
もっとずっと
ハルと一緒にいたかった。
それが本当の気持ち。
でも私はもう後悔したくないんだ。
自分がしてきたこと全部。
今なら、
私がしてきたバカなことも全部、
ハルと出会うためだったって思えるんだよ。
ハルと出逢って私の人生は、
変わったんだもの。
ハルと出逢って私は、
生きたんだよ。
私はハルと一緒に。
生きたよ。
私の両耳には
十字型のピアスが光る。
ねぇハル、
元気でやっていますか?
今ハルがいるところにも、
辛いことや
悲しいことは
ありますか?
でもきっとハルはどんなことがあっても、
笑ってるよね。
私は思う、
私が笑っているかぎり、
私とハルは繋がってる。
私は1人なんかじゃない。
ハルと一緒に生きる。
これからも。
そう、ずっと。
あなたと一緒に。
〜END〜
132 :
Rain
:08/10(木) 23:14:45
HOST:FLH1Aci171.hkd.mesh.ad.jp
+あとがき+
誤字脱字の多い小説でしたが、
どうにか完結させることができました。
ここまで読んでくれた方々、
本当に感謝してます!本当ありがとうございました。
小説なんてあまり書かないので、
つたない文章で申し訳ない気持ちがいっぱいですが・・・。
応援があったので最後まで書き切ることができました。
本当にありがとうございました。
また、途中コメントをくださったのに、
返答をできないことがとても多くてすみませんでした。
今後もカラダ小説または一般小説で小説を書かせてもらうと思います、
その時はまた応援してくださると嬉しいです。
Rain
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